第122回 栃木県ご当地グルメ(その4) 宇都宮餃子の定義を述べよ

特別編集委員 野瀬泰申


 にらそば、水ようかん、カレーコロッケなどで盛り上がってきた栃木県編もいよいよ最終回です。最後を飾るにふさわしく県都・宇都宮の餃子が満を持して登場します。
 栃木県のご当地グルメとして有数の知名度を誇りますが、実は浜松の円盤型もやし付き、東京・蒲田の羽根つきなど「宇都宮餃子といえばコレ!」という特徴をいえる人は少ないのではないでしょうか。宇都宮餃子のアイデンティティーとはいったい…。
 その謎が解き明かされます。
 今週のおかわりは、2月10−11日に茨城県笠間市で開催されるイベント「ご当地グルメサミットin笠間」の情報をデスクが紹介します
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(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

大月のオムライス
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大月のオムライス

 先週末、山梨県の大月市に行った。駅前に「おつけだんご」を出す店があったが、簡単な会議をしなければならなかったので、カフェというかレストランに入った。

 ちょうどランチタイムだった。メニューには「オムライス」の文字。私は意外にこの文字に弱い。岐阜県実食編のときも先乗りした美濃加茂市で、昼食に珍しくもないオムライスを食べて、大方のひんしゅくを買った。

 でも大月は取材ではないので、何を食べてもいいのだ。オムライスを食べるぞ。

宇都宮駅前の餃子像(大阪の原さん提供)
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宇都宮駅前の餃子像(大阪の原さん提供)

 でもって私の眼前に現れたのは食堂のオムライスとは全然違うものであった。コンソメスープよし、サラダよし、デミグラスソースよし、卵のふわとろ感よしであった。これで800円しないのである。

 後で知ったが、この店はネット上の評判が良くて、中でもオムライスは高い評価を得ているという。納得。

 さて今回で栃木県編が終わる。ある程度の予備知識は持っているつもりだったが、甘かった。何も知らなかったに等しいことがよくわかった。

 特に那須烏山を中心とした地域の食の文化は貴重な独自性を持っているようである。実食編が楽しみである。

 栃木県編は珍しく県都宇都宮市がスルーされる結果になった。周辺にそれだけ大事な物件が多いことの証左であろうが、このまま県都飛ばしというわけにはいかない。

 予告通り「宇都宮餃子」を取り上げる。

宇都宮みんみんの焼き餃子(ぎずもさん提供)
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宇都宮みんみんの焼き餃子(ぎずもさん提供)

MNo.27

 栃木県はどこにあるか分からないとか言われます。ブランド発信力も最下位レースの常連ですし。実際に関西に行ったとき「日光には行ったことあるけど、栃木県は知らんわなー」とU字工事の漫才みたいな会話で歓待を受けたことがあります。たはは。
 閑話休題。
 栃木県を代表するご当地グルメが、宇都宮餃子。宇都宮で餃子を最初にメニューにのせたのは、栄養食の店「ハウザー」で昭和20年代の後半でした。現在も続く「宇都宮みんみん」のルーツです。
 なぜ宇都宮で爆発的に広まったかは諸説ありますが、やはり中国大陸からの引揚者が多かった説が有力かもしれません。栃木県民は餃子が大好きでほぼ全域のラーメン店にもれなく餃子が置いてありますが、これは鍋貼(焼き餃子)です。

正嗣の焼き餃子(ぎずもさん提供)
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正嗣の焼き餃子(ぎずもさん提供)

 宇都宮も焼き餃子がメインですが、必ず水餃子もメニューにあります。中国的な食べ方は水餃子(ゆで餃子)で、残ったら翌日に焼き餃子ですから、水餃子普及率の高さから推測すると、本場の味を知っていた引揚者の影響があったのかもしれません。
 週末には行列整理の警備員も出る「宇都宮みんみん」本店から徒歩1分、角を曲がった狭い路地に「正嗣(まさし)」宮島本店があります。こちらも行列が絶えませんが、メニューが焼き餃子と水餃子のみ、ライスもビールも置いていません(かつては揚げ餃子もあった)。
 週末の混雑時は入店時一発オーダー(追加オーダー不可)という不便な店なのに、やはり並んでいます。こういう特徴的な店があるから、餃子食べ歩きがさらに楽しくなるのでしょう。
 この2軒から5分もしないビルの地下に、餃子複合施設“来らっせ”があり、曜日替わりも含めると10軒くらいの餃子を1か所で食べることも出来ます(ぎずもさん)

