第135回 島根県ご当地グルメ(その2) ゆで・ソフト・スパゲッティ式・めん

特別編集委員 野瀬泰申


 日本海の海の幸に恵まれる一方で、お茶が盛んで和菓子が発達するなど、幅広い食文化が見られる島根県。ご当地パンや牛乳など、食べBではおなじみのジャンルでも地域性が鮮明になってきています。
 今回は、伝統的な食文化に限らず、スパゲティやたこ焼き、やきそばなど身近に愛された「ご当地グルメ」が続々と登場します。自慢の和菓子も先週に引き続き登場。島根の食の魅力がさらに浮き彫りになります。
 今週のおかわりは、本編でも話題になっている「ゆでソフトスパゲッティ式ソフトめん」をデスクが実際に作って食べてみました
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(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

久慈まめぶ汁
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久慈まめぶ汁

 先週、用事があって岩手県久慈市の観光物産協会に電話した。

 「今年の大型連休の人出は去年の倍だったそうですね」

 「そうなんです。お祭り状態でした」

 「昨年の春におじゃましたとき、まめぶを出す店は駅前に1軒しかなかったんですが、あれから増えました?」

 「ええ、いまでは10店舗になっています」

 「名物のうに弁当を増産するなんて話はありませんか?」

 「それには限界がありますし、幻の駅弁のままがいいだろうということで限定販売は変えていません」

1個ずつ手づくり
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1個ずつ手づくり

 久慈市のブレークはもちろんNHKの連続ドラマ「あまちゃん」の効果である。

 まめぶはもともと合併前の山形村の行事食だった。それがドラマの好影響で久慈市のご当地グルメに育ちつつある。

 愛Bリーグ加盟団体「久慈まめぶ部屋」にとってもうれしい話であろう。というか私としては今年11月に豊川市で開かれる第8回B―1グランプリで、まめぶ部屋のブースに大行列ができはしないかと心配している。

 まめぶは1個ずつ手づくりするため、いまの久慈市でも払底気味らしいのだが、B―1向けに大量のまめぶを用意するのは大変ではないだろうか。

中にはくるみと黒糖が
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中にはくるみと黒糖が

 いやいや、これを機会にまめぶ部屋を応援する人が増えて、人海戦術でまめぶづくりをやれるようになれば、まちおこしの輪はもっと広がるであろう。そっちの方を期待したい。

 ところでドラマの中では「かわいすぎる海女」が「なまりすぎる海女」になったり「めんこいテレビ」が「こっちゃこいテレビ」になっていたりと、小ネタが効いていて面白い。高い視聴率は脚本の勝利であろうと思う。

 さて今週は島根県編の2回目。

 まずはこのメールから。

 デスクのアンテナショップ報告にあったあれ

「ゆでソフトスパゲッティ式めん食べてみました

「ゆでソフトスパゲッティ式めん」食べてみました

MNo.10

 そうです。そうです。ゆでソフトスパゲティですよぉ〜。あまりに身近ですっかり忘れてました。
 中学時代、友だちがお弁当にこの赤いスパゲティをいつも入れてもらっていて、味見をさせてもらってからというもの、母に頼み込んでこのスパゲティを入れてもらっていたものです。
 あの焼きそば麺についているようなナポリタン味の粉。赤いソーセージやカップラーメンみたいに妙に美味しいんですよねぇ。
 しかも、安い。この麺はこの間帰省したときも100円前後で売っていて、割と日持ちもするし、たくさん買ってちょっと豪華に玉ねぎ、ピーマン、ニンジン、ベーコンかハムでも入れればかなり立派なランチになりましたし、お弁当につめてちょっと散歩に出掛けたりもしました。
 子どもから大人までみんな大好きだし、手ごろで簡単。確かに東京にはないんですよね。弁当ママには絶対ウケるのになぁ(シングーさん)

MNo.11

「ゆでソフトスパゲッティ式めん」といえば、今はなき飛田製麺です。出雲の子どもたちは必ずこのスパゲティの弁当で育ったものです。米山萬商店もよく知っています。まだ他のメーカーもあります(出雲ぜんざい学会の田邊達也さん)

にほんばし島根館では1袋138円
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にほんばし島根館では1袋138円

