第128回 三重県実食編 私は回る牛を見た

特別編集委員 野瀬泰申


 

 私が本格的に三重県を訪れたのは旧東海道を踏破したとき、そのついでにお伊勢参りをしたときだった。以来、取材で訪れる機会もなく過ぎていたのだが、今年になって3回も三重に足を運ぶことになった。

 まず1月12日、愛Bリーグの会議で津に泊まった。そのときは会議と懇親会があったため、取材はできなかった。ただし懇親会で直径15センチの皮で包む「津ぎょうざ」はちゃんと食べた。

 大きいからといって決して大味ではない。3口くらいで食べると、皮が多い部分、あんが中心の部分と味の変化があって面白い。

 ご存じのように「津ぎょうざ」は学校給食から生まれた。「高校生は懐かしい。お年寄りは未体験」と通常の食べ物とは反対なのである。

おにぎりの入った名張牛汁
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おにぎりの入った名張牛汁

 翌日は名張まで足を伸ばし「名張牛汁」と伊賀牛を食べた。

 牛汁は元は名張の精肉店のまかない料理で、剥(す)き身と野菜を一緒に汁にしたものである。岡山県津山市の「そずり鍋」と発想は同じ。もったいない精神が背景にある。名張では、汁の中におにぎりを入れたものを「名張牛汁」とし、まちおこしに活用している。

 名張では「赤目四十八滝」にも行った。美しい風景が広がっていた。

 水の中にはサンショウウオが生息しているが、見た目と違って「うかつに指を出しては危険です。噛みちぎられます」と地元の人に教えられた。

 

伊賀牛

伊賀牛

 次の機会は2月22日に訪れた。夕刊の「文学周遊」というコラムで梶井基次郎の「城のある町にて」を取り上げたが、その舞台が松阪。そこで松阪に1泊して取材した(掲載は3月2日)。

 取材先は主に松坂城跡周辺。終日冷たい風が吹き、昼過ぎから夕方まで外にいたらすっかり体が凍えてしまった。

 そこで取りあえずホテルにチェックインして暖を取ることにした。大浴場のあるホテルなのでありがたい。

 松阪の愛Bリーグ加盟団体「Do it! 松阪鶏焼き肉隊」の皆さんと会う(飲む)のは6時半から。6時過ぎにホテルに迎えにきてもらうことになっている。時間は十分ある。ということで大浴場に降りて行った。

 ガビーン。

 大浴場は6時からだって。

 うな垂れて部屋に戻る。ふと観光案内所でもらった市内地図のことを思い出した。ホテル周辺の施設を詳しく見ていると、ありました。公衆浴場「ひょうたん湯」。

 ホテル備え付けのタオルとボディソープをレジ袋に詰めて、地図を頼りに歩いて行った。間もなくひょうたん湯を発見。いそいそと入口に向かう。

 ガビーン。

 本日金曜は定休日ですと。

 だめだこりゃ。

 再びうな垂れてホテルに戻る。風呂は明日の朝にしよう。

 そうこうするうちに約束の時間になり、迎えに来てくださった方の車で「鶏金」というお店に行った。

 店内に入るとほぼ満席。網から立ち上る煙で店内が白くなっている。盛大である。モクモクである。

 以前、松阪市役所の方と話す機会があった。

「松阪の人は毎日松阪牛を食べているわけじゃあないですよね」

「当たり前です。あんな高いもの、とても毎日なんて。私たちはむしろ鶏肉をよく食べます」

「どんな風にして食べるんですか?」

「焼き肉です」

「焼き肉って、網で?」

「はい。網で焼いて食べます」

 ということで松阪における鶏焼き肉文化についての予備知識はあったのだが、食べるのは今回が初めてである。

鶏焼き肉
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鶏焼き肉

 鶏焼き肉隊のメンバー4人と私は網を囲んだ。若鶏、親鳥を注文する。やがて出てきたのは唐揚げにする前のような形状の生肉で、上から味噌だれがかかっている。味噌はもちろん赤味噌である。

 それを絡めて網にのせる。焼き肉店のメニューの1品に鶏肉が存在することは確かにある。しかし鶏肉だけを焼くというのはありそでウッフン、なさそでウッフンではないだろうか。

 赤味噌で下味をつけて焼いた鶏肉を、赤味噌だれで食べる。これはいやでもご飯かビールである。私はハイボールを飲みながらいただいた。 

 メニューも鶏一色。中でも「くび」という文字に頭がくらくらした。東京で「ネック」とか「せせり」とかいうアレに違いないが、直球で「くび」と書かれると、サラリーマンとしてはちょっとドキッなのであった。