正嗣の行列は宇都宮名物?(ぎずもさん提供)
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正嗣の行列は宇都宮名物?(ぎずもさん提供)

 これが宇都宮餃子の基本情報である。

 とにかく市民は餃子を食べる。外からも食べに来る。その結果、宇都宮市は総務省家計調査で餃子の購入額が日本一であった。ところが……。

全国2位のようかん好き
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全国2位のようかん好き

MNo.28

 家計調査の都道府県庁所在市及び政令指定都市別ランキング(平成21〜23年平均)から、宇都宮市が上位にあるものをピックアップしてみました。
餃子
 全国平均2118円に対し、宇都宮市は4686円(全国比221%)で堂々の第1位、なのですが、平成23年度は浜松市にトップの座を奪われてしまいました。平成24年も1−8月では浜松市が1位をキープするも、つば競り合いが続いているとか。
ようかん
 1世帯当たり年間購入金額の全国平均766円に対し、宇都宮市は1537円(全国比201%)で堂々の2位(1位は佐賀市)。話題にのぼった「水ようかん」人気がきいているのではないでしょうか。ちなみに福井市は1337円で第5位でした。

日光のけっこう漬け
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日光のけっこう漬け

他の野菜の漬物
 奈良漬、わさび漬、福神漬、らっきょうなどが含まれるカテゴリー。全国平均5602円に対し、宇都宮市は7224円(全国比129%)で第4位。日光名物=みそのたまり漬けなどが購入されているのでは?
紅茶
 対象は茶葉で、ペットボトルなどはこのカテゴリーには含まれません。
 全国平均822円に対し、宇都宮市は1265円(全国比154%)で第5位でしたが、平成23年度だけを見ると全国1位に輝いたらしいです。市内のティールーム経営者の方が仕掛け人となり紅茶による街づくりを目指しているそうですね(ミルフォードさん)

浜松餃子と味噌もつ
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浜松餃子と味噌もつ

 このように宇都宮市と浜松市は、餃子をめぐってほほえましいライバル関係にある。浜松市が政令指定都市になって家計調査の対象に加わったときから、両市の関係者はこうなるものと知っていたフシがある。私は浜松市に餃子の取材に行った折、「ひょっとして宇都宮危うし?」と思い、記事にもした

 その宇都宮で「日本一奪還計画」が動き出した。詳しくは別に設ける「ぎずもさん栃木情報館」でどうぞ。

 と書きつつ、皆さんは宇都宮餃子ってどんな特徴があるか即座に言えるであろうか。博多や久留米の餃子なら「ラビオリみたいな一口サイズ」といった表現も可能であろうが、宇都宮餃子の場合は、はて。

とちまるショップでも買えます
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とちまるショップでも買えます

MNo.29

 宇都宮餃子について話すときに一番問題になるのが「定義」です。よく比較される浜松の場合、「フライパンで円盤型に焼いて真ん中にゆでもやし」というのが「形」ですが、宇都宮餃子では「形」というのは全く問われません。
 でも、そこを踏まえて都内などで聞くと「たいして美味しくなかった」と言われることが多いのです。どこでどう食べたかを尋ねると、駅前に並ぶ地元住民は絶対に行かないチェーン店だったり。どこもみんな同じ宇都宮餃子だって言われればそうなりますよね。
 地元の人が抱いている宇都宮の餃子のイメージは「みんみん」とそれに続いて「正嗣」が築いたものです。

幸楽の餃子、焼いてみました(デスク)
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幸楽の餃子、焼いてみました(デスク)


 1.肉、ニンニクがほとんど入っていない
 2.白菜などの野菜中心
 3.単価が非常に安い

 というものだと思うのですが、他の見方をすれば味が薄く、野菜のうまみと甘みを楽しむのが宇都宮餃子なのです。
 なので、地元ではよく言われるのは「酢にラー油を少したらしただけで食べる」という食べ方。なぜこの食べ方をするのかといえば「肉の脂が少ないので醤油を入れると味がわからなくなる」のと「野菜のうま味と甘みは酢とラー油で食べることにより引き立つ」からなんです。

