第215回 大阪府ご当地グルメ(その4) 大阪の夏、あんペいの夏

特別編集委員 野瀬泰申


大阪府

 いつにも増して多くのメールをいただいた大阪府編もいよいよ最終回です。
 今回は、紅ショウガの串カツにスジとコンニャクの土手焼き…大阪の庶民の味が登場します。もちろん昼の味も。そして大阪の老人ホームの人気メニューはやっぱりアレだった…。
 今週のおかわりは、カップめんの東西の違いを、デスクが食べ比べしました
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魔界(大阪の原さん提供)
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魔界(大阪の原さん提供)

 先週末、取材のため大阪に行った。実食編の下見ではない。紙の新聞の取材である。その前夜、JR京橋駅前に広がる「魔界」で飲んだ。

 立ち飲み屋が並ぶ一角があるのだが、午後6時すぎにのぞくとどこも満員であった。それでテーブル席がひとつだけ空いていた居酒屋に入った。その店は激安、激早。背広姿の客がほとんどいない。

 東京なら浅草に感じが似ている街で、入社して大阪本社に配属され京阪沿線に住んでいた私は、仕事帰りによく京橋に立ち寄っていた。飲んだ後にいつも行っていた立ち食いのうどん屋は健在で、その夜は肉うどんを懐かしく食べたのだった。

満開!
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満開!

 翌日、取材のためアメリカ村に向かう途中の桜は5分咲きだった。東京に戻ってみたら満開。近所の川では桜と菜の花が競演していた。

 今週で大阪編が終わる。若かったころのことを思い出しながら、皆さんのメールを読んだ。今回も私にとっては京橋の立ち食いうどんと同じように懐かしい物件がそろっている。

グランシャトー
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グランシャトー

MNo.21

 大阪には魔界が多い。新世界市場ポスターの「この新しいロゴな、どっかのデザイナーが魔界の入り口を イメージして作りおったんや」は言わずもがなですが、他にも魔界が多々あります。
 京橋も魔界のひとつです。「京橋はええとこだっせ、グランシャトーがおまっせ」でおなじみです。町並みは大分整理されましたが、まだまだ怪しい
 今は閉店した伝説の純喫茶「いずみ」という店がありました。「いずみ定食」と呼ばれる店内最高額のメニューは肉とウナギが一緒の皿にのって出てくるという掟破りのコラボメニューだったのですが……。
 ウナギの準備がすごい。「ジュ〜」と鉄板の上で肉と共に焼かれるウナギの音……それ、蒲焼と違うやん! 突っ込みを受けるために存在するメニューでした。ああ恐ろしい(大阪の原さん)

おやどり姉妹
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おやどり姉妹

「京橋グランシャトー」の写真を撮ってきた。キャバレーの明かりだけが消えていた。大阪に赴任してこのコマーシャルを聞いたときは「はるばる遠くに来たもんだ」と思ったが、いまのテレビのコマーシャルは近鉄や日ハムの元監督、ナシダさんだとか。

「いずみ」には行ったことがない。行かなくてよかった。

 先週、みんなで入った京橋の老舗スナックの女性陣は全員私より年上だった。その中の1人はかほく冷たい肉そば研究会の「おやどり姉妹」を思わせる白塗りだった。素顔が想像できなかった。

 大阪社会部に配属されてすぐの担当は天王寺動物園だった。取材先は新世界に近かった。

カラオケ付き居酒屋(中林20系さん提供)
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カラオケ付き居酒屋(中林20系さん提供)

MNo.22

 これは新世界や動物園前駅商店街に限ることなのか、他もそうなのかわかりませんが、この界隈で居酒屋といえば必ずと言っていいくらいカラオケ付きでした。
 1曲100円が相場みたいでしたが、逆にスナックを見かけなかったので……そういう役割を居酒屋が担っているんでしょうか。
 あの辺に宿を取ったので(=といっても普通のシングル)、ついでに新世界デビューしてきました。とにかく串カツの店がやたら多いですね。「二度漬けお断り」なのは言うまでもありませんが。
 吹田出身ながら標準語しか聞いたことがない、古くからの親友にずっと以前、この界隈について尋ねたら「行ったことないから知らないよー」と、標準語アクセントで言われましたが、大阪人でもそういうものなのかなと。
 わたしは好きになりました。こんな街、関東にはないし。あえて似た街を探せば……歌舞伎町ではないし池袋とも違うし……串カツばかりなところからかな、同業者がたくさんな街&街がテーマパークというところから横浜中華街を想起しました。
 泊まっているホテルの宿泊客込みで外国人観光客も多い街ですが、彼らにとってもエキゾチックでしょうね(中林20系@ホテルさん)