 ともかく頼んでみよう。それも「くびあげ」つまり「首揚げ」を。

くびあげ
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くびあげ

 出てきたものがこれ。1人前なのに大量である。適度な歯ごたえがあって、柔らかい若鶏、噛めば噛むほど味が出る親鳥とはまた違う。

 気が付くと鶏焼き肉隊の男性1人、女性3人はご飯を注文している。ご飯だよねー。

 ご飯とともに頼んだのが鶏スープ。これが野菜たっぷりのあっさり味で、力強い鶏焼き肉の味と調和して胃に優しいのである。

 さあ飲もうかと張り切ってもだめである。午後9時閉店。というかその時間になると客は私たちだけになっていた。

 隊員の皆さんの話だと、鳥焼き肉は基本的に昼間のもので、居酒屋のように遅くまで飲み食いできる店はないということであった。

 その席で私は皆さんに尋ねた。

「松阪に来て2万円近い極上の松阪牛ステーキを食べても芸がありません。どこかにいい切り口はありませんかねえ。裏松阪と言われる牛ホルモンも有名になってしまいましたし」

「フルコースうどん」というのもあるらしい
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「フルコースうどん」というのもあるらしい

 ああそれならと、地元の人ならではの答えを聞くことができた。

「JR松阪駅の立ち食いの店に肉うどんがあるんですが、それが美味しくて私もときどき昼間に食べに行きます」

「肉は……」

「もちろん牛です」

 よーし、もらった。

 松阪で牛肉の肉うどんを食べる。しかも駅の立ち食い。しかもジモティ―御用達。

 それを聞いて安心し、ホテルに戻った。

 ホテルには「無料」の朝食がついているが、明日はその権利を放棄する。朝風呂に入って駅に向かい、肉うどんを食べることに決めた。

 翌朝、7時過ぎに目が覚めた。予約してある名古屋行き近鉄特急の発車時間は午前10時7分だか9分。ホテルから駅まで徒歩5分であるから、ありすぎるほど余裕がある。

 8時になったので大浴場に行った。

 ガビーン。

 お風呂は8時で終わりだって。

 しゃあない。テレビのニュースでも見て時間を潰すか。

 といっているうちに9時半になった。ホテルを出て駅に向かう。

 立ち食いの店は改札に向かって右端にあった。肉うどんである。朝から温かいものがお腹に入るのは嬉しい。

 ガビーン。

 朝の営業は10時45分からだって。

 呆然としながらも考えた。東京の駅そばは早朝から通勤する人たちのために、しかるべき時間から営業を始める。しかしながら松阪ではほとんどの人が車で通勤するから駅の立ち食いの需要はないのである。

 東京感覚で考えていると、こういう事態になる。

 それでも腹が減っていたから駅でサンドイッチなどを買って特急に乗り込んだ。

 そんなことがあった1週間後の3月1〜3日。実食編の取材で3度目の三重の旅となった。

 松阪の4ガビーンのリベンジもしなければならない。

 今回の旅は一芸クンと一緒であるが、彼はある目的があって私より1日前に三重に入った。彼は何をしていたのか。一芸クン、ご報告を。

一芸 三重県編第4回で「横浜市の永岡動物園飼育係」さんから情報をいただいた「朔日(ついたち)餅」にチャレンジしてきました。毎月1日のみ、赤福本店で売られるという伝説のお餅です。
 
 早朝4時45分の販売開始時には、数百人が列を作り、みな10箱、20箱と買い求めていく中、私も無事購入できました。その様子は長い話になるので「おかわり」編でご笑覧ください

 そこまでやる必要があったのかとも思うが、そこまでする人が山のようにいることに驚く。そこまでやらないと手に入らないのである。

 ともかく頑張ったね。

 そして私は1日の昼過ぎに津に降り立ち、伊勢で奮闘した一芸クンと合流したのである。駅には、これまた愛Bリーグ加盟団体「津ぎょうざ協会」の須川さんと原田さんが来てくださっていた。まず車でみそカツ発祥の店「カインドコックの家 カトレア」に行った。

