第222回 京都府ご当地グルメ(その1) 京都人、生八ツ橋は食べまへん

特別編集委員 野瀬泰申


京都府

 今週から京都府編がスタートします。
 中心部は、山に囲まれた盆地ながら、1000年の都として、各地から様々な食材が集まり、華やかな食文化が発達しました。一方で、兵庫県と福井県にはさまれた日本海沿岸では、海のまちならではの食があります。盆地、山間部、沿岸部とそれぞれに特有の食文化を見ることができそうです。
 今週のおかわりは、京都府の特産品を集めた、都心の2つのアンテナショップを、デスクが紹介します。 食べBのFacebookページ(http://www.facebook.com/tabebforum)では、食べBの更新情報や裏話などをゆるやかに発信していますのでどうぞご利用ください

(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい記事の県別一覧はこちら

デスクが自宅で調理した栃尾の油揚げ
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デスクが自宅で調理した栃尾の油揚げ

 先週の日曜は私が夕食の炊事当番だった。暑かったのでメーンは豚肉の冷しゃぶとすぐに決まったのだが、副菜をどうするか少し迷った。冷蔵庫にナス。食品庫に徳島の半田そうめんがある。これで金沢の郷土料理「そうめんなす」を作ることにした。

 飲み物を買いに行ったスーパーで栃尾の油揚げを発見。さっそく買って来て包丁で袋状にし、中に青森で求めていた南蛮味噌を塗る。中に九条ネギを刻んだものを詰めて、フライパンで焼いた。

 たまたま帰ってきていた娘にいちいち料理の説明をしたのだが、彼女はほとんど興味を示さなかった。残念。

デスクが自宅で調理した冷しゃぶ
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デスクが自宅で調理した冷しゃぶ

 こう書きながら、デスクが写真に困るだろうなと考えているのだが、私は自分の料理の写真を撮る習慣がないので「字」だけなのである。

デスク 大丈夫です。僕は自分の料理の写真を常に撮る習慣があるので、在庫は豊富です。

 九条ネギは京野菜のひとつ。最近、東京のスーパーでもよく見かける。豆腐と一緒に味噌汁にすると美味い。最近、我が家の常備野菜になっている。

 ということで本日から京都府編。

 まず、予備知識としていけずな京女さんからの注意事項を。

世界の中心
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世界の中心

 え〜とまずお願い。
「おばんざい」という言葉は使わんといてください。あれは、京都イメージアップキャンペーン用語みたいなもんで、普通、京都人はそんな言い方しません。「おかず」です。
「京のおばんざい」という言葉を見るとゴキゲンナナメになりますので取り扱い注意。
それはそれとして。
「京都府」は北から「丹後」「丹波」「京都」「山城」の4つの国に分かれますので混ぜるなキケン。
「丹後」は山陰〜北陸と連なる日本海文化圏で、豊富な海の幸が中心の食生活。お国ことばも山陰寄りです。
「丹波」は兵庫県の丹波と同じ国やったのを明治政府が勝手に分断しただけで、文化圏はひとつです。山の恵みが中心ですね。

なぜるな危険
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なぜるな危険

「京都」は平安京を中心とする盆地の中のごくせま〜い地域で、京都市の4分の1くらい?の空間で独特の食文化を発達させました。京都人(これも、京都市民とイコールではない)はよく「○○区は京都とちゃうし」と言い、○○区の人も否定しません。ちなみに私が丹後に行くと「京都から来なさったんか」と言われます。
「山城」になりますと、滋賀と奈良の文化圏に分かれますので、正直私にもよくわからないところです。
 というわけで何が言いたいのかというと「京都」の食については山のように本が出てますし、それもプロトタイプ化されて全然面白くなーい。
 だいたい、京都人は京料理の店「なんか」行きませんねん、あれは「よそさん」(他府県からのお客さん)用やさかい。紹介されるべきは、丹後や丹波の食文化でっしゃろ。そちら方面からの発信を大いに期待しております。
 とはいえ私は京都人ですので。「京都が世界の中心や」の京都人ですので。語るのは、京都のことです。悪しからず。

 はい。最低限、「京のおばんざい」とは言わないようにしましょう。

MNo.1

生八ツ橋は食べまへん(いけずな京女さん提供)
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生八ツ橋は食べまへん(いけずな京女さん提供)

