第193回 長野県ご当地グルメ(その1) 海はないが、漬物ならある

特別編集委員 野瀬泰申


長野県

 お待たせいたしました。沖縄県編の最終回から3週間を経て、長野県編がスタートします。
 本州の中央部に位置し、南北に長い「海なし県」。高い山が多く、その山並みが人や文化の流れを遮ることから、各地各様の食文化が期待できます。果たしてどんなご当地グルメが登場するのでしょうか。
 今週のおかわりは、28日にオープンする岡山・鳥取県の共同アンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」をデスクが紹介します
 食べBのFacebookページ(http://www.facebook.com/tabebforum)では、食べBの更新情報や裏話などをゆるやかに発信していますのでどうぞご利用ください

(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい記事の県別一覧はこちら食についてのメール投稿先はこちら

シカ発見!
<写真を拡大>

シカ発見!

 先週、テレビの特番ロケで岩手県釜石市に行ってきた。震災から1年後に被災地を旅して以来の再訪だった。 町並みは随分きれいになったが、目抜き通りに面して虫が食ったように空き地が点在している。津波で壊された建物の跡であろう。

 釜石の町を甲子川が流れている。かつてこの川にかかる橋の上に「橋上市場(きょうじょういちば)」があった。いまは駅前のビルに移転して何もないが、橋の上から川面を眺めていたら、こんな動物がいた。立派な角を持つ雄のシカである。

たまたま釜石線を走っていたSL銀河号に遭遇
<写真を拡大>

たまたま釜石線を走っていたSL銀河号に遭遇

 地元の人の話によると釜石ではシカ、イノシシ、サルの被害が年々大きくなっているとか。サルを除いて害獣駆除が行われているそうである。

 特に言いたいことはなくて、シカの写真を撮ったので見てねという話。

 さて今週から長野県編である。

糸魚川−静岡構造線を行く」で縦断しているので、かなりの物は見たが、まだ知らないことばかりである。皆さんとともに、長野県の食の文化を考えていきたい。

 スタートはこのメールから。

赤かぶの甘酢漬けとすんき漬(まるちゃん提供)
<写真を拡大>

赤かぶの甘酢漬けとすんき漬(まるちゃん提供)

MNo.1

 今年、名古屋から御嶽山の麓の王滝村に移住してきた者です。
 王滝村では、お弁当などに「赤かぶの甘酢漬け」を持って来る人が多く、よく分けてもらいます。村の人の家に遊びに行っても、よく出てきて、とても美味しいです!
柔らかい質感であっさりしているので、いくらでも食べられます。
 王滝かぶ(赤かぶ)の収穫を手伝ったのですが、キレイな赤紫色でした。皮をむくと白いのですが、酢につけると、赤かぶに含まれる天然色素が酸性と反応して赤くなるそうで、鮮やかなキレイな色です。
 また王滝村では、赤かぶの菜で「すんき漬」という漬物をつけます。すっきりした酸味で、私はかなり好きな漬物です。
 乳酸発酵食品で、無塩で食物繊維が多く、体にも良いそうです。
抗アレルギー作用も期待されているので、花粉症が軽くなると良いのですが。
 冬季限定の「すんきそば」はまだ食べたことがないですが、人気のようです。王滝村の寒さは厳しそうですが、すんきそばを食べるのは楽しみです(まるちゃん)

すんき漬(まるちゃん提供)
<写真を拡大>

すんき漬(まるちゃん提供)

 赤かぶの漬物というと山形県鶴岡市のものが頭に浮かぶ。中でも温海(あつみ)かぶが有名である。しかしながら長野の赤かぶも古い歴史を持っている。

 すんき漬けは塩を使わない乳酸発酵の珍しい漬物。

 私は岐阜県実食の旅で赤かぶの漬物を買い、すんきそばを食べた。場所は馬籠宿。2005年の県境を越えた合併まで長野県の木曽地方に属していたところであるから、こういうものがあったのだった。

 すんき漬けは季節はずれだったので本物ではなかったが、それでも独特の酸味が食欲をそそった。

 長野県と漬物の関係は尋常ではない。

漬物の素いっぱい(じろまるいずみさん提供)
<写真を拡大>

漬物の素いっぱい(じろまるいずみさん提供)

