第14回 千葉県(その3) 銚子に行ったら木の葉パン

鳥取県のVOTE1位はモサエビ。写真は陶板焼き(鳥取県食のみやこ推進課提供)
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鳥取県のVOTE1位はモサエビ。写真は陶板焼き(鳥取県食のみやこ推進課提供)

 鳥取県編終了後、皆さんにVOTEしていただいた「野瀬に食べさせたいもの」の集計結果が出た。


1位 モサエビ
2位 牛骨ラーメン
3位 ホルソバ
4位 (魚の)コロッケ
5位 カレー


 である。

 7月2日から2泊で鳥取に行くことにしているのだが、1位にモサエビが来るとは思っていなかった。困ったぞ。

 実はいまシーズンオフ。冷凍物ならあるかもしれないが、獲れたては無理なようなのである。しかしながら頑張って探してみよう。

鳥取県のVOTEはこの5品でした(上がモサエビ。下段左から牛骨ラーメン、ホルソバ、コロッケ、カレー)
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鳥取県のVOTEはこの5品でした(上がモサエビ。下段左から牛骨ラーメン、ホルソバ、コロッケ、カレー)

 2位から4位まではスケジュールに組み込んだ。カレーは予定に入れるまでもなく、その気になればいつでもどこでも食べられる。気分と胃袋次第である。


 今回、久しぶりに鳥取に行くにあたって、これまで気になって仕方がなかったものに挑戦するつもりである。連載にはまったく登場しなかった麺類が鳥取だけではなく山陰に広く分布している。その形状と味と食べ方を、この目で確かめるのである。

 実食編で詳しくリポートする。


 では千葉県編。


ホンビノス貝(中林20系さん提供)

ホンビノス貝(中林20系さん提供)

MNo.(メールナンバー)15

 仕事でたまに市川市に伺うんです。右から読んでも市川市、左から読んでも市川市…はともかく、駅に直結なガード下ショッピングモールが充実し過ぎてるんです。特にそこに入ってるテナントの鮮魚店! 貝類がエラく充実してるんですよ。
 ホンビノス貝(和名は『本美之主貝』)は北米から東京湾への帰化生物です。北米に荷物を運んで、帰りに空荷の貨物船を安定させるために彼の地で積んだバラスト水…現地の海水に紛れて来日したみたいですね。バラスト水は東京湾に着いたら捨てるし。で、育って増えた、と。
 最近、帰化生物はいろいろと問題になってますが。食べて解決できるならばさ。男性的なハマグリみたいな感じで美味しいですよ。しかも安いし。彼の地ではいわゆるクラムチャウダーとかに使われてるとか。
 さらに。わたしが育った瀬戸内ではお馴染みだったマテガイ、関東では初めて市川で見ました。潮干狩りでのイベントなんですよね、マテガイって。干潟に開いた穴に塩をひとつまみ入れれば…飛び出してくるという。そこをつまんで捕まえるという。
 これまで市川で見かけたマテガイは山口産や岡山産でした。需要があるから遠方から入荷してるんですよね。かつては市川でもマテガイ、普通に捕れたんでしょうか。
 あと、イメージ的には伊豆辺りなシッタカ(バテイラ)なんかも普通にあったりします。
 市川市民…貝好きなのか?(中林20系さん)


マテガイ(中林20系さん提供)
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マテガイ(中林20系さん提供)

 マテガイが塩分濃度の変化に敏感な性質を利用した漁法である。

 私は子どものころマテガイの塩焼きを食べていた。しかし大人になって東京の寿司屋で注文したマテガイと私が食べていたものが微妙に違っていた。聞いてみると「お客さんが食べていたのはアゲマキじゃないですか? 似ているからよく間違えるんですよね」と言われて愕然としたのだった。


 改めて「食材図典V 地産食材編」(小学館)で「アゲマキガイ」を引いてみると「日本では有明海と八代海、瀬戸内海の一部に分布する。長方形をした貝でマテガイによく似るため、市場ではマテガイで流通することも多い」とある。

 そして載っているアゲマキガイの写真こそ、私にとってのマテガイそのものであった。つまり私の母が買っていた久留米の魚屋がマテガイていたのである。

 図典と照合すると中林さんの写真は間違いなくマテガイである。


 bayfm「パワーベイモーニング」に寄せられたメールにこんなのがあった。「とうぞう」である。


「市原市の方は普通に食べているらしい『とうぞう』。初めて食べたときは匂いにびっくりした」


こんにゃく鉄砲漬け(机さん提供)
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こんにゃく鉄砲漬け(机さん提供)

 漢字で書くと「豆造」。「とうぞ」とも言う。

 農文協の「聞き書 千葉の食事」によると「味噌をつくるときに大豆の煮汁がたくさんできる……とうぞは豆の煮汁にこうじや大根の切干し、納豆などを入れて、塩をきかせて仕込んだ独特の食べ物で……南総丘陵一帯の家々に昔から伝わっている。麦飯にかけて食べるが、一度味をしめるとなかなかうまくて、あとをひくところがある」のだそうである。

 要するにまだ各家庭で味噌をつくっていたころ、大豆の煮汁を捨てずに有効活用したところから生まれた郷土料理である。

 手前味噌をつくる家庭がなくなったいまでは、市原市内の老舗味噌店製のものくらいしか手に入らないらしい。ネットで調べていたら「房の駅」で買えるとか。「房の駅」?


