第209回 福岡県ご当地グルメ(その3) 「あぶってかも」は「うまかっちゃん」

特別編集委員 野瀬泰申


福岡県

 先週は、小倉・旦過市場の屋台で、ラーメンとおはぎ、さらにはおでんとおはぎという衝撃の組み合わせが「当たり前」になっていることが判明した福岡県。今週も北九州から博多へ、大宰府へ、そして久留米へ…。福岡県ならではの食が続々登場します。
 今週のおかわりは、その北九州・門司港で開催されるカレーのイベントをデスクが紹介します
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週末、デスクは自宅で夕食の支度
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週末、デスクは自宅で夕食の支度

 先週末はBSジャパンの番組「あの年この歌」の収録と愛Bリーグの会議だった。番組のスタジオが表参道から天王洲のテレビ東京スタジオに移ったのだが、特設スタジオだったので空調がうまくいかず、胸がはだけた衣装を身につけているアルフィーの高見沢さんは「底冷えスタジオ」とつぶやいていた。でも広くなったしきれいだし、何より楽屋があるので助かった。

 番組は好評らしく、しばらくは続きそうである。

 ただ問題は久留米の母と姉が毎週観ていて、放送終了後に必ずメールや電話が来ることである。それもファッションチェックが厳しい。

 母がこんなことを言ってきた。

作ったのは辛い坦々鍋
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作ったのは辛い坦々鍋

「あんた、髪の毛はどうかならんとね?」
「どうかちゃ?」
「まちっと伸ばさんの」
「伸ばしたらクセ毛やけん、跳ねるとよ」
「そんなら髪ば染めんね」
「ええ! いまさら染めたらおかしかろ? 芸能人やなかとやけん、自然のままでよかろもん」
「……」
「とにかく考えとくけん」
「どげんかせんね」

食べる前にはラー油を追加で「どばっ」と
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食べる前にはラー油を追加で「どばっ」と

「どげんかせんね」と言われても、どげんもならんとたい。

 そこで、とりあえず理髪店を変えてみた。耳の周辺の切り方が、いままで行っていた理髪店と違う。すっきりしたような気がする。

 その髪で収録した回が来週、OAになる。

 また何か言ってくるかなあ。

 ということで福岡県編も3回目。

 北九州市の話題から始めよう。

門司港焼きカレー(中林20系さん提供)
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門司港焼きカレー(中林20系さん提供)

MNo.15

 帰省した際に門司港まで足を伸ばして、名物の「門司港焼きカレー」をということで家族で出かけたのですが、どの店も待ちが入るくらいの人気でした。
 で、室内ではなく屋外のテラス席ならすぐにご案内できますという店があったので、家族の同意を得てそこで食すことに。
 ただ酷暑な日だったんですよねぇ…そんな日に日陰とはいえ外でアツアツの…まあ、海風が心地よかったので楽しめましたが。
 で、門司港レトロ地区はいつ行ってもこころが和みます。明治〜昭和初期の洋館群が今なお現役というのもすごいことですが、その後に建てられた周辺の建物が景観に配慮してるところもいいですね。

3種類の唐辛子(中林20系さん提供)
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3種類の唐辛子(中林20系さん提供)

 ここが「バナナの叩き売り発祥の地」ということはよく知られてる話ですね。碑もあります。その関係で「海峡プラザ」前には「バナナマン」がいたのですが、気が付けば「バナナマンブラック」も並んでました。どちらも生々しい顔の造形が面白いですよ。
 余談ですが、行列必至の有名なうどん屋さんに行った際、卓上に置かれている唐辛子が一味ばかり3種類もあったのですが、どれも激辛でした。真ん中の「おしどり」が激辛で、右の黄色い「黄金」が超激辛、それのミックスが左の「激辛三昧」です。この店はデスクにお薦めですね(中林20系さん)

門司港レトロ地区(中林20系さん提供)
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門司港レトロ地区(中林20系さん提供)

 門司港レトロ地区にあるホテルに泊まったのは何年前だったろうか。周辺はまだ整備途中だったのだが、それでも静かな高貴さをたたえた光景が心地よかった。焼きカレーはそのときに食べたと記憶する。しかしまだいまのように有名ではなかったから、行列をする必要もなかった。

 景観と食べ物。観光地の必要条件を満たしている。

 バナナのたたき売りは子供のころ、門司ではない筑後のどこかのお祭りで見た。「金波銀波の海越えて」という歌の一節が耳に残っている。

 そのときは父が一緒で、売り声に釣られて買いそうになったのだが、隣のおじさんたちが小声で話しているのを聞いて思いとどまったらしい。

 どんな話だったかは秘密。

カフェ「BEAR FRUITS」(松田さん提供)
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カフェ「BEAR FRUITS」(松田さん提供)

MNo.16

 門司港焼きカレー。この店は上戸彩さんが「死ぬ前に最後に食べたい食事」と言ったそうで、連日行列ができています(小倉焼きうどん研究所 松田さん)

ドリア風(松田さん提供)
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ドリア風(松田さん提供)

 簡単に言うと、カレーライスを天火で焼いてドリア風にしたもの。たしかに美味いが、それにしても連日、行列とは。

 この段階でデスクが、焼きカレーと中林さん紹介のうどん屋を頭に刻んだと思われる。早々と言っておこう。

「激辛挑戦は禁止」

デスク そんな殺生な…。

戸畑チャンポン(ちゃんぽん番長提供)
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戸畑チャンポン(ちゃんぽん番長提供)

MNo.17

 福岡県といえば、北九州の戸畑チャンポンです。栄養満点ですぐに食べられる、気が短い戸畑の労働者たちが好んで食べたソウルフードです。
 ゆでやすいように、すでに蒸しあげてある麺は独特の食感があり、海と山に囲まれた戸畑の食材もたっぷり入っていて、そのボリュームは肉体労働者の胃袋をも十分に満足させるほど。
 時間が足りない忙しい人にも、懐がさびしい人にも、そして健康が気になる人にもピッタリのチャンポンです!(ちゃんぽん番長)

戸畑チャンポンは蒸し麺を使う(松田さん提供)
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戸畑チャンポンは蒸し麺を使う(松田さん提供)

 雲仙・小浜のちゃんぽん番長から、このようなメールが届いた。番長はNHK長崎放送局制作のドラマ「私の父はチャンポンマン」のモデルとして有名。

 その番長が薦める戸畑チャンポンは蒸し麺を使う。

 長崎を発したチャンポンは県内はもとより佐賀―久留米から福岡市―戸畑と伝わった。

 佐賀が炭鉱で働く人々、久留米はゴム産業で働く人々、戸畑では製鉄に従事する人々に愛されてきた。

戸畑チャンポンのトッピング(松田さん提供)
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戸畑チャンポンのトッピング(松田さん提供)

 小倉焼きうどん研究所の松田さんからも「戸畑チャンポンは、素早く提供するために蒸し麺を使用しているのが特徴。あと一部地域ですが、トッピングに唐揚げやチキンカツを選べます」とのメールも。

 八幡の製鉄関係の食べ物については最終回でも触れる。

 では博多へ。

 以前、ラーメンブームの中で発行されたラーメン本をめくっていたら、店の住所を「博多市○○区」としたのが何軒もあって、本当にのけぞった。

博多ラーメンといえば「替玉」
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博多ラーメンといえば「替玉」

 博多は戦国以前から