個人的には龍門の餃子がタイプ(デスク)
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個人的には龍門の餃子がタイプ(デスク)

 でも、この食べ方を知らないで醤油をたっぷり入れれば、醤油の味しかしない、たいしておいしくない餃子になってしまいます。その上で、肉や魚介、ニンニクなどがたっぷり入っている餃子と比較するなら、宇都宮の餃子が物足りないのは当たり前なんです。
 もちろん宇都宮餃子の始祖と言われる8軒には、揚げ餃子が有名な「香蘭」やラーメンとの相性がよくしっかり味付けされている「幸楽」などもあるので、厳密に言えば形はないとも言えるのですが、観光客にがっかりして帰ってしまわれることがないよう、きちんとした特徴を明示すべきだと思います。「基本形」があって「異端児」がいてもいいじゃないですか(碓氷さん)

 こういうことなのである。

久留米の餃子はビールの友、ラビオリ大!
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久留米の餃子はビールの友、ラビオリ大!

 浜松で餃子はご飯の友だから、それにふさわしい材料と味つけ、食べ方がある。そして戦後の屋台以来、餃子定食にはもつ煮が随伴することが多い。その組み合わせの中の餃子である。

 博多や久留米の餃子はラーメンの友、ビールの友である。

 対して宇都宮の餃子はニンニクや肉がほとんど入っていないのが基本であって、これは「ひたすら餃子だけを食べる」のに適している。そこからタレに醤油を入れないという食べ方が生まれた。すべて必然といっていい。

 宇都宮に餃子を出す店が何軒あるか知らないし、味も千差万別であろうが、私たちは宇都宮餃子の基本の姿を知った。今後現地で食べる機会があれば、この基本形を思い出しながら食べてみようではないか。

よくぞここまで…(大阪の原さん提供)
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よくぞここまで…(大阪の原さん提供)

MNo.30

 焼き・水・揚げ・蒸しと調理法各種揃えている店から、特定種に特化した店、あるいは具の中身を工夫した店など、各種各様個性豊かな店が数多いのが宇都宮かなあ?
 餃子のワンダーランド? 餃子の品種改良実験場? よくぞここまでと驚くほどの種類があって、数回訪れた程度では表面を舐めた程度しか知り得ていません。果てしないなあ(大阪の原さん)

ボツ(机さん提供)
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ボツ(机さん提供)

 というのが実情のようであるから、変化を楽しみつつ、基本形を試すという楽しみ方もあろう。

 私はウーロンハイがあればどんな餃子でもいいが、納豆餃子とチーズ餃子とウニ餃子は無理かも。

 机さんからゴルフ場のレストランで宇都宮餃子を食べたというメールが来て、そこに「これってネタになりますか」と書いてあった。ネタにはならん。ボツ。

 栃木県でスルーできないものがまだあった。

いもフライ(太ったオオカミさん提供)
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いもフライ(太ったオオカミさん提供)

MNo.31

 栃木県というより両毛線沿線では、串に刺したジャガイモのフライがポピュラーです。私の調査した範囲では栃木市、佐野市、足利市、桐生市、前橋市で確認しました。
 両隣の栃木市、足利市も当然ジャガイモフライも出しますが、看板メニューは焼きそばです。それに対して佐野市は、焼きそばよりジャガイモフライ中心なのは、面白い現象です(太ったオオカミさん)

佐野名物(太ったオオカミさん提供)
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佐野名物(太ったオオカミさん提供)

 地元で「いもフライ」と呼ばれているものである。

 ジャガイモ入り焼きそばと同じく栃木、群馬にまたがる両毛線文化。詳しくは「ぎずもさん栃木情報館」で。

 先に紹介したミルフォードさんのメール(MNo.28)に栃木の漬物に関する統計があった。さらに詳しく見ると……。

岩下の新生姜(いけずな京女さん提供)
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岩下の新生姜(いけずな京女さん提供)