MNo.2

 現在のオットは信州男子です。おまかせください。
 長野といえば、漬物です。
 それはもう息を吸うように野菜を漬け、息を吐くように供するのです。
 家に上がって挨拶もそこそこに出されるものは何か。漬物です。
 隣の家に用事をするついでに持たされるものは何か。漬物です。
 用事を済ませて辞するとき、お礼にいただくものは何か。漬物です。
 お茶請けは漬物。食卓にも漬物。そして火葬場にも漬物。義祖母の葬儀の際火葬場で出された、大鉢に山と盛られた漬物の量に驚き、それがみるみるはけていくのに驚き、そしてその美味しさには本当に驚きました。

酒粕もいっぱい(じろまるいずみさん提供)
<写真を拡大>

酒粕もいっぱい(じろまるいずみさん提供)

 そんな長野ですから、スーパーの漬物コーナーの充実っぷりときたら、とんでもありません。ぬか床やいりぬか、浅漬けの素、酒粕、漬物カラシ漬物用こんぶなどで棚はいっぱい! 東京にもそれくらい売ってる? ノンノン、メーカーと量のバリエーションがケタ違いなのですよ。
 例えば酒粕は500グラムの小さいものから、1キロ、3キロ、5キロ、10キロと、いくらでも入り用な量を買うことができます。もちろんその隣には、それだけの酒粕と野菜を漬け込むことのできる大きな樽も。
 浅漬けの素だって何種類あるのか数えきれません。漠然と「今日はきゅうりを漬けようかしら」なんて甘い考えでスーパーへ行ったなら、ぬかと味噌とカラシと酒粕と浅漬けの海に溺れてしまうことでしょう

各種漬物の素(じろまるいずみさん提供)
<写真を拡大>

各種漬物の素(じろまるいずみさん提供)

 さらに「さっぱり漬けの素」「パリっと漬け」「まろやか漬け」「漬物用酵母」なんてものまであって、もう何がなんだか。
 火葬場であれほど漬物をいただいたにも関わらず、家に戻ればまた漬物をお供にお茶をいただくのが信州スタイル。そして他県人から見たら信じられないほどお茶を頻繁に注ぎ足すのも、信州スタイル。
 ほんの少し口をつけただけで、即注ぎ足される様は、わんこそばならぬ、わんこ茶といってもいいほどです。長野に来られたら覚悟しておいてください(じろまるいずみさん)

漬物用酵母まで(じろまるいずみさん提供)
<写真を拡大>

漬物用酵母まで(じろまるいずみさん提供)

 構造線の旅で新潟県から長野県に入った途端、スーパーの漬物材料売り場がでかくなった。そのことは旅日記に書いている。

 それから長野県を北から南に縦断しながらスーパーの漬物材料売り場を観察することになる。メールにあった大量の酒粕も頻繁に目にした。

 冬場に野菜をどう保存するかという切実な事情から生まれた漬物文化は、1年中新鮮な野菜が手に入る時代になっても生き残っている。

 長野は漬物王国である。

 すんきそばが登場したが、信州はそば王国でもある。

お煮かけそば(いけずな京女さん提供)
<写真を拡大>

お煮かけそば(いけずな京女さん提供)

MNo.3

 社員旅行で別所温泉に行った時、旅館の朝食で出たのが「お煮かけそば」。
 すごく美味しくって、売店でカップ麺を売ってたのでお土産にぎょうさん買うて帰りました。
 主に北信濃で食べられている、季節の野菜や山菜、油揚げ・きのこなどを入れた具だくさんの汁とともに食べる温かいおそばです。煮込んだ具をかけるから「お煮かけ」とのこと。
 家庭ではおそばに味噌汁をかけたものもこう呼ぶそうですが、その味噌汁も具沢山であるとか。
 冬場は干し野菜を使うことで厳しい寒さにも身体が温まり、野菜不足も解消できるという、生活の知恵ですね。
 野菜の甘みやきのこの旨みなどが汁に溶け込んで、おそばの違った魅力が味わえます。信州の人には懐かしい、他府県の人には新しい、温故知新の郷土料理かな、と思いました(いけずな京女さん)

知らない…(いけずな京女さん提供)
<写真を拡大>

知らない…(いけずな京女さん提供)

