第210回 福岡県ご当地グルメ(その4、最終回) ひよ子だチロルだチロリアン

特別編集委員 野瀬泰申


福岡県

 鶏肉好き、サバは刺身で食べる、ラーメンはとんこつスープ、そしておはぎを置くラーメン屋台…。様々なエピソードが登場した福岡県編もいよいよ最終回を迎えました。
 最後を飾るのは、工業都市・北九州ならではの食と福岡の甘いもの。全国的知名度を誇るあのお菓子もあのチョコレートも、実は福岡県から生まれたものなのです。
 今週のおかわりは、毎年春恒例、在京のアンテナショップが合同で開催する「利き酒ラリー」の情報です
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鳥取県にウエルカニ!
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鳥取県にウエルカニ!

 先週は鳥取市に行っていた。駅前温泉、ドカ盛り料理、カニ三昧、ホルモンの暴れ食い。胃腸に過酷な3日間だった。

 鳥取県は人口60万人を切り、鳥取市も20万人に満たない。商店街にはシャッターが目立つ。しかし「ここに生きる」「ここを何とかする」と頑張っている人々が大勢いる。そんな人たちに出会ってきた。

 しみじみとして、内に熱情をたたえた街である。鳥取が好きである。

 好きであるが、あの寿司屋の刺し身はなんとかしてほしい。切り身としか思えない厚さで、3枚重ねると「さく」になる。もうちょっと薄く切ってほしいものである。店主はわざとやっていることを暗に認めた。しかも無類のいい笑顔で。

 また行きたいと思う。

刺身という名の切り身
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刺身という名の切り身

 さて福岡県編は最終回を迎えた。知らないことが続々登場して、私自身とても勉強になっている。今回はこのメールから。

門司港の「ちゃんらー」(松田さん提供)
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門司港の「ちゃんらー」(松田さん提供)

MNo.22

 門司港の「ちゃんらー」は、ちゃんぽん麺に和風出しをかけ、その上にモヤシ、キャベツ、豚肉を炒めたモノをトッピングしたシンプルな麺料理です。和風出しなのでラーメンよりもうどんに近いですかね。
 戦後の貧しい時代に安価で栄養のあるモノをという思いから生まれました。
 八幡の鉄鋼マンに愛されてきたのが餃子です。八幡ぎょうざ協議会の原田さんによれば、鉄鍋餃子、ひとくち餃子、スタミナ餃子、手羽餃子、スープ焼餃子、揚げ餃子など、スタイルは多種多様で、それら八幡に根付いた餃子を、総称として「八幡ぎょうざ」と呼んでいます。
 門司港は、戦後大陸からの引き揚げ者が上陸した港のひとつで、その後も鉄鉱石などの原料取引を通じて大陸との交流が盛んでした。そんな中国との交流・交易を通じて八幡の地に餃子が根付き、製鉄所を中心とした工場労働者に愛され、いまに至っています。
 鉄鍋餃子は、実は八幡が発祥の地とも言われています(小倉焼きうどん研究所の松田さん)

八幡餃子(松田さん提供)
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八幡餃子(松田さん提供)

「ちゃんらー」は未食。中華系の麺に和風出しをかけたものは各地にある。日中とか中華うどんとか名前は様々だが、わざわざ中華スープをつくる余裕がなかった小さな食堂などで生まれたもののようである。

 鳥取にも素ラーメンという食堂メニューがある。うどんつゆに中華麺、上から天かす(揚げ玉)という折衷料理である。

 福岡県における餃子は八幡、博多、久留米という三極構造になっている。どれも美味いが個人的には久留米を推したい。えこひいきである。

小倉発祥焼きうどん
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小倉発祥焼きうどん

 ただ鉄鍋餃子八幡発祥説にはある種の説得力がある。なにしろ鉄だもん。八幡にはかなわない。

 松田さんは奥ゆかしいのか、自分の団体の旗印である「小倉発祥焼きうどん」についてのアピールがない。遠慮?

