第103回 岡山県ご当地グルメ(その4) 青い海から青うなぎ

特別編集委員 野瀬泰申


 ついに懸案の「法事パン」の正体が判明した岡山県編。盛況のうちにゴールにたどり着きました。その法事パンをめぐり、さらなる岡山県北ならではの食文化が見えてきました。さぁ、感動の最終回の始まりです…。
 今週のおかわりは、デスクが週末から開催される青森県八戸市のイベントをご紹介します。あわせてご覧ください。
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デスクが刻んだハバネロ
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デスクが刻んだハバネロ

 先週末、末娘の同級生3人が我が家にお泊まりに来た。

 私は久しぶりの休みだったので、晩飯でもつくろうかと思っていたのだが、娘は「私がつくる」と言う。

「何つくるの?」

「メキシコ料理」

「へえ、そんなのがつくれるんだ」

「つくれるよ」

デスクのコレクション
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デスクのコレクション

 娘の手料理を食べられるなんて幸せだなあと思ったのもつかの間、娘の口から「ハラペーニョ」とか「チリパウダー」とか、危険な言葉が連発されたのだった。

 これから買う材料の一部であるという。

「そういう辛いもの使わないと、メキシコ料理はできないの? 辛くないメキシコ料理だってあるでしょう」

「私がつくれるメキシコ料理は辛いの」

「辛いのかあ」

デスクの手作りピクルス
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デスクの手作りピクルス

 ということで私は娘たちとは離れた台所の隅っこで、辛くない総菜を相手にコップ酒をなめていたのだった。

 そのときに余ったハラペーニョの瓶が冷蔵庫の中にある。ピクルスと間違って食べたりしないように十分に気をつけなければならない。

 さて岡山県編も最終回を迎えた。

 前回、「法事パン」の謎が解けたと思っていたのだが、そう簡単ではないらしい。

赤飯
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赤飯

MNo.27

 岡山のアンパンの記事を読みましたが、単に昭和30〜40年代に赤飯がアンパンに変わっただけの記事となっていますが、私が聞いている内容とは全く異なっていますのでメールします。
 葬式や結婚式、子どもが生まれたときに赤飯を供えるのは、「ハレとケ」のハレの日にあたるからです。「ハレ」とは特別な日、非日常的な時といった意味だそうで、祝いとして赤飯を作るものではなく、特別な日だから赤飯を作るのです。
 ですから岡山県北では葬式に赤飯を出すのは当たり前です。県南では葬儀社が格好をつけて小豆を黒大豆に変えている所が普通になりつつありますが、基本は「ハレ」の日として赤飯です。
 赤飯がアンパンに変わった理由は記事の内容も一つの理由で、間違ってはいないと思います。
 なお「ケ」とは、日常のことで、ハレの日に赤飯を出すのは平安時代から続く仏教的な風習で中国地方の一部と東北の一部に残っていると聞いております。
 赤飯(アンパン)は、奇習ではなく、長い歴史のある風習が残っているものと思っています(taketakeさん)

豆ご飯
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豆ご飯

 前回触れたのは「もち」であって仏事における赤飯は登場しなかった。

 それはともかく、このメールは非常に大事な視点を提供してくれている。まさしく赤飯はもともと凶事のときに用いられたものだったのである。

 本山荻舟著「飲食事典」の「赤飯」を見ると「『萩原随筆』には『京都にては吉事に白強飯を用ひ、凶事に赤飯を用ひることは民間の習慣なり」とある。

「萩原随筆」は江戸後期の人、喜多村信節(のぶよ)による書。つまり喜多村が生きた18世紀後半から19世紀半ばの我が国の都においては、葬儀などの席に赤飯が出るのが普通だった。

居酒屋のトイレには…
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居酒屋のトイレには…

 いまも葬儀に赤飯が出る岡山県北は、その当時の習俗を守っていることになる。

 それがなぜ逆転して「吉事に赤飯、凶事に白強飯」になったのか。「飲食事典」は「これは凶を返して吉にするとの縁起直しから来たらしく」とし、トイレ近くの鉢植えに南天を植えるのも不吉・不浄を「難転」させるためという類例を挙げている。

 そういうことでいつのころからか仏事では赤飯ではなく、白いもち米に大豆などが入った白強飯が主流になった。

ななちゃめし(たんぽぽさん提供)
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ななちゃめし(たんぽぽさん提供)

MNo.28

「ななちゃめし」は日生の法事の定番ご飯です。大豆入りのちょっぴり餅米が入った塩味のご飯です。家によって微妙に味わいが違います。
 カキオコの次はこれを売り出したいと思うくらい…(たんぽぽさん)