 店の前まで来て須川さんが「あれー」と言った。

 店の前に「本日休業」の看板がある。

 ガビーン。

 これで5連続ガビーンである。

 そうか。金曜が定休日であったのか。

 それではと向かったのは「中津軒」という老舗の洋食屋さんである。

謎のメアベアは「特別料理」待遇

謎のメアベアは「特別料理」待遇

 須川さんは「津には東洋軒、入栄軒、中津軒という古い洋食の店がありまして、これを3大軒と言っています。中でも中津軒は謎の料理があることで有名です」と言った。

 謎の料理か。なんだろう。

 店は風格にあふれ、それでいて敷居が高くない造りである。聞けば開店以来101年。4代目であるという。

 謎の料理は「メアベア」という。語源もどんな経緯で生まれた料理なのか、店の人もわからない謎だらけのメニューである。

 これを一芸クンが注文した。原田さんと須川さんは好物のハヤシライス。私はAランチにした。

メアベア
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メアベア

「メアベア」はハヤシライスのソースに似たものに牛肉と鶏肉が入り、上に目玉焼きがのっている。ちょっと味見をしたが、実にしっかりとした味で、デミグラス系のソースは長い間継ぎ足されたものか、味わいがまことに深い。

 5ガビーンにもかかわらず、私のテンションは一気に上がった。

 私の前に運ばれてきたAランチをご覧いただきたい。

 ハンバーグの柔らかさ。ポークカツレツのさくさく感。真ん中の仕切りのように盛り上がった千切りキャベツ。ゆで卵の上にちょこんとのったマヨネーズ。

中津軒のAランチ
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中津軒のAランチ

 端正である。美しい。

 私は珍しくがっついてしまった。

 流れが変わってきたぞ。

 次に向かったのは「蜂蜜まん」。そのすぐ傍にある食堂に「落花生」の看板が立っていた。原田さんがすーっと戸を開けて入っていった。

 出てきた原田さんの手には落花生の袋が握られている。

おいしくいただきました

おいしくいただきました

「この店は中で食べなくても落花生だけ売ってくれるんです。ホテルで食べてください」

 言いながら一芸クンに渡した。

 結局、この落花生は私の口には1粒も入らず、一芸クンのモノになってしまったのであるが。

 そんでもって蜂蜜まん。道に面したガラス戸の向こうで優秀な半自動機械が蜂蜜まんを焼き続けている。女性が焼きあがったものをどんどん箱に詰めるのだが、予約やら引っ切りなしに買いに来る客の注文で、次から次に消えていく。

蜂蜜まん
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蜂蜜まん

 私たちは中で食べようとテーブルに陣取った。4人で8個注文し、渋いお茶とともにいただく。

 外はかりっと焼けたカステラ生地(多分)、中はこしあん。そのあんこが蜂蜜の抑えられた甘味で満たされ、甘いものを食べない上にAランチを腹に収めたばかりの私でさえ、ぺろりと平らげた。

 いまから東京に戻るのならお土産に買って帰りたい気持ちだった。

 おっと先は長い。駆け足で行こう。

元祖天むす
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元祖天むす

 それから「天むす」の元祖「千寿」で天むすを食べる。ご飯の炊き方絶妙。塩加減絶妙。130円という値段も絶妙。

 アーケード商店街はひな祭りということでひな人形を飾っていた。メガネ屋さんのひな人形はメガネをかけて宣伝に努めていた。

 そこから「カレー焼」の「さかえや」へ。ここは撮影不可だったので商品写真のみである。

 須川さんの説明。

「カレーのほかに、あんとクリームがありますが。私たちはみんなカレー焼と呼んでいます」

 一口かじってみたが、なるほど人気があるはずだわ。

カレー焼き
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カレー焼き

 はみ出した「耳」の部分は1個ずつはさみで切り落す。あれだけでも美味しそう。

 ここで津を離れて伊勢市に向かうが、津の食文化は面白かった。テンション上がりっぱなしであった。

 うなぎは食べられなかったけれど、津の場合は腹開きも背開きも半助(頭)付もあるが、共通しているのは蒸さないこと。そしてうなぎは切ってご飯にのる。切り身の数で上中下のランクが決まる。

 伊勢市に着いたのは夕方近い午後。ちょっと時間があるので外宮を歩く。途中の参道で「ぱんじゅう」を出す店があった。参拝客用の旅館であろうか「山田館」の風情に思わずカメラを向ける。

 ホテルに入って少し休憩。時間になったのでタクシーで「まるせい伊勢」という店に向かう。一芸クンの事前取材で、この店で志摩の「塩辛」を食べられるというのでやって来たのだった。