 戦後間もなく小倉駅に近い「だるま食堂」で生まれたもので、乾麺のうどんをゆでてこしらえる。ソース味。発祥の店で食べたが、懐かしい味であった。

折尾生まれの「特ちゃん」(松田さん提供)
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折尾生まれの「特ちゃん」(松田さん提供)

MNo.23

 八幡におけるちゃんぽん、あくまで基本は正調ちゃんぽんなのですが、高校時代には周辺に普通にそうでないちゃんぽんも混在していました。
 折尾・橋本食堂の特ちゃん(特製ちゃんぽん)は野菜入りあんかけ中華風汁そば的な物件です。明日にも21世紀になろうかという時期に1杯180円。デザートにクリぜん(クリームぜんざい)を食べても300円。高校時代は大変おせわになりました。
 別の店ですが、麺がうどんのちゃんぽんうどんもありましたね。
 折尾から離れるとちゃんぽんという名のあっさりスープのラーメンも何軒か。おいしければいいのです(bainさん)

燗晩娘(松田さん提供)
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燗晩娘(松田さん提供)

 こうしてみると、変化球の麺類が多い地域である。メニュー名だけでは判断できない。「ちゃんぽんという名のあっさりスープのラーメンも何軒か」とあるが、素直にラーメンと言えばいいのに。

デスク この「特ちゃん」、写真を添えたくて小倉焼きうどん研究所の松田さんに「写真をお持ちではないですか?」とたずねたところ、わざわざ食べに行ってくださいました。橋本食堂はすでに閉店していて、現在は燗晩娘というお店が、折尾名物を守るべく、橋本食堂公認の「特ちゃん」を提供しているとのことでした。1杯300円だそうです。

春雨ちゃんぽん(ミルフォードさん提供)
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春雨ちゃんぽん(ミルフォードさん提供)

MNo.24

 門司港のアーケード街を歩いていた時に目に飛び込んできたメニューが「春雨ちゃんぽん」。折角なので満腹のおなかの一部をこじ開けて、食べてみました。
 醤油ベースのスープに、たくさんの具材、そして春雨。この場合、ちゃんぽんは具材たっぷりの麺という意味なのでしょうか。
 かつては門司港一帯でこのメニューを出す店があったようですが、今では数少なくなっているとか(ミルフォードさん)

湯粉条(ミルフォードさん提供)
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湯粉条(ミルフォードさん提供)

 こんな変化球もあった。熊本の太平燕(たいぴーえん)の親戚かな?

 麺類には香辛料がつきものである。私は次に登場する辛いものには、かろうじて耐えられる。

柚乃香(柚乃香本舗さん提供)
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柚乃香(柚乃香本舗さん提供)

MNo.25

 福岡県田川郡で「柚乃香(ゆずのかおり)」という柚ごしょうを製造、販売しております。
 いまは全国的に知られるようになった柚ごしょうですが、三大霊山のひとつ修験道の山、英彦山(ひこさん)で、もともと山伏の保存食として、また薬草として、永く受け継がれてきました。それを山伏の子孫として、1950年の創業から変わらぬ味を作り続けています。
 無農薬、肥料なしの野生のように育てた柚と契約農家による独自の栽培の唐辛子(こしょう)を使っています。
 味噌汁、豚汁、刺身、おでんなど和食はもちろん、中華、洋食の隠し味にもなんでも使える薬味です(柚乃香本舗さん)

洋食の隠し味にも(柚乃香本舗さん提供)
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洋食の隠し味にも(柚乃香本舗さん提供)

 文中にあるように「こしょう」とは唐辛子、それも青唐辛子である。福岡県のみならず九州では唐辛子もコショウもすべてコショウと呼称する。

 うどん屋でコショウといえば赤唐辛子。ラーメン屋に置いてあるコショウはペッパーのコショウ。なので、よそから来た人は混乱することがある。

苺ひよ子(大阪の原さん提供)
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苺ひよ子(大阪の原さん提供)

MNo.26

 写真はひよ子饅頭の新型「苺ひよ子」。中身はイチゴ色をしてませんが、一味違うイチゴ味です。「大ひよ子」や「家族ひよ子」やら、眷属(けんぞく)が増えて土産選びに迷う迷う。やっぱり、ひよ子は九州ですよ(大阪の原さん)

筑豊生まれ(大阪の原さん提供)
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筑豊生まれ(大阪の原さん提供)

 銘菓ひよ子は飯塚生まれ。東京に進出して、あっちこっちで売られているので、関東では「東京みやげ」と思っている人もいる。しかし、筑豊の炭鉱町、飯塚がルーツである。

 次に登場するのも筑豊生まれ。

チロルチョコ(池田さん提供)
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チロルチョコ(池田さん提供)

