第32回 福島県実食編 なんじゃこりゃラーメンを食べ歩く

一芸クンの食べB修行記〜浜通りにハマる道理〜

相馬駅では「浜」の文字をあしらったカニとアンコウがお出迎え
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相馬駅では「浜」の文字をあしらったカニとアンコウがお出迎え

 取材1週間前。実食編のプランを練っていたアミー隊員が、突如「大衆食堂だわ!」と叫びました。宇宙からの電波でもキャッチしたのか、と周囲の人は目を合わせません。後になって、福島の吾妻さんの助言にインスパイアされた瞬間だったと知りましたが。

 この一言によって、福島県実食編は中通り(中部)から会津(西部)に大きく舵を切ることになったのです。

 しかし浜通り(東部)の魅力も捨てがたい。VOTEの選択肢のひとつ「相馬のホッキ飯」もあります。それならばと一念発起、自分はひと足早く福島入りして浜通りを巡ることにしました。

 今にして思えば、この時点でアミー隊員の深慮遠謀にハマっていたわけで……。


一念発起でホッキ飯

ホッキ飯
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ホッキ飯

 スタート地点は浜通り北部の相馬市。ホッキ飯を景勝地の松川浦付近で探すことも考えたのですが、時間の都合で市の南部、国道6号線沿いにある「道の駅 そうま」でいただくことに。

 「ホッキ飯」と聞いたとき、ウニ丼のようにご飯の上にホッキ貝の刺身がぎっしりのったものを想像しました。しかしこれは違った。ホッキ貝を使った炊き込みご飯、とでも言うべきでしょうか。調べてみると炊く際にはホッキ貝の煮汁だけを使い、身は後でのせることが多いようです。

 一口食べると、ホッキ貝の出しによってご飯の甘さがふくらんでいるのがわかります。それ自体は淡白な味わいのホッキ貝が、米にえもいわれぬ味わいを与えるのです。ウニ丼の主役はウニですが、ホッキ飯の主役はあくまでご飯。ホッキ貝は名脇役としてご飯を引き立てつつ、ほのかな潮の香りを漂わせ食べる人の郷愁を誘います。

原ノ町駅の駅弁販売。左上が「ほっきめし弁当」
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原ノ町駅の駅弁販売。左上が「ほっきめし弁当」

 JR原ノ町駅のホームでは、今も駅弁の立ち売りをしています。中をのぞかせてもらうと、「ほっきめし弁当」があるではありませんか。ホッキ貝の出しを吸い込んだご飯は、きっと冷めてもおいしいはず……しかしここはぐっとこらえて「見るだけ」に。

 ところで、食品を詰めて運ぶ木箱を「ばんじゅう」と呼ぶそうですが、駅弁の立ち売りで使う、たすきのついたこの道具は何と呼ぶのでしょうか。


 

昭和のメロディーと浪江の焼きそば

浪江駅と佐々木俊一記念碑、焼きそばをPRするのぼり
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浪江駅と佐々木俊一記念碑、焼きそばをPRするのぼり

 原ノ町駅からJR常磐線で太平洋沿いに南下し、浪江で下車。浪江町ではB−1グランプリにも出展している「浪江焼麺太国」が焼きそばによるまちおこしに取り組んでいます。太麺にたっぷりのモヤシ、濃いめのソース味が信条の浪江焼きそば。素通りする手はありません。

 浪江の駅前には、この土地出身の作曲家、佐々木俊一(1907−1957)の記念碑があります。そばに人が立つと楽曲がスピーカーから流れるハイテクな仕掛け。「高原の駅よさようなら」のメロディーに耳を傾けつつ「浪江焼麺太国」マップを眺め、その時間に営業している店を探します。

浪江焼きそば。太麺とモヤシの織り成すハーモニーが魅力
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浪江焼きそば。太麺とモヤシの織り成すハーモニーが魅力

 駅から歩いて数分の店に入りました。ねっとりしたソースを身にまとった焼きそばから立ち上る湯気が食欲をそそります。大量のモヤシがボリューム感を出していますが、麺がやわらかいため食べやすく、いっきに平らげることも可能です。

 黙々と食べていると、後ろの席から「他県から食べに来た」と話している声が聞こえました。まちおこしも少しずつ進んでいるようです。


 

ビッグでびっくり、いわきのB級

 さらに南下し、浜通り最南部のいわき市へ。ここに、個人的に気になるまちおこしの動きがありました。いわき市内の好間(よしま)町で進んでいる「よしまジャンボメニューでまちおこし」。読んで字のごとく、びっくりするような大きさの食べ物で地域をPRしようという取り組みです。