「ウラはあってもお・も・て・な・し」のブラック京都人、いけずな京女です。
 今回は、京都あるある食エピソード集。
●エピソード1 生八ツ橋は食べまへん
 京都土産の定番・生八ツ橋は1960年代に発売されたもんで、まさに「お土産用」の製品です。京都人が日常的に食べてきたんは、歯の工事中の人は難儀する堅焼き煎餅の方ですねん。
 米粉に砂糖・ニッキ(シナモン)を混ぜて蒸した生地を焼き上げたもん。形は楽器の箏(そう)を模しており、これは江戸時代の筝の名手・八ツ橋検校を称えるために作られたからや筝です、違(ち)ごてそうです。
 私が子どものころはスナック菓子やらありませんでしたから、この「八ツ橋」と「蕎麦ほうる」がふだんのおやつでした。

穴子の山椒煮(いけずな京女さん提供)
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穴子の山椒煮(いけずな京女さん提供)

●エピソード2 山椒(さんしょ)と木の芽がないと生きられへん
 山椒(さんしょ)は食卓に欠かせないスパイス&食材で、うなぎの蒲焼はもちろん、温(ぬく)いおうどんおそばには粉山椒。実山椒はおじゃこ(ちりめんじゃこ)と炊き合わせたり、写真のように穴子やお魚を炊くときの風味付けにしたりします。
 その山椒の若葉(新芽)である木の芽の佃煮が、鞍馬名物「木の芽煮(きのめだき)」。冬は深い雪で外出できず、野菜が不足する鞍馬の里で保存食とされてきました。牛若丸が鞍馬で修行中に食べていたとの伝説もあります。今は、夏場の食欲がないときに、ええご飯のお供ですねえ。

生麩の田楽(いけずな京女さん提供)
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生麩の田楽(いけずな京女さん提供)

●エピソード3 「麩う」は生で食べますう
 ふ、麸、京都人は「ふう」と発音する日本最大の謎な食べ物。一体全体誰が小麦粉からグルテンを取り出すなどということを考え出したのか、その発祥は謎に包まれています。
 しかも、焼き麸や乾燥麸は日本の各地で見られますが、生麸を麸だんの…いや普段のおかずにするのは京都だけ? お寺の精進料理が仕出し料理に取り入れられ、そこから家庭の食卓に広がって行ったと推測しています。
 田楽にしたり、フキなど季節の野菜と炊き合わせにしたり、お吸い物に入れたり。究極は、きな粉をつけておやつ代わりに…は、うちだけ?

あんかけ湯葉(いけずな京女さん提供)
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あんかけ湯葉(いけずな京女さん提供)

●エピソード4 湯葉はというか、なんでもあん掛けがお好き
 日本に湯葉が伝わったのは奈良時代、天台宗の祖・最澄さんが持ち帰ったと言われています。最澄さんが建てはりました延暦寺がある比叡山麓は今も湯葉の名産地で、京の都では「比叡ゆば」として親しまれております。
 精進料理ですとお吸い物やお上品な揚げ物で出てきますが、家庭ではもうちょい大胆にあん掛けにします。冬の京都盆地は「底冷え」と呼ばれる厳しい寒さなので、料理が食べ終わるまで冷めず、身体が芯から温(ぬく)もるあん掛け料理は得意技。大豆の栄養がサプリメント並みに凝縮された生湯葉のあん掛けは、ご飯やおうどんにのせていただきますのが定番です。

甘い煮豆(いけずな京女さん提供)
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甘い煮豆(いけずな京女さん提供)

●甘い煮豆はご飯のおかずでっしやろ?
 商店街のおかず屋さん(くどいようですが「京のおばんざい」などは売っておりません)に行きますと、当然のように各種煮豆がそろっております。煮豆の専門店も少なくなりましたけど、商売として成立しています。
 金時豆、富貴豆(そら豆)、黒豆、花斗六豆(しろ花豆)、青豆(えんど豆)、うずら豆、それらのミックス煮豆、えび豆(琵琶湖の小えびと大豆)、五目豆、等々。
 もちろん、常備菜として毎日の食卓には欠かしません。ご飯のおかずに…えっ、せえへんの? 甘い煮豆はおやつにお茶請け? いやいやそれはないやろ。甘い、言うたかてスイーツとちゃうし、お出しも効かしてるさかい、お菓子とちゃうよ。
 という会話を以前、東京の人とした記憶がございます。やっぱし、そう?
 こうやって書き出すとキリがおませんね。まだまだあるけど(あるんかい!)、今日はこれくらいにしといたろ。by池乃めだか(いけずな京女さん)