ピーナッツアイスクリーム(机さん提供)
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ピーナッツアイスクリーム(机さん提供)

MNo.16

 市原のゴルフ場に行った帰りに、最近県内で勢力を伸ばしている「房の駅」に寄ってきました。県や市など行政のやっているアンテナショップではなく、千葉県産品を専門に扱っている私企業です。
 けっこう評判がいいらしく、県内のあちこちにお店を開いていて、近々、鎌ヶ谷にも新店をオープンするという記事を日本経済新聞でも見かけました。
 当然、落花生関連商品、白ウリだけでなくタケノコやこんにゃくを使った鉄砲漬け、海苔などを大量に扱っています。そんな中で見つけたのがピーナッツアイスクリーム。ピーナッツバターや味噌ピーはよく見かけますが、アイスクリームは初めてですね。
 まんまピーナッツ味でした。
 ちなみにタケノコの鉄砲漬けもこんにゃくの鉄砲漬けもかなり美味です。がんがん飲めます(机さん)


 がんがん飲めそうなものばかり物色しているのであろうか。

 それで酒の友ではない「豆造」を見逃したのであろうか。


 bayfm「パワーベイモーニング」のリスナーからはこんなメールも届いていた。


 「木の葉パンって知ってますか。小麦粉で葉っぱの形で、微妙に甘く、ばあちゃんの家に遊びに行くと、必ずありました。新しいうちは柔らかく、噛むとふにゃーっとするのですが、少し古いとパキパキで堅いので、牛乳で少しふやかして食べていました」


筍の鉄砲漬け菜の花入り(机さん提供)
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筍の鉄砲漬け菜の花入り(机さん提供)

 木の葉パンは銚子オリジナルのパン。名前の通り木の葉の形をしている。久留米のソーセージではなくハムを挟んだホットドッグに似た立ち位置であるらしい。

 そうそう、地元から送られてきた新聞を読んでいたら久留米のホットドッグ誕生秘話が載っていた。意訳する。

 あるとき久留米のパン屋さんがアメリカ帰りのお医者さんから「あちらには長いパンにいろいろなものを挟んだホットドッグというものがある」という話を聞いた。しかしお医者さんに尋ねても「具」がよくわからない。

 そこでパン屋さんは考えた。「ホットドッグ、つまり暑そうな犬であるから、舌を出してハーハー息をしているだろう」。ならばとパンに刻みキャベツ、さらにプレスハムを切れ目から少しはみ出すように挟んでみた。つまりハムは犬の舌なのである。

 笑いました。面白れー。

 銚子というとどうしても醤油。


勝浦の朝市(ミルフォードさん提供)
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勝浦の朝市(ミルフォードさん提供)

MNo.17

 ご当地での「千葉=醤油が特産品」という意識は……実はあまりありませんでした。私は今まで、遠足で醤油工場に見学に行くことはどこの地域でも行われていることだと思っていました。
 給食室に、残ったご飯が入ったままの容器を返しに行くと、給食の担当のおばちゃんが容器に入ったままのご飯に、これまた残りものの醤油を直接かけて醤油おにぎりをつくってくれたのも日常の光景でした。
 長く続いているおそば屋さんがあるのも、つゆに地元の醤油を使っていることと関係があるのかもしれません。
 しいていえば、何かを意識して売っているのはやはりぬれせん、醤油ジェラートあたりなのでしょうか(千葉県出身ななさん)


 給食で残ったご飯の容器に直接醤油をぶちまけて醤油おにぎりというのは……凄げーことである。言うつもりはなかったが、しょうゆうことしてたの?


MNo.18

 千葉といえば醤油と缶詰! 特に缶詰はイワシの缶詰というイメージがあります。骨まで美味しくいただきます。
 お醤油は現在のところ(色々と試してます)ヤマサの「鮮度の一滴」を使ってます。容器が面白いので買いました(カラスダニ@松山さん)


 「ヤマサ 鮮度の一滴」はビンでもペットでもなく、キャップもついていない。我が家にも一時期あった。

 イワシが登場したので、次のメールを。


「いしい」の勝浦タンタンメン、辛いタレ、メニュー(ミルフォードさん提供)
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「いしい」の勝浦タンタンメン、辛いタレ、メニュー(ミルフォードさん提供)

