第70回 秋田ご当地グルメ(その3) 酢の物はミツカンじゃないよミカンだよ

特別編集委員 野瀬泰申


  秋田県横手市といえば横手やきそばが有名です。黄身を崩して食べる半熟目玉焼きと福神漬けが特徴ですが、ほかにも様々な焼そばがあるとの情報が届きました。砂糖入りの納豆も登場します。

 番外編ではデスクが、11月3日から6日まで開催される「アンテナショップフェスティバル」の情報をご紹介します。

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(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

お昼にステーキとはステキ
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お昼にステーキとはステキ

 ようやく半年にわたる本業の大仕事のメドがついた。心理的に呼吸が楽になり、もともと美味かった酒がさらに美味くなった。

 歩いていても足取りは軽く、思わずスキップしそうな気分である。でも実際にスキップすると脚がもつれて転びそうなので、慎重に右足と左足を交互に動かして歩いている。

 昨日の日曜日は久しぶりに時間ができた。天気も上々。近所の川のほとりや、隣の駅近くにある遊歩道などを散歩していたらお腹が空き、お昼にステーキを食べてしまった。

 先週、青森県の広報誌の取材を受けた。来月辺りに載るのであろうか。青森県民の皆さん、どうぞよろしく。

 いやテーマは秋田県であった。

大曲の納豆汁
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大曲の納豆汁

MNo.12

 秋田県はとても広いので、私も掌握できていない食べ物が沢山あるのですが、身近なところからいくつか申し上げます
<納豆汁の素>  味噌汁に入れるだけで納豆汁になるという「納豆汁の素」なるものが存在します。スーパーのタカヤナギの納豆売り場で販売しています。複数のメーカーの製品があります。
 納豆発祥の地と言っている秋田県ですが、他県にはあるのでしょうか? あれだけ売っているということは、売れ筋商品なのでしょう
<オープンカツ> 大曲にはオープンカツなるものが存在します。最近はあまり見かけなくなりましたが、個人的に好きな食べ物なので挙げてみました。
 オープンカツ=チキンライス+とんかつ(カツレツ)+カレー、です。銀の皿に盛りつけてあり、福神漬けが添えられています。
 2〜3年前までは、大曲駅近くの仙北組合総合病院の食堂メニューにもあったほどで、市民には昔から親しみのある食べ物です。これで有名な店「味二番」もJR大曲駅から徒歩10分程度です(青谷さん)

金沢のハントンライス
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金沢のハントンライス

 納豆の話はこれから展開するので、ここでは納豆汁の素までスーパーで売られているほど、納豆文化が浸透していることだけを記憶にとどめよう。

 私の目がとまったのは大曲の「オープンカツ」である。根室のエスカロップ、金沢のハントンライス、越前市のボルガライス、長崎のトルコライスなどご当地ライスは数々あるけれど、ここにまた大曲からオリジナルなライスものが登場した。

 チキンライス、カツ、カレーという組み合わせは、どこにでもありそでうッフンなさそでウッフンなのである。

「ちゃんぽん」に続いて秋田実食編の有力候補が浮上した。

 これもそうとうオリジナル。その名を「ホル中」という。

ホル中(ヒショヤマさん提供)
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ホル中(ヒショヤマさん提供)

MNo.13

 正式名称をホルモン中華と申します。略してホル中。
 横手やきそばのメニューに「ホルモンやきそば」があるのは知る人ぞ知る隠れ名物ですが、横手市の西部に位置する雄物川地区の食堂「なをこそば」では、ホルモン中華、ホルモンうどん、ホルモンそばがクリーンアップのようにメニューを飾り、中でも不動の4番がホルモン中華、ホル中なのです。
 醤油ベースのホルモン風味スープに加え、店主と奥様のおもてなしが心地良くて、まさにクセになりそう!
 横手には他にもホルモンラーメンやホルモン丼などホルモンメニューが存在し、ホルモン消費量は結構多いのかもしれません(ヒショヤマさん)

 ラーメンの具にホルモン。これもありそでウッフンなさそでウッフンフンなのである。

津山ホルモンうどん
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津山ホルモンうどん

 津山や亀山のホルモン焼きうどん、鳥取のホルモン焼きそばといった鉄板系のホルモン+麺ではなく、スープ系のホルモン+麺は珍しいのではないか。

 横手で鉄板がある飲み屋に行ったことがある。甘めのソースで炒めたホルモンを単品で頼んでビールの友にした。このホルモン炒めを焼きそばにトッピングすると横手風ホルモン焼きそばになる。