たぬき
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たぬき

 京都の日常の食卓が目に見えるようである。

 山椒と木の芽は「言われてみれば」の物件であった。確かに多用する。

「あんかけ」で思い出したのが京都独特の「たぬき」である。ネギ、油揚げをあんかけにしてうどんにかけたもの。下ろしたショウガがポイントである。いつまでも熱かった。

 そういえば滋賀県長浜市の名物「のっぺい」は京の「しっぽく」をあんかけにしたもの。あの辺の共通文化であろうか。

 池乃めだかさん。関西人でなくても、あのギャグは知っているのか。

生麩の田楽(大阪の原さん提供)
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生麩の田楽(大阪の原さん提供)

MNo.2

 京都で好かれる食材のひとつが湯葉。写真は大原や清水で撮影したものです。湯葉と並んで愛されている、もっちりした生麩。これも普通は和食、懐石くらいでしか出合わない素材ですが、京都では日常的。錦市場では歩き食いの対象です。もちろんパクパク。
 しかし、湯葉といい生麩といい、普通は和食の一品でしかない食材が単品で看板になるとは、京都って面白いなあ(大阪の原さん)

湯葉(大阪の原さん提供)
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湯葉(大阪の原さん提供)

 京女さんのメールに登場した物件を、大阪府民の原さんが「面白い」と書く。日本は広い。

 原さんから膨大な写真が届いている。そのうち錦市場食べ歩きの記録を写真館にまとめたので、小腹がすいた方はどうぞ。

 京都は茶所。宇治である。

抹茶ラーメン(電脳文化桃さん提供)
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抹茶ラーメン(電脳文化桃さん提供)

MNo.3

 京都で以前に見つけた物件をお送りします。宇治市内の郵便ポスト、抹茶ラーメン、抹茶カルボナーラ。宇治のモグモグベーカリーのサンドイッチ。パンはお茶が練り込んであります。宇治市内のスーパーでヨンミーを見ました。宇治の王子ちゃまも。頭は茶せんです
 伏見の商店街で見つけメロンパンは白あん入りです。京都駅ナカの“オレノパン”という店では、メロンパンは“日の出”という名前でした(電脳文化桃さん)

ラグビーボール形メロンパン(電脳文化桃さん提供)
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ラグビーボール形メロンパン(電脳文化桃さん提供)

 抹茶ラーメンは罰ゲーム用物件か。名古屋のモンブランの向こうを張ったものか。デスク、食べてみる?

デスク 謹んで遠慮させていただきます。

「日の出」はサンライズの意味であろう。京都はサンライズ、ラグビーボール形メロンパン地帯である。

「ヨンミー」は神戸屋の菓子パン「サンミー」のバージョンアップ版。サンミーはビスケット生地、クリーム、線描きチョコの三味。そのクリームが抹茶味になっている。

蒼空(元松山の坂本@富山さん提供)
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蒼空(元松山の坂本@富山さん提供)

MNo.4

 一番最近の京都的トピックは2013年に飲んだ「蒼空」です。2002年に復活したそうで、瓶もきれいだし、見た目そのままの美味しいお酒です。このときから今までに蒼空は5種類ぐらい飲みました。
 初めて飲んだのがこのときで、伏見の酒蔵巡りに行ってきた友人のお土産でした。京都・伏見の古い民家をリノベーションして(そのままかもしれない)、旅行者に貸し出すという形式の、なんていうんだろう……まあ古い民家を1週間ぐらい借りて酒蔵を散々巡ってきたよっていう話でした。
 佐々木蔵之介さんも酒蔵の方ですし、秋田の新政酒造から寒冷地に強い酵母(六号)が作出されるまで、灘・伏見が酒造りの中心だったわけで、お酒にまつわる話が読みたいなーと思うのでした。酒粕をどうやって食べるとか。味醂カスは焼いてそのままかじるらしいですね(元松山の坂本@富山さん)

