第72回 山口県ご当地グルメ(その1) サラリーマンじゃない「金太郎」

特別編集委員 野瀬泰申


 B−1グランプリ疲れもやっと癒え、今週からいつもの「食べB」に戻ります。

「食べB」14県目の舞台となるのは本州の西の端、山口県です。九州に隣り合わせ、山陽と山陰とが結ばれる場所でもあります。果たしてどんな食文化が登場するのか? ご期待ください。

 番外編ではアミー隊員が東京・日本橋にある山口県のアンテナショップ「おいでませ山口館」をリポートします。合わせてご覧ください。

 食べBのFacebookページを開設しました(http://www.facebook.com/tabebforum)。実食編地図など、オリジナルコンテンツも掲載していますのでぜひご利用ください

(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

デスクが食べた若狭のカレイ
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デスクが食べた若狭のカレイ

 下関に行ったのは10月14、15の両日であった。15日の午前中に水産大学校での用事を済ませるために前泊、用事が終わるとすぐに東京に戻ってきたので、街を見る時間はなかった。

 しかしながら福岡の西部支社勤務時代に「九州 この土地あの味」というコラムを書くために下関を訪れている。

 ふらりと入った小料理屋が「漁師の娘」というおかみさんの店で、地元で揚がったカレイの刺し身を頼んだら丸々1匹が出てきて往生したものであった。

「このカレイが大分に行くと○○カレイになるんです」

秋吉台(美祢市)
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秋吉台(美祢市)

 おかみさんは笑いながら言ったが本当なのであろうか。

 ともかく下関といえば魚、という印象が強烈である。そんな土地柄だから水産大学校があって水産物の流通や養殖などの生産技術、食品開発に携わる人材を育てている。

 別の取材で日本海側の長門市に行ったことがある。そこで地元の人からこんな話を聞いた。

「こっちでは冬になると刺し身は酢で食べるんですよ」

「どうしてですか?」

長門市仙崎で食べた「ウニ丼」。羨ましいですか?
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長門市仙崎で食べた「ウニ丼」。羨ましいですか?

「脂がのりすぎて醤油を弾くし、酢で脂を殺しながら食べるとちょうどいいんです」

 そんな話を聞いた翌日、金子みすゞの生家跡がある仙崎に足を伸ばした。ここは「仙崎かまぼこ」で有名。ウニでも有名。

 ということで昼に食べたのはウニ丼であった。値段は忘れたが、ご飯を覆い尽くすほどのウニがのっていた割にはそれほど高くなかった記憶がある。


金太郎(長州博士さん提供)
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金太郎(長州博士さん提供)

MNo.1

 山口県では有名な魚「金太郎」を知っていますか? 赤い小魚で、萩では日常の食卓に上るそうです。 私の出身は萩じゃないんですが、最近この「金太郎」にハマってます。
 特に写真のお刺身はサイコーですよ。小骨が多いので出してくれるお店は少ないですが。
 しかし、地元の萩ではお刺身ではなく焼いて食べるのが主流だそうです。最近はオイル漬けされた商品もあるようですよ(長州博士さん)

 萩の「金太郎」は珍しい魚で、平日はサラリーマンをやっているらしい。

熱血!!勝浦タンタンメン船団(本文とは関係ありません)
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熱血!!勝浦タンタンメン船団(本文とは関係ありません)

 ではなくて、標準和名は「ヒメジ」。加古川でも明石でもなくヒメジ。

 ヒメジで思い出したのはかつて小紙で連鎖していた「偏食アカデミー」である。そのコラムの書き出しは「オジサン、サンマ、タモリ、タケシ。この中で魚ではないものはどれ?」であった。

 正解は「タケシ」。つまりその他の魚は実在する。タモリは愛媛県編で「サングラスをかけて泳ぐ魚」として紹介した。念のためだが魚なのでサングラスは滅多なことではかけない。