日替わり串かつ10種盛り(中林20系さん提供)
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日替わり串かつ10種盛り(中林20系さん提供)

 あの近くには立ち食い串カツの聖地「ジャンジャン横丁」がある。かつては遊郭があった飛田と新世界をつなぐ道であった。駆け出し記者時代、新世界の映画館支配人から昔の様子を聴くのが楽しかった。新世界はルナパークという遊園地で、浅草の六区みたいな感じだったという。

 大阪の串カツには様々なネタがある。

浪花のハッピーセット(Kengohさん提供)
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浪花のハッピーセット(Kengohさん提供)

MNo.23

 大阪グルメで外せないのが、紅ショウガの串カツと、スジとコンニャクの土手焼き。写真は「串カツだるま」 にて。浪花のハッピーセット(Kengohさん)

東京・立石の「紅ショウガロール」
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東京・立石の「紅ショウガロール」

「食べ物 新日本奇行」で関西固有の食べ物であることが判明した紅ショウガの天ぷら。紅ショウガはカツにもなっている。

 スジとコンニャクはマストの組み合わせである。神戸では「ぼっかけ」と呼ぶ。青ネギを散らして酒のアテである。

 次も関西固有の酒のアテ。

島根県実食編で食べました
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島根県実食編で食べました

MNo.24

 これまで150軒強の飲食店に行き、大阪らしい食べ物をパトロールしてきました。その中で、居酒屋のつまみ(アテ)の定番でありながら、東京にはないものの筆頭として「スルメの天ぷら」を紹介します。
 正しくは、干しスルメを戻して割いて天ぷらにするようですが、廉価なお店では袋詰めのさきいかに天ぷら粉をまぶして揚げていることもあります。
 いずれにせよ大変美味で嵩もあり、とてもリーズナブルです。なぜ、東京にはないのでしょうか?(あまロスさん)

長女は焼かないの?
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長女は焼かないの?

 東京から大阪に転勤して驚くのが紅ショウガの天ぷら、スルメの天ぷら、それに「生肝」という名の「レバー」であろう。

 私も梅田の居酒屋でスルメの天ぷらを見つけて思わず写真を撮った。

「イカの次女焼き」にも驚いたが、よく見ると「イカの姿焼き」であった。イカ焼きというと大阪ではコナモンなので、姿焼きと書いて区別する。しかし漢字の上と下をあまり離さずに書きたいものである。

 冒頭に書いたが、飲んだ後にお世話になったのがうどんであった。

餡掛けうろん(豊下製菓の豊下さん)
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餡掛けうろん(豊下製菓の豊下さん)

MNo.25

 弥生だというのに底冷えのする某日ちょっと風邪っ気かな? そこで近所のうどん屋で「餡掛(あんか)けうろん」を1杯。
 子どものころ、住み込みの職人たちが「素うどん1杯、一夜薬2服、七味3つ」などと言って出前を頼んでいたなぁ。
 そんな事を思い出しながら三角袋に入った七味唐辛子を手作りし、昨年末で使用期限の切れている「風一夜薬」と庭の難波ネギと大阪産の土生姜を持参して、特注の「餡掛けうろん」を作ってもらいました。
 あぁ〜〜あったまるぅ〜〜〜(豊下製菓の豊下さん)

うどんや風一夜薬(豊下製菓の豊下さん提供)
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うどんや風一夜薬(豊下製菓の豊下さん提供)

 またまた上級者向けの内容である。私が説明するより「うどんや風一夜薬本舗」で検索していただきたい。その上でこのメールを再読すると、よく練られた書きぶりであることがわかるであろう。

