第40回 静岡ご当地グルメ(その3) うなぎはメスでも「ぼく」と言う

ぼくめし(いけずな京女さん提供)
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ぼくめし(いけずな京女さん提供)

 5年以上も「ぐるなび」に書き継いできた「野瀬泰申のチャブニチュード判定委員会」が最終回を迎えた。怒りのちゃぶ台返しとマグニチュードを合成したこの言葉を思いついたのは、大阪に単身赴任しているときだった。(「食べBって何?」という方は「食べB入門編」をご覧下さい。食についてのメール投稿先はこちら

 どこかの店でとんでもなく不味いものを食べさせられて、借り上げ社宅で独酌しているうちに怒りと悲しみがマグマとなって噴き上げ、私は思わず「チャブニチュード5!」と叫んでいたのだった。

 50過ぎのおじさんの所業としてはいかがなものかと思わないでもないが、ともかく翌朝起きても覚えていたので「そのうちどこかで使ってみよう」と考え、やがて活字になり、次いでネットの世界にも進出したのである。

静岡県東部の熱海市では早咲きのアタミザクラが開花。1月30日まで「糸川さくら祭り」も行われている
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静岡県東部の熱海市では早咲きのアタミザクラが開花。1月30日まで「糸川さくら祭り」も行われている

 連載の一部は文庫になったものの見事に売れず「初版の野瀬」の実力を天下に示す結果となった。

 ぐるなびではチャブニチュードに代わって「たべたび」というコラムの連載が始まっている。月2回更新なので、ときどきのぞいてくださると幸甚である。


 さて本編。前回、千葉県在住遠州育ちの越谷さんからいただいたメールにあった「おはたき」。「よそにもあるのかな」との疑問に答えるメールが届いた。


MNo.21

 「おはたき」は水戸にもあります。水戸では何と言っていたか、どうしても思い出せないのです。思い出す前に、メールを出すのを忘れそうなので、とりあえずメールです。
 こうして、年を取るのでしょうか(水戸の生まれで千葉在住ののべさん)


 名前は思い出せないが、どうしても思い出せないが、そこまで出かかっているのに思い出せないが、ともかく「おはたき」と同じものが水戸にもある。

 のべさんに代わって思い出してみると……しんこ餅でしょうか?

 食べ物はともかく、最近の私は人の名前が出てこない。どうしても出てこなくて困ることがある。


MNo.22

 韓国の「トック」が「おはたき」と同じくうるち米で作ったお餅だと思います。トックを使った料理が「トッポギ」。日本では見かけないけど、お隣の韓国で頑張ってるようです(泉州住まい30ねんさん)


 八田靖史著「かんたん、ヘルシー 韓国おつまみ」の「トッポッキ」のところを見ると、トックは「韓国もち」と書かれている。韓国の雑煮にあたる料理にも登場するらしい。まさに餅である。

 最近のスーパーには「キムチ鍋」とか「トマト鍋」とか「とんこつ醤油鍋」などのスープの素が並び、その食材としてトックが当たり前のように売られている。短く切ったろうそくの束みたいに見える。


 静岡県の奥の深さを思わせるメールが届いた。


あんかけスパ。右下はバラエティーランチ(A-changさん提供)
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あんかけスパ。右下はバラエティーランチ(A-changさん提供)

MNo.23

「あんかけスパ」と言ったら、フツーは名古屋のものを思い浮かべることと思います。たった3軒(ボルカノ、伊太楼、マルコ)ではありますが、沼津にも「あんかけスパ」を供するお店があります。「ミラネーゼ」「カントリー」といったメニュー構成や、見た目などは名古屋のものとほぼ同じです。
 違いはまず、あんが全くスパイシーでないということ。「パルメザン」というチーズとポークカツがのったメニューがあること。そして「ランチ」または「セット」と称する、スパゲティなのにライスを添えたメニュー(ライスを添える店は名古屋にも一部ありますが)があること……などが挙げられます。
 さらにハンバーグとピザがのった「バラエティーランチ」なんてのもあります。もしかしたらこれ1皿で成人男性が1日に摂取すべきカロリー量を満たしてしまうかもしれません。一芸クン、いかがでしょうか。
 あんつながりでもう1つ。沼津には50年以上もの歴史を誇る「桃屋」という揚げもの屋さんがあります。そこで売られている総菜パンが沼津市民のソウルフード的なものとなっているようです。
 コッペパンにコロッケやハムカツといった揚げものを挟んだもので、そこになんと甘〜くてドロッとしたあんがタップリかかっているのです。ソースがかかったものもありますが、人気があるのは甘いタレの方なのだとか。
 沼津には他にも「沼津とろりん」という、桜えびを使った甘いあんかけの町おこし系料理があります。戦後沼津の闇市で愛されたという「五目あんかけ麺」がベースとなっているようです。
 沼津のあんかけ文化、奥が深そうです(A-changさん)


