第69回 秋田ご当地グルメ(その2) アッ、キター! 秋田ちゃんぽん

特別編集委員 野瀬泰申


 その1でラーメン店の酢が話題になった秋田県。ラーメンと酢の関係は今回も深く掘り下げられることになりそうです。そして「かやき」。「かやき」とはいったいどんな料理なのか、その姿を探ります。

 番外編ではデスクが、東京・有楽町にある秋田県のアンテナショップをリポートします。

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「秋田ふるさと館」で見つけた豆富かすてら
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「秋田ふるさと館」で見つけた豆富かすてら

 先週末、山口県の下関市に行ってきた。水産大学校食品科学科のイベントでお話するためであった。昨年6月に続いて2回目。

 前夜、関係者と市内のある店で会食した。事前に「生魚はだめです」と言ってあったので、私だけは特別メニュー。

 刺し身の代わりに揚げ物や肉系が出てきたのだが、いかにも新鮮そうな刺し身を見ているうちに「少しくらい出してくれてもいいのではないか」と心の中でつぶやきながら、揚げ物系肉系の皿と格闘したのだった。

「秋田ふるさと館」で見つけたご当地サイダー
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「秋田ふるさと館」で見つけたご当地サイダー

 途中で満腹になり熱燗に専念していたところで、フルサイズの釜飯が登場した。相当の大食漢でないと、その夜のメニューと勝負はできないであろうところにもってきて、フルサイズの釜飯である。

 私の3食分に匹敵するボリューム。その場の最年少が59歳であったので、全員が「持ち帰りのおにぎりにしてください」ということになった。

 ホテルに戻って気絶し、翌朝デスクの上に置いていた紙袋の中身を見ると、げんこつくらいのウニ飯のおにぎりが2個と漬物がパックに詰まっていた。

「秋田ふるさと館」で見つけたじゅんさい
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「秋田ふるさと館」で見つけたじゅんさい

 そのうちの1個を持って朝食会場に行った。

 味噌汁やヒジキや焼き魚などをおかずにウニ飯のおにぎりをほお張る。一晩たってはいてもウニ飯はウニ飯。海苔を何枚もぐるぐる巻きにして、朝から晩飯みたいな豪華さであった。

 それから水産大学校に向かい、水産加工フェアなどをのぞいて講演に臨んだ。終わるともうお昼。出てきたのがウニ飯弁当であった。

 2食連続のウニ飯である。嬉しかったのである。

「秋田ふるさと館」で見つけた比内地鶏
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「秋田ふるさと館」で見つけた比内地鶏

 全国にそれぞれ美味いウニはあるが、下関は瓶詰めウニの発祥の地という。昼間に出たウニ飯弁当は、瓶詰めのウニをふんだんに用いて炊いたものらしく、生ウニとはひと味違っていた。これもまたよし。

 ということで秋田県とは何の関係もない話である。

デスク 僕も秋田とは関係なく東京〜福井・小浜〜東尋坊〜石川・金沢〜新潟・糸魚川〜長岡〜栃尾〜燕三条〜新潟〜東京と食べ歩いていました。

 では本編。

 前回、秋田の「ちゃんぽん」が登場した。どんなもの?

愛媛・大洲のちゃんぽん(本文とは関係ありません)
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愛媛・大洲のちゃんぽん(本文とは関係ありません)

MNo.7

 ミルフォードさんのメールの中に秋田のちゃんぽんの話が出ていましたので、私が知る限りの情報をご紹介したいと思います。
 秋田でちゃんぽんと言えば肉や魚介、野菜を炒めてとろみをつけたものをラーメンの上にのせたもののことです。醤油味が一般的ですが、味噌味もあれば塩味もあります。
 上からゴマをびっしり振りかけたもの、ニラをたっぷり使用したもの、最近はつけ麺などもあり、バリエーションも豊富です。
 ちゃんぽんという名前がついていないこともありますが、まぎれもなくみな秋田風ちゃんぽんです。
 秋田市にはちゃんぽん専門店もあるほど秋田県人にはなじみの深い食べ物ですが、なぜこれがちゃんぽんと呼ばれるようになったのか、どのような過程で秋田に根付いたのかは、残念ながら私には解明できていません。
 いずれにせよ、九州は長崎発祥のちゃんぽんとは明らかに異なる食べ物です。久留米出身の野瀬さんには耐えがたき代物かもしれませんが、ただ以前こうおっしゃっていたと記憶しています。
「○○風ちゃんぽん」であれば許す!
 その言葉を聞いて以来、私は秋田風ちゃんぽんと呼ぶようにしています(のんパパさん)