 ソースとコナモン。大阪の記号のようなものである。次のメールを読めば、大阪の人々にとってこの2つは「生きている限り必要なもの」という印象を受ける。

くっついちゃった…
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くっついちゃった…

MNo.26

 ようやく地元大阪の順番が回ってきたというのに、大阪の地に生を受けて50と1年。外で暮らしたことがないので、何が「大阪」なのかまるで知らない、ということを知りました。その1、その2の皆様の投稿を拝見して「これって大阪ローカルやったんや!」と驚くばかりです。
 大好きな「芋のあめだき」は「中華ポテト」と呼んでいて「大学イモ」とは全く別モノという認識でした。中華屋さんで食べるというより、スーパーのお総菜コーナーで買うというイメージがありました。
 豊下さんが書かれていた「ソーライス」は初めて聞きましたが、亡くなった父も何かといえばウスターソースをかけて食べていました。串カツはもちろん、天ぷらに、鯨のベーコンに……と。もしかしたら父も若いころはソーライスを食べていたかもしれません。
 そういえば、叔父叔母が入居している老人ホームでは、定期的にお好み焼きやたこ焼きが提供されるそうで(職員さんが目の前のホットプレートで焼いてくださるそうです)さすがコナモン王国にある老人ホームならではやな〜と感心しています。
 また、月1回全国各地の郷土料理(高齢者向きにアレンジされて)が1品出されるみたいで、ほんと、私が入居したいくらいです……。
 あと「原さん写真館」で多く取り上げられていた新世界市場のポスター群は、ご存じかもと思いましたが、電通関西支社の若手クリエーターがボランティアで制作したものだそうです(おねいさん改さん)

NO TAKOYAKI NO LIFE
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NO TAKOYAKI NO LIFE

 老人ホームでも職員手作りのお好み焼きやたこ焼きが登場する。当然、ソースがかかっている。「生きている限り」の世界であろう。

 いま、お好み焼きとたこ焼きの歴史を調べている。大阪に行ったのはその取材であった。何しろ史料が残っていないので、わからないことばかりである。わかっているのはこの2つがなかったら、大阪人は生きていけそうもないことである。

 初回から話題になっている「芋のあめだき」もしくは「中華ポテト」。次のメールで背景が浮かび上がる。

「一芳亭」の春巻き(ヴィオニエさん提供)
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「一芳亭」の春巻き(ヴィオニエさん提供)

MNo.27

 ある地方で標準と考えられている料理が、実はその地方特有のものだったという話はこちらのページでもよく紹介されていますよね。まさに「食の方言」です。
 全国に食の都と知られている大阪なんてもうそんなものはないだろうと思いきや、案外大阪人ですらこれが「食の方言」だとは考えていないものがあるのです。
 それは「春巻」。一般的には春巻の皮で包んでカリッと揚げたものを想像するでしょう。もちろん大阪でも普通に食べていますが、ある意味「よそいき」……つまりホテルや高級店で食べるものというイメージがあります。
 大阪の町なかの個人経営のお店で食べられる春巻の皮は小麦粉に卵が混ぜられていたり、皮で包んだ後、溶き卵にくぐらせてから揚げるので食感はカリッというよりしっとり。餡も片栗粉でとじた濃厚なものではなく、野菜がたっぷり入っていてあっさりしたものです。写真は昭和8年創業の華風料理「一芳亭」の春巻きです。
 京都でも一部同様のものはありますが、大阪が中心と思われるこの春巻、なぜなのかと調べてみたところ、大阪に明治期にできた外国人居留地(川口)にやってきた中国の料理人に山東省出身者が多く、彼の地の春巻きの特徴とよく似ているという説を見つけました。
 実際のところどうなのかはわかりませんが、確かに大阪の老舗で山東料理を掲げるお店はいくつか見られます。
 ちょっと気になって、大阪中華で紹介されている「芋のあめだき」について山東料理との関係を調べてみたら、やっぱりそうらしい。「拔絲地瓜」はまさしく山東地方のお料理のようです(ヴィオニエさん)

拔絲地瓜のメニュー
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拔絲地瓜のメニュー

 川口居留地の華僑に山東省出身者が多かったというのは事実であるらしいので、そうならば山東料理が大阪に伝わっても不思議ではない。そして拔絲地瓜が山東料理の系譜に連なるものであっても不思議はないのである。

