第129回 徳島県編(その1) 再びの「メンデーレアマボヤーン」

特別編集委員 野瀬泰申


 鹿児島県編に続くのは、2011年の夏以来、久々にやってきた四国。徳島県です。
 山が多い一方、吉野川など水資源に恵まれた徳島県。沿岸部では製塩業なども盛んだったことから、山と海、それぞれに恵まれた食が期待できそうです。果たしてどんな「ご当地グルメ」が登場するのか? どうぞ、お楽しみに。
 今週のおかわりは、初回恒例、デスクによる在京アンテナショップの紹介です
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サクラサク
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サクラサク

 私にとっての「死のロード」がやっと終わった。

 出張に次ぐ出張。出稿に次ぐ出稿。本日、ある原稿を出して1カ月余にわたる強行スケジュールが一段落したのである。

 そんなわけで、先週末は久しぶりのオフになった。東京近郊の我が家周辺では、梅と桜の菜の花がいっぺんに咲いてにぎやかである。

 川べりの桜並木の下を犬の散歩を兼ねた人々が大勢歩いている。そして携帯やスマホやデジカメで桜の写真を撮っているのである。

 私ものんびりと散歩した。

いざ、蔵の街・栃木へ
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いざ、蔵の街・栃木へ

 ところで栃木実食の旅っていつ行くんだっけ? ひょっとして来月早々?

 デスク、早くスケジュールを組んでくれ。

 でも栃木は東京から近いから楽かも。取材はデスク。私は温泉。のんびりしたいものである。

 さて本日から徳島県編に突入する。

 徳島市にはラーメンの取材で行った。かつて日曜版でやっていた「偏食アカデミー」というコラムのための取材だった。私は担当デスク兼記者で「徳島の中華そば」は上下2回の連載。(上)の見出しが「19カ所目は最後の聖麺」、(下)の見出しは「メンデーレアマボヤーン」であった。わかりますか?

「いのたに」の「中肉玉」(たんぽぽさんのお友だち提供)
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「いのたに」の「中肉玉」(たんぽぽさんのお友だち提供)

MNo.1

 徳島ラーメンについてはそれぞれ好みもあるのでしょうが、私が人生で後にも先にも一番感銘を受けたラーメンが徳島ラーメン「いのたに」でした。
 あまりに感銘を受けたため、徳島に行くたびに「いのたに」にしか行かないせいで、他のお店がどうなのかわからないのですが……。
 少なくとも岡山に出店している「徳島ラーメンの店」ではこの味を味わうことはできません。
 昨日、たまたま友だちが徳島にいくというので「いのたに」を推薦し、写メをとってきてもらいました。「中肉玉」です。
 彼女もおいしかったと喜んでいました(たんぽぽさん)

徳島ラーメンといえば生卵
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徳島ラーメンといえば生卵

 私も「いのたに」に行っているのだが、それは後で書くとして(上)の見出しの解説から。

「19カ所目」というのは、新横浜ラーメン博物館が「ご当地ラーメン」と定義したものが全国に18カ所あり、徳島は最後の19カ所目であった。

 つまりその後、ご当地ラーメンとしてラー博が指定したものはない。

 タイトルが「徳島の中華そば」となっているのは、徳島市内ではラーメンではなく「中華そば」と呼ぶからである。

 記事の中で、亡くなったラーメン評論家の武内伸さんがこう言っている。

 徳島市内のラーメンには明かな特徴があります。まずスープが焦げ茶色。色のわりに味はシャープではなく、甘みがある。チャーシューではなく、甘辛く煮た豚の薄切りバラ肉をのせるのが主流。麺を柔らかくゆでる。さらに多くの店が生卵を入れるのです。

 私は徳島に飛び、まず「巽屋」という店を訪ねた。武内さんが言った徳島ラーメン(中華そば)の特徴を完全に満たしている。生卵をどの段階で食べるか迷っているうちに、箸で卵がこわれ、自動的にスープとともに飲み下した。

甘辛く煮た豚の薄切りバラ肉
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甘辛く煮た豚の薄切りバラ肉

 その夜は「銀座一福」で2杯目のラーメンを食べた。

 翌日訪ねたのが「いのたに」であった。昼前なのに満席だったと書いている。

 たんぽぽさんのメールに登場する「中肉玉」は麺の量が中くらいで、豚肉と卵が入ったものである。

 この店は一口で食べやすいように麺が短い。ずるずるとやれば、箸でつかんだ麺が全部口の中に入るのである。

 さらに「広東」で4杯目。

 1泊2日でラーメン4杯か。私もまだ若かった。

 記事の日付を見ると1999年1月である。前世紀である。

メンデーレアマボヤーン
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メンデーレアマボヤーン

 さて、徳島ラーメンはなぜ「メンデーレアマボヤーン」なのか。

 麺が柔らかくゆでられ、スープが甘くてぼやーんとした味だからである。この表現を武内さんから聞いたとき、私は「なるほど」と思ったことを思い出す。

 徳島市内のラーメンは以上のごとくであるが、すぐ南の小松島市に行くとまた別種のラーメンが存在する。

 ラーメンの取材で行った徳島市で、そのとき発見したのがこれ。

お好み焼きの中に金時豆が!
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お好み焼きの中に金時豆が!