MNo.19

 千葉の九十九里海岸(特に片貝から八日市場)では、セグロイワシのゴマ漬が地域の名産であります。秋から初冬に取れたセグロイワシ(10センチくらい)の頭を取り、観音開きにして鷹の爪、ショウガ、ユズ皮、黒ゴマをふりかけ、樽に重しをして漬け込んだ物です。発酵はさせません。
 重しで出る水分を捨て、イワシがぺっちゃんこになると食べごろです。塩分が強いのですがショウガとユズの香り、ゴマとマッチして酒の肴には最高です。昔から冬の保存食でありました。
 スーパーでも売られていますが、スーパーの物は酢漬けになっていて、重しで漬けていません。重量での売り、保健所の指導もあるようです。
 でも保健所の管轄の違いにより、古い魚屋では酢を使わず昔ながらの作りで売っているところも多々あります。冬が旬です。
 機会がありましたら是非食してください。臭みなく絶品です(千葉県在住の石橋さん)


 こういうのに弱い。食べたい。食べながら飲みたい。飲むだけでもいい。


 さて先週、予告した勝浦タンタンメン。この方の回想録をどうぞ。


「はらだ」の勝浦タンタンメン(ミルフォードさん提供)
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「はらだ」の勝浦タンタンメン(ミルフォードさん提供)

MNo.20

 勝浦及びその近郊では、タンタンメンはおなじみのメニュー。ラーメン屋、中華料理屋だけでなく焼肉屋、定食屋でも普通にあるそうです。その特長は醤油ベースのスープ+大量のラー油。具材は玉ねぎとひき肉が基本形。
 勝浦タンタンメンを代表する店のひとつ「はらだ」。海側ではなく、山側にだいぶ入ったのどかな場所に、よろず屋併設のトタン屋根の店がポツンと。よろず屋と飲食スペースの真ん中に厨房(というか台所)があります。
 普通のタンタンメンを注文。赤茶色の沼のような見た目。ラー油で炒めたひき肉とたっぷりの玉ねぎ。ラー油の辛さと玉ねぎの甘さのシンフォニーが、とってもいい感じ。首筋から汗が噴出する。
 店のおばちゃんの「どう、食べられた?」「もっと辛くしておけばよかったかしら」「風邪なんて一発で治っちゃうわよ」というトークが、とっても優しかった。
 翌朝、7時から営業している「食堂いしい」へ。勝浦タンタンメンのルーツといわれる食堂の先代に、直々に教えを受けた“直系”の店らしい。
 WEB上で調べた「勝浦タンタンメン」のルーツに関する情報。昭和35年ごろ、勝浦の「江ざわ食堂」の近くで魚の行商をしていた人物(元中華料理のコック)がタンタンメンの作り方を「江ざわ食堂」の主人に教えた。当時タンタンメンは「江ざわ食堂」でしかやっていなかったので、勝浦の名物となり、その後、周りの店にも伝播していったとか。
 「いしい」のタンタンメンは「はらだ」に比べると色はおとなしい。醤油ベースのスープ+ラー油は同じ構造で、トッピングはネギ。辛さも「はらだ」に比べるとだいぶ控え目だった。その分、調整用の一味唐辛子の油漬けがドーンと目の前に(ミルフォードさん)


 「首筋から汗が噴出する」というところで、石毛直道著「麺の文化史」の一節を思い出した。韓国で咸興冷麺を食べたときの記述。

珍しい地名(ミルフォードさん提供)
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珍しい地名(ミルフォードさん提供)

 「麺が赤黒く染まるまでよく混ぜてから、食べはじめた。ひとくち食べて、外見ほどは辛くないな、とたかをくくったのだが、それは初心者の先入観にすぎなかった。半分くらい食べすすむと、じわじわと辛さがこたえ、脳天から汗が流れはじめた。辛さにはつよいはずのわたしが、顔面蒼白になるほどであった」

 辛さのせいで首筋とか脳天とかから流れる汗を想像するだけで、私は顔面蒼白になる。千葉県実食編でもし勝浦タンタンメンを食べなければいけなくなったら、それだけで寝込むであろう。


 ミルフォードさんからのメールには続きがある。


 「珍しい地名。墨名と書いて“とな”と読む。プリンターの中に入っている墨の名は? トナー……失礼しました〜」


 オチがついたところで、今週はおしまい。

 さらなる千葉メールを待つ。


アミー隊員 最後にお知らせです。食べBに登場した料理や素材をまとめたインデックスページを作りました。まずは青森県編から。順次追加していきます。<こちら>からご覧下さい。ご意見・ご感想はこちら(tabeb@nikkei.co.jp)。


(特別編集委員 野瀬泰申)



 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2010年7月2日


■千葉県編
その1 給食にも落花生
その2 太巻寿司は3Dなのだ
その3 銚子に行ったら木の葉パン
最終回 松戸が私を呼んでいる
実食編 「勝タン」への長い道一芸クンの食べB修行記・目指せ!肉食系男子編映像リポート

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