桃屋のあんかけ惣菜パン(A-changさん提供)
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桃屋のあんかけ惣菜パン(A-changさん提供)

 瞠目(どうもく)すべき内容である。

 3軒あるなら沼津は、あんかけスパの飛び地と言っていいであろう。

 バラエティーランチは一芸クンマターである。私は知らん。

 あんかけスパにライスがついた物件も一芸クンに任せる。というか、これを完食する人がいるの?

 桃屋のあんかけ総菜パンは、佐世保のサラダごと揚げた「揚げサンド」と互角の戦いではないだろうか。のっぽパンともどもマークしておこう。



木枯らし吹く寒い夜に、ひとり清水で黒はんぺん揚げ(ミルフォードさん提供)
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木枯らし吹く寒い夜に、ひとり清水で黒はんぺん揚げ(ミルフォードさん提供)

MNo.24

 大学時代に静岡市に住んでいたころのことを思い出しました。寮に住んでいたのですが、卒業・入学シーズンには寮でも行事が行われていました。その行事に料理が出てくるのですが、その中に必ず黒はんぺんのフライが入っていました。皆それが好きでいつも真っ先になくなっていました。
 静岡ではメジャーなスーパー「もちづき」でも販売されているのでよく買って食べていました。あのフライにソースをダバダバとかけて食べるのが至福のひとときで、今でも静岡に行くと必ず買ってしまいます。
 前回の食べBで触れられていた「のっぽパン」ですが、自分もよくお世話になりました。上記のもちづきでもよく特価販売されており、おやつに夜食に大活躍でした。いつも部屋に何本かストックしてました。あとなぜか「金ちゃんヌードル」は毎日特価販売されており、のっぽでは満たされない空腹のときはこちらで対処していました(かけつけ御飯3杯さん)


 やはり黒はんぺんのフライにはだぼだぼソースがよく似合う。中濃でもとんかつでもなくウスターじゃろ。

 「金ちゃんヌードル」のメーカーは徳島市にある。なのになぜか静岡では定番になっている。「食べ物 新日本奇行」にも登場した。

 カップ麺は「金ちゃんヌードル」、袋麺が「金ちゃんラーメン」。東海道を歩いたときに静岡のスーパーでずいぶん見かけた。


カツオのヘソ
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カツオのヘソ

MNo.25

 焼津市はカツオの漁獲量が多いせいかもしれませんが カツオのヘソ(心臓)を使った料理を出す飲食店が多くあります。
 東名高速の上りの日本坂パーキングエリアでも串揚げを売っているので、今回の取材で車を使うときは1度立ち寄って下さい(粕取り焼酎愛飲家さん)


 東海道を行く途中に、島田でこれを食べている。串焼きであったが、外はレバーのごとく、中はハツのごとしであった。心臓なのでカツオ1匹から1個しか取れない。さすが焼津である。


 カツオが続く。


沼津の漁港市場でマグロのデミグラソース煮込み(大阪の原さん提供)
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沼津の漁港市場でマグロのデミグラソース煮込み(大阪の原さん提供)

MNo.26

 静岡のスーパーではカツオのタタキを置いていないことが多いです。カツオの刺身は毎日置いていますが、たたきを食べる風習がないようです。
 30年ほど前に、仕事の関係で藤枝に来て、以前住んでいた神戸では白身魚など瀬戸内海の多様な魚があったのですが、当時の藤枝ではマグロとカツオの刺身しか置いていなかった。カツオのたたきは関西では常に置いているのですが、藤枝で置いていないのは不思議です。
 藤枝の名物は、おたけせんべいとサッカー最中。特にサッカー最中は昭和32年に国体のサッカーの決勝戦を藤枝東のグランドで行った時にはじまるとか。元祖サッカー最中では?
 最近見られなくなった「ながらみ」も昔は駄菓子屋にもあった美味な貝です(藤本さん)


