おかわり 熊野路で30年モノなれ寿司と熟成酒〜デスク版和歌山県実食編



丸正酢醸造元の人気商品
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丸正酢醸造元の人気商品

 和歌山県実食編、今回僕の担当は紀伊半島の東側と内陸部です。名古屋から三重県を経て到着したのは、那智勝浦です。

 最初の訪問先は丸正酢醸造元。昔ながらの製法を守る一方で、海外にも展開する明治12年創業の老舗醸造会社です。

 那智勝浦は、かつては酢の醸造元が60以上もあったという土地柄です。背景にあるのは、まず熊野のもたらす伏流水。丸正酢の工場内にも井戸があり、そこから豊かな軟水が湧いています。寿司好きもあいまって、この地に酢づくりが定着しました。

蔵の中の木樽、左手前が「若乃花」
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蔵の中の木樽、左手前が「若乃花」

 その後大手メーカーの進出を受けて、醸造元は数えるほどになってしまいましたが、丸正酢は、品質にこだわり、大手には作れない独自の酢を醸造することで生き残りを図りました。

 最大のこだわりは木樽による醸造。メンテナンスに手間が掛かるため、今ではアルミなどの樽で醸造するのが一般的ですが、丸正酢では一貫して木樽を使います。

 工場には、ずらり大きな木樽が並んでいます。興味深いのは、それぞれの樽に相撲の横綱の名前がつけられていること。発酵などの状況は、無機的な番号や記号ではなく、しこ名で管理します。

圧搾機も木製 しこ名は「雷電」
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圧搾機も木製 しこ名は「雷電」

 もっとも古い「若乃花」は、創業当時から使い続ける「150年モノ」の樽です。

 麹室から発酵した米を絞る圧搾機まで、すべて昔ながらの「手動」の機器です。

 そうしたこだわりが、フランスやベルギーなどで、プロの料理人たちの「舌」をとらえたのだとか。和食店や和食に感化されてではなく、ワインビネガーにはない米酢の味わいを気に入り、地元料理の調味料として使われているそうです。

かつお茶漬け
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かつお茶漬け

 いったん勝浦を離れ、紀伊半島の先端・串本まで南下します。串本での昼食は、地元の名物料理という「かつお茶漬け」を、人気店の「萬口」で食べました。

 白胡麻や味醂をベースにしたタレに漬け込んだ薄切りのかつおが、おひつのご飯とともに登場。これを1杯目はタレのみで、2杯目はそれにお茶をかけて食べるのがルールです。

 1杯目は、かつおをのせるだけでなく、最後にタレをスプーン2杯かけるのがミソ。濃厚なタレがご飯にも染みて、いい感じの「かつおのづけ丼」になります。

お茶をかけるとかつおがほんおり白くなる
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お茶をかけるとかつおがほんおり白くなる

 2杯目にはこれに熱いお茶をかけるのですが、かつおが表面だけさっと白くなる。これがまたいいんです。1食で2度おいしい。

 串本といえば、本編でトルコとの友好のエピソードが登場しました。

 トルコ記念館、そしてトルコ軍艦遭難慰霊碑の先にある、遭難者救出の拠点となった樫野埼灯台に上ったのですが、折からの風で、体重80キロ超が手すりにつかまらないと吹っ飛びそうなほど。木造船で台風に遭遇すれば、遭難するのも無理はありません

トルコアイス よく伸びます
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トルコアイス よく伸びます

 売店では、トルコアイスも食べられます。びよん、びよーんと伸ばしてコーンに盛りつけたアイスを雨宿りついでにいただきました。

 串本から北上して捕鯨のまち・太地町へ。町立くじらの博物館で、捕鯨とくじらについて学びます。

 館内では小さな鯨のショーも捕鯨基地だけに、鯨の生態を知ることができる貴重な標本とかつて捕鯨に使われていた様々な機器が展示されています

 外には捕鯨船も保存されていて、捕鯨がいかに大規模であったかを知ることができました。

さんまのなれ寿司(上)と30年モノ
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さんまのなれ寿司(上)と30年モノ

 さらに新宮まで戻ります。先ほど、寿司をよく食べると言いましたが、そんな南紀ならではの味、サンマのなれ寿司を食べてきました。

 向かったのは「東宝茶屋」。なれ寿司の老舗です。

 まずは、サンマのなれ寿司から。

 地元のサンマは三陸沖から寒流に乗って南下してきたもので、その間に肉が引き締まり、適度に脂が落ちています。いったん塩漬けにした後、軟らかいご飯にのせて半月から1カ月ほど漬け込みます。

こんな食べ方もありだそうです
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こんな食べ方もありだそうです

 熟成の過程で乳酸が生成され、腐敗が抑えられ、長期保存が可能になる、日本古来の寿司です。漬け込みが浅いためクセはなく、身は適度に柔らかく、ご飯も形を保っています。

 ウイスキーのように長年にわたって熟成させた「ビンテージモノ」もあります。30年モノのなれ寿司をいただききました。

 まるっきり液体です。これを酒のつまみになめるのです。

 味はチーズ、あるいはヨーグルトの風合いです。乳酸の酸っぱさは、とても魚とご飯の味とは思えません。

くじらベーコン
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くじらベーコン

 初日の宿は、那智勝浦。大浴場が6カ所もある「ホテル浦島」という巨大温泉施設だったのですが、選んだ理由はホテル内の居酒屋「海つばめ」。とにかく評判がいいんです。丸正酢でも「おすすめですよ」とのことでした。

