第31回 富山ご当地グルメ(最終回) 鱒寿司はこうして危機を逃れマスた

鱒寿司
<写真を拡大>

鱒寿司

 NHKの「新感覚クイズ! クエスタ」という番組の視聴率は知らないが、我が家のご近所はそろって見ていたようで、放送の翌朝、奥さん方から「出てましたね」と声をかけられた。(「食べBって何?」という方は「食べB入門編」をご覧下さい。食についてのメール投稿先はこちら)

 たくさんのメールももらった。その中の「よくあるご質問」が「ところで何を履いてたの?」というものであった。

 「ギプスカバーです」

 「えっ? ということは?」

 「足の骨を折りまして」

 「いつ、どこで、どうやって?」

 となるので説明が大変だったのである。(骨折の詳細については「高知県実食編」へ)

12月4日に「富山国際会議場」(富山城の前)でイベントがあります。詳細はこちらをご覧下さい
<写真を拡大>

12月4日に「富山国際会議場」(富山城の前)でイベントがあります。詳細はこちらをご覧下さい

 「食べB」にも「見たよ」メールが届いている。たとえば「らーらー」さんは私が「長時間動いているのを見たのは初めて」だったそうである。

 はい、私は一応動きますよ。寝てるときも動いているみたいですよ。

 12月4日(土)にも動いて富山に行き、こんなイベント(富山B級ご当地グルメセミナーをやりますよ。お近くにお住まいの方はいらしてください。(終了しました。ありがとうございました)

 一芸クンが知恵を絞ってプレゼントを用意しているみたいである。

 今回が富山県編の最終回。これまでにいただいたメールで紹介しきれなかったものも含めて並べてみよう。特に煮豆ライスさんからはたくさんの地元情報をいただいているので、最初は煮豆ライスショー。末尾のHN(ハンドルネーム)がないのは、すべて煮豆ライスさんからのメールである。

 まずは前回、太ったオオカミさんから届いた質問への答え。富山の年取り魚は鰤(ぶり)か鮭か。


「ますの寿しミュージアム」にあった「ます寿しマップ」。お店によって少しずつ味が違うそうです
<写真を拡大>

「ますの寿しミュージアム」にあった「ます寿しマップ」。お店によって少しずつ味が違うそうです

MNo.35

 両親(2人とも富山市生まれ)に確認したところ、戦前から鰤・新巻鮭ともに正月には欠かせない魚だったそうです。鰤は当時でも高級魚で切り身で購入、新巻鮭は安かったので1匹購入でした。
 ただし、「なんとかして鰤を買いたい」という気持ちが強かった(両親の親たちが)とのことでした。ということで、やはり富山では「鰤」が優先のようです。
 12月に入ると鮭の腹を開いて塩をし、短い木(割り箸?)を使って腹を広げ、えらから口へ荒縄を通して寒風日陰干しをしている様子はTVでよく放映されます。柳の下・末広軒の向かいにある乾物屋さんは有名で、数10匹が店頭にぶら下がります。
 「お使い物」にされることが多いですが、いただいた方では当然自家で食べます。一般的なものは「干してない」塩鮭です。


 向笠千恵子著「食の街道を行く」(平凡社新書)に関連するカ所がある。取材地は鰤街道の中継点、旧猪谷関所(富山市)があった場所である。


鰤のかぶら寿し
<写真を拡大>

鰤のかぶら寿し

 「大晦日に食べるのは、ぶりはぶりでも生ぶりの刺身の人気が急上昇中で、塩ぶりの焼きものは元旦のごちそうにする家が多い。なお、歳暮には新巻さけが売れるそうで、この山の町もそろそろ塩ぶり文化から遠ざかりつつあるようだ」


 ということである。富山の正月では鰤も鮭も食べるらしい。その意味では東西の年取り魚が混在していることになる。

 だが煮豆ライスさんが書いておられるように「鰤優先」というのが歴史的にも妥当なところではないだろうか。

 このことについては「12月、魚屋の軒には新巻鰤が吊るされます。富山全域かどうかはわかりませんが、呉西出身の私は、毎年みておりました。お隣石川県の近江町市場にも吊るされてますよ」(お名前ありません)というメールもいただいている。


 鱒(ます)寿司を巡ってこんなことがあったそうである。


富山空港のレストランのメニューにも「ます寿司」や「かまぼこ」が
<写真を拡大>

富山空港のレストランのメニューにも「ます寿司」や「かまぼこ」が

MNo.36

 富山の鱒寿司は元来神通川を遡上する大量の桜鱒(サケ目サケ科)を使ったものでしたが、ダム建設や河川改修で激減したため、通常品は「サケ目サケ科」の魚(通称鱒と呼ばれる)を北海道から購入している状況です。
 数年前に鱒寿司の危機がありました。「食品の原材料表示を適正にする」ということで、「マス科」というのはないのだから「マス」表示はしてはいけない、「サケ」表示にしろということで永年親しまれてきた「鱒寿司」という名前が「原材料と違っている」という状態にされそうになりました。
 富山県の猛反対で撤回され、名前が問題なく存続することになりました。「食」は文化であり「文化」はその地域・住人によって永年醗酵・熟成されてきた独特のものであり「大事にして行かなければならない」と実感した事件でした。