これならお腹は壊さない
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これならお腹は壊さない

 伏見の藤岡酒造。いったん酒造りを断念したが、奇跡の復活を遂げた蔵。その酒が「蒼空(そうくう)」で青空の意味である。

 東京ではなかなか見かけない。いい酒だとは聞いているが、私はついつい紙パックの酒を買ってしまう。いい酒を飲むとお腹を壊すという特異な体質なのである。

 京で「そろそろ帰ってください」という意味の「ぶぶ(お茶)漬けでも」。本当はもっとキビシーらしい。

京都のごちそう(豊下製菓の豊下さん提供)
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京都のごちそう(豊下製菓の豊下さん提供)

MNo.5

 京都(洛中)ほど、そこに生活する人の実際の食生活と、外から思う食生活が乖離している土地はないと思います。恐らくそこのところは今回の京都編であぶり出されるだろうから敢えて触れないでおくことにします。
 さて、皆さんは京都(洛中)で食事を振る舞われたことがありますか? 私はかれこれ20年近く前、京都の染色作家のお宅(西陣の京町家)で夕食を勧められたことがあります。
 もちろん辞退しようとしたのですが同行者は意に介さず、そのうえ家の主も話しに切りを付けないので席を立つことも出来ません。
 そのうちに20時を回り21時も過ぎたころ、アシスタントの着物美人がうやうやしく土鍋を運んできました。もう辞する旬を失したと覚悟を決めたその直後、家の主が中座して鍋に火が入らないまま1時間半が経過。やっと火が入り、ビールを舐めながら遠慮がちに箸を進めて気付けば24時。
 辞して、洛中をさまよいながらやっと見つけた深夜営業のバーのカクテルとミックスナッツで血糖値を上げ、お腹を空かせたまま再度洛中をさまよい、27時過ぎに六角の宿に入ったものの、ねそくれたまま話し込んで明け方まで起きていた。
「ぶぶ漬けでも」と勧められた方がよほど気楽。早々に辞してスタンドで一杯やるべきだったと後悔しきりな古都の夜でした(豊下製菓の豊下さん)

このまま1時間半…
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このまま1時間半…

 読んでいて「家の主が中座して鍋に火が入らないまま一時間半が経過」でぞっとした。どうすりゃいいんだ。

 大阪在勤時代、私がこれと逆の経験をした。あることをお断りに行ったのに、当人は出てこず、その代わりに豪華な膳と酒、舞妓(まいこ)さんまで登場した。どうしていいかわかりませんでした。

 日本海側の丹後からメールが届いた。

東京で、これは完食しました(デスク)
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東京で、これは完食しました(デスク)

MNo.6

 日本海側に「何かある」とのコメントを読み、黙っておられなくなりました。
 カニがないこの時期は「普通の魚介」がキモ。となると当方面に海釣りに通う人間に知らない人はいないとも言われる、宮津駅前の「富田(とんだ)屋」を外すわけにはまいりません。
 広く有名なのはアラ煮をはじめとして、美味で安価で量もたっぷりの海産物の「昼定食」。なのですが、ここで一番のオススメは、夜は居酒屋となる食堂での夕食を含む「宿泊」です。
 昔ながらの「旅籠」を今も続けるため、鍵はおろか、ふすまを開ければ隣の宿泊客と「こんばんわ」してしまう、すばらしい宿が、食堂の2階に存在しているのです。今回は是非、この宿に泊まり、この食堂で食らって(美味いのですが完食が困難な量が出ます)、電車でひと駅の天橋立の観光をお楽しみください(せらおさん)

これは完食不能でした(デスク)
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これは完食不能でした(デスク)

 日本三景のうち天橋立だけ行っていない。行きたい。

 冬になると大阪でもあちこちに日本海側のカニツアーのポスターが張り出される。決まって天橋立観光とセットである。

 行きたいけれど「完食不能の晩ご飯」には困るなあ。デスクを派遣するか。

 ということで1回目は終了。メールは残っているが同じ方からのものばかりなので、次回が不安。遠慮なく書いていただきたい。

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「都心で触れる2つの京都〜アンテナショップガイド」です。ぜひお読みください。

京都府編(その2) 京都人は濃厚民族である

京都府編(その3) 喫茶店、3度の食事にサンド出す

京都府編(その4) 「てっぱい」をいっぱい食べたい

大阪・京都府まとめて実食編 「飯炊き仙人」こんにちは


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年5月29日

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