 行ってみると評判通り。とにかくお店の方が熱く語るんです、和歌山の美味を。肴にしろ酒にしろ、こめかみに血管が浮くくらい語る。

 お通しからして、さらし鯨ときゅうりの金山寺味噌添え。ザ・和歌山の味です。

マンボウの腸ゆで
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マンボウの腸ゆで

 せっかくなので、地元の味を。鯨はベーコン。食紅で赤くないのが「地もの」の証。脂っこさがすっと引いていく感じ。醤油よりも酢味噌の方が僕好みでした。

 サメはみりん干しで。ここらへんはマンボウも食べます。マンボウの腸ゆで。コリコリの食感です。

 追加で注文したマイルカのお造りいるか特有の臭みはなく、脂も絶妙の歯ざわり。しつこさ皆無

 そしてクモエビの唐揚げ。塩加減が絶妙で、ビールに最適でした。

超超久 酒器もおしゃれでした
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超超久 酒器もおしゃれでした

「どんな日本酒がいいですか?」というご主人とひとことふたこと言葉を交わして出てきたのが、海南市の「超超久」でした。マイナス5度で長期熟成させ、米のうま味を引き出したもの。特に「平成23年モノ」が優れているそうで、大量買いしてお店の冷蔵庫にストックしています。

 今まで呑んだことがない味わいの日本酒でした。土産に持って帰りたいと話すと、新宮市の取扱店まで紹介してくれました。

 2日目は熊野那智大社からスタート。

那智の滝
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那智の滝

 麓から那智山へ、くねくね道を上っていくとまず那智の滝に到達します。

 落差133メートル、滝壺の深さ10メートルと「落差日本一の滝」です。しかも早朝でまだ観光客はおらず、名瀑独り占め。

 ただし、滝から上がる水しぶきと風雨で傘が差せないほど。途中のコンビニで買ったビニール傘が「おちょこ」になり、骨が曲がりました。

 続いて熊野那智大社へ。

熊野那智大社拝殿
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熊野那智大社拝殿

 山の上なので、風雨はさらに強まります。拝殿まで上ったのですが、傘はここでゴミ箱行きになりました。二の鳥居からの眺めは絶景でしたが、それにしても風雨が猛烈。早々に引き上げました。

 熊野川を渡り三重県へ。

 和歌山県実食編なのになぜ三重県へ? 奈良・三重の県境にある和歌山県北山村は国内で唯一、自治体全体が「飛び地」になっている村です。本編でご紹介したように果物・じゃばらでまちおこしに取り組んでいます。

じゃばら 青いのが食べごろ
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じゃばら 青いのが食べごろ

 北山村は、紀州材を熊野川の急流を使って積み出し港の新宮まで運ぶ筏師の村でした。新宮との深い関わりが、廃藩置県の際に和歌山県に組み入れられた背景にあります。

 1971年に村内に自生する柑橘に目をつけ、村の主産業にすべく取り組みが始まりました。それがじゃばらです。翌年の調査で、世界に類のない、まったく新しい品種の柑橘であることが判明します。

 ブレークしたのは、30年後の2001年。きっかけはインターネット通販への参入でした。

じゃばらの果肉 さわやかな酸味と甘さ
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じゃばらの果肉 さわやかな酸味と甘さ

 大量に購入する顧客に関心を持ち、その理由をたずねたところ、花粉症が和らぐとのこと。即座にネットでモニター調査を実施すると約46%のモニターから「効果あり」の回答が寄せられ、それがまたネットで広がり、爆発的なヒットにつながりました。

 成分を分析すると、赤ワインなどで知られるフラボノイド成分の中でナリルチンという成分が、他の柑橘類と比べ、突出して多いことも判明しました。

 じゃばらは冬に実ります。

筏師たちが働くじゃばら畑
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筏師たちが働くじゃばら畑

 ダムができたことと陸上交通の発達で筏師の仕事はなくなりましたが、現在でも夏には筏下りが行われ、村の主要な観光資源になっています。

 冬がメインのじゃばら事業は、夏の観光筏事業と組み合わされ、シーズンオフの筏師たちが生産に携わっています。

 村の人口の約1割の雇用が賄われ、2010年には2億7500万円もの売り上げを達成するなど、まさに「じゃばらが支える村」なのです。

めはり寿司 一人前4個!
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めはり寿司 一人前4個!