MNo.2

「豆天玉」は金時豆入りのお好み焼きです。会社の先輩にはじめてごちそうしてもらったとき、甘く煮た豆がお好み焼きの具になっているのに驚いたものです。
 この金時豆はちらし寿司(混ぜるタイプ)の具にも使われています。徳島県民は甘く煮た豆が好きなのでしょうか…。
 ところで、このちらし寿司を上勝町では「かきまぜ」と呼ぶそうです。隣の勝浦町では「ばらずし」とか「かきまぜ」と呼ぶとのことです。
 寿司といえば、小アジやボウゼの姿寿司が、地元の味としてあげられます。ボウゼはイボダイのことです。ともに10センチ前後の小さなものを頭を付けて開き、酢締めにしたものを、握った酢飯にのせた寿司です。

ボウゼの姿寿司、すだち山盛り
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ボウゼの姿寿司、すだち山盛り

 1匹を切らずにそのままで出てきます。しっかりと酢締めにしているものは、頭ごと食べられます。このサイズのアジやボウゼが揚がるお盆前後から秋にかけて、スーパーにも並びます。
 ほかに、川魚では鮎やアメゴを姿寿司にします。アメゴはアマゴのことです。鮎やアメゴの場合は、食べやすい大きさに切ってあります。これはほかの県でもよく見かけるものですね。
 かきまぜや姿寿司は、親戚が集まるときや祭りなどで近所の人の食事に振る舞われます(花咲ききゃべつさん)

ちらし寿司にも金時豆
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ちらし寿司にも金時豆

 冒頭の「豆天玉」は未食。私がメニューで見たのは「お好み焼き 豆入り」であったが、同じものであろう。大変に特徴があるお好み焼きと言わなければならない。実食編で食べることになるであろう。

 その甘い金時豆がちらし寿司にも入る。地域によって「かきまぜ」という素朴かつストレートな名称になっているところがよい。

 小魚の姿寿司は私の好むところであるので、これも実食編のときにお世話になりたい。

 徳島では魚をこんな形にして食べる。

カツ
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カツ

MNo.3

 徳島といえば「カツ」です。とは言っても、いわゆる豚カツではなく、魚のすり身をひらべったく伸ばして衣を付け揚げたもの。少しピリッとカレー風味で、初めて食べた人もどこか懐かしさを感じるのではないでしょうか。
 両親が徳島出身で共働きだったため、私と兄は子どものころ、夏休みや冬休みなど長いお休みは徳島で過ごしていました。私も兄もこの「カツ」が大好きで、祖母が必ず食べさせてくれて、岡山に帰るときはお土産にたくさん持たせてくれたものです。
 そのまま食べてもおいしいのですが、私は少し焼いて細長く切り、マヨネーズとケチャップで食べるのが好き。
 お好み焼き屋さんによっては「カツ玉」があるんだとか。もちろん、細かく切ったカツが入っているんでしょう。
 最近では、岡山のスーパーでもお目にかかれるようになってきました。全国に認知される日もそう遠くないはず!!(たまのSea温玉会岡野会長)

デスクも遭遇
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デスクも遭遇

 昭和30年代に小松島市の「津久司(つくし)蒲鉾」が開発したとの説がある。同社のHPには「魚のすり身を小判型に成型しカレー粉、調味料で味つけしたあと、185度の油で1分揚げる」と書いてある。

 徳島県東部で「カツ」と言ったらこの物件で、あの「カツ」を食べたかったら「トンカツ」と指定しなければならないそうである。食べ方は様々。細かく刻んでお好み焼きに、タマネギと一緒に卵でとじてカツ丼風に、パンに挟んでカツサンド風に……。

 私は徳島取材のお土産に買い、ウスターソースで食べた。確かに美味しかった。ウーロンハイの友であった。デスクも恒例のアンテナショップ巡りでこの物件に遭遇するであろう。

 「花咲ききゃべつ」さんからは以下のメールも届いている。

竹ちくわ(花咲ききゃべつさん提供)
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竹ちくわ(花咲ききゃべつさん提供)

 徳島から小松島でさかなの練り物では、名が知られるようになったフィッシュカツが浮かびますが、ほかにもちくわが挙げられます。それも、直径1.5センチほどの竹に魚のすり身を巻いて焼き上げたもので「竹ちくわ」と呼んでいます。
 竹ちくわは両側に出ている竹を手で持って、歯でこそぎとるようにかじりついて食べます。竹に巻いて焼き上げているせいか、少ししっかりした歯ごたえがあるので、かみしめて食べることにつながり、そのため、すり身のうまみが強く感じられる気がします。
 大阪・神戸方面のフェリー航路があったときは、徳島から乗るとフェリーの売店で竹ちくわを買って、祖母が持たせてくれたアジの姿寿司と一緒にフェリーの中での食事にしていました。今でも同じ竹ちくわの包みが売られていて、土産物にも使われます。