 横手は意外にもホルモンの町なのであろうか。今度行ったら気をつけて観察しよう。

 横手ではこれも観察しなくちゃ。同じく雄物川地区から登場。

スタルヒンやきそば(スターダストさん提供)
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スタルヒンやきそば(スターダストさん提供)

MNo.14

 やきそばの個々のトッピングにご注目!!
 目玉焼きはホーム・ベース【よく見てね】、ウィンナーソーセージはバット、青のりは芝生、福神漬けは観客席です。
 横手市雄物川町の滝沢食堂の名物、「スタルヒンやきそば」。その名の通り、元読売巨人軍の300勝投手、ヴィクトル・スタルヒン投手にちなんだやきそばです。
 このやきそばは「スタルヒンさんの球碑」が横手市・雄物川町にあるということで、まちおこしのためにと店主が考案したもの。子どもたちには大人気! ほかに類似品があるのかわかりませんが「元祖」!?です。久々に食べました(横手・スターダストさん)

 横手に「リンゴの唄」の歌碑があることを知ったときにも驚いたが、スタルヒンのお墓があったとは。以下は横手市のHPから。

お店のメニューにも写真が(スターダストさん提供)
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お店のメニューにも写真が(スターダストさん提供)

「昭和9年、結成されたばかりの大日本野球倶楽部(巨人軍の前身)に入団したスタルヒン。その生涯記録は586試合で303勝175敗(完投250・完封84)奪三振1960。なかでも完封84という大記録はいまだに破られていません。

 そんな大投手を陰から支えたのが、昭和25年に再婚した妻の久仁恵さん。この方が、雄物川町今宿の崇念寺住職・高橋大我さんのお姉さんであることから、スタルヒンは妻とともにこの地に永眠することになったのです。現在の墓は、平成元年1月、スタルヒン33回忌の命日に娘のナターシャさんが建立したものです」

 へー、そうだったんだ。

 この焼きそばは面白いなあ。

 魚の塩漬け「ぼだっこ」。そのうんと塩辛いのをこう呼ぶ。ヒショヤマさんからいただいたもう1通のメールを紹介しよう。

しょっぺぼだっこ(ヒショヤマさん提供)
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しょっぺぼだっこ(ヒショヤマさん提供)

MNo.15

 横手市の某スーパーの人気商品、「しょっぺぼだっこ」のおにぎりです。
「しょっぺぼだっこ」が初耳の方には、どこで区切るの?と疑問がわいてくるかと思いますが、決して「ぼ」で区切ったりしてはいけません。だっこはしないのです。
 通訳いたしますと「しょっぺ」=塩辛い、「ぼだっこ」=鮭の切り身ということで、何のことはない、いわゆる塩ジャケのことです。
 以前、食べBでも「ぼだっこ」のおにぎりが取り上げられましたが、ぼだっこは方言の中でもメジャー級で、幼稚園児も使いこなすほどです。
 しかしこの「ぼだっこ」、秋田県南のものはとにかく塩からい。わざわざ「しょっぺ」と断わるだけあり、はるかかなた、行ったこともない死海を想像してしまうような塩辛さのものもあります。
 秋田県南部は、海から遠い山間部、海の幸を長く保存するために、極限まで塩辛くしたことは想像に難くありません。
 この独特の食文化を残してくれたご先祖様の知恵に感謝すると同時に、あまりの塩辛さに少し文句を言いたくなるような気もしますが、商品名として堂々と「しょっぺぼだっこ」が陳列されている光景は、少し誇らしくなるような感じさえあります。

塩ジャケ
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塩ジャケ

 私も「ぼ」で区切ることに反対である。「しょっぺぼ・だっこ」って、幼いしょっぺぼちゃんがお母さんに甘えているみたいなのである。

 それにしてもどのくらい塩辛いのであろうか。私は5、6回、横手を訪れているのだが、地元の人から「ぼだっこ」という言葉を聞いたことがない。聞いてもわからなかったろうが。

 では「ぼだっこ」の語源は何か。横手の浮嶋さんからいただいたメールに郷土の昔語り研究家、高橋はじめさんの説が紹介されている。

ぼたん?
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ぼたん?