サングラスなしのタモリ
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サングラスなしのタモリ

 そして残る「オジサン」こそヒメジなのである。あごの下に2本のひげをたくわていることからこの名がついたらしい。

 日本近海にはいろいろな種類のヒメジが生息し、様々な地方名がある。ある地方ではオジサン、萩では金太郎といった具合。

 いずれにせよ漁獲高が少ないため市場にはほとんで出ない。東京では見ることも食べることも難しい。私はオジサンの写真を撮るために大阪の水族館「海遊館」まで出かけた。

 関連が続く。

ふくっ子
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ふくっ子

MNo.2

○山口県のスーパーではこの時期どこでも「ふくの刺身(トラフグ以外のフグを含む)」が当然のように売られています。
○山口県には「魚ロッケ(ギョロッケ)」という魚のすり身を使ったコロッケが売られています。
○山口県でつくられるかまぼこには、地元でとれるウニやふくを練り込んだ製品もあります。
○山口県には、ふくの白子を使った豆腐があります。
○山口県では、かまぼこは自宅で食べるのが普通であり、県内の客のみを相手にする居酒屋に「板わさ」はありません(蔵本さん)

 「ふぐ」は山口では「ふく」。福を運ぶ魚なのである。かまぼことウニは私が仙崎で見た光景と重なる。

 ふくの白子を使った豆腐は、白子豆腐。私は白子が食べられない。宴席で出てきたら隣の人に押しつける。

場所は違っても、同じような物を思いつく
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場所は違っても、同じような物を思いつく

MNo.3

 山口県、デジカメを入手する以前の遠い昔に何度か行きました。残念ながら電子データがないので記憶をたどるのですが、萩か長門で「魚ロッケ」に遭遇。
「何じゃこれは?駄洒落商品か?」と思いつつ見てみると、よく見かける魚主成分の揚げ物。食べてみると当然のように美味しい(大坂の原さん)

 「魚ろっけ」または「ぎょろっけ」というとまず佐賀県唐津市のものを思い出す。続いて大分県津久見市を思い出す。鳥取中部では同じものを「コロッケ」と呼ぶ。

 そして山口県にもあった。魚のすり身に刻んだ野菜などを加え、パン粉をつけて揚げたもの。

 場所は違っていても、みんな同じような物を思いつくものである。

「天ペラ」(のブさん提供)
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「天ペラ」(のブさん提供)

MNo.4

 山口県で「天ぷら」とか「天ペラ」といえば薩摩揚げっぽいやつです。魚のすり身を揚げたもので、醤油で食べたり、おでんやうどんの具にしたりします(のブさん)

 

長門の焼き鳥に欠かせないもの
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長門の焼き鳥に欠かせないもの

 西日本では古くから魚のすり身揚げを「天ぷら」と呼んできたが「天ペラ」は初耳。

 もっとも九州では「せんべい」ではなく「せんぺい」と言うから、その辺はいいのか。

 先ほど長門市に取材に行ったと書いたが、それは焼き鳥の取材であった。焼き鳥を出す店がやたら多く、人口比だと久留米に匹敵するのである。

 現地を歩いてみると専門店というのではなく居酒屋などの定番メニューになっていて、年中魚を食べている漁師さんやその家族が「魚以外のものを食べたい」というときに活躍するのが焼き鳥。

同時進行でつまむ
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同時進行でつまむ

 博多や久留米とほぼ同じスタイルで、何でも串に刺して焼けば「焼き鳥」となる。キャベツもついてくる。

 違う点が2つ。ひとつは塩味が付いている焼き鳥にガーリックパウダーやサンショウをかけて食べること。

 そして焼き鳥を食べながら魚の干物も同時進行でつまむこと。どうしても魚を手元に置いていないと落ち着かない土地柄らしいのである。

 魚から離れる。

「おいでませ山口館」で買った茶そば(本文とは関係ありません)
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「おいでませ山口館」で買った茶そば(本文とは関係ありません)