ジャンボメンチカツを販売している下坂浩一さん
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ジャンボメンチカツを販売している下坂浩一さん

 この日、いわき市街地のイベント「いわき産業祭」に関係者が出展していると聞き、会場に足を向けてみました。

 好間町商工会ブースには「ジャンボメンチ」「ジャンボシュークリーム」「ジャンボ玉子にぎり」と、目もくらむような巨大メニューの写真が並び、来場者の注目を集めています。「この2日間で100枚完売しました」と成果を語る下坂食肉店の下坂浩一さんの手には、重量1Kgを超えるジャンボメンチカツ。1枚1000円で、通常は予約販売しています。

 下坂さんがジャンボメンチを売り出したのは4年前のこと。大型スーパーなどの攻勢に専門店が苦戦を強いられる中、起死回生の一手として考案しました。ヒントになったのは、好間町にある「白土屋菓子店」が20年以上前から販売している「超特大ジャンボシュークリーム」です。

ジャンボメニューのパネルに興味を示すイベント来場者
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ジャンボメニューのパネルに興味を示すイベント来場者

 ほかにもジャンボメニューを始めていた店があり、商工会が呼びかけて昨年9月からまちおこし活動がスタート。現在10店舗がこの取り組みに協力し、13のジャンボメニューが提供されています。

 「今は『よしまのジャンボメニュー』だが、いずれ『いわきのジャンボメニュー』へ広げていきたい」と意気込みを語るのは好間町商工会の高橋孝光会長。「好間には、風光明媚な好間川があり、炭鉱があった頃の名残りで3つもの吊り橋がかかっている。町に来てもらえれば、きっと気に入ってもらえるはず」と、「入り口」としてのジャンボメニューに期待を寄せています。下坂さんの店ではゴルフコンペなどの賞品用にジャンボメンチ引換券を販売していますが、これにも「一度は好間に来てもらう」ねらいがあるとか。

 話を聞いている間も、ジャンボメニューのパネルに多くの人が引き寄せられてきます。「反応が面白いんですよ。まず最初にびっくりして、その後必ず笑顔になる」と、商工会の橋本一雄事務局長は目を細めます。一人では食べきれないので、家族や友達同士で「つつきあいながら」楽しく食べられるのも魅力なのでしょう。

(上)白土屋菓子店の「土」は正式には「、」が付く(下)シュークリーム1つだけが入った立派な箱
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(上)白土屋菓子店の「土」は正式には「、」が付く(下)シュークリーム1つだけが入った立派な箱

 と、ここまで聞いたらやはり「見るだけ」というわけにはいきません。イベント会場を後にして好間町へ向かいます。目指すはジャンボメニューの元祖、白土屋菓子店。実は数日前に電話で「超特大ジャンボシュークリーム」を予約しておきました。

 店に入ると、デコレーションケーキでも入っているかのような立派な箱が用意されておりました。代金は1680円。ケーキ屋さんで、この大きさ、この重さの箱に対しこの値段は決して高くありません。

 20年以上前、この店を訪れた一人の青年が「シュークリームが大好きな彼女のために、デコレーションケーキのようなシュークリームを作って欲しい」とオーダーしました。この無理難題に応えて誕生したのが超特大ジャンボシュークリームです。1つだけ作るのも何だから、といくつか作って店に置いたところこれが評判に。市内の募金活動に協力してくれた人に抽選でプレゼントするなど、折に触れて提供しているうちに、いつしか人気商品となりました。「遊びでやっていたんだけどねえ」とお店の方は笑います。

 これが息の長い商品になった理由のひとつには、宝くじとの関連があります。いわき市で2001年まで営業していた老舗の百貨店「大黒屋」にあった宝くじ売り場は、「大黒様の宝くじ」として人気を呼んでいました。市外、県外からも買いにくるほどで、その帰りに験を担いでジャンボシュークリームを、という人がいたのです。そうした背景があったのなら、他の店もジャンボメニューを、と考えるのもうなずけます。

 まちおこしとしての「よしまジャンボメニュー」は、まだ始まったばかり。今後の可能性は未知数です。彼女に大きなシュークリームをプレゼントしたい、という青年の「想い」が、お店の人の「遊び心」で具現化し、それが宝くじへ寄せる人々の「夢」とつながって、今は好間を、いわきを活性化したいという地元の「決意」によって広がっている――この「物語の連鎖」がどう展開していくのか、注目です。

>> ついに「超特大ジャンボシュークリーム」が全貌を現す 次ページへ進む

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