番外編 船橋ソースラーメン、故郷の味が復活(デスク)


「かにや」の「サッポロソースラーメン」
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「かにや」の「サッポロソースラーメン」

 2005年、食べ物新日本奇行の3杯目「ソースをもう一ふり」で船橋のソースラーメンを食べに行きました。ひげおじん@習志野さんから投稿があり、その情報を元に、2軒のソースラーメンを実食しました。船橋に生まれ育った僕ですが、船橋にソースラーメンがあることを、恥ずかしながら、そのとき初めて知りました。

 もう7年も前になるんですね。

 あのとき行った大神宮下の「かにや」も西船橋の「まる」ももうすでにありません。船橋ソースラーメンは絶滅してしまったのでしょうか…。

「まる」の「ソースらーめん」
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「まる」の「ソースらーめん」

 ところがいま、期間限定ではあるものの、地元ラーメン店が協力して「船橋ソースラーメン」を復活させているという話を聞きました。地元の味であるからこそ、あのときの味を知っているからこそ、食べねばなるまい。

 そんな強迫観念にも似た思いから、ソースラーメンを提供しているお店を回ってみることにしました。

 その前に。

 ソースラーメンは絶滅してはいませんでした。実は2010年、元祖店と言われる「花蝶」跡のすぐそばにある「大輦」でソースラーメンが存続していることを知りました。写真はそのときに食べに行ったときのものです。

「大輦」の「ソースらーめん」
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「大輦」の「ソースらーめん」

 食べ物新日本奇行にあるように「まる」は皿に盛ったやきそばスタイルのソースラーメンでした。麺の上にのったベーコンエッグがスープ麺とは違う独自のアイデンティティーを主張しています。麺を炒めたわけではなく、また麺とスープを一緒に調理しているわけでもない。ただ、最終的な味がスープ麺よりはやきそばに近いのです。

 そんなことを思い出しながら「大輦」のソースラーメンをじっと見つめる。青のりと紅ショウガ…。それだけで、やきそばの系列を如実に感じ取りました。青のりと紅ショウガを除けば、スープも多く、スープ麺を思わせる容姿でしたが、味はやはりやきそば系でした。

「まる」(上)と「大輦」のメニュー
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「まる」(上)と「大輦」のメニュー

 一方で「かにや」の「サッポロソースラーメン」はやきそばとは別物でした。塩ラーメンの塩、味噌ラーメンの味噌、醤油ラーメンの醤油、そしてソースラーメンのソース。明らかに出しをソースの味でまとめたスープ麺だったのです。ウスターソースのスパイスですするとむせる。それがとても印象に残りました。

 今回復活したソースラーメン、僕は食べたことがないオリジナルといわれる「花蝶」や「かにや」「まる」などの「いにしえの味」には拘束されないというのがルールだそうです。「ソースをスープに使ったラーメン、つけ麺」という条件で、それぞれのお店が考えた独自のソースラーメンを提供するのだそうです。

三代目らーめん処まるは極
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三代目らーめん処まるは極

 廃れてしまったメニューを復活させるというよりは、創作ラーメンに近いスタンスといえるでしょう。

 とはいえ、単なる創作ラーメンではなく「船橋」とご当地を名乗る以上、その歴史は再認識しておかねばなるまい。そうでなければ「松戸ソースラーメン」でも「柏ソースラーメン」でも「習志野ソースラーメン」でもいいわけです。まずルーツをきちんとアタマの中で整理してから、各店のラーメンに挑むことにしたのです。

 最初に訪ねたのは京成船橋駅そばの「三代目らーめん処まるは極」です。

あんかけ麺のよう
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あんかけ麺のよう

 僕の印象は、スープ麺というよりはあんかけ麺です。ソースのとろみがかなりきつい。どろっとした舌触りは、お好みソースを連想させます。僕がかつて食べた3店はいずれもスパイシーなウスターソース系の味だったのですが、甘みさえ感じるほどでした。

 具のキャベツといい青のりといい、見た目は「やきそば系」。とはいえ、具も麺もスープもよく調和していて、スープ麺としてまとまっていて、美味しいラーメンだなと思いました。「ソースラーメン」とあえていわれなければ、普通においしく食べられるラーメンです。

ラーメンBAR963
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ラーメンBAR963

 ソース味を前面に押し出すのではなく、スープの中にほんのりソースを感じさせるような仕上がりで、それがラーメンとして違和感なく食べられる要因だったと思います。半面「かにや」的なとんがった「ソースラーメンの主張」は感じられませんでした。

 一方で、とんがりまくっていたのが「ラーメンBAR963」です。どんぶりの上部、スープの「喫水線」にそれを見て取れます。

「ソースラーメン」というよりは「スパイシーラーメン」です。見た通り、生卵やモヤシが具として前面に出ており、スープの量もたっぷりで明確にスープ麺でした。

「喫水線」に注目
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「喫水線」に注目

 すするとむせるところは「かにや」の「サッポロソースラーメン」を思い起こさせます。ただそれは「かにや」のような「もろウスターソース」の感覚ではなく、ソースにコショウなどの様々なスパイスを追加投入したスパイシーさのように感じました。

 本来、ラーメンスープにはウスターソースは合わないのだと思います。その「合わなさ」をいかに解消するかを考えて、スパイスを多用したのかもしれません。全6店を食べてみて、どのお店もその「合わなさ」をどう解決するかに努力を重ねていたように思いました。「まるは極」も「963」もこの後紹介する「竈の番人」もいかに「合わなさ」をおさえるかを追求したのではないのか…。

