第194回 長野県ご当地グルメ(その2) 伊那にもあるよ、まんじゅうの天ぷら

特別編集委員 野瀬泰申


長野県

 前回は、長野県における漬物文化の奥深さを知ることができました。
 もちろん、長野県の食を表すキーワードは漬物だけではありません。これから次々に、様々な長野県の食が登場することになります。まずは、あれから…。
 今週のおかわりは、開幕まであと2週間に迫ったB−1フランプリin郡山の概要についてデスクが紹介します
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野瀬の還暦祝いのときに食べた大鰐温泉もやしの炒め煮
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野瀬の還暦祝いのときに食べた大鰐温泉もやしの炒め煮

 10月5日で満63歳になる。60歳で定年を迎え、それから3年の間、嘱託として勤務してきた。その嘱託期間もついに満了を迎える。

 思えば40年にわたる記者生活であった。

 前半20年が社会部、後半20年が文化部。ついに政治も経済も取材しなかった。

 しかしながら、私は幸福であった。というのも2002年からNIKKEI NETに「食べ物 新日本奇行」の連載を始め、今日の「食べB」に至る12年もの長きにわたって毎週毎週、同人・読者の皆さんと、ネットを通じて交流することができたからである。

同じく蒸しほたての黄身がけ
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同じく蒸しほたての黄身がけ

 こんな幸せな記者はいないであろう。

 という感慨にふけるはずだったのに、先日嘱託期間延長の知らせがあった。最低あと1年は今のままである。

 「食べB」続けるぞー。

 さて今週は長野県編の2回目。折から御嶽山の噴火で大勢の犠牲者が出た。広島市の土砂災害の記憶も新しいのに、また大惨事である。犠牲になられた方々のご冥福と、噴火の終息の早からんことを祈りつつ、このメールから始めよう。

蜂の子は食べます
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蜂の子は食べます

MNo.6

 長野県。スキーをするのに行くのが、八方や菅平でしたねぇ。関西からだと、スキーヤー専用の夜行バスに揺られ、翌日の早朝にゲレンデ近くの駐車場に到着。ホテルのチェックインの時間まで、一滑りしてましたっけ。
 ですから、長野での食事はゲレンデご飯。カレー、豚汁、スパゲティ……。スキーバス専用駐車場の近くで、おやきが売られていたのをかすかに覚えてるぐらいですねぇ。
 一番強烈に印象に残っているのが、プリンを「シングル」「ダブル」「トリプル」と注文するお店でした。確か、八方スキー場近くの喫茶店だったと思います。
 話変わって。
 今年度、転勤して来られた人で、長野出身の人がいたので「もしかして、虫、食べますか?」と尋ねたら、にっこり笑って「はい、食べます。ザザ虫は苦手ですが、蜂の子は食べます」と爽やかに答えてくれました。ローヤルゼリーの元ですわね(ちりとてちんさん)

 長野はスキー場が多い。私は生涯において1度しかスキーをしたことがないので、ゲレンデご飯事情がよくわからない。

 で、ここで昆虫食の話が出た。

いなご
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いなご

MNo.7

 有楽町・交通会館にある長野県の観光などを紹介するコーナーをのぞいてみました。
 物販も何かあるのかな?とご当地キャラが並んでるあたりに行ってみると、そこには…いなごの甘露煮缶が。なぜ、かわいいキャラクターの横に?
 長野の人は、1年中いなごを食べたいの?
 いなごの佃煮は、いなごがいる秋に、パック入りでしか見たことのない私はびっくりしたのでした(千葉県出身ななさん)

イナゴ(左)と蜂の子
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イナゴ(左)と蜂の子

 と書くななさんだが、メールには続きがある。

 小学生のとき、授業でいなご取りをして、それを佃煮屋に売ってそのお金で飴や何かを買ってもらったことがあります。クラス対抗でした。30年ほど前の千葉県の話です。いなごを食すのは、害虫駆除目的か何かということも関係しているのでしょうか?