エビオコ調理中(大阪の原さん提供)
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エビオコ調理中(大阪の原さん提供)

 このように、県南の備前市日生では大豆が入った白いご飯が仏事に登場する。

 大阪の原さんから日生の「エビオコ」の写真が何枚か届いた。日生でとれるエビはどんなものか。たんぽぽさんのメールにそのことが書いてあった。

ガラエビ(たんぽぽさん提供)
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ガラエビ(たんぽぽさん提供)

 地物のエビを日生ではガラエビと呼んでいます。夏、朝早く家の電話が鳴ると「エビがよーさん買えたんじゃけど、いるかな」「へー、わけて〜」という会話が展開されます。
 日生の女性は夏の朝、ガラエビを大量にむいては小分けにして冷凍します。それを自分で使ったり、何かのお礼にあげたりします。
 この日も、むいたガラエビの一部はエビ焼そばとエビオコになりました。大量に残ったガラエビは小分けにして冷凍庫へ!
 日生で暮らしていたときは「またエビか〜」と思っていたのですが、今はありがたく岡山の部屋にもらって帰ります。

ガラエビ焼そば(たんぽぽさん提供)
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ガラエビ焼そば(たんぽぽさん提供)

 瀬戸内の夏の朝。エビの殻をむく女性の後ろ姿。一幅の絵ではないか。

 倉敷辺りのピーナツ豆腐。忘れていたわけではない。

千葉のピーナツ豆腐
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千葉のピーナツ豆腐

MNo.29

 カラスダニ@松山さんが書かれているピーナツ豆腐はやはり辛子で食べるのがおいしいです。沖縄、佐賀のピーナツ豆腐はねっとり感が強いですが、岡山のピーナツ豆腐は色も白くて、プリンのような感じです。
 岡山県西部(倉敷から西)ではスーパーで売っていますが、岡山市内ではデパートではよく見ますが、ほかではどうか。
 横浜、東京、千葉でも探しましたが、全く見当たらず。やはりローカルフードなんですね。
 話は変わりますが「御座候」というおまんじゅうはどう呼びますか、私の田舎では「風(ふう)まん」と呼んでいましたが。みなさんはいかがですか(アックン@千葉さん)

御座候
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御座候

 辛子ではなく醤油でいいのではないか。十分ではないか。

「御座候」は姫路にある会社の社名。あるいはその会社の商品名。いわゆる回転焼きである。関西の一部では回転焼き、すなわち御座候との認識が広がっているが、東京では今川焼き、久留米では回転まんじゅうなどと言わないと通じない。

 これまで回転焼きに関する呼び名の数々が登場してきたが「風まん」は初出。「私の田舎」ってどこ?

 えーい、辛いものついでだ。

世界一辛いソースかも(中林20系さん提供)
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世界一辛いソースかも(中林20系さん提供)

MNo.30

 岡山には地ソースメーカーがありますが、そのひとつ「タテソース」ブランドの豊島屋(てしまや)から「超激辛」なるソースが出てます。
 ラベルには「世界一辛いソースかも。」というコピーも躍ってますが、これは誇張じゃないかも。
 とんでもなく辛いんですが、その向こうに広がる野菜や果物の旨味が深いんですよ。単なる激辛オリンピックな商品とは違うよな、と。
 わたしが初めてコレに出合ったのは岡山のお好み焼き屋さんにて。「激辛ソース無料」の貼り紙が気になってお聞きしたら、コレの業務用大ボトルを出してくださって…と。
 お取り寄せでも手に入りますゆえ、ぜひとも経費でお試しください。デスク(だけ)大喜びかも知れません。勝手に業務用大ボトルを注文するかも知れません。
 料理好きなら隠し味にも使えますよ(中林20系さん)

 デスク、中林さんに唆されて超激辛ソースを経費でお取り寄せなんかしたら、社長に言いつけるよ。それだけはやめてくれ。

デスク家の常備品
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デスク家の常備品

デスク 残念ながら、すでに我が家の常備品なんです…。切れると築地でまとめ買いします。

 津山の牛肉文化に触れた際、地元の料理名だけを紹介した。写真がなかったからである。今回、津山市役所の尾原さんから、多くの写真と情報を送っていただいた。

デスク 情報をお寄せいただいたのは、津山ホルモンうどんそずり鍋干し肉ヨメナカセ煮こごり津山餃子黒媛うどんジャンボピーマンです。クリックすると別ウインドーで情報と写真が表示されます。

 これを見ていただければ関西から中国地方にかけての牛肉文化がいかに多様であるかが理解できる。そして「ホルモンうどん」が、その中にあっていかなる地位を占めているかもよくわかる。

 その津山のあるお店。

来年の近畿・中国・四国B−1は津山で開催
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来年の近畿・中国・四国B−1は津山で開催