MNo.27

 コンビニなどでおなじみの「チロルチョコ」。パッケージには「販売者:チロルチョコ株式会社(東京)」と記されています。
 ここで田川市民の私は叫ぶのです。「チロルの発祥は田川市だ〜!」と。
 明治36年に田川で創業した松尾製菓株式会社が「チロル」ブランドでチョコレートを発売したのが昭和37年のこと。今も工場は田川市にあり、そこから日本全国へと「チロル」が送り出されています。
 地元を代表する製造業なので、田川市の小学生は、みな工場見学に行きます。私も数十年前に「リンリンランラン」の等身大パネルに出迎えられ、三つ山の「チロル」をもらって帰った記憶があります。

自分だけの「チロル」(池田さん提供)
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自分だけの「チロル」(池田さん提供)

 松尾製菓は、田川市民の貴重な「働き口」でもありました。私も1年ほどですがバイトさせてもらっていました。
 大好きな「チロル」がベルトでいっぱい流れてくる光景は圧巻です。そのうえ、工場で働く人には、売り物にならない商品を格安で購入できる特典も用意されていました。毎日ワクワクものでした。よく買って配ってたなぁ〜。
 今は、それを「アウトレット」として、工場横の専門店で一般に販売するようになりました。
 確かに安くてお得です。しかも人気商品は早々に売り切れてしまいます。平日のみの営業にもかかわらず、開店30分前には人が並び始め、オープン時には長蛇の列に…。あのワクワクは。今でも変わりません。

アウトレット店、開店待ちの行列
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アウトレット店、開店待ちの行列

 ぜひみなさんも、全国で唯一の「チロル アウトレットショップ」にいらっしゃいませんか?
 余談ですが、私が綴った「チロル」への熱い思いが、会社に通じたのか「マイチロル」販売開始前のモニターに選ばれたことがありました。おかげで、自分だけの「チロル」を作っていただけたのです。でも、あまりに嬉しくて、実はまだ1個も食べていません。もったいなくて…。冷凍庫で保管しています(田川ホルモン喰楽歩 池田さん)

配り歩きました(デスク)
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配り歩きました(デスク)

 チロルチョコは田川の誇り。

 BSジャパンの特番「食の産業遺産」のロケが田川であったとき、特別編の撮影と取材のために田川にやってきたデスクが、この「アウトレット」の行列に並んだ。

 あの大量のチョコ、デスクは全部食べたの?

デスク 池田さんと同様、配り歩きました。

 よく似た名前のお菓子が博多にある。間違わないように。

チロリアン(いけずな京女さん提供)
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チロリアン(いけずな京女さん提供)

MNo.28

 以前も申し上げましたが、京都の大学には九州出身者が多いです。なので、帰省土産がそろうとさながら九州物産展。
 その中で、当時の女子大学生(と呼ばれる時代が私にもあったのよ)に一番人気が、博多・千鳥屋の「高原銘菓 チロリアン」でした。
 バター風味豊かなロールクッキーの中に、クリームが詰まった懐かしい味わいのお菓子です。今から半世紀近く前に発売され、愛され続けているロングセラー。
 チロリアンという名前は、オーストリアのチロル渓谷に古くから伝わるロールクッキーをアレンジしたからだとか。
「高原銘菓」も「たかはら」という地名かと思ったら、「こうげん」すなわちチロル高原の銘菓、ていう意味でした。
 千鳥屋さんには「千鳥饅頭」という伝統銘菓があり、こちらも博多を代表する有名な和菓子。和菓子屋さんがいったいどうしてチロルのお菓子に出合い「チロリアン」を発売するに至ったのか。興味津々なのですが調べてもわかりませんでした(いけずな京女さん)

千鳥饅頭
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千鳥饅頭

 チロリアンに千鳥饅頭。大変懐かしい。子どものころ、豪華な豪華なおやつだった。もらい物でもしないと口に入らなかったのである。

 福岡空港や博多駅のお土産売り場に行くと、お菓子の種類が極めて多いことに気づくであろう。新旧取り混ぜて、所狭しと並んでいる。福岡は茶席の和菓子ではない。どちらかというとお茶の間向きのお菓子の宝庫である。

 YKヒルビリーさんからも「福岡は甘いものの豊富な土地柄」とのメールをいただいている。

 続いて出てくるものもお菓子に入れていいのか。

くろがね堅パン(中林20系さん提供)
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くろがね堅パン(中林20系さん提供)