 村長のお話が興味深く、さらには生産地や搾汁工場、物流センターまで見学させていただいて、すっかり時間をオーバーしてしまいました。予定を変更して「超超久」買いついでに新宮へ出て、めはり寿司の人気店「めはりや」で昼食です。

 おかずの付いた定食もあったのですが、ここは純粋にめはり寿司だけ味わおうと思ったら、なんとおにぎり大で一人前4個。超お腹いっぱいになってしまいました。

 熊野川に沿った道を北上し、熊野本宮大社をかすめた後、国道311号線で紀伊半島を横断、田辺に向かいます。

熊野本宮大社
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熊野本宮大社

 この道、ずっと沢沿いを走るのですが、川湯温泉へ行く信号を越えた先にトンネルがあって、ここをくぐると沢の流れが全く逆になっていました。

 手前は熊野川を経て新宮から、トンネルの先は富田川を経て白浜から海に出る流れです。いずれもしぶきが飛ぶほど水量が豊かで、当然同じ川だと思っていたのですが、確かに流れは逆でした。知識として知っていても「分水嶺」を肌身で感じたのはこれが生まれて初めての経験でした。

 南方熊楠顕彰館を経て訪れたのは、焼かまぼこ・南蛮焼(なんばやき)の老舗「たな梅」です。

昔の焼き型 量が多いので最近ではミニ(右)も
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昔の焼き型 量が多いので最近ではミニ(右)も

 南蛮焼は田辺土産の定番ですが、気になっていたのが、まるで日の丸のような丸い焼き目です。

 正方形で、関東人にはふわふわのはんぺんのように見える形ですが、実はエソやグチを原料にした、しっかりした歯ごたえが自慢のかまぼこです。

 昔の焼き型を見せていただいたのですが、正方形の鉄の型に、粘度の強い魚のすり身をのせ、上から押さえつけて焼くため、丸い焼き跡ができるのだそうです。

 そして南蛮焼とセットともいえるのが牛蒡巻(ごぼうまき)。

南蛮焼(左)と牛蒡巻
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南蛮焼(左)と牛蒡巻

 やわらかく茹でたごぼうですり身をはさみ、南蛮焼の製造過程で出るエソやグチの皮を巻きつけて焼き、秘伝のタレにつけ込んだものです。たれが良くしみるよう、皮の身がついていた側を外向きにして巻き、さらに表面を焼くことで臭みを抑え、香ばしさを出すのがおいしさのポイントです。

 皮の歯ざわりとごぼうの柔らかさ、そしてたれの深い味わいが特徴です。

 夜は白浜温泉へ。全国的に有名な居酒屋「長久酒場」の暖簾をくぐります。

太刀魚の骨せんべい
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太刀魚の骨せんべい

 前夜の「超超久」と同じ蔵元の「長久」のコップ酒が350円というのがうれしい。カウンターの中がオープンキッチンになっていて、大将がひとりで包丁を握ります。大きなまな板の脇には生け簀があり、場所柄、鮮魚が自慢。野瀬が見つけたくつ海老などもあったのですが、ひとりでもあり、おつまみメニューを中心に食べました。

 おでんキビナゴのお造り、そして太刀魚の骨せんべい。お昼のめはり寿司の余波が残っていて、これで精一杯でした。太刀魚の骨せんべいが香ばしくておいしかった。

 翌朝、高野山へ向かいます。

折り返し地点までずっとこんな感じ
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折り返し地点までずっとこんな感じ

 初日から風雨で苦労した今回の旅。ようやく雨が上がったと思ったところでまたしてもトラブルに見舞われました。

 通り道の龍神温泉では、第58回関西実業団対抗駅伝競走大会が開催されていました。しかも、僕が龍神温泉に到着したのがマラソンのスタートとほぼ同時。沢沿いの一本道です。来合わせた車は、駅伝選手の追走を余儀なくされました。

 折り返し地点まで1時間ちょっと、やっと通常の速度で到達した絶景ポイント「道の駅ごまさんスカイタワー」はガスって駐車場の先も見通せないほど。33メートルのタワーを加えた標高1306メートルからの眺望は、あきらめざるを得ませんでした

精進花籠弁当
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精進花籠弁当

 タイムロスは、最終目的地の高野山にも波及しました。

 人気の精進料理店「中央食堂さんぼう」への到着がちょうど12時になってしまい、大行列に巻き込まれてしまったのです。

 とはいえ「精進花籠弁当」がおいしかった。お刺身はこんにゃく生麩を揚げたのはイカ天にも似た食感、精進揚げには焼麩も入っていました。おからは牛肉風の味付けになっています。そして定番の胡麻豆腐も。揚げ物が多いせいもあってけっこうな食べ応えでした。

高野山奥の院への入り口
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高野山奥の院への入り口

 高野山は金剛峯寺と奥の院を拝観。美しい景観はぜひ動画でご覧ください。歴史的人物や著名人の墓所が並ぶ奥の院の参道も圧巻でした。

 事前に相談に乗っていただいた県庁東京事務所から始まり、丸正酢、海つばめ、新宮の酒屋さん、北山村、たな梅…お話しをうかがった皆さんの語り口がいずれも熱を帯びていたことが印象的だった和歌山県実食編。

 天候にこそ恵まれませんでしたが、その熱い想いとともに食べB地方取材を締めくくれたことは、とても幸せでした。

*映像はflashビデオです。一部機種では再生できないことがあります。ご容赦ください。


(デスク)

11月20日

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