尼崎のちゃんぽん
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尼崎のちゃんぽん

 秋田市内にちゃんぽん専門店まであるということは、立派なご当地ちゃんぽんであろう。尼崎ちゃんぽんと非常に似ているが味噌味、塩味、つけ麺タイプがある点が異なっている。ゴマとニラも違う。

 つまり特徴がはっきりしていて、識別可能である。

 秋田実食編の有力候補としよう。

 のんパパさんのメールには続きがある。例のラーメンに酢を入れまス問題。

全部入れちゃった…(本文とは関係ありません)
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全部入れちゃった…(本文とは関係ありません)

「秋田ではラーメンに酢を入れるというタイトルでしたが、これは秋田の中でも地域性が強いと思われます。
 私は週に5日はラーメンを食べに行くほどのラーメン好きですが、秋田市内でラーメンに酢を入れて食べている人を見ることはほとんどありません。
 私自身も、よほど味が気に入らないときでもなければ、酢を入れることはありませんね」

ということなのだが、この方が大阪で実験してくださった。

豊下さんも入れちゃった…(豊下さん提供)
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豊下さんも入れちゃった…(豊下さん提供)

MNo.8

 とても秋田までは行けない。そこで某食品スーパーで「比内鶏ラーメン」を買ってきて、お酢をかけてみました。普段から湯麺などにはお酢を足すのですが、このラーメンにもピッタリ。家内と2人で美味しくいただきました。
 そうそう余計な話ですが、秋田には近縁ではない豊下姓の一族がいるようです(豊下製菓の豊下さん)

彦根ちゃんぽんには酢がデフォルト
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彦根ちゃんぽんには酢がデフォルト

 以前にも書いたことだが、九州のとんこつスープは酢との相性が悪い。従って九州人にはラーメンに酢の発想がない。皿うどんにソースしか頭に浮かばない。

 しかしラーメン類に酢という食べ方は地域によって、あるいは店によって存在する。

 滋賀県彦根市にはご当地ちゃんぽん(和風醤油味野菜ラーメン)があるが、テーブルには酢の瓶が置いてある。酢をかけて食べるのがデフォルト。私はやらないけれど。

のんパパさんが住む由利本荘市では「イギス」または「エゲス」を食べるそうである。活躍の場は主に味噌汁。

船橋市民はのりを味噌汁の具にします(デスク)
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船橋市民はのりを味噌汁の具にします(デスク)

 長崎のイギリス、愛媛のいぎす豆腐、鳥取のいぎす、九州のおきゅうと。みないぎす草(エゴノリ)を固めたものだが、秋田ではそのまま味噌汁の具になる。

 「ガサエビ」というエビも食べる。「大きいものだと全長10センチにもなるエビですが、傷みやすいという理由であまり外には出ていかないようです」と、のんパパさんのメールにあった。

 昨夜、青森県の人と会ったので確認した。

「青森でガサエビというと……」

「シャコのことです」

 つまり秋田と青森では「ガサエビ」という言葉が指すものが違う。

ギバサ
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ギバサ

MNo.9

 前回紹介されていたギバサ。男鹿半島の人は「ジバサ」のほうがうまいといいます。
 ギバサはホンダワラ属アカモク、ジバサはホンダワラ属ホンダワラ。ちなみにどちらも漢字がございます。ギバサは「銀葉草」。ジバサは「神葉草」とのこと。
 塩鮭を「ぼだっこ」と称するのではなく塩鮭、塩鱒の総称です。特にたっぷりと塩を吹いた状態の、脳卒中もののやつを特別に「しょっぴりぼだっこ」と称して、年配の人は珍重し、当たってました……脳卒中に。
「しょっぴりかど」も昔は大量に食されてましたが今は高級食材に成り果てましたね。「かど」はニシンのことです。
 秋田県は貧乏県だったがゆえに砂糖を大変に珍重し、それゆえあらゆる料理に多用します。秋田の漬物が甘味が強いのもそのせいです。漬物を漬け込む時期になると秋田のスーパーではザラメ糖の特売が始まります。お一人様何袋以内とか(県東部のいかたろさん)

 糸を引くホンダワラ系がよく食べられている。記憶にとどめておくべき事象であろう。

 たっぷりと塩を吹いた状態の大辛塩鮭、塩鱒、塩ニシンが偏愛される一方で、漬物はには大量の砂糖。つまり秋田の食の特徴はこういうこと?