 これは私にも懐かしい。もちろんメーカーは違うが、密封されたソフト麺を油をたっぷり引いたフライパンで炒め、赤い粉末をふりかけて混ぜ合わせると、具が入っていなくとも立派なごちそうになった。

 これは高校生のころの思い出で、中学時代では裕福な家庭の同級生の弁当にこれが入っているのを横目で見ていた切ない記憶がある。

 具はシングーさんのメールにあるようなものがベスト。エビとかイカとか入れると別物になる。

 食べ終わった後に、赤くなった口の周りをふくティッシュの用意をお忘れなく。

 田邊さんのメールだと出雲の子どもはこれが入った弁当で育ったそうであるが、学校に持っていく弁当に「ご当地」が現れる珍しい例ではないだろうか。

ワニ(サメ)御膳(島根県提供)
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ワニ(サメ)御膳(島根県提供)

MNo.12

 私の実家は玉造温泉なのですが、お雑煮はかつお出しで生のりとかつおぶしのトッピングとシンプルです。確か三が日を過ぎるとあずき雑煮(ぜんざい)で食べます。
 奥出雲地方のワニ(サメ)の刺身。平田の海でサメがよく上がり、サメの天ぷらは食べました。あっさりとささ身のような味でおいしいです。
 あご野焼きはお土産の定番。日本酒におつまみに最高です。お酒はやはり「七冠馬」がスッキリとでも深くまろやかな味わいでおススメです。
 赤貝の煮物。赤貝はアサリよりちょっと大きいぐらいのサイズで、甘辛く煮ます。翌朝その煮汁を白いご飯にかけて食べると何杯でもごはんが食べられます。

焼きサバの棒寿司
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焼きサバの棒寿司

 赤貝の炊き込みごはんも本当においしいです。島根物産展が来たときは必ず買って作ります。それをおにぎりにするのも最高。
 小学校帰りにいつも魚屋さんの前からサバを焼く匂いがしていて、お腹が減ったもんです。大きいサバを竹串に刺して炭で焼いたもの。焼き立てに醤油を垂らして食べるのが最高。
 焼きサバの棒寿司も有名ですね。浜田の「八右衛門すし」、これこそは「究極のさば寿司」だと言われて有名です。浜田漁港に水揚げされるサバのみを使用したもので、シャリの芯には粒サンショウと茎昆布が入っています(シングーさん)

あご野焼き
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あご野焼き

 いろいろな食べ物が並んでいるが、正月のあずき雑煮、あご野焼きは鳥取県と共通文化。島根には板のりもあって、これも共通している。

 焼きサバは鳥取、福井との共通文化である。日本海という同じ海が育んだ。

 さて赤貝である。東京の寿司屋で赤貝を頼むには勇気がいる。スーパーで買うのにも財布と相談しなければならない。

 ところが島根では普段の家庭料理に登場する。煮汁までご飯にかけて楽しむ。

赤貝の煮物(島根県提供)
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赤貝の煮物(島根県提供)

 松江におでんの取材に行ったとき、私は隣に居合わせた退職女性教師から島根自慢を聞いた。そのなかに「おでんの赤貝」があった。夏場だったのでおでんの鍋には入っていなかったが「串に赤貝を何個も刺しておでんのネタにする」ということであった。

 なんとぜいたくな、なんと豪華なネタであろうか。

 と思って調べてみると、島根県東部で食べられている「赤貝」は近縁種のサルボウであった。いわゆる高価な赤貝は市場で「本玉」と呼ばれ、サルボウは「小赤」と称される。缶詰の「赤貝」もサルボウである。

サルボウ使用
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サルボウ使用

 とは言え、サルボウを大量に食しているのは島根県東部だけではないのか、ほかにある?