MNo.29

 以前、木槌で叩き割って食べるせんべいが登場していたと思いますが、北九州名物「くろがね堅(かた)パン」も負けてないですよ。
 そもそもは大正末期に、官営八幡製鉄所が従業員のための食品として開発したものだそうですが、製鉄所がルーツなだけに《鉄の硬さ》としても有名です。
 ほんのりとした上品な甘さを持つビスケットともいえるのですが《健康はアゴから》とか《たいへん堅い商品ですので、歯の弱い方は、ご注意下さい》と書かれてたり…とにかく堅いです。歯の状態を問われます。
 もっとも、歯の弱い方には液体に浸すと柔らかくなって食べやすくなる旨も書かれてますが。
 かつては北九州土産として喜ばれましたが、ありがたいことに現在ではS城石井で一部商品を扱ってますので、思い立ったら楽しむことが出来ますし、お取り寄せという手もあります。でもせっかくですから、取材の機会に現地で手に入れて…野瀬さんには厳しいかなー…デスクにバリバリと楽しんでいただきたいものです(中林20系さん)

非常に堅い(松田さん提供)
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非常に堅い(松田さん提供)

 製鉄所で働く人々の栄養補助食品として開発された。「くろがね」は鉄のことである。したがって非常に堅い。堅すぎて噛めん。牛乳に浸しても噛めん。どうしても噛めんものは噛めん。しかもいまは前歯が仮歯。医師からは「堅いものはだめですよ」と言われている。

 デスクもそろそろトシだし、薦めません。

 福岡県で生まれたレストランチェーンがいくつかある。

ピエトロは東京・有楽町にもある
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ピエトロは東京・有楽町にもある

MNo.30

 子どものころの福岡の食で忘れられないことのひとつがレストラン。ファミリーレストランの雄「ロイヤル」とドレッシングの「ピエトロ」、そして味の街の「ウエスト」は福岡発祥です。
 実家の父の朝食は、おきゅうとではなくロイヤルのカイザーロールと決まっていました。それがないと父の機嫌が悪かったとか…(父の朝が早くてあまり見たことがない)。そしていいことがあったときにはシャーベット。これは、実をくり抜いたオレンジのなかにオレンジシャーベット、八つ切りくらいのメロンの皮にメロンシャーベットがのっている贅沢三昧なもの。年に何度も食べられなかったと思います。
 ピエトロはハイカラなパスタを食べさせる店として叔母などから話を聞いていました。ドレッシングでこんなに有名になるとは。
 そしてウエストは、うどんや焼肉店など複数店舗が1カ所に集まっている道の駅の先駆け的な複合施設。ただしそれぞれの店に入らなければいけないので、どこにするかを巡って小一時間論争に。車社会になる前から大きな駐車場があって、特別な日に家族でタクシーに乗って行っていたような…。
 そう考えると福岡ってファミリーターゲットの外食産業でも結構先進的だったんですね(MAYさん)

ウエストのうどんで朝ごはん(豆津橋渡さん提供)
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ウエストのうどんで朝ごはん(豆津橋渡さん提供)

 ロイヤルとピエトロは説明不要であろう。

 ウエストはMAYさんのメールにあるように、昔から複合飲食施設として展開してきた。珍しい形態である。

 ここのうどんは、私が好きな弱腰うどんである。

 この間、弊社西部支社の前を通ったら、1階にあった喫茶店がなくなっていてウエストが入っていた。社員食堂代わりになっているのではないかと思った。

 次のメールは目からウロコであった。そうだったのかウスターソース。

カゴメのウスターソース(みんみん(♂)さん提供)
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カゴメのウスターソース(みんみん(♂)さん提供)

MNo.31

 福岡県民の味覚の根底を形作る知られざる調味料。それは「カゴメのウスターソース」です。ほかのメーカーではダメなのです。中濃でもとんかつソースでもダメなのです。
 ひとくちなめると舌を刺すような、またキーンと脳天に響くようなまさに金属的な辛さで、いま考えるとどうしてこのソースを選び続けたのかと思うほどのキツい味ですが、でも福岡県民はありとあらゆるものに“シャバシャバ”とかけてしまいます。
 サツマイモの天ぷらにはマストアイテムであり、アジフライにカキフライに野菜炒めは当たり前。ちゃんぽんに、果てはカレーにまでかける人がいました。
 カゴメのウスターソースとケチャップを1対1で混ぜればあーら不思議、とんかつソースができてしまいます。お好みソースも同様に作れますから広島県民みたいにわざわざ買ったりしません。
 この「食べB」の前身である「食べ物 新日本奇行」の第1回を飾った「ソースでてんぷら」のきっかけとなった、野瀬さんの幼少期の記憶のなかのソースもこのカゴメのウスターソースではなかったでしょうか。
 カゴメ本社のある名古屋をのぞくと、福岡をはじめとする北部九州以外ではほとんど入手困難だったと言ってもいいこのカゴメのウスターソース。原料に砂糖が入っているあまーい醤油を愛する福岡県民が、なぜこんな嫌になるほど辛いウスターソースを偏愛するのか、福岡の食の最大の謎ではないでしょうか(みんみん(♂)さん)