 東京で「けんちんそば」と呼ぶものに似ている。しかし、そばに味噌汁をかけるというのは知らなかった。

 私のデスクの隣は高遠出身の編集委員。

「お煮かけそば、知ってる?」

 と聞いた。

「知らない」

 とそっけなかった。長野県は広いからなあ。

 そばは座って食べるとは限らない。

軽井沢「おぎのや」で(中林20系さん提供)
<写真を拡大>

軽井沢「おぎのや」で(中林20系さん提供)

MNo.4

 B食の代表といえば“立ち食いそば”ですが、信州においてはその数の減少にこころ痛めつつ、一方で素晴らしいそれを提供しているところには嬉しく思います。
 で、今やゆでめんを温める系よりは“生そばをゆでる”系が要チェックです。有名なところでは軽井沢駅構内の「おぎのや」。「峠の釜めし」で有名なこの会社自体は群馬・横川ですが、ここでも弁当販売や立ち食いそば営業を行ってます。
 ここは素晴らしいですよ。おぎのやのそれが立ち食いそば店の元祖だそうですし、立って食べる店ながら内容は座る店以上と思います。
 軽井沢だけではありません。篠ノ井駅改札外にある店「そば処あんず」には普通のゆでめんを使った通常メニューと、一方で《特上》と冠された生そばメニューの2本立てです。
 40円の差ですし、特に急ぎすぎでないなら特上で楽しみたいものです。実際、美味しかったですよ。
 日本を代表するそば処、立ち食いでもさすがに違いますね(中林20系さん)

篠ノ井駅「そば処あんず」で(中林20系さん提供)
<写真を拡大>

篠ノ井駅「そば処あんず」で(中林20系さん提供)

 東京の立ち食いそばも、ゆでおきは少なくなり、生麺をゆでる店が増えた。チェーン店からしてそうである。 となると、そばの品質勝負なのだが、メールに登場する信州の立ち食いそばの店は、相当の水準にある。

 私はそばっ食いではないけれど、そこそこ好きなので、実食編の折に挑戦してみたい。

 長野県のスーパーで目に付いたのは、先ほど登場した漬物材料の豊富さと、コナモノの多様さである。つまり様々なコノモノで食べ物をこしらえる文化がある証左であろう。

そばおやき「なす」(大阪の原さん提供)
<写真を拡大>

そばおやき「なす」(大阪の原さん提供)

MNo.5

 長野観光といえば「おやき」。歩き食いには「おやき」。小腹が減ったら「おやき」。問答無用でございます。具材が多々あって迷うのが良いです(大阪の原さん)


おやきの具は多彩(大阪の原さん提供)
<写真を拡大>

おやきの具は多彩(大阪の原さん提供)

 送っていただいた写真でもわかるように、おやきの具は多彩。観光客にとってはありがたい。

 もっとも、米が取れない山間部では長い間、主食の一部であった。名前の通り、いろりで焼いたのだが、最近は蒸したものを目にすることが多くなった。簡単だもんね。

 というわけで、今週はこれまで。地元の方からのメールを待ちたい。

 今週末は「あの年この歌」の収録。来週前半にはまた特番のロケで出かける。定年を過ぎたというのに、何だか忙しい。

 ついでながら、上記番組は次週から曜日が変わって毎週金曜日23:00からの放送になる。

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「岡山・鳥取の共同アンテナショップ、28日オープン」です。ぜひお読みください。

長野県編(その2) 伊那にもあるよ、まんじゅうの天ぷら

長野県編(その3) サバ缶、そんなにどうするの?

長野県編(その4) これもコナモン? 粉豆腐

長野県実食編 上田の「やきそば」、ランクは上だ


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2014年9月26日

【PR】

【PR】

【PR】

大人のレストランガイド

大人のレストランガイド

NIKKEI×ぐるなびが提供する、大人のためのグルメガイド。接待や会食、ビジネスシーンなどにおすすめのお店情報をご紹介。

ぐるなびWoman

ぐるなびWOMAN

女性のための女子会・デートのグルメ情報サイト。おすすめのレストランや居酒屋をこだわりやシーンに合わせて検索できます。

ぐるなびWedding

貸切パーティコレクション

企業向け貸切、OB会etc… 少人数〜大人数でも貸切OKのレストラン

結納・顔合わせ

特別な日を過ごすための完全個室のお店情報や、マナー・段取りまで

このサイトについて

日本経済新聞社について