MNo.32

 以前からショウガのお漬けもん(新ショウガ、紅ショウガ、ガリなど)のメーカーって、栃木県が多いなあと思てたんですよ。
「岩下の新生姜」で有名な岩下食品をはじめ、有力企業が集中。今回、改めて店頭を確認してきたらやはり、そうでした。
 そこで調べてみると栃木県は東日本ではショウガやらっきょうの主要産地なんですね。このため、ショウガに限らず漬物工場がぎょうさんあるようです。
 さらに調べていたら、栃木市内に「生姜ラーメン」を出すお店がいくつもあるのを発見しました。ご当地グルメというほどではなさそうですが、栃木の人はラーメンにショウガを入れるのは普通のことなんでしょうか(いけずな京女さん)

塩原温泉の生姜味噌漬け
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塩原温泉の生姜味噌漬け

 正体不明の使命感に駆られてスーパー通いをしている私は「ミョウガは高知、ショウガは栃木」という印象を持っていたが、やはり栃木はショウガの大産地であったのか。

 紅ショウガ以外のショウガは好きであるが、なぜかおろしショウガだけはよける私がいる。

 次のメールに登場するものは私に不向き。

那須には「びっくりとうがらし」も
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那須には「びっくりとうがらし」も

MNo.33

 那須に遊びに行ったときに必ず買ってくるお土産品がありました。那須塩原の道の駅なんかで売っているネギ辛子です。刻んだネギと唐辛子を醤油に漬けただけのモノなのですが、これが妙に美味しい。ご飯にのせて食べればこれだけで3膳はいけます。野瀬さんには是非実食編で挑戦してみていただきたいです。
 結婚式の砂糖ですが、父が大手企業の工場長として宇都宮に単身赴任していたころに頻繁に持ち帰った引出物にも確かに入っていました。そして砂糖より強烈に印象に残っているのは、タイなどの折詰のほかに別折で持たされるお菓子でした。
 中身はほぼ共通で、巨大なようかんと直径15cmはあろうかと言う鶴と亀の練りきり。回数も多かったので、食べきれる量ではなく、家の冷凍庫には鶴と亀の練りきりがびっしり詰った状態でした(こばりんさん)

烏山ではぜひ激辛ラーメン食べましょう(デスク)
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烏山ではぜひ激辛ラーメン食べましょう(デスク)

 ネギ辛子は見るだけでいい。実食編でも見るだけ。見ないかもしれない。

 引き出物の砂糖は、やはり甘いものが貴重な時代を反映しているのであろう。巨大な練り切りもそう。

 最近の結婚式では引き出物を自分で選ぶカタログが人気らしい。

 そういえば我が家にもパーティーのビンゴゲームで当たったカタログがあったはずだが、どこへ行ったのだろうか。早く帰って探そう。

宝の山?
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宝の山?

MNo.34

 一芸さんは年齢的にご存じないかも知れませんが、水戸でも昭和30年代は引き出物のタイなどは落雁でした。大好物でしたが、40年代に入ると砂糖を型に入れビニールコーティングしたものになり。そのビニールにどぎつい色の着いたものになってしまいました(のべ@ミャンマーさん)

烏山・石原食肉店のメンチ、ハムカツ、コロッケ
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烏山・石原食肉店のメンチ、ハムカツ、コロッケ

 栃木の隣の茨城でもよく似た文化があった。いまもあるのかな。

 大月で茨城県笠間市の人と話す機会があった。その人は食べBを読んでくれていて「那須烏山の精肉店にはカレーコロッケしかない」という話に「山ひとつ隔てているだけなのに信じられない」と言っていた。

 というような話やニラとか大根が入ったそばなど、楽しい驚きに満ちた栃木県編はこれにて終了。

 ぎずもさんからいただいたメールで紹介しきれなかったものを「ぎずもさん栃木情報館」にまとめたので、ご覧いただきたい。

にらそば(ぎずもさん提供)
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にらそば(ぎずもさん提供)

 これが更新されたころ、私と一芸クンは宮城県実食編の旅に向かっているところである。もうトシなので、急ぎ足で食べ歩くことはしない。

 取材は一芸クン、温泉は私というように役割を分担するのである。

 栃木県編の次は鹿児島県に焦点を当てる。ご関係の方は準備をよろしく。

(特別編集委員 野瀬泰申)

 

★今週のおかわりは「2月の連休は笠間でご当地グルメ(デスク)」です。ぜひお読みください。

栃木県編(その1) にらはあなたのそばがいい

栃木県編(その2) 栃木の正月、水ようかん

栃木県編(その3) カレーコロッケしかない町です


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年2月1日

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