「由来については諸説があるが、江戸時代、サケは貴重で庶民には手の届かないものであった。サケの赤い身が牡丹の花の色に似ており、また、牡丹は一般庶民には縁遠い花であったため、一種のあこがれのような意味も込められ『ぼたん』と呼ばれた。後に『ぼた』、明治時代になって一般庶民にも手に入るようになると秋田弁の愛称『こ』を付して『ぼたっこ』と呼ばれるようになったといわれる」

 なるほどねえ。

 西日本で「ぼたん」はイノシシ肉。

 しかし秋田の「ぼたん」は鮭。間違えないようにしよう。

 塩辛いと同時に甘いのが秋田の味覚であった。ここまで甘くする?

ミカン入りの酢の物(そら♪さん提供)
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ミカン入りの酢の物(そら♪さん提供)

MNo.16

 塩辛いおにぎりが売れる一方、ご存知のようにお砂糖たっぷりのお料理もたくさんです。海苔巻きのご飯もお赤飯もとっても甘いです。
 実家の冷凍庫にあった海苔巻きを解凍して食べ、甘さに驚きました。実家を離れて数10年、こんなに甘い海苔巻きを普通に食べていたかと思うと不思議でした。
 また酢の物にもお砂糖はもちろん缶詰のミカンんや桃が入っており缶詰のシロップまで入れることもあります。
 それが普通だった私は酢の物を食卓に出したとき「これも酢の物なの? なんでミカンが入ってるの?」と家人に聞かれました(そら♪さん)

このシロップが酢の物に入ると…
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このシロップが酢の物に入ると…

「食べ物 新日本奇行」の「日本の甘味処」で赤飯が甘い地方は北海道、青森、秋田であることが判明した。また秋田では茶わん蒸しに栗の甘露煮を入れて甘くする。

 前回は漬物シーズンになると砂糖が大量に売れるというメールを紹介したのだが、酢の物に果物の缶詰をシロップごとというのは、頭がくらくらする話ではないか。

 そもそも甘さで酢の味が消えてしまわないであろうか。

 10年ほど前、東京の居酒屋で頼んだネギのぬたに添えられていた味噌が頭痛がするくらい甘かった。ひょっとしたらつくった人は秋田出身ではなかったろうか。疑い濃厚。

納豆に砂糖(スターダストさん提供)
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納豆に砂糖(スターダストさん提供)

 スターダストさんからのメールの後半はこういう文面だった。

「秋田県南部には『砂糖をたっぷりかける=美味しいもの(うめーもの)』の文化があります。赤飯や茶わん蒸しにも砂糖が多めに入る傾向。

 いまの県南部40歳台までは、お婆ちゃんにたっぷりの砂糖をかけられた納豆で育っています。秋田県の子どもたちの体格が全国でもトップ級なのは、これが隠れた原因か!?

納豆には砂糖っ!(スターダストさん提供)
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納豆には砂糖っ!(スターダストさん提供)

 納豆発祥の地の石碑も秋田県横手市金沢地区にあり。秋田県で、納豆に砂糖を入れられても目を丸くしないでね!」

「納豆に砂糖」も「奇行」で大きなテーマになった。私の次の本のタイトルは「納豆に砂糖をかけますか?」と決まっているのだが、震災の影響か、全然出る気配がない。

 文面からは想像できないだろうが、スターダストさんは大柄な筋骨たくましいおじさん。

 甘い物ついで。

豆富かすてら(いけずな京女さん提供)
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豆富かすてら(いけずな京女さん提供)

MNo.17

 家ではJA横手ふるさと産地指定の「あきたこまち」を食べております。
 横手市を中心に県南地域で愛されているローカルおやつ「豆富かすてら」をご存知でしょうか? 豆腐の水分を絞って練り上げ、甘味を加えて焼き上げた、カステラというか厚焼き玉子のようでもある食べ物です。
 もともとは冠婚葬祭のお膳に欠かせない口取りで、料理自慢のおばあちゃんが作っていた家庭の味だったとか。
 これがなんとも不思議な食べ物で、わかりやすく言えば「甘いがんもどき」。ただ食感はがんもどきよりもなめらかです。ご当地ではお茶うけに使われるとのこと。
 でも私は後味が「豆腐そのもの」のこの不思議な食べ物はむしろ「オードブル」ではないかと思ったり…。現に「おかずと一緒に食卓にのっていた」という証言も得ています。
 おやつか、はたまたおかずか?
 何回食べても決着がつかない「豆富かすてら」、ご当地の皆さんのご意見をぜひお聞かせください(いけずな京女さん)