沼津の漁港市場で巨大かき揚げ(大阪の原さん提供)
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沼津の漁港市場で巨大かき揚げ(大阪の原さん提供)

 太平洋側では魚種が限られ、瀬戸内海のような白身の魚は少ない。あとはサバくらいだろうか。獲れないものは仕方がない。我慢してください。

 文末に出てくる「ながらみ」。小さな巻き貝で塩ゆでや醤油で煮たものを、ツマヨウジでほじりながら食べる。私はもっぱら居酒屋の肴としてご対面してきたが「昔は駄菓子屋にもあった」という一文を読んで、やはり海を抱える町らしいと思ったのだった。

 小学生がながらみをほじほじして食べている姿は、ほほ笑ましいというか、おやじみたいというか……。


 ご飯もの2題。


ぼくめし(いけずな京女さん提供)
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ぼくめし(いけずな京女さん提供)

MNo.27

 遠州の思い出の味、其の三。
 浜松と言えばうなぎ、うなぎと言えば夜のお菓子……ちゃうちゃう。
 「ぼくめし」をご存知でしょうか。
 これは、浜名湖のうなぎ漁師のまかない飯。昔は、大きすぎて売り物にならないうなぎを「ぼく」と呼んでいたそうです。これをごぼうと煮込んでご飯にぶっかけたのがはじまりとか。これが家庭料理としても広まり、今では品質の良いうなぎを使い郷土料理となっております。
 ごぼうを使うのはうなぎのにおい消しなのですが、ごぼうの風味がうなぎの旨みと調和して、美味しゅうございました。
 どこの土地でもありますが、活用されずに捨てられていた部位や廃棄処分されていた規格外の製品を上手に活用して生まれた料理が、ご当地名物になるのは先人の知恵の賜物ですね。現代人のあざとい「エコ」よりもよっぽど、環境にやさしいちゅうもんだ(いけずな京女さん)


 随分前だが、浜松出身の方から「うなぎはほっておくとどんどん大きくなる。大蛇みたいな大物こそ地元の人が好んで食べるもの」という話を聞いたことがある。それが「ぼく」のことなのだろうか。メスでも「ぼく」なのだろうか。

 ときどき行く神田のうなぎ屋は「静岡県産」を謳っている。運がいいと「うなぎの佃煮」に当たる。酒の肴なのだが、量が多いので少し残しておいて、締めとして白いご飯にのせお茶をかけて食べる。美味い。それでうな重とかは頼む必要がなくなるので助かる。店の人は全然いやな顔をしない。


桜えび、かりんとうにせんべいといろいろ
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桜えび、かりんとうにせんべいといろいろ

MNo.28

 朝ラーで話題の藤枝出身の者です。静岡には「さくら飯」という炊き込みご飯があります。見た目は醤油飯(愛媛のそれに近い)ですが、普通炊き込みご飯というと五目ご飯のように具入りですが、さくら飯は具なしです。なぜさくら飯というかはわかりませんが、とにかく給食では絶大なる人気でした。
  先日、新宿京王百貨店の駅弁大会に行った際に天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅の「どんこうなぎ弁当」の紹介で「さくら飯(茶飯)」とあり、いや茶飯はお茶で炊いたご飯で違うよと思わず突っ込みたくなりました。
 追伸。藤枝の朝ラーは自分も数年前に知りました。でもものすごく美味しいですよ。あと第2回に掲載された真夜中のとんこつラーメン、地元でも伝説のお店です。昔は昼間もやってたんですが、とにかく美味しかったという印象しかありませんね(浜松在住ウナギルスさん)


 さくら飯はさくらご飯とも。味付けは醤油と酒のみ。酒飲み? まあそうではあるが、こんなところに反応してどうする、と自分に言う。

 今週末は私が料理当番である。事情が許せばやってみよう。


せんべい汁がイタリアへ
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せんべい汁がイタリアへ

MNo.29

 先日、祖国から念願のせんべい汁パックが届いて初体験。日本の未知の味、少しずつ探検したいと思います。世の中、便利になったものです。
 さて、静岡産の配偶者がおりますので質問。
 おでんの「イトこんにゃくのグルグル巻き」は、静岡以外でも見られる現象なのでしょうか? 豚の腸の代役が牛のスジなのでしょうか?
 ネギと桜エビ、醤油味のお好み焼きが駄菓子屋で、子どもの定番おやつだったそうです。消滅するには惜しい味だと思いますが。
 黄金饅頭という大げさな名称は、他の地域にも存在するのでしょうか?(いためしばばあさん)