 ついでながらその店で「卵」を頼んだ。すると出てきたのはゆで卵ではではなく、串に刺さった卵焼きであった。

 宍道湖に注ぐ川が見える老舗のおでん屋であった。懐かしい。

 さあ、松江に来たぞ。

若草
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若草

MNo.13

 小説「ビーワンダー! B―1王者富士宮やきそば物語」(高橋政光作・幻冬舎ルッサンス)面白いですね!
 富士宮やきそば学会会長の渡辺英彦氏をモデルとした、限りなくノンフィクションに近いまちおこしストーリー。野瀬さんも“出演”されているのですね。
 第1回八戸大会のことも懐かしく思い出しながら、楽しく読ませていただきました。ぜひ「食べB」読者の皆様にも宣伝お願いしますっ。
 さて本題。
 松江は京都や金沢に劣らぬ和菓子王国です(と持ちあげておきながら、さりげなく京都が一番をアピールする私)。

朝汐
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朝汐

 なぜかと言えば、大茶人と謳われた松江藩主・松平不昧公(ふまいこう)の薫陶を受け、庶民の間でも茶の湯を楽しむ習慣が今も根付いているから。
 松江のお茶の消費量は全国平均の5倍。1世帯あたりの和菓子購買量は、なんと日本一で全国平均の1.5倍と言われています。
 「若草」は不昧公好みのお菓子として創られた松江の代表的銘菓です。求肥に若草色のそぼろをまぶし、若草山の春の景色を表わした風流なお茶席菓子でございます。
 「朝汐」も松江を代表するお饅頭。中国地方で採れる薯蕷芋(つくね芋)をすりおろした生地で、ほんのり塩味の「皮むき小豆餡」を包み、蒸し上げます。

松江のゆべし
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松江のゆべし

 北西の風がもたらす日本海の大波が岩肌に打ちつけ、白い泡となって散っていく景色を表わしたというこれまた風流なお菓子。
 そして特筆すべきが「松江のゆべし」でしょう。「ゆべし」というのは地域によってお菓子であったり珍味であったり、姿かたちも製法も味も全く異なるという、不思議な食べ物です。
 熊本のゆべし、輪島のゆべし、東北のゆべし、同じ東北でも福島のゆべし、愛媛のゆべし、岡山のゆべしは2種類、壱岐のゆべし、共通点はなにひとつありません。
 松江のゆべしは求肥に柚子を練り込んだ餅菓子で、これも松江独特のもの。
 このほかにも松江には銘菓がぎょうさんあり、また伝統の技を活かした新しい「次世代の銘菓」も続々誕生しております。ご当地からの報告を、待つえ〜(いけずな京女さん)

ビーワンダー! B−1王者富士宮やきそば物語

ビーワンダー! B−1王者富士宮やきそば物語

 自慢するわけではないが、私はお菓子のことをよく知らない。和菓子は特によくわからない。普段から接しないからである。旅先でも接しないのである。どうしてであろうか。地酒にはいつも接するのに、不思議である。

 加えて松江の和菓子王国。ここに登場したのは代表的なもので、ほかにもたくさんの和菓子がひしめいている。

 甘い物は一芸クンに任せる。頼んだよ。

 冒頭の小説はこれ。私も最後のところで少し登場するが、書かれているほど立派ではないので、読んでいて恥ずかしかった。

天神さんのたこ焼き
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天神さんのたこ焼き

MNo.14

 松江市民のソールフードは、何と言っても天神さんのたこ焼きです。白潟天満宮の境内にたこ焼き屋さんがあり、独特の焼き上がりで美味しくて安い。
 お店の前にあるベンチでたこ焼きを頬ばると、30年前にタイムスリップします。
 雲南市大東町のおそば屋さん「海潮路(うしおじ)」の店主は農家のおじさんですが、手打ちのおそばは出雲そばでとても美味しいです。奥さんの作られたそば饅頭も美味。
 松江から海潮温泉に行く途中にあるお店で、山の中ですが店のロケーションもよく、そば通は必ず行くお店です(松江の吉田さん)

海潮路の出雲そば(島根県提供)

海潮路の出雲そば(島根県提供)

 こういうピンポイントのソールフードは興味をそそる。容易にまねできないものがあるために、孤高のソールフードであり続けているのであろう。

 農家のおじさんがやっている手打ちのそば屋というのも迫力がある。製麺所のさぬきうどんもいいが、こっちも相当そそってくれる。

 実食編で車が調達できたら、このそば屋から温泉へGO!

