第102回 岡山県ご当地グルメ(その3) 餅つき大変、パンにしよっ!

特別編集委員 野瀬泰申


 県庁所在地・岡山からデミカツとえびめしが登場し、さらなる盛り上がりを見せている岡山県ご当地グルメ。3回目となる今回は、野瀬が興味津々だった「法事パン」についてのリポートが寄せられました。果たして「法事パン」の実態とは…。
 今週のおかわりは、デスクが夏休みに東北各地を訪れて食べてきたご当地グルメの最新情報をリポートします。あわせてご覧ください。
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デスクが食べた十和田のバラ焼きピザ
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デスクが食べた十和田のバラ焼きピザ

 お盆明けの週末、実食編の取材で一芸クンと一緒に岐阜県各地を回ってきた。

 暑かったのなんの、日なたにいると蒸発しそうであった。若いころは平気だった暑さだが、還暦を過ぎた身には本当にこたえる。

 しかしながら2日目は県内在住の同人の案内で、スピーディーかつ効率的な取材ができた。ありがたいことである。

 岐阜の旅については岡山県編が終わった後にご報告する。

 その間、デスクは東北方面で親孝行をしていたらしい。親孝行はどんどんやるべし。

 では本編。

「法事パン」の正体が判明した。

焼き餅風のパン(本文とは関係ありません)
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焼き餅風のパン(本文とは関係ありません)

MNo.18

 私は岡山県北部真庭市で昭和22年に生まれた65歳ですが、現在は大阪府堺市に住んでいます。
 子どものころ、法事に参列する近い親戚は自宅でお餅をついて重箱に入れてお供えしていました。そして法事が終わったら参列者に分けていました。
 自宅でお餅をつくのは手間がかかり大変なので、パンをお供えするようになりました。
 昭和37年に祖父が亡くなりましたが、そのときにはお餅の方とパンの方があり、お餅の方がだいぶ多かったことを覚えています。
 パンはあんパンに限らず、菓子パンがいろいろ入っていました。今でも続いているのではないでしょうか(あられちゃん)

餅つきは大変
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餅つきは大変

 私は誤解していた。法事パンは法要を営む家が用意して参列者にお礼の意味で配るものと思っていたが、そうではなくて参列者がお供え用に持ってくるものであった。法要が終わってから、それを参列者全員に配るのである。

 もともとは餅をついてお供えしていたのだが、餅つきが大変なのでパンに替わった。

 なるほどねえ。

調査開始!(近鉄野郎@日生さん提供)
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調査開始!(近鉄野郎@日生さん提供)

MNo.19

 8月11日に、我々日生カキお好み焼き研究会発足当時の元祖メンバー4名と我々の仲間で県北在住のタケちゃんの計5名で「グルグルおかやま合唱団」公式Tシャツを着て岡山県内を巡る旅を行いました。
 そのタケちゃんの住む真庭市落合地区では、懸案の「法事パン」が今現在も実施されているということで、早速、我々はひなびた商店街の中にある「(有)かとうストアー」で調査を行いました。
 落合地区では、現在でも葬式や法事の際に50個程度の「法事パン」を箱詰めにしてお供えをするそうで、1回の法事で数百個のパンが集まるそうです。
 集まったパンは、おさがりとして参列者に10〜20個ずつに分けて持って帰ってもらうそうですが、それでも当家では食べきれないパンが残ってしまい、その処分にはみんな頭を悩ませるとか。

95円のあんパン(近鉄野郎@日生さん提供)
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95円のあんパン(近鉄野郎@日生さん提供)