 横浜、神戸、長崎など幕末に開港したところに中華料理が伝わるが、料理人が中国のどこ出身であったかによってそれぞれ特徴が異なる。

 大阪山東料理伝来説は多分その通りであろうが、そういう目で見ると、大阪の中華料理が違って見える。春巻きなどは好例であろう。

 力作のメールを読ませていただき感謝。

 最近は「亜熱帯」とも言われる大阪の夏。しかし夏には夏のすばらしい味覚がある。

あんぺい
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あんぺい

MNo.28

 首を長くしてお待ちしておりました大阪府編、きっとまだまだあるで〜と大阪府民は思っていると思いますが、鱧(ハモ)が出たところで私の一押しを。それは、「あんぺい」でございます。
 かまぼこ屋さんが夏だけ出してくれる「あんぺい」。夏の暑い食欲のないときに、あんぺいをわさび醤油でいただく。冷たいお酒があれば至福の時間でございますね〜。アルコールには弱い私でも、あんぺいはご飯じゃなくてお酒がええな〜と思います。
 水ナスの漬物、あんぺい……暑いけど夏は楽しみも多いです。
 大阪市中央卸売市場本場が近くなので、近所のスーパーでも新鮮な魚が手に入ります。秋には岸和田など、泉州方面から丸々と太ったイワシが入ります。高級魚に負けないおいしさです。お高く買っていただけるのか築地にも行くそうですが、首を長〜くして待っていて、このときばかりはお造りでいただきます。
 今日は旬の若ごぼうを「若ごぼうの炊いたん」でいただきます(料理研究家 中田綾子さん)

「あんぺい」。ああ懐かしい。大阪では先輩に教えられて何回か食べた。冷酒の親友である。

「全国かまぼこ連合会」のHPの文章を読んでいただきたい。

夏の定番
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夏の定番

 関東では、馴染みの薄いあんぺいですが、関西では夏の定番です。大阪のかまぼこ業者のあんぺいをこの時期、心待ちにしているファンも多いようです。あんぺいは、江戸はんぺんの仲間ですが、原料や製法は大きく違います。東京のはんぺんがサメ類を主原料にしているのに対して、あんぺいの主原料はハモ。
 ハモは関西の夏の風物詩。この時季のハモは脂がのっていて、とても美味といわれています。今でも自ら、鮮度の良い生ハモを仕入れ、さばき、ハモ100%のあんぺいをつくっているところもあります。
 山芋などのつなぎは使わず、魚肉を、約2時間かけてすり鉢で丁寧に摺り上げ、塩水でゆであげてつくります。あんぺい独特のふわっと柔らかい食感と、ハモならではの深い味わいが特長です。吸い物種や冷たくひやして、わさび醤油で食べるのが一般的です。

大阪名物(中林20系さん提供)
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大阪名物(中林20系さん提供)

 どや、うまそやろ。

 ということで大阪府編は終了。

 お名前はないが「ちく満のそば、蒸しソバではありません。一度湯がいてそれを客に出す前に再度湯通しをしています。ちょっとそばとは別次元の食べ物です」というメールもいただいている。

 実食編でよーく確認してみよう。

神奈川メール、お待ちしています
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神奈川メール、お待ちしています

 次回から神奈川県編である。

 その合間を縫って愛知県実食の旅にも行かねばならず、歯の改造工事もやらねばならずで、忙しい日々が続く。

 では神奈川県関係者はどんどんメールを送っていただきたい。

 ところで21日に東京・新宿でトークショーを挙行することになった。テーマはB−1グランプリであるが、今回は愛Bリーグ加盟団体が地元でどんなまちおこし活動をしているかという点に時間を割く予定。興味がある方はこちら

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「東西のカップうどん食べ比べ」です。ぜひお読みください。

大阪府編(その1) 復活してくれ! スナックパーク

大阪府編(その2)  「心の中にはあんた 口の中にはあんこ」(中山菓舗)

大阪府編(その3) イカ焼きそんなにおいしイカ

大阪・京都府まとめて実食編 「飯炊き仙人」こんにちは


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年4月3日

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