麺屋あらき竈の番人
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麺屋あらき竈の番人

 つけめんブームによって、つけめん、スープ麺を問わず、スープにつけめん特有の強い魚介の風味を使うラーメンが多くなってきたように思います。

 その魚介風味でソースの個性をおささえようとしたのが「麺屋あらき竈の番人」でした。ソース味を感じさせる一方で、強い魚介の味がそれに勝っていました。つけめん好きの方なら、きっと美味しく食べられるラーメンだと思います。

 前出の「まるは極」も別皿で魚粉が付いてきたのですが、これをれんげにすくったスープに入れたらソースを感じられなくなるくらい口の中を魚介風味が占拠してしまいました。ソース味を残しつつ、魚介でそのくせだけを取り除くのは、やはり職人技なんでしょうね。

麺屋あらき竈の番人戯拉戯拉
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麺屋あらき竈の番人戯拉戯拉

 続いて訪れたのは「麺屋あらき竈の番人」系列店の「麺屋あらき竈の番人戯拉戯拉(ぎらぎら)」です。こちらのお店は「ソースつけめん」です。さきほどスープ麺で、今風のつけめん的要素を実感しただけに、こちらも同じやり方かと思っていました。しかし、それは見事に裏切られました。

 意外や意外、つけ汁の味はかつての「かにや」を思い起こさせるものでした。今回食べた中では、個人的な印象ではありますが、もっとも「かにや」に近いと思いました。

 魚介の風味は感じられませんでした。

つけ汁のスープ
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つけ汁のスープ

 すするとむせるほどの強烈なウスターソースの味です。つけめんだからスープを強くする必要があったのでしょう。しかし、その味の濃さが、濃厚なウースターソースの味が、かつての「かにや」のソースラーメンの強い個性を再現していたのです。

 たっぷりのモヤシも「かにや」の「サッポロソースラーメン」同様です。

 好きか嫌いかは別として、このソースな感じをあえて前面に押し出すことも、おさえることと同様に「船橋ソースラーメン」のスタンスなのではないかと思いました。

拉麺阿修羅
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拉麺阿修羅

 その思いをさらに強くさせてくれたのが「拉麺阿修羅」でした。写真を見てください。6店の中で唯一「揚げ玉」が入っています。

 どこかで見たことありませんか? 食べたことありませんか?

 そう、黒石つゆやきそばです。ソース味が濃厚な黒石やきそばにつゆをかけると、揚げ玉がよく合うのです。そして黒石つゆやきそばは、できるだけスープにソース味が移らないよう、調理段階で麺にソース味をよく染み込ませます。

様々な香味野菜が入る
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様々な香味野菜が入る

 たぶん「拉麺阿修羅」はスープにもソースは使うものの、それとは別に麺にだけソースを絡めていると思います。麺のソース味が明らかに強いのです。

 麺をすするとスープにはない濃さのソースのスパイシーさを感じます。全体的にはショウガや焦がしニンニクでしょうか、様々な香味野菜を使ってまとめてありました。麺のソース強さが、全体としてはそれほど強くは感じられないのです。

 麺ではソースラーメンの強い個性を発揮しつつ、具やスープも一杯のスープ麺として食べることができたような気がします。

千葉ラーメン拉通ra2
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千葉ラーメン拉通ra2

 同じ気持ちにさせてくれたのが、住所は八千代市内ではあるものの船橋市北部・小室の圏内で営業する「千葉ラーメン拉通ra2」でした。麺は練り込んでいるのかと思うほどウスターソースの味がたっぷりです。

 メニューにこだわりが記されていました。ソースは全国各地のご当地ソースをブレンドしてオリジナルの味にしていること。野菜と特注麺をソースとスープで煮込んでいること。具の豚しゃぶにはリーペリンソースを使っていること。

 さらには「お好みに応じて使ってください」とリーペリンソースと「味変」用のバターが一緒に出てきました。

笑っちゃうくらいのソース味
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笑っちゃうくらいのソース味

 麺は笑っちゃうくらいソース味です。「かにや」の「サッポロソースラーメン」はあまりのソース辛さにスープは飲みきれなかったのですが、麺はもちろん、スープも存分に楽しめました。思いっきりソース味で。食べ進んだ後で麺にバターをからめる「味変」も納得できました。

 合わないと信じ切っていたソースをこれほどラーメンにマッチさせたのは、正直言ってびっくりしました。少なめのスープもあり「スープ麺系」と「やきそば系」の中間? いやいや、かつての「船橋ソースラーメン」にはない感覚ではないかと思いました。

リーペリンソースは不可欠?
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リーペリンソースは不可欠?

 この「船橋ソースラーメン」の復活、今月いっぱいでいったん終了するとのことです。その後、店数を増やして改めて復活する構想もあると聞いています。

 一方でくせをおさえてみたり、また一方ではそのくせを前面に押し出してみたり…。おもしろいですよね。

 船橋市は、千葉県第2の都市であり、東京通勤者が多く居住する「千葉都」でもあります。住民の地元意識がやや薄いことも否めません。そんな中で「昔ながらの船橋の味」の発掘に取り組み、再認識しようとしている皆さんがいらっしゃったことはとても興味深く、うれしいことでした。

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