 カウンターに座り、さっそく塩辛を注文した。本日はサバの塩辛である。

サバの塩辛
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サバの塩辛

 塩辛というとまずイカを想像する。酒盗のような腸系も浮かぶ。しかしながら志摩の塩辛は魚の「身」である。

 しかも写真のようにピンク色も鮮やかで、まるでさっき漬けたような風合い。しかしながら、これで2年ものという。

 味は……たまらん。いけません。お酒ください。

 サバの身と塩だけ。時間をかけて発酵しているためであろうか、かなり塩辛い中から、じわーっとうま味が染みだしてくる。アミノ酸よありがとう。

 一芸クン、よくお聞き。おじさんはね、いまこの塩辛と地酒を飲んでるわけよ。そんでもって、とっても幸せなわけよ。

真珠貝の貝柱バター炒め
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真珠貝の貝柱バター炒め

 一芸クンは天ぷらの盛り合わせを注文。私は真珠貝の貝柱のバター炒めである。貝柱は勾玉の形をしていて青柳の小柱やホタテの柱に比べると歯ごたえがしっかりしている。

 といいつつ、私はサバの塩辛を死守して酒を飲む。お銚子の大、お代わり。

「これ食べてみてください」

 カウンターの向こうの板長さんが小鉢を出してくれた。

「何ですか?」

「カツオの血合いと剥き身に麦味噌、調味料、ショウガ、ネギを加えてたたいたものです。志摩の安乗(あのり)では昔から食べているものですが、名前がありません。カツオのなめろうみたいなものですが」

「カツオのなめろうみたいなもの」とアオサの佃煮
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「カツオのなめろうみたいなもの」とアオサの佃煮

 一芸クン、聞いた? いまの説明。話だけでお酒がすすむクンじゃないか。

 なめてみる。

 ああー、ほんとに酒飲みにはたまりません。

 またまた小鉢登場。

「アオサの佃煮です」

 いやー、もう参りました。

 全国の酒飲み諸君! 羨ましいですか?

 ここで一芸クンが頼んでいた寿司の盛り合わせがおごそかに登場した。ネタはシャリにのっているという生易しいものではなく、シャリを包んでいる。1750円という値段が素晴らしい。

 だが私は手を出さない。最後の楽しみにサバの塩辛を数切れ取っていたからであった。

サバの塩辛をお茶漬けで
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サバの塩辛をお茶漬けで

「これでお茶漬けを食べたいのですが」

「わかりました」

 で登場したのがこれである。説明不要であろう。

 「まるせい伊勢」を経営する丸勢水産は的矢湾に面した岬の突端、安乗地区にある。スペイン村の近くと言えばわかる人にはわかるか。

 いろいろ飲み食いして6150円であった。ひょっとして小鉢2種はサービス?

 おいおい、三重県はいいぞ。安いぞ、美味いぞ。

 

ウツボの干物

ウツボの干物

 翌朝は早くからJRに乗って尾鷲に向かった。まず参宮線で多気。そこで紀勢本線の特急南紀1号に乗り換える。1時間余りで尾鷲着。

 市役所の芝山さんの案内で魚市場に行った。ちょうどこの日は月に1回の「イタダキ市」をやっているという。運がいい。

 40ほどのテントで海産物やパン、お菓子などを地元の店が売っている。圧倒的な存在感があったのは塩干物であった。

 マンボウの腸とかウツボ、「とんぼしび(びんちょうまぐろ)」まで干物になっている。まさに漁師町の漁師の食べ物である。驚いた。

 驚いたまま「夢古道 おわせ」に行った。道の駅ではないが、まあそんな感じ。

サンマ寿司
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サンマ寿司

 地元の3つの主婦グループが1週間交代で調理を担当し、ランチバイキングをやっている。それを食べるのである。

 相当の人気らしく、席を確保するのに一苦労。

 あれこれ皿に盛って2往復。その中で圧巻はやはり「サンマ寿司」であった。この辺りで揚がるサンマは脂が落ちて、あっさりしている。それを酢で締めて押し寿司にする。サバの押し寿司のような濃厚さはないが、その代わりいくらでも腹に入る。珍しくお代わりしてしまった。

 読者諸兄姉は、私がいつになく食べることに気づいておられるだろうか。今回はなぜか一芸クンの半分は食べられるのである。

3チームが交代で料理を作る

3チームが交代で料理を作る

 芝山さんの話だと「尾鷲の街中のサンマ寿司はすべて腹開きですが、山ひとつ越えた地域では背開きになります」ということで、微妙な食の変化が存在する。

 それはともかく、ここでランチを提供している主婦グループは「法人格を持っていること」「自前の厨房を持っていること」という条件をクリアしている。そのために仲間を集め、イベントで食べ物を売って資金集めという準備期間を乗り越えて今日に至った。間もなく6年を迎えようとしている。