 サケ目サケ科寿司にされそうになったという話である。分類上はともかく、日本には鱒と呼ばれる魚が現に存在しているのであるから、鱒寿司でいいんじゃないでしょうか。富山県に賛成。


星のあいすさん提供の「べっ甲」写真
<写真を拡大>

星のあいすさん提供の「べっ甲」写真

MNo.37

 富山市の我が家の「べっこう」は星のあいすさんがスーパーで見つけられたものと同じで、卵がかなり細かく分散しています。ミルフォードさん提供の「えびす」は卵の溶き方が粗く、なんとなく親子丼的な固まり方をしているように見えます。富山市の方が少ない卵で何とかしているみたいです。
 呉西(高岡含む)は加賀百万石・前田本藩に含まれていたので、金沢の「えびす」と高岡の「ゆべし」が似ているのは、呉東(富山市を含む前田藩分家)の人間としては理解できます。


 江戸時代の藩の違いによる食の境界線というのは確かに現在も引き継がれている。青森県の津軽と南部もそうである。メルクマールのひとつが「せんべい汁」。

 ところが、思わぬところに似たものがあった。


「たまご寒天」
<写真を拡大>

「たまご寒天」

MNo.38

 「べっこう」および「ゆべし」についてです。「食べ物 新日本奇行」の中の「ローカル揚げ物(その3)」にも米沢での「たまご寒天」が出てきましたね。
 愛媛にも寒天にたまごをさーっと流して固めた料理が存在します。宇和島、大洲などで食べられるようです。
 はじめて見たときは目がテンになりました。想像したとおりの味。
 別に特別美味しいわけでもなし、まあたしかに黄色くてキレイだから彩りとして重宝されてるのね……くらいに思っていたので、醤油色をしたべっこうという存在、またそれが現代でもスーパーでガンガン売られてると知ってまた驚きました。
 たまご寒天のことを今まで侮っていましたが(すまん)、きちんと調理したら冷製茶碗蒸しみたいな感じで美味しいのかもしれませんね(松山の坂本さん)


 思い出した。米沢の「たまご寒天」。スーパーで見つけ、思わず買ってしまったのだった。

 案外、同じ発想の食べ物が各地にあるものなのかもしれない。

 卵、甘み。昔はごちそうだったもんなあ。


べっこう飴
<写真を拡大>

べっこう飴

MNo.39

 べっこうはべっこうです(きっぱり)。「鼈甲(べっこう)みたいでしょ」と言われた記憶があります。だからべっこうです。
 家で何度か祖母の味を再現したく作ってみたのですが、これちょっとやばいでしょと思うほど砂糖を入れないと無理でした。あの砂糖の量からして、お祝いの時に出てくるごちそうだったんだと思います(永岡動物園飼育係さん)


 やっぱり「やばい」くらいに甘いのである。


 永岡動物園飼育係さんのメールの冒頭部分はこんな話。


とろろ昆布のおむすび。丸い!
<写真を拡大>

とろろ昆布のおむすび。丸い!

MNo.40

 富山のとろろ昆布おむすびは丸型です! 丸く平べったいコンビニのおにぎり型ではなく、まん丸の炭団(たどん)型です! 
 祖母が存命中、帰省した私たちの帰路、お腹がすかないようにとおむすびを作ってくれたとき、その形に驚いたものです。
 好奇心旺盛だった私が「どうして三角じゃないの?」と聞いたところ「これしかできないのよ」と渡してくれたのが、まん中に大きい梅干し、私の握り拳より大きな炭団型、それを白黒混ざったとろろでぐるっと包んだおむすびでした。
 私は大きさにもしょっぱい梅干しにも苦労していましたが、そのおむすびを母が泣きながら食べていたのが忘れられません。


 こういう話に弱い。じーんときた。

赤巻きと昆布巻きのかまぼこ
<写真を拡大>

赤巻きと昆布巻きのかまぼこ

 じーんとしながら思い出したのが、魚津の居酒屋で出たとろろで包んだおむすび。たしかに炭団型であった。

 偶然なのか、富山の流儀なのか。


 メールにはほかにたくさんのことが書いてある。かまぼこについては「梅かまさんの赤と昆布は子どものころのおやつでした。お行儀悪く1本丸かじりするのがたまらなく美味しかったです。赤は小さく刻んで親子丼の彩りに、昆布はスライスしてから薄く油を引いたフライパンで色目がつくまで焼き、生姜醤油(ときにはマヨネーズ)でいただくと別世界の味がしたものです」とある。