 タケちゃん宅では、家族がそれぞれの職場や学校などに手分けして持っていって、食べてもらったそうです。
 「かとうストアー」で店員の女性とその場に居合わせた同地域のお寺の住職に聞いたところでは、法事パンの風習は昭和30年代に始まったそうで、それまでは各家で法事の際には餅をついていたそうですが、手間がかかって大変だということでパンに切り替わったのではと言うことでした。
 法事パンに用いられるパンですが、お店の女性の話では「95円のあんパン」ということで、いわゆる「あんパン」類ですが、中身は、こしあん、つぶあん、白あん、ウグイスあん、クリーム、ジャムに限られるとのことで、それ以外のトッピングがされたものや真ん中を切ってクリームをはさんだもの、菓子パンや調理パン等は対象外だそうです。
 そもそも、なぜ法事のおさがりに餅が配られていたかということについては、タケちゃんの見解では、法事の手伝いに女手が出てしまうことから、家族の食事の準備ができないため、持ち帰ってすぐに食べられる餅が配られていたものが、餅をつくのが大変になったことから、パンに置き換えられるようになったのではとのこと。
 蛇足ですが、兵庫県赤穂市では葬式の参列者には、「ヤマ菓子」という、箱に入ったクッキーが1人1箱配られます。いわゆる葬式の「参加賞」のようなものですが、立飯(いわゆる香典返し)とは別物です。今回一緒に調査をした岡山県人たちは知らないとのことでした(近鉄野郎@日生さん)

「グルグルおかやま合唱団」のTシャツ(近鉄野郎@日生さん提供)
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「グルグルおかやま合唱団」のTシャツ(近鉄野郎@日生さん提供)

 これで決まりであろう。

 葬式や法要に出る人が法事パンを大量に買って供える。それを配る。

 しかし配りきれないものが残る。一生懸命食べる。食べきれないから職場や学校でまた配る。

 発生は昭和30年代。そして「トッピングがされたものや真ん中を切ってクリームをはさんだもの、菓子パンや調理パン等は対象外」である点にも留意したい。

 兵庫県赤穂市の「ヤマ菓子」も実に面白い。法事におけるパンや菓子の存在に興味津々な私である。

 真庭市といえば蒜山(ひるぜん)高原。

プレミアムソフトクリーム(カラスダニ@松山さん提供)
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プレミアムソフトクリーム(カラスダニ@松山さん提供)

MNo.20

 蒜山ジャージー牛乳を使ったプレミアムソフトクリーム。ホルスタイン種より濃厚なこの牛乳を使ったこだわりのソフトクリームが話題になっているようです。売っているのが後楽園内の売店ですので、観光とセットできるのは便利だと思います。
 次に、黄ニラ(クリックすると写真が開きます)
 これ自体は主役になりえないのですが、岡山は黄ニラの一大産地。派生メニューが数多く考案されています。彩りと歯ごたえが特徴です(buraiさん)

撮影台(近鉄野郎@日生さん提供)
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撮影台(近鉄野郎@日生さん提供)

 近鉄野郎@日生さんから蒜山高原の牛乳瓶型撮影台の写真が届いている。牛乳好きの私は、いま冷たい牛乳が飲みたい。ぐびぐび飲みたい。

 黄ニラは岡山県が全国の7割を生産しているとか。まだ一般的な食材ではないが、錦糸卵の代わりに黄ニラをつかったばら寿司を普及させようという動きがある。

 ばら寿司? ならば岡山じゃけん。

昭和54年の祭ずし(ミルフォードさん提供)
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昭和54年の祭ずし(ミルフォードさん提供)

MNo.21

 お盆休みに納戸の整理をしていたら「駅弁スクラップブック」が出てきました。子どものころから駅弁が大好きだったので、旅先で食べた駅弁のラベルを持ち帰りせっせと貼っていたもの。その中の一冊から昭和54年当時の「祭ずし」のラベルを発見。
 昭和54年4月2日に食べているようです。15歳の春、友人とふたりで岡山、鳥取を旅したとき、確かに食べたことを思い出しました。
 相当気に入ったようで「非のうちどころないくらいうまい。おそらく過去No.1」と、生意気な手書きコメントが。
 ラベルを見ると、当時は宇野駅でも販売されていたようですね。宇高連絡船の乗換駅で、多くの旅人が四国との行き帰りのお供に「祭ずし」を手にしていたのでしょうね(ミルフォードさん)

駅弁「祭ずし」(ミルフォードさん提供)
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駅弁「祭ずし」(ミルフォードさん提供)