MNo.31

 女房の実家がホルモンうどんが話題の津山です。津山には、ホルモンうどんだけでなく、昼はそこそこ老舗の和菓子屋、夜は釜揚げうどんが売りのうどん屋という二つの顔を持つ「福吉屋菓舗」があります。
 メニューは釜揚げうどんだけですが、たしか深夜1時か2時ごろまで営業していたような気がします。「飲んだ後の〆には最高」と、僧侶である義父によく連れて行ってもらいました。
 津山恐るべし(司馬香煙さん)

 和菓子屋さんなら朝が早いだろうに、うどんの深夜営業までやるとは、商売に大変熱心である。

麦般若
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麦般若

「僧侶である義父」も般若湯に熱心でいらっしゃるらしい。僧侶の世界ではビールを麦般若と呼ぶことを現役の僧侶から聞いた。なかなかやるぜ。

 津山に行ったとき、地元の人に連れて行ったもらった洋風居酒屋でラーメンを食べた。とんこつ味で、非常に美味かった。津山の夜はフカい。

 伯備線沿線の城下町、高梁(たかはし)市から貴重な情報が届いた。

ブリ雑煮(黒川さん提供)
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ブリ雑煮(黒川さん提供)

MNo.32

 岡山県の中西部に位置する城下町、高梁市にはちょっとかわった雑煮を食べる文化があります。
 それは「ブリ雑煮」。塩ゆでしたブリを雑煮にトッピングするのです。
 岡山県のスタンダードは醤油ベースのすまし汁に丸餅を煮て入れる雑煮。しかし調べてみると出しのとり方や具材に地域や家庭の特徴があっておもしろい!
 台所を司る奥さんがたのふるさとの味というのが影響しているんですね。
 県内の市役所や役場に雑煮の内容を電話調査してみると、雑煮にブリを入れるのは「ほぼ備中エリア」だという結果になりびっくりしました。
 高梁のぶり雑煮はブリによってあっさりしたスープに脂の甘みがしみだし、またほぐれたブリの身と餅がからまって口の中でなんともいえないハーモニーを奏でます(岡山県地域情報リポーター 黒川さん)

ブリは日本海側の魚
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ブリは日本海側の魚

 ブリは日本海側の魚。それがなぜ岡山県山間部の雑煮に入るのか。

 伯備線ルートで鳥取のブリが運ばれたのだろうか。

 魚つながりで書けば、今年のうなぎは例年になく高かった。私がよく行く神田のうなぎ屋もさすがに値上げに踏み切った。

 といっても「うな丼ダブル(国産うなぎが2枚)」が1500円から2000円になったのであって、まだ格段に安いのだけれど。

デスクのダブルは2800円でした
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デスクのダブルは2800円でした

MNo.33

 今夏はうなぎ価格の高騰ぶりには参ってしまいますが、以前岡山へ行った際に乗合バスの運転手さんから聞いた「児島の青うなぎ」のことが頭から離れません。
 名前のとおり児島湾でとれる青いうなぎらしいのですが、きっと美味いに違いありません。どんなうなぎなのか、どこへ行ったら食べられるのか是非調べてくださいお願いします(nozakiさん)

岡山のひつま「ぶた」(大阪の原さん提供)
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岡山のひつま「ぶた」(大阪の原さん提供)

 単に「アオ」と呼ばれることもある児島のうなぎ。汽水域でとれるこのうなぎは養殖ではなく天然物である。従って量が限られ値段も張る。

 東京でも出す店があるようだが、神田の店になじんだ私には手が出ない値段。でも生きているうちに1度くらいは食べておいた方がいいかも。

 東京のどこかに「冥途喫茶」というのがあるそうだが、生きているうちに行く予定はない。

 岡山県編はこれで終了。

改修工事が始まった石巻・石ノ森萬画館
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改修工事が始まった石巻・石ノ森萬画館

 海と山の文化が美しい彩りを見せる岡山県であった。

 県内には温泉も多い。デスク、実食編のスケジュールを練るときは、そこんとこよろしく。

 次回は岐阜実食編リポート。

 その後が宮城県編である。震災から1年半。現地はどう変わったのだろうか。食の現場から見てみたい。ご関係の皆さんはいまからメールの準備体操を。


(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは集まれ酔っ払い〜はちのへ横丁ウイーク2012(デスク)です。合わせてご覧ください。

実食編 「嫁泣かせ」に泣かされる

岡山県編(その1) カキオコ、33分1本勝負

岡山県編(その2) デミカツ食べて「デミ活」だ

岡山県編(その3) 餅つき大変、パンにしよっ!


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年8月31日

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