静岡駅で出くわした「びっくりドラ焼き」と「ミニ亀まんじゅう」(ミルフォードさん提供)
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静岡駅で出くわした「びっくりドラ焼き」と「ミニ亀まんじゅう」(ミルフォードさん提供)

 私への質問?ではお答えしましょう。

 まず、糸コンのぐるぐる巻きは東京のスーパーでも普通におでんだねとして売っておりま。牛すじは豚の腸の代役ではありません。関西では主役です。

 お好み焼きは質問ではないので、最後の黄金饅頭。日本には「シベリア」といってカステラとあんこを交互に挟んだパン系のお菓子があります。黄金はそれほど大げさではありません。何しろシベリアには黄金どころか膨大な地下資源が埋まっているのです。こっちの方がもの凄く大げさです。



MNo.30

 先日、実家のある兵庫県に帰った時のこと。ちょうど時期だったので神戸市・柳原にある蛭子神社に久しぶりにお参りに行ってきました。
 参道にたくさんの屋台が出ていましたが、その中に富士宮やきそばを発見!でも置いてあるソースはオタフクでした。私は本物(?)も食べたことがないので判断できませんが、きっと名前だけのものなのでしょう。
 名前を騙った屋台も出るなんて、富士宮やきそばってメジャーなんですね。でもそれでおいしくないと思われたら逆効果だし(小麦粉の違いがわかるおーじさん)


静岡駅の立ち食いそば屋さんのメニューに「かえ玉」(左)。富士駅の立ち食いそば屋さんのメニューに車内持ち込み用「持込どんぶり」(ミルフォードさん提供)
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静岡駅の立ち食いそば屋さんのメニューに「かえ玉」(左)。富士駅の立ち食いそば屋さんのメニューに車内持ち込み用「持込どんぶり」(ミルフォードさん提供)

 そうなのである。正月の寺社の前には全国で数え切れないほどの露店が出たが、料理名の商標権侵害が続出した。各地から情報とともに寄せられた写真を見ると、明らかに地元で食べているものとは似ても似つかぬものばかりだった。

 その多くが「B-1グランプリ優勝」といった看板を掲げていた。これももちろん商標権侵害である。

 おーじさんが見たという富士宮やきそばも、オタフクソースを使っていたのなら地元の人びとは穏やかではいられないのではないか。ともかくがっかりしたくなかったら、B級ご当地グルメは現地で食べるべし。


メニューに静岡コーラ(左、ミルフォードさん提供)。「しずおかコーラ」。長崎編のVOTE1位はカルコークでした(長崎のVOTE結果はこちら)
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メニューに静岡コーラ(左、ミルフォードさん提供)。「しずおかコーラ」。長崎編のVOTE1位はカルコークでした(長崎のVOTE結果はこちら

 今週は長崎実食編に向けたVOTE結果と自由記入の内容(こちらからどうぞ)を紹介する。念のためだが、VOTE項目に揚げた食べ物は、基本的に私が現地で食べたことがないものを選んでいる。すなわち、ほとんどが私にとって未知の味である。

 上位に来たものを優先してルートを決めることにしている。VOTE結果を見ながら実食の旅の行程をアミー隊員や一芸クンが考えるのである。そこんとこよろしく。

 なお、富山県実食編で「つつ竹」とあるのは「すす竹」のミスタッチ。ごめんちゃい。


 ではまた来週。引き続き静岡メールを待つ。

(特別編集委員 野瀬泰申)


>> ★今週のリポート「長崎県 食べるぞ! B級グルメ VOTE結果」はこちらからどうぞご覧下さい。



 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2011年1月28日


■静岡B級グルメ
・その1 セリそばと朝ラー食べてスマシ顔パンを振り返る
・その2 今日もお仕事、もつカレさま!豪雪を乗り越えた鳥取の「きずな」
・その3 うなぎはメスでも「ぼく」と言う「長崎県 食べるぞ! B級グルメ」VOTE結果
・最終回 「月見氷」の冷たい幸せサクラとカノジョとイカメンチ


■入門編:「食べBって何?」という方はこちらからご覧下さい
■実食編:<映像リポート>はこちら
料理・素材名から探す(インデックス)ページはこちら
食べB修行記、今週のリポート一覧


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