カレーにウスターソース
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カレーにウスターソース

 私が子どものころ、何にでもかけていたソースは関西のものではなく、名古屋に本社があるカゴメのウスターソースだったのか。

 ラベルなんて見ないし、見てもわからなかったろうが、もしそうだとすればかなりの衝撃である。

 福岡実食の旅のときに、よーく観察してみよう。

 ところで文中に「果てはカレーにまでかける人がいました」とあるが、カレーにソースは当たり前やなかと? 母はカレーのとき、必ずソースの瓶を食卓に置いていたのだが。

 福岡県編の最後を飾るのはこのメール。ふるさと久留米のやきとりである。

久留米やきとり(豆津橋渡さん提供)
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久留米やきとり(豆津橋渡さん提供)

MNo.32

 一時は人口当たりのやきとり店の軒数が日本一でありました(県単位では福岡県が断トツで多いようです)。高度成長期初期には街中に百軒以上の屋台があったと言われている久留米市にはやきとり屋台が多く、そこから店舗に移っていったということがありました。
 さて、久留米のやきとりは、決して「焼き鳥」ではありません。メインは豚肉。国内で「やきとりの街」として有名な北海道の室蘭市埼玉県の東松山市も、実はメインメニューは豚です。
 古くからやきとり屋という職業形態は存在したものの、ブロイラーが普及する60年代までは鶏肉より豚肉のほうが庶民的であったのだと思います。高度成長期に街中に大きな工場を持つ街(久留米はゴム産業が盛んで、ブリヂストンの発祥の地)の労働者の貴重なタンパク源として、庶民的な「豚肉のやきとり」に人気があったのでしょう。

やきとり屋のメニュー(豆津橋渡さん提供)
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やきとり屋のメニュー(豆津橋渡さん提供)

 そして、軒数が多いと店舗間の競争が始まります。どこかの店の新メニューが人気だと聞けばすぐ取り入れ、家族連れやデートでも気軽に来られるように、座敷を充実したり、個室を用意したり、ドリンクもワインやソフトドリンクを充実させるなど熾烈な戦いです。だから久留米のやきとり屋はメニューが50種類くらいあるのはザラで、100種類ほどある店もあります。
 豚、鶏だけでなく、牛も馬も魚もなんでも串に刺して焼けば「やきとり」。巻物(豚肉やベーコンで野菜などを巻いたもの)も充実し、シュウマイなんかも串に刺すほど。
 また久留米では単に「やきとり屋に行こう!」というより「〇〇のダルムを食べに行こう!」「今日は鶏皮の気分やけん、△△に行こう!」ということが少なくありません。各店それぞれ「看板の串」があって、それを目当てにお店に足を運び、私が若いころはやきとり屋のハシゴなんかもやっていました(豆津橋渡さん)

久留米に行ったらぜひやきとり(豆津橋渡さん提供)
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久留米に行ったらぜひやきとり(豆津橋渡さん提供)

 説明不要。

 読者諸兄姉に告ぐ。福岡県に、いや久留米方面に行く機会があったら、ぜひやきとりを食べていただきたい。そして焼酎でも酒でもどんどん飲んで、酔っ払って終電を逃していただきたい。予定を変更して久留米に泊まっていただきたい。

 それが久留米にとって「無理やり1泊観光地」になる道なのである。

 ということで福岡県編は終了。

 次回は長野実食の旅リポート。その次から、いよいよ大阪府編である。

 ご関係の方は準備体操をよろしく。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「春の銀座で「はしご酒」〜ふるさと7県利き酒ラリー」です。ぜひお読みください。

福岡県編(その1) 鶏の乱舞にトリ乱す

福岡県編(その2) 死ぬまでサバを離さないぞ

福岡県編(その3) 「あぶってかも」は「うまかっちゃん」

福岡県実食編 ゆで卵1個10円、2個100円


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年2月27日

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