MNo.5

 山口県東部地方(岩国市や柳井市)では昔から「茶がゆ」を食べる風習があります。釜に玄米茶を袋に入れてご飯と一緒に煮ます。
 冬の寒いときは体が温まります。お芋や餅を入れることもあります。夏の食欲がないときは、この茶がゆが胃に優しく漬物をおかずに食べると夏バテが解消します。
 前の晩に母親から朝早く出勤する父のためにに茶がゆを炊くと聞いた翌朝、冬の寒さの中で眠い目をこすりながら食べた記憶が鮮明によみがえります。
 小生は生まれも育ちも柳井市内ですが、どうも江戸時代の岩国藩吉川公の発案とのこと。茶がゆの発想はコメ不足から来ているらしく、なるほどご飯にするより茶がゆにすれば米は少なくて済みます。柳井市内の白壁通りに茶がゆを提供している飲食店もあります。初めて茶がゆを食べる観光客は、「おかゆ」と言えば白い、という印象があるのでしょうが茶色いおかゆにびっくりされる様です。
 全国的には奈良県にもこの風習がある話を聞いていますが、この茶がゆは吉川公の名残として山口県東部地域の歴史のある食べ物と自負しています(国弘さん)

 茶がゆは和歌山、奈良の郷土食。山口県東部にもあった。茶がゆは未経験である。二日酔いによさそう。二日酔いしなければもっとよいのだが。

 金沢のおでんの友は「茶飯」。棒茶(番茶)でお米を炊いたもの。私にとっておでんの友は酒以外にないので、金沢にいた3年を通して決して茶飯に手を出さなかった。食べておけばよかった。

丸漬と砂糖漬(いけずな京女さん提供)
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丸漬と砂糖漬(いけずな京女さん提供)

MNo.6

萩のお土産2題。

夏みかんのお菓子
 昔ながらの「酸っぱい夏みかん」は、糖度重視の新品種が増えてからは生産が大幅に減ってしまったそうです。でも、萩では変わらず特産品であり、愛され続けている果実。
 明治維新後、禄を失った士族救済のため、萩藩士小幡高政が夏みかんの栽培を奨励したことから広まりました。
 果汁がたっぷりなので、昔から労働の合間に喉の渇きをうるおすおやつとして食べられていたとか。
 夏みかんの果汁を合わせ酢に使った「夏みかん寿司」は萩の郷土料理です。夏みかんを使ったお菓子は、ふるさとのスイーツ。

しそわかめふりかけ(いけずな京女さん提供)
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しそわかめふりかけ(いけずな京女さん提供)

 上写真左は「夏みかんの丸漬」。夏みかんの果実をひとつひとつくり抜き、ようかんを流し込んだ上品な和菓子です。
 右は「青切りみかんの砂糖漬」。どっちも、甘〜いです。野瀬さんにはたぶんツライかも。

わかめふりかけ
 萩では、古来より天日干しのわかめをこまかく刻み、ご飯にふりかけたりおにぎりにして食べる風習がありました。なので萩土産には「わかめふりかけ」がぎょうさんの種類ありますねえ。
 写真は全国的にも有名な「しそわかめふりかけ」です。このままお酒のおつまみにもよろしく、これなら野瀬さんも食べられますね(いけずな京女さん)

オレンジ色のガードレール
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オレンジ色のガードレール

 さあ、隠れた本題の一角が登場した。萩の夏みかんは有名で、私も萩に行ったときに「夏みかんすし」を食べている。地ビールも飲んだような。

 実は山口県はみかん県なのである。

 山口県内の県道のガードレールはオレンジ色に塗られている。みかん県の象徴であるのだが、愛媛の陰にかくれてそのことがあまり知られていない。

 海の幸に山の幸。話がどんどん広がることを期待している。

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週の番外編は「おいでませ山口館」にいってきたほ(アミー隊員) です。お時間あれば、こちらもどうぞ。



実食編(前編) 徳山の屋台で飲んで日が暮れて

実食編(後編) ばりそばは「ばり」「ずる」「つる」の三重奏

山口県編(その2) 県庁食堂に「けんちょう」はあるか?

山口県編(その3) 牛骨ラーメン、ウッシッシ

山口県編(その4) 俺んち゛のミカンは鍋になる


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2011年11月25日

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