 15歳のミルフォード少年が、目を輝かせて「祭ずし」をかき込む姿が浮かぶ。しかも「非のうちどころがない」という評価だったのだから、よほど美味かったのであろう。

 私も駅弁好きだが、スクラップまではしていない。貴重な財産である。

「祭ずし」は岡山市の三好野本店の登録商標。ミルフォードさんが食べたものがそうである。一般名詞は「岡山のばら寿司」または「岡山のちらし寿司」。

岡山ちらし寿司(中林20系さん提供)
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岡山ちらし寿司(中林20系さん提供)

MNo.22

 岡山のスーパーで夕食を物色していたときのこと。寿司コーナーには太巻きや握り寿司などと並んでちらし寿司もあったんですが、それには「岡山ちらし寿司」と書かれていました。
 岡山は、いわゆるバラちらし(ばら寿司)の発祥の地らしいですね。調べてみるとその誕生秘話が面白いんですよ。
 この「岡山ちらし寿司」も、一般的な具だけでなくサワラの酢〆やアナゴやハマグリやシャコなどなど、瀬戸内感のドライヴした楽しいちらし寿司でした(中林20系さん)

誕生秘話(大阪の原さん提供)
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誕生秘話(大阪の原さん提供)

 誕生秘話というのは次のようなもの。

 江戸時代の岡山城下で倹約のための「一汁一菜令」が出た。反発した庶民は桶の底に豪華なおかずを敷き、その上にわずかな具材を混ぜ込んだ酢飯を詰めた。

 見聞の役人が上から見ると質素な寿司だが、ひっくり返せば立派なばら寿司。そうやって生まれたのが岡山のばら寿司という説である。

 こんなものも岡山が発祥?

宇治金時(たんぽぽさん提供)
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宇治金時(たんぽぽさん提供)

MNo.23

「ミル金」ってご存じですか? かき氷のミルク金時のことです。東京の方に「ミル金」が通じないとは思わなかったなぁ〜。
 今年は行ってませんが、岡山市にある「カニドン」の「ミル金」は、とても素晴らしいです。ここがミル金発祥の地だときいていますが…。
 この日はその少し南にある「福福饅頭」で宇治金時(小)を食べました。注文するとていねいにこした抹茶にみぞれの蜜を入れてたててくれます。
 福福饅頭というのは大判焼きで、金時のあんこは福福饅頭に入っているあんこです。あんこが氷に埋もれて見えないのが残念ですが。
 このお店は食べるミルクセーキで有名です(たんぽぽさん)

ミル金(たんぽぽさん提供)
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ミル金(たんぽぽさん提供)

「ミル金」は東京では通じないが、素晴らしい響きの言葉である。なにか輝いて聞こえる。

 こう暑いとかき氷が恋しくなる。子どものころ、駄菓子屋の店先でオレンジやイチゴ味のかき氷を食べたものである。値段は10円か20円であった。

 熊本実食編で食べたコバルトは美味かった。

 この方が岡山を攻めた。

えびめし(大阪の原さん提供)
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えびめし(大阪の原さん提供)

MNo.24

 京都の取材で「芸子さんや舞妓さんを呼びたかった」と言う話を読んで「いけずな京女さんが振り袖を用意し始めたのではないか?」と、びびってしまった今日このごろ、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
 さて連休初日に岡山攻めを敢行して参りました。
 まずは「えびめし」。岡山駅ビル〜地下に何軒か、提供する店が増えています。写真は駅ビル2階の弁当。でっかいボウルにえびめしが山盛り。
 お土産売り場では情報通り「さわら」が多い(クリックすると写真が開きます)。他の地方ではあまり見かけない光景です。
 ばら寿司の蘊蓄(うんちく)も面白く「ぜいたく禁止に反抗して、ひっくり返してご飯を上にして隠した」とか。

釘付け(大阪の原さん提供)
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釘付け(大阪の原さん提供)

