第43回 長崎県実食編(後編) 三度の飯より佐世保のサンド

特別編集委員 野瀬泰申


あらすじ

 読者の皆様から寄せられるメールによって各地のB級ご当地グルメを探る「食べB」、7県目の舞台は長崎県。本編終了後、それらB級グルメを現地で食べる「実食編」取材のため、野瀬は長崎へと向かった。最初の目的地は五島列島の福江島。美しい自然と、椿油を使ったうどん、島の焼酎、豊富な海の幸を堪能し、意気揚々と長崎港行きの船に乗り込んだ野瀬であった――。

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長崎県本編その1)、(その2)、(その3)、(最終回)へ。
(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい。食についてのメール投稿先はこちら


 2011年2月6日(日)。

重厚な文明堂総本店
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重厚な文明堂総本店

 長崎港のビルを出ると、すぐに真っ赤なランタンが目に飛び込んできた。ちょうどランタンフェスティバル(2月3〜17日)の期間にぶつかっていたのだ。

 信号を渡ってカステラの文明堂総本店に入る。1900(明治33)年創業の老舗で、店舗も木造2階建ての重厚な造り。一芸クンがここで桃カステラを買う。

 途中に張り紙というか、手書きのポスターというか、地元の人が「一句浮かびました」みたいな感じで書いた紙が何枚も張ってあった。その中に「朱いランタン 石畳 景色もチャンポン 食べるもチャンポン」というのがあった。上手いんだか下手なんだか。

ランタンフェスティバル期間中は巨大なオブジェも出現
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ランタンフェスティバル期間中は巨大なオブジェも出現

 一芸クンのベルトからはみ出したシャツを見ながらついていくと、アーケードの商店街が見えてきた。ここが長崎市の中心街。アーケードの下にはズラーっと深紅のランタンがつり下げられ、視界全体が赤く染まるほど。市内全域で15000個のランタンが飾られているという。

 いま私たちは「夕月」に向かっているところである。商店街の通りの真ん中にもワゴンの店がたくさん出ている。道の両脇の常設店も外にワゴンや派手な看板を掲げて祭りのムードを煽っている。そのとき看板のひとつが目に留まった。

 「しるこぜんざい」
 しるこ? ぜんざい? しるこぜんざい?
 よくわからないが追究している時間がない。



 「ここです」

夕月カレー
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夕月カレー

 一芸クンの声に、私は足を止めた。呉服店の2階に「カレーの店 夕月」はあった。階段を上ると、全く肩肘を張っていない、むしろゆるい空気が流れている。正午の店内は半分の入り。これから混むのであろう。

 迷う必要もなく「夕月カレー」のセットを注文する。出てくるまでメニューを見たり、店内の様子をうかがう。店ではレトルト、いや袋詰めしたカレーのルーを売っていて、それだけ買っていく客も多い。

 おっと、カレーが登場した。いただいたメールの表現そのままに、オレンジに近い鮮やかなビジュアルである。具はほとんどなく、さらりとしたルーでご飯をかき込む。一見、赤い殺意に似た色ながら、殺意はゼロに近い。スパイシーではあるけれどかすかに甘い。一体何でできているのだろうかという味である。薬味は福神漬けとラッキョウという優等生2人組。あっという間に完食した。夕月カレーは単品だと500円。

カツカレーは単品で750円
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カツカレーは単品で750円

 私はカレーを真上から眺めてみて感心した。ルーが見事な三日月を描いているではないか。夕月カレーはここから来たか、それとも夕月だからこういう盛りつけになったのか。

 そこで取材……いや、時間がないのだそうである。一芸クンがそう言っている。

 すぐに店を出て商店街を歩く。歩きながら各種トルコライスの写真を撮る。各種ハトシの姿を撮影する。各種カステラの切り落としや「きれはし」を目撃する。



トルコライスのサンプルとカステラの「きれはし」
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トルコライスのサンプルとカステラの「きれはし」

 「ここだ」

 メモを見ていた一芸クンが、とあるビルの前で言った。

 「ここでカルコークを飲みます」

 スタスタと階段を上がる。するとそこには由緒正しそうな喫茶店があった。

昔ながらのたたずまいで営業する喫茶店
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昔ながらのたたずまいで営業する喫茶店

 「ウミノ 観光通店」であった。昭和30年創業で、昔はHi・Fiスピーカーで輸入レコードを流し、ピアノの生演奏の時代もあったのだという。いまも長崎の喫茶店の正統を伝えるたたずまいで営業を続けている。

 テーブル席に着いてカルコークとミルクセーキを注文する。やがて2品が同時に運ばれてきた。まずカルコークを一口。

 おや? 一芸クンが東京でやった 「勝手にカルコーク選手権」で飲んだどれとも味わいが違う。ただ甘いだけではなく、カルピスとコーラの味が完全に混ざっていない。ストローの深さによって味が微妙に異なるのである。下がカルピス、上がコーラというように。

カルコーク(左)と食べるミルクセーキ
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カルコーク(左)と食べるミルクセーキ

 味見した一芸クンもそのことにすぐ気がついた。

「私がやってきたものは何だったんでしょう」

 食べるミルクセーキは久留米で散々経験しているので、改めて確認しただけ。私にとってミルクセーキは長いスプーンですくって口に運ぶものである。昔からそう決まっている。

 勘定を済ます前に一芸クンが店の人になにやら尋ねている。どうもカルコークの作り方を教わっているらしい。何か教えてくれた?

一芸 はい、丁寧に教えてくれました。一子相伝の奥義かもしれないので詳しくは伏せますが、単純にカルピスとコーラを何対何で混ぜる、というようなものではないことを知りました。この店の場合、カクテルを作るノウハウを生かしているようです。確かにノンアルコールのカクテルのような味わいでしたね。



鯨製品の数々
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鯨製品の数々

 さあ、時間がない。急ごうじょ。

 これから私たちは電車に乗って佐世保に向かう。長崎市滞在は2時間ほど。スーパーをのぞくいとまもない。従って各種蛍光食品には合えずじまいである。

 JR長崎駅には鯨製品を置いている店があった。ご覧のような豊富な品ぞろえ。この品ぞろえがいつまで続くか不明なるも、長崎の人びとは鯨と深い関係を結んできた。肉じゃがならぬ鯨じゃがが給食で出たという長崎なのである。

特急かもめ(白いかもめ)
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特急かもめ(白いかもめ)

 特急で長崎から諫早へ。そこで快速に乗り換えて佐世保へと急ぐ。というのも佐世保で開かれている食のイベントに参加する予定なのだが、その終了の時間が迫っている。急げ急げなのである。

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