 つまり人口減や高齢化をただ嘆くのではなく、地元に残った人々が知恵と力を集め、尾鷲に新しい魅力を生み出したのである。「まちづくり」の成功例であろう。

 B-1グランプリで有名になって地元に人を呼ぶ。さてその後どうするか。そこが愛Bリーグでいつも議論になるが、いいヒントをもらった気がした。

「ひろめ」の袋詰め作業

「ひろめ」の袋詰め作業

 お腹はいっぱいになった。山向こうの早田(はいだ)町に車を走らせる。漁協で昨年末から養殖を始めた海藻の「ひろめ」を収穫したそうなのである。

 漁協前の市場に行くと、漁師さんたちがひろめを洗ってビニール袋に詰めていた。普段は定置網漁に従事しているが「こづかい程度になれば」ということで、ひろめの養殖を始めた。手がかからないところがいいという。

 漁師さんたちの中に3人の若手がいた。

大阪からIターンで漁師の仕事に就いた中井恭佑さん

大阪からIターンで漁師の仕事に就いた中井恭佑さん

「彼らは三重県や尾鷲市の事業で漁師の仕事の面白さを知ってIターンしてきた若者です。漁師さんも高齢化が進んで、ある年齢に達すると引退します。そこをあの若い人たちが埋めてくれます」

 芝山さんはそう言った。尾鷲は地域づくりや定住促進にいろんな知恵を絞っている。

 そんな勉強をして路線バスで松阪に戻る。国道42号線をひた走って2時間で着いた。

 駅からホテルに向かう前に一芸クンが言う。

「肉うどん食べなくていいんですか」

「だってこれからあれを食べるんでしょ? いまうどんを食べたら晩ご飯が入らないよ。いい。食べない」

「食べましょうよ」

「食べない」

「じゃあ、私がちょっと食べてきます」

 ということで、あの肉うどんは一芸クンに任せた。

 美味しかった?

松阪駅の肉うどん
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松阪駅の肉うどん

一芸 ショーケースにあった「フルコースうどん」も気になったものの、アレを食べることを考慮して予定通り肉うどんを注文しました。

 松阪牛がのっているわけではありませんが、やわらかいし、味付けもつゆとあいまってちょうどよくなるような頃合い。松阪駅という場に恥じない、うまい肉うどんでしたよ。

 その間、私は急いでホテルにチェックイン。前回泊まったホテルと違って、ここの大浴場はほぼ24時間営業である。速攻でお風呂に入る。

 リベンジ成功。

 さあ、最後の仕上げである。1週間前に食べる機会がなかった牛肉、それも松阪肉を食べようという計画を実行に移すときがついにやってきた。

 第2のリベンジの舞台は焼き肉専門店「一升びん」の宮町店である。ここには回転焼き肉がある。人生初体験である。

 店に行くと午後6時半で満員。リストに名前を書いて待つ。10分後、名前を呼ばれた。店内の大半はテーブル席だが、レーンが回る一角があって、私たちはそのカウンターに座った。

食べたい肉が回転してきたら、タイミングよくアクリルのカバーを開ける

食べたい肉が回転してきたら、タイミングよくアクリルのカバーを開ける

 はい、このように回っています。レーンは透明アクリルのカバーがついていて、中は保冷状態。目の前のボタンを押すとカバーの一部が開き、好きな皿をとれば自動的に閉まる仕組みになっている。

 赤身を取る。松阪牛のカルビを取る。ホルモンを取る。壺漬けカルビを取る。寿司と同じでモノによって皿の模様が違っている。

「焼きしゃぶ」というのが回っていたので店の女性に聞いてみた。

「牛の脂を焼き網に塗って、薄切りした極上肉をさっとあぶって食べます」

 しかし、難しそうだったのでやめた。

念願の・・・
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念願の・・・

 ウーロンハイにハイボール、一芸クンはスプライト。

 お肉9皿、野菜2皿をいただいてお勘定は、チーン、5620円であった。赤身なんて松阪牛のブランドではないとはいえ、1皿250円だもんね。

 これは勝利と言っていい。

 時計を見るとまだ8時前である。しかし一芸クンと一緒だと「もう1軒」とは決してならない。ホテルに戻る途中、スーパーで酒を買った。それから私の幸せな独酌の時間が始まったのであった。

 次回から徳島県編に入る。ご関係の皆さんからのメールを待つ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

*映像はflashビデオです。一部機種では再生できないことがあります。ご容赦ください。

★今週のおかわりは伊勢に着いたら朔日(ついたち)餅です。合わせてご覧ください。

三重編(その1) 「味」という名のおにぎり

三重編(その2) 売るのは牛、食べるのは鶏

三重編(その3) 志摩じゃアワビを丸かじり

三重編(その4) 桑名でカレーを食わないと



 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年3月22日

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