 富山では、かまぼこが子どものおやつ。私のこどものころは、ふかしたトイモ(唐芋=サツマイモ)がおやつの定番であった。富山の子どもが羨ましいぞ。


鯛のかまぼこにバナナやスイカなどの形も
<写真を拡大>

鯛のかまぼこにバナナやスイカなどの形も

MNo.41

 イトコの結婚した相手が富山出身。結婚式の引き出物に出た鯛のかまぼこ、親戚の方から飽きたら”バター焼き”が美味しいと言われたが、イメージが湧かずぽかーんとしたのが忘れられません(jimmyさん)


 富山ではかまぼこをサラダオイルやバターで焼く。

 我が家でもときどき雲のはんぺんに明太マヨをのせてオーブンで焼くことはあるが、かまぼことフライパンの対面は実現していない。


フタがウルトラマン?(Poco@焼きまんじゅうさん提供)
<写真を拡大>

フタがウルトラマン?(Poco@焼きまんじゅうさん提供)

MNo.42

 一芸クンの「いか人参」のレポートは楽しませていただきました、ありがとうございます。
 富山ネタとしては海産物、特にゲンゲ(下の下?、幻化?)を野瀬さんに食べていただきたく。同僚の富山出身者も食べたことがないらしいので。
 別件、当家の「ウルトラマン」があまりにも美味かったので写真を添付します。冬は一歩一歩近づいていますね。最近毎日仕込んでいるのですが「点滴」が進む進む。
 ちなみに今夜は牛スジ、大根、卵、ロールキャベツですが、今回は牛スジの下ゆでに手を抜いた結果、おでん出し全体がニコゴリになってしまった。
 ところがカミサンだけではなく高1の娘もコラーゲンの塊に喜ぶことといったら……。長男(小6)ははんぺん好き、次男(小4)はじゃがいも、と意外なところで好みが発覚します(Poco@焼きまんじゅうさん)


ゲンゲの一夜干し
<写真を拡大>

ゲンゲの一夜干し

 先日、NHKだと思うが、夕方の番組を眺めていたらそのゲンゲが登場した。字幕では「下の下(げのげ)」が語源と説明していた。

 生きたゲンゲが映っていて、アナウンサーがぬるぬるの体表を指さして「コラーゲン!」と叫んでいた。

 

 再掲になるが正式には「ノロゲンゲ」という深海魚。甘エビなどの底引き網にかかるのだという。生の状態で市場に出回ることが少なく「幻魚」とも言われる。

メニューに「げんげ」の文字
<写真を拡大>

メニューに「げんげ」の文字

 旬はいまごろから春にかけてかな? 富山実食編で挑戦しよう。点滴が進みそう。


 高岡の「ちゃんぽん」が、こんなものを掘り起こしてしまった。


「うちゅう」(名古屋のす〜さん提供)
<写真を拡大>

「うちゅう」(名古屋のす〜さん提供)

MNo.43

 高岡のチャンポンで思い出したのが「うちゅう」。名古屋のNうどんにあります。
 以前は、常連が注文していたものらしいんですが、現在はメニューにも「うちゅう」(うどんと中華麺)、「きちゅう」(きしめんと中華麺)はグランドメニューとなっております。
 かき揚げのトッピングをしてしまいましたので、ちょっと見にくくなってしまいました。
 これも、ちゃんぽんと同じ範疇ということで。しかし、これはいろんな地区であるんでしょうか(名古屋のす〜さん)


 「食べ物 新日本奇行」に登場した懐かしい物件「うちゅう」。ありましたねえ、そんなのが。

上段左から3枚は「北陸フェア」。試飲は「立山」と「天狗舞」。黒ラーメンは「本当に真っ黒なのですね」。右は雨宿りに入ったフードコートで見かけた店「富山」。日本食ではなく、中国系のいわゆる「ぶっかけ飯」屋で、正式名称(?)は「経済飯」=「economic rice」屋さん。下段は前回投稿した「味のチャンポン」。九州(というか、日本)で食べられているチャンポンとは別物の食べ物のようです(星のあいすさん提供)
<写真を拡大>

上段左から3枚は「北陸フェア」。試飲は「立山」と「天狗舞」。黒ラーメンは「本当に真っ黒なのですね」。右は雨宿りに入ったフードコートで見かけた店「富山」。日本食ではなく、中国系のいわゆる「ぶっかけ飯」屋で、正式名称(?)は「経済飯」=「economic rice」屋さん。下段は前回投稿した「味のチャンポン」。九州(というか、日本)で食べられているチャンポンとは別物の食べ物のようです(星のあいすさん提供)