 というように、30年前の千葉県某所でもいなごの佃煮を食べていたと思われる。

 昆虫食は長野限定の文化ではない。「うちが本場」という山形県民に会ったこともある。

ザザ虫
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ザザ虫

 私は「糸魚川―静岡構造線を行く」でいなご、蜂の子、ザザ虫、クロスズメバチを焼き込んだせんべいを食べた。人間、長生きするとどんな経験をするかわかったものではない。

 前回、そばの話題が出た折、隣の席にいる高遠出身の編集委員に「高遠そば食べてた?」と聞いた。すると「食べたことはない。あれは新しいものだから」という答えだった。

 高遠には保科正之という名君がいた。正之はその後会津に転封されるのだが、会津に高遠そばというものが伝わってきた。

まんじゅうの天ぷら
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まんじゅうの天ぷら

 それを知った高遠の人々は考えた。「殿様に従った人々がかつて高遠にあったそばを、会津に持ち込んだに違いない」

 そこで有志が会津のものを参考に高遠そばを復元したのだそうである。

 さらに彼は言う。

 「高遠では法事のとき、まんじゅうの天ぷらが付き物。なんでまんじゅうを天ぷらにするか不思議で仕方がない」

 そう。皆さんご存じのように、会津にもまんじゅうの天ぷらがある。

中にはあんこ
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中にはあんこ

 この類似も転封の結果であろうか。

 「会津と高遠には同じ名字の人が多い」

 とも言っていた。

 次のメールはそばではないが、同じ麺類。

温麺
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温麺

MNo.8

 伊那谷で葬式といえば、そうめん。精進落とし、そして新盆にはそうめん。しかも温麺が欠かせません。
 出しはどんことかつお節の合わせ出し。具には戻したシイタケとニンジン、夏だとオクラとミョウガを大量にのせます。
 隣組や親せき、世話になった家が新盆なら、8月13、14日のいずれかにその家を訪ねて線香を上げるのがいまだに続く慣わしですが、そこで供されるそうめんは必ず口をつけなければなりません。
 葬式に欠かせない食材としては野菜と高遠まんじゅうの天ぷらというのもありますが、こちらは手をつけなくても許されます。
「今日は10軒回る」などという人は1日10杯のそうめんを味わう羽目になり、この日の胃の中はさながらテレビチャンピオンの大食い選手権並みに素麺で一杯になります。
 別にそうめんが名物というわけでもない伊那谷(といっても上伊那の一部だけらしい)で、なぜそうめんが葬式と結びついたかは不明。
 大正生まれの年寄りに聞いても「まあ昔からそういうものだ」との答えが返ってくるだけです。いっそそばなら信州らしいのに(薄情者さん)

鹿児島も葬式=そうめんでしたね
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鹿児島も葬式=そうめんでしたね

 このメールの話をしたら、隣の高遠出身編集委員がキーボードから手を離し「そうそう、葬式にはそうめん。でも全国どこでもそうじゃないの?」と言った。

 「違うよ」と答えると「ええー、そうだったの」としばし驚いていた。けっけっけ。

 伊那谷、高遠から南に下って飯田へ。

ねぎだれをかけたおでん(マルさん提供)
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ねぎだれをかけたおでん(マルさん提供)

MNo.9

 飯田でおでんを食べるときに欠かせないのが「ねぎだれ」。
 長ネギを細かく刻み、かつお節、醤油などと合せて練ったもの。飯田の居酒屋「丸現」が生みの親といわれています。
 家庭でも手作りされていて、家によってレシピが微妙に違います。おでん以外にも、空揚げや冷奴などに応用できます。
「ねぎだれおでん」があまりにも定着しているため、私は大学入学で県外に出た際、コンビニで初めて「おでん+辛子」という選択肢があることを知りました。
 辛子では味気ないので、ねぎだれを自作して食べていました(マルさん)

青森のショウガ味噌おでん
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青森のショウガ味噌おでん

 そうそう。飯田では「おでんにねぎだれ」なのである。私は飯田の郷土料理を食べさせる店で、ねぎだれ初体験をした。

 青森のショウガ味噌おでん、姫路のショウガ醤油おでん。そして飯田ではねぎだれ。おでんの食べ方もいろいろである。

 次のメールの意味、わかります?