 「カツ」は正しくは「フィッシュカツ」。先に書いたように魚のすり身である。徳島県東部は紀伊水道の豊かな漁場を抱えている。従って水産練り製品が豊富で、その中のひとつが竹ちくわ。「カツ」と竹ちくわが双璧かも。

半田めん(ちりとてちんさん提供)
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半田めん(ちりとてちんさん提供)

MNo.4

 お昼ご飯を食べに行くお店のメニューに「半田めん」があります。うどんより細く、そうめんよりも太い麺です。
 半田めんの歴史を調べてみると、江戸時代に奈良の三輪地区から技術を持ち込んだのが始まりなんだそうです(ちりとてちんさん)

買ってきました(デスク)
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買ってきました(デスク)

 JR徳島線を徳島から西にたどると「阿波半田」という駅がある。この辺りが半田めん発祥の地である。

 要するに太めのそうめんで、吉野川の海運に携わった人々が冬場の仕事として三輪からそうめんづくりの技術を導入したのが始まりと言われる。

 東京で売ってないみたいだなあと思っていたら、意外にも駅前のスーパーに置いてあった。デスクが買ったのは「半田手延素麺」と書いてあるが、私が買ったものは簡単に「半田めん」と表記されていた。

 徳島県の山間部では祖谷が有名。つり橋とそばで知られる。

そば米ぞうすい(いけずな京女さん提供)
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そば米ぞうすい(いけずな京女さん提供)

MNo.5

 日本の食品加工技術て、すごいですね。特にフリーズドライ製品て、生の材料から作ったのとほとんど変わらない再現ぶりで。種類も豊富になりました。
 しかも最近は郷土料理やご当地グルメのフリーズドライまで続々発売されているというから驚きです。
 で、徳島のこんなの、発見しました。「阿波池田 秘境のめぐみ そば米雑炊」。
 徳島県西部、三好市池田町を中心とする“四国の秘境”祖谷(いや)地域はお米が栽培できず、アワやヒエが主食でした。
 その昔、平家の落ち武者がここに住み着き、食糧確保のため栽培期間の短いそばを植えたのが名物「祖谷そば」の始まりとか。
 そして「そば米雑炊」は、落人たちが都をしのんで正月料理に作ったのが始まりといわれています。
 そば米とは、そばの実を塩ゆでして表皮をはいだもの。乾燥して保存されます。野菜や山菜と一緒に雑炊にし、山で獲れた山鳥を入れればそれはとびきりのご馳走であったとか。
 お米そっくり……とはいきませんが、ほのかな甘味とプチプチした食感は、元がそばの実とは思えません。身体の中にしみじみと染み渡る、素朴な美味しさでした(いけずな京女さん)

そばの実を塩ゆでして表皮をはいだもの(いけずな京女さん)
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そばの実を塩ゆでして表皮をはいだもの(いけずな京女さん)

 説明は不要であろう。

 かつて祖谷そばを食べに記者が向かった。下調べをしていた記者は言った。

「どうやったら1泊で帰ってこられるのでしょうか」

というくらい、昔は秘境であったが、いまはどうか。

 祖谷そばはつなぎを使わないので5センチくらいでぶつぶつ切れる。つゆはいりこと薄口醤油なので透き通っている。

 というのは単なる知識で食べたことはない。実食編で行けたら行きたい。車がないと無理かな。

 次のメールを読むと、徳島県の実力がわかる。よそから来て住んでみると、地元の人が気づかない魅力が見えるという例。

東京でも徳島県産品がいっぱい
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東京でも徳島県産品がいっぱい

MNo.6

 夫の転勤で東京都から徳島に移り1年間住みました。スーパーに行って驚いたのは、売っている物がほとんど徳島県産だということです。
 肉、魚、卵、野菜はもちろん、お米、麦茶などです。しかも新鮮でおいしい物ばかりでした。
 食生活では、何でもすだちをかけること。第3のビールにすだち入れるとコロナエキストラに変身。味噌汁に入れると高級料亭の味噌汁に変身。カレーにもすだち。鳴門わかめにしらすと大根おろし、すだちでご飯がバクバク食べられます。
 徳島ラーメンには白いご飯が必須アイテム。徳島ラーメンはおかずだというのも驚きました(4人の子の母、広瀬南海子さん)

第3のビールをコロナエキストラに
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第3のビールをコロナエキストラに

 県産品でスーパーの売り場がまかなえるというのは素晴らしいことである。

 すだちで第3のビールをコロナエキストラに変身させられるのも素晴らしいことである。

 徳島県民の皆さん、自信を持って徳島の食をアピールしてください。

 では今週はこれまで。引き続き徳島メールを待つ。



(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「徳島・香川トモニ市場に行ってきました」です。ぜひお読みください。

徳島県編(その2) 鳴門のうどんは「鳴ちゅるうどん」

徳島県編(その3) 花嫁は 来ても行っても 菓子配る

徳島県編(その4) 絞れ! 柑橘王国!!


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年3月29日

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