秋田の魚はたはたの三五八漬け
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秋田の魚はたはたの三五八漬け

MNo.10

 秋田の食といえば「味濃いめ」でしょうか。おかげさま?で高血圧など成人病の発生率はすごく高いはずです。
 さて現在秋田県では「うめっすな秋田た・び・ご・ろ」とまさに秋田の食をメインに取り扱っている観光キャンペーンを展開中です。
 その中で、ツイッターキャンペーン「うめっすなう」を実施しております。ツイッターで秋田の「うまい!」を#うめっすな をつけて写真入りでつぶやいてもらうキャンペーンです。
 現在様々な秋田グルメ情報がつぶやかれておりますので、そちらも参考してくだされば幸いです(秋田県観光課の山西さん)

納豆もキーワード
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納豆もキーワード

 秋田の食は「味濃いめ」。これもキーワードである。

 先に紹介した「いかたろ」さんのメールの後半には「かやき」「納豆」「ミズ」「しょっつる」「姫竹」「日本酒」「イナゴの佃煮」「豆柿」といった言葉が並ぶ。

 秋田の食を考えるヒントにしていただきたい。

 でもって「かやき」。

チューリップのよう(大阪の原さん提供)
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チューリップのよう(大阪の原さん提供)

MNo.11

 ババヘラ、元の釜の中も綺麗だけど、できた作品もチューリップのように「ぷりてぃ」でした。
 先週、送り損ねた横手やきそば。目玉焼きはどんどん焼いて切ってのせるので四角かった。自宅で作るとこんな光景は絶対にないです。
 最後が問題の「かやき」。「貝焼き」が元で、大きな帆立貝などの貝殻を小さな鍋代わりにして1人用の鍋物としたのが初めなんだそうです。で、実に残念ながらインパクトが薄い。

(1)古来から存在する郷土食で歴史があり、受け継がれてきた。

秋田かやきとは(大阪の原さん提供)
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秋田かやきとは(大阪の原さん提供)

(2)自然発生でいつの間にか生まれ、いつの間にか広がった。
(3)秋田周辺で分布し、他にはあまり見られない。

 と、B級グルメ・ご当地固有食品の必要条件を満たしているのですが「これが『か』『や』『き』です!!」という中心になる代表選手、見たら誰でも「かやき!」と言えるシンボルが見えません。
 漁村では海の幸、山間では山の幸と、具材が一定せず、共通項は「大きな貝を鍋にした1人用鍋」。寒い地方ならではの郷土色もあって風情があるのですが、やっぱり「これ!」がない。 1人で楽しむ1人鍋としては良いのだけど、「産業」にするには一定量の生産が必要で、貝の鍋が「ちいさな瀬戸物」や「小さな鉄鍋」にならざるを得ません。

カツ鍋風かやき(大阪の原さん提供)
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カツ鍋風かやき(大阪の原さん提供)

 写真の「かやき」はカツ鍋風で鉄鍋タイプです。店舗で顧客に提供するためには「貝殻」の鍋では難しい。
 結局「小さな1人用鍋物」になってしまいます。
 じゃあ貝殻の鍋にすれば良いのか?と問われれば……答えに窮します。
 近年のB級グルメブームに乗って、町おこし・産業として新しく作られた物ってのは、えてして地元民の支持を受けておらずに失敗するケースが多々あります。
 一方、「かやき」は歴史と伝統があるのですが、元々の個性が器と調理方法(量?)であったことが仇となっているようです。面白いんだけど……どうやって盛り上げるか? 何とかならないか? とりあえず、ドラッガーのマネジメントの本でも読みながら考えて見る……(大阪の原さん)

かやきの「掟」(大阪の原さん提供)
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かやきの「掟」(大阪の原さん提供)

 実に本質を突いた内容である。

 秋田のかやきは創作料理ではないし、地域に深い根を張っている。しかしながら中身は「何でもいい」という特徴から家庭や店によって千差万別となる。つまり外から来た人には原さんのような印象を持たれやすい。そこが難しいところである。

 写真に「ご当地B級グルメ」とあるが、愛Bリーグがやっているのは「B級ご当地グルメ」。「ご当地」にポイントがあって「B級」は「高いものではない」「気軽な」という記号に過ぎない。似たような言葉ながら意味は全然違う。

なぜかやきか?(大阪の原さん提供)
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なぜかやきか?(大阪の原さん提供)

 「青谷」さんから、非常に面白いメールをいただいているが、来週のお楽しみに取っておこう。京女さんからのメールもそのときに。

 秋田県民は寡黙なのか、メールが少なめ。味は濃いめなのだから、メールも多めでお願いしたい。

 では秋田県関係者の雄たけびを待つ。

デスク かすかに雄たけびが聞こえてきました。群れが、群れが近づいてきています!


(特別編集委員 野瀬泰申)


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●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2011年10月21日

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