「昔ながらのお菓子です。」
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「昔ながらのお菓子です。」

 初めて横手を訪れたとき、お土産に買ったのが、この豆富かすてら。子どもたちの認識は完全にお菓子であったが、お父さんは酒の友にした。

 チョコレートをつまみながらウイスキーを飲むような気分……にはならなかったなあ。だって甘い豆腐なんだもん。

デスク 一見東京のだし巻き卵に似てなくもないですが、その甘さは「お菓子」レベルです。

ハムフライ+パン(赤平さん提供)
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ハムフライ+パン(赤平さん提供)

MNo.18

 いけずな京女さまが「ハムフライ」を書いていましたが、その後私が秋田市内のスーパーで見つけたものはたぶん「ヤマザキのランチパック」という商品の地方版だと思われます。地元秋田市のパン屋さんの商品でした。
 北海道・東北B−1で「ハムフライ」を食べた後だったので思わず購入しました。中身がもう少し大きかったらいいのに…とは思いましたがこれはこれでおいしかったです(赤平さん)

 ハムフライはパンとの相性がよさそう。

ハ+ム=公
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ハ+ム=公

 いま私の手元に姫路B−1の公式ガイドブックがある。それを見ると「本庄ハムフライ・ハム民の会」が出展するのは第○会場で右隣が▽、左が□のブースである。

 これでは何も書かないのと同じだが、まだ公開されていないので書けないのよ。

 ただガイドブックによると「ハムを縦に書いて公(おおやけ)と読みます。地域を思う気持ちをハムの心と呼んでいます」とある。ハム民とはそういう意味だったのか。

 横手ばかりが秋田ではない。県庁所在地を忘れてはいけない。

仙北郡美郷町が本社の「おはよう納豆」(スターダストさん提供)
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仙北郡美郷町が本社の「おはよう納豆」(スターダストさん提供)

MNo.19

 そういえば、ラーメン店によく酢がおいてありますね。特に「秋田風ちゃんぽん」のお店に。秋田風ちゃんぽんには酢をたっぷり入れるとおいしいですよ(紅ショウガもたっぷりいれます)。
 さて「番外編」で「関東人にはちょっと意外…秋田では納豆を好んで食べるそうで」とありましたが、納豆発祥の地は秋田だという伝承があります。詳しくは「八幡太郎義家 納豆」で検索してみてください。
 ちなみにカレー納豆は秋田市内のスーパーではあまり見かけないです。私も納豆好きですが、食べたことはないです。秋田は大豆の名産地でもあり、小規模ながらオリジナルの納豆を販売しているお店も少なくありません。そういった店では納豆用の塩を売っており、塩で食べる納豆は大豆の味が活きていてまた格別です。
 大粒の食べ応えのある秋田の地納豆を是非一度おためしください。ああ、そういえば、県内には納豆ラーメンを売り物にしているお店も多いですよ(秋田市 佐々木さん)

カレー納豆、こんな感じでした
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カレー納豆、こんな感じでした

 さりげなく「納豆用の塩」と書いてあるが、いましがた県南の「納豆に砂糖」の話が出たばかりである。秋田は県南が砂糖、秋田市周辺は塩という分布になっているのであろうか。

 もしそうなら早急に県議会で議論してもらいたいものである。

 秋田も広い。

 ふるさとを思い出して、この叫びに。

MNo.20

 秋田の冬の食べ物にサメなますがあります。本当に小型のサメをなますにして食します。美味です。
 実家では正月にはこれが必ずあった。秋田県の方、だれか写真を!(和歌山県在住あきたけんじんさん)

無理のない範囲で、ぜひ
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無理のない範囲で、ぜひ

 どなたかサメなますの写真をお持ちではありませんか? あったら是非!

 今週は実に多彩な内容になった。

 次回は秋田の最終回。書き残しがないようにどんどんメールを送っていただきたい。その際、写真がついていると大変ありがたいのである。

 秋田県の次は山口県を予定している。ご関係の方はスタンバイを。

 ではまた来週。


(特別編集委員 野瀬泰申)


実食編 納豆に砂糖。入れすぎ注意報発令中!

時間差秋田実食編 馬肉ラーメン、100万馬力

秋田県編(その1) ラーメンには酢を入れまス。

秋田県編(その2) アッ、キター! 秋田ちゃんぽん

秋田県編(その4) 人類皆鍋奉行


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2011年10月28日

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