 ピンポイントのソールフードで忘れるところであった。出雲ぜんざい学会の田邊さんから、こんなメールをいただいていた。

「きんぐ」の「大社やきそば」(田邊さん提供)
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「きんぐ」の「大社やきそば」(田邊さん提供)

 出雲といえば、特にその中でも大社町は出雲そばのお店が一番多い地域。しかしその中にあって、同じそばはそばでも「大社やきそば」なるものがあります。「きんぐ」というお店が提供するやきそばを「大社やきそば」と呼び、昼時にはいつも列が出来るほどの人気ぶり。
 大社やきそばとは、一旦麺をゆでて乾燥させ、具と一緒に炒めたもので、一見塩やきそばの感がありますが、それからソースを自分の好みに合わせてかけて食べるのが特色です。一度食べたらやみつきになること間違いなし。

 調理法に興味がある。全国にはあとがけソースの焼きそばが意外な広さで分布している。

MNo.15

「宍道湖七珍」。常時採れるのは五珍くらいみたいですが、おいしいお出しで、丁寧につくられる郷土料理は、どれをいただいてもおいしいです。
 それもこれも、松平不昧公好みです。松江は、なんじゃろーと、不昧公なんです。
 これだけ市民に愛されつづけている不昧公。とっても偉大です(たんぽぽさん)

宍道湖七珍(島根県提供)
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宍道湖七珍(島根県提供)

 宍道湖七珍はスズキ、モロゲエビ、ウナギ、ワカ(アマ)サギ、シラウオ、コイ、シジミである。

 スズキは奉書焼きが有名(左の写真下段中央)。以前は赤貝が七珍の中に入っていたが、どうしてこうなったかは知らない。

 松江の某有名旅館の名物料理に関するメールが来た。そこで写真を拝借しようとお願いしたところ、先方からの返事は「B級などの文言が入ったコラムに当旅館を載せてもらっては困る」というものであった。微苦笑。

 次のメールには驚いた。

天ぷらまんじゅう(郷原さん提供)
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天ぷらまんじゅう(郷原さん提供)

MNo.16

 大田市の祭り・祝い事に欠かせないのが「天ぷらまんじゅう」。島根県内でも大田市以外では食べる習慣はないようです。
 祝い事の季節になるとスーパーなどで紅白饅頭が販売されます。この紅白饅頭を背中合わせに2つを重ね、天ぷら粉を着けて揚げるだけというシンプルな料理です。
 食卓には紅白の面が見えるように半分に切って並べます。今までも、そしてこれからも祭りの「ごっつぉ(ご馳走)」として大田市民に親しまれていけばよいと思っています(大田市産業企画課の郷原さん)

紅白饅頭が背中合わせ(郷原さん提供)
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紅白饅頭が背中合わせ(郷原さん提供)

 会津は「まんじゅうの天ぷら」だが、こちらは「天ぷらまんじゅう」。それも紅白1対である。それにしても美しい。祭気分が盛り上がる。

 岩手県西和賀町で食べられている「ビスケットの天ぷら」と、どちらがつおいのであろうか。

 徳島県編で登場した「花嫁菓子」。お隣の香川県にも似たような習慣があるらしい。

さぬきの「おいり」(松山の坂本さん提供)
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さぬきの「おいり」(松山の坂本さん提供)

MNo.17

 カシュっと儚い味わいで、夢の中でお花の妖精さんからおやつもらったらこんな感じだろうな……というメルヘンなお菓子です。やっぱり讃岐でも花嫁さんが近所に配るらしい。
 もう山下さんしか作れないらしい(NHKドキュメンタリーで見た)。作るのに1週間かかる(丸く膨らませるのに)のでもう作る人がいないそうな(松山の坂本さん)

夢の中でお花の妖精さんからもらったおやつ?(坂本さん提供)
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夢の中でお花の妖精さんからもらったおやつ?(坂本さん提供)

 そうか、お菓子はこんなふうに表現するのか。

 しかし私が「夢の中でお花の妖精さんからおやつもらったらこんな感じ」などと書いたら鳥肌が立つ人がたくさんいるであろう。

 島根県編のメールが底を突きそうである。心当たりの皆さんはどんどん送っていただきたい。

 今週末は岡山県津山市。近畿・中国・四国支部B―1に行ってくる

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「ゆでソフトスパゲティ式めん食べてみました」です。ぜひお読みください。

島根県編(その1) はい、ストかまです

島根県編(その3) 市民がアイス安来のキャンデー

島根県編(その4) へかやき、うず煮、うずめ飯


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年5月24日

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