手放すことができない食べ物
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手放すことができない食べ物

MNo.10

 長野の松本で宿泊したときのこと、TVをつけてボーと地方局の番組、CMを見ていると恐ろしい光景が。
 「娘はやらん!」と腕組みして怒るお父さんイカ(スーパーリアルタイプ)。涙目の娘イカ(リアルタイプ)
 そして、なぜかイケメン風の塩丸イカ。目眩がして寝てしまいました。呆然として写真に撮り忘れ。
 あれは悪夢だったのでしょうか?(大阪の原さん)

塩丸いかとキュウリの酢の物(信州・長野県観光協会提供)
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塩丸いかとキュウリの酢の物(信州・長野県観光協会提供)

 地方のテレビで流れるCMには、地元の人しかわからないものがときどきある。このCMもそうらしい。

 要するに塩丸イカのCMである。

 海なし県の長野には昔から日本海のイカの塩蔵品が運ばれていた。わずかに手に入る海の幸であった。塩を抜いて酢味噌和えにしたりサラダに加えたりして食べてきた。

 長野県内のスーパーで生のイカと並んで袋詰めされた塩丸イカが売られているのを見て、不思議な気分になった。

 「せっかく、新鮮なイカがあるのに」

塩丸イカ
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塩丸イカ

 しかも塩丸イカは生イカより高い場合さえある。

 「美味しいもの」の記憶は受け継がれ、塩丸イカは長野の人々にとって、手放すことができない食べ物になっている。

 次のメールは写真もすばらしい。


どこまで行ってもレタス畑(中林20系さん提供)
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どこまで行ってもレタス畑(中林20系さん提供)

MNo.11

 高原レタス……慣用句のようによく聞く言葉ですが、長野でのレタス生産は全国一なんですね。
 かつて山梨県・塩山から大弛を越えて長野に抜ける峠越え自転車ツーリングの際、長野側ではレタスで有名な川上村を通りましたが、もうとにかく、どこまで行っても遠く遠くまでレタス畑が広がり続ける……ドレッシングやマヨネーズがいくらあっても足りないくらいにレタス畑な地域でした。
 とはいえこの界隈、結婚率も高いし子どもの数も多いし、そして年収も数千万という、ある意味“新しい農業”を成功させてるところなのかな?などと、ちょっとうらやましく思ったものです(中林20系さん)

レタスマン? ではなくて、いわてまちのキャベツマン
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レタスマン? ではなくて、いわてまちのキャベツマン

 私も「サラダ街道」という看板を見て、少し歩いたことがある。サラダを売り物にしている店があるのかと思っていたら、そこはレタス畑地帯であった。

 それにしてもこのレタス畑は壮観。

 最後に意外なものを。


信州の七味(いけずな京女さん)
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信州の七味(いけずな京女さん)

MNo.12

 日本には「三大七味唐辛子偏愛地域」がございまして、それが京都、江戸、信州です。そしてそれぞれの七味唐辛子は、土地の食文化を反映しています。
 すなわち京都はうすくち醤油を使うので「香り・風味」を大切にし、柚子・紫蘇・海苔など風味原料を多く使用。江戸は濃口醤油のタレとかえしでそばを食べるために、辛さを強調したパンチのあるブレンド。
 対して信州の七味唐辛子は江戸よりもさらに辛いのですが、これは厳しい寒さから身体を温めるためだとか。さらにショウガが入っている製品もございます。
 写真は、信州土産としても有名な「八幡屋礒五郎の七味からし」。ぜひ、三大七味を比較してみください。色・見た目・味・香りまったく違います。
 「えっ、七味唐辛子ってどれでも一緒なんちゃうん!?」と思ってた私には、カルチャーショックでした一夏の経験(いけずな京女さん)

大好き!
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大好き!

 日本には三大唐辛子嫌い人間がございまして、その1人が私です。

 デスクに任せる。

デスク 三大唐辛子大好き人間でございます。次回は野瀬がロケで不在のため、番外編をお送りします。またまた素敵な女性が登場しますよ。

 というわけで、今週はおしまい。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「B-1グランプリin郡山、18〜19日開催」です。ぜひお読みください。

長野県編(その1) 海はないが、漬物ならある

長野県編(その3) サバ缶、そんなにどうするの?

長野県編(その4) これもコナモン? 粉豆腐

長野県実食編 上田の「やきそば」、ランクは上だ


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2014年10月3日

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