 すでに書いたことだが、日生の鉄板「ちゃんぽん」が「うちゅう」類似であった。岡山県内では同様のものを何回か目撃しているので、あのあたりは「うちゅう」地帯かもしれない。

 「きちゅう」についてはきしめん文化のあるところ以外に存在する心配はないのでなかろうか。


 シンガポール在住の「星のあいす」さんが11月14日に地元日系スーパーで開かれた「北陸フェア」に行かれたそうである。たくさんの写真を送っていただいた。お目にかけよう。

 うーん、「月見ちゃんぽん」はいいとしても「カレーチーズちゃんぽん」ちゃ何ね。

 ということで富山県編を無事終了する。ラーメンに始まってかまぼこ、昆布、おでんと話は縦横に広がった。

 昨年の秋に数日間を取材に費やした地ではあるが、そのときの目的が限定的だったので、今回の内容は非常に新鮮であった。


 では恒例の「野瀬に食べさせたいVOTE」。

 VOTEは終了しました。ご協力ありがとうございました。


鱒寿司
<写真を拡大>

鱒寿司

 富山ではあまり移動せずに食べられるものを並べてみた。誘導するわけではないが、おでんネタの「かに面」はカニの甲羅にカニ身を並べておでんの出しにくぐらせたもの。金沢では何度も食べているが、富山にもあるのだろうか。いや、あるに違いない。これがあれば、ぜひ皆さんのお目にかけて羨ましがっていただこうと思う。

 (2)の白黒ラーメンの白は多分「南京千両」になるであろう。

 発作的に駅そばなどにも手が出るかも。

 (5)の白えびを食べる際にはゲンゲも探してみる。居酒屋とか寿司屋に行けば、両方あるのかな。

 一芸クン、事前のリサーチを頼む。


一芸クン へい、ぬかりはありやせん。


長崎県に関する投稿よろしくお願いします
<写真を拡大>

長崎県に関する投稿よろしくお願いします

 次回は福島県実食リポート。当初、考えていたのとは全然違う方向に暴走してしまった。

 福島県内大衆食堂の旅である。一芸クンは別途、浜通りにも遠征した。


 さて富山県の次なるターゲットは長崎県。初めて九州に飛ぶ。同じ海でも、富山の海と西の海は全然違う。

 それにチャンポンが私を呼んでいる。嬉しいなあ。

 では長崎県関係者のみなさん、準備をよろしく。


 おおそうじゃった。ぐるなびコラム「まぜまぜチャンポン」も更新された。


 一芸クンリポート「いざ長崎!トルコライス行進曲でいこう」もあります。

(特別編集委員 野瀬泰申)

●お知らせ
 12月に富山県でB級ご当地グルメセミナーを開催します。(終了しました。ありがとうございました)


●食に関する投稿と写真、筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nikkei.co.jp)(携帯からのメールでもOKです)

・メールによる投稿の内容は日本経済新聞社の紙面、電子媒体、その他の出版物に、投稿者に断りなしに転載・引用することがあります。
・投稿いただいた内容は筆者ならびに日経の編集者が掲載を判断し、掲載にあたっては一部編集作業を行うことがあります。
・日本経済新聞社は投稿にあたって得られた個人情報をコンテンツ作成以外の目的に使用したり、第三者に提供したりすることはありません。
・メールによる投稿者は、上記の点を了承した上で投稿しているものとみなします。


2010年11月19日


■富山B級グルメ
・その1 おでんの鍋から「あんばやし」「とやまスイーツ研究会」レポート
・その2 高岡の「チャンポン」は力技だ!駅の立ち食いそば・うどんについて振り返る
・その3 「べっこう」は「ゆべし」で「えびす」「青森ご当地グルメ屋台村」へ行く
・最終回 鱒寿司はこうして危機を逃れマスたいざ長崎!トルコライス行進曲でいこう
・実食編 富山で、もうエッチュウほど食べた富山県実食編への道


■入門編:「食べBって何?」という方はこちらからご覧下さい
■実食編:<映像リポート>はこちら
料理・素材名から探す(インデックス)ページはこちら

【PR】

【PR】

【PR】

大人のレストランガイド

大人のレストランガイド

NIKKEI×ぐるなびが提供する、大人のためのグルメガイド。接待や会食、ビジネスシーンなどにおすすめのお店情報をご紹介。

ぐるなびWoman

ぐるなびWOMAN

女性のための女子会・デートのグルメ情報サイト。おすすめのレストランや居酒屋をこだわりやシーンに合わせて検索できます。

ぐるなびWedding

貸切パーティコレクション

企業向け貸切、OB会etc… 少人数〜大人数でも貸切OKのレストラン

結納・顔合わせ

特別な日を過ごすための完全個室のお店情報や、マナー・段取りまで

このサイトについて

日本経済新聞社について