 ぜいたく禁止で刺身が食べられなくなったので、表面だけ焼いて焼き魚のフリをした「高知のカツオのタタキ」と似たような発生原因です。
 ままかりには子どもも釘付け。
 商店街を歩くと、ご当地チェーン店のパン屋さんでサラダパン(クリックすると写真が開きます)に遭遇。タクアンと高菜の2種! 中身はマヨネーズ+マーガリンで、滋賀県産より少しマーガリンが強い印象。探せば日本中にまだまだ見つかる??(大阪の原さん)

高菜のサラダパン(大阪の原さん提供)
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高菜のサラダパン(大阪の原さん提供)

 岡山にも漬物サラダパンがあった。

 これはキムラヤの商品のようだが、キムラヤにはほかに侮れないパンがあるという。

キムラヤの菓子パン(ミーメさん提供)
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キムラヤの菓子パン(ミーメさん提供)

MNo.25

 実は私、岡山で生まれ育ちながら、ママカリなんぞは岡山を出てからその名前を知ったくらい。考えようによってはそれくらい魚介系は当たり前にあったのですね。
 メバルとかサワラなんて、てっきり大衆魚と思っていたくらいですし、シャコを山盛りにして家族でむしゃむしゃ食うってのは本当に普通の光景でしたから。
 果物にしても、妹が岡山大学農学部の学生だったころは、夏に帰省すると大学の農場で採れた桃やマスカット、ピオーネなんぞ食い放題でした。お子さんがいらしゃれば岡山大学農学部への入学をお勧めします。
 さて岡山のお気軽な食といえば、駅弁として有名な「祭ずし」。でもそれはあまりに当たり前なので置いといて、やはりキムラヤの菓子パンを挙げないわけにはいかないでしょう。
 特に私の中で外せないのは、バナナロール、チョコロール、コーヒーロールです。この何とも言えない異国情緒あふれるパッケージといい、独特の味と香りといい、ちょっと他ではお目にかかったことのない逸品です。
 バナナロールについては、その中に入っているクリームが独立して売られています。
 別にバナナ果汁が入っているわけでもなんでもなくて、マーガリンの一種と思われます。岡山駅の地下にも売っています。オレンジクリームもありますよ(ミーメさん)

クリーム別売り(ミーメさん提供)
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クリーム別売り(ミーメさん提供)

 ご当地パンは楽しい。

 パンにはさむクリームが別売りされているということは、その味がいかに市民に愛されているかを物語る。食パンに塗ったりして食べているのであろうか。

 法事パンといい、キムラヤの各種パンといい、岡山のパンは面白い。

 ソーセージの代わりにハムをはさんだ久留米のホットドッグの発売元もキムラヤ。どこかでつながっているのかな。

笠岡ラーメン(大阪の原さん提供)
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笠岡ラーメン(大阪の原さん提供)

MNo.26

 岡山はこれといった名物がないかわりに、いろいろな文化が混じり合っています。
 お好み焼きは県北出身の嫁は関西風、県南の自分は広島風。ラーメンはとんこつから笠岡の鶏ダシまで。新見ではイノシシのダシでラーメンを出しているし。
 うどんも讃岐で修行した人が頑張っているし、県北ではそばもおいしい。
 忘れてはならないのが下津井のタコや寄島のシャコ。
 メジャーになりきれない岡山グルメ(やっひーさん)

岡山の桃(たんぽぽさん提供)
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岡山の桃(たんぽぽさん提供)

 メジャーなものが一つか二つあるより、さまざまなものがあちこちにあった方が、私には嬉しい。

 これまで見てきたように、岡山の食の文化は十分に多様であり重層的であり、近ければすぐにでも行って食べたいものが山のようにある。

 今ごろは桃やブドウも食べごろであろう。

 今週はここまで。次回は岡山県編の最終回。岡山県のあとは宮城県にスポットを当てる。

 ではまた来週。


(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは東北ご当地グルメで夏休み(デスク)です。合わせてご覧ください。

実食編 「嫁泣かせ」に泣かされる

岡山県編(その1) カキオコ、33分1本勝負

岡山県編(その2) デミカツ食べて「デミ活」だ

岡山県編(その4) 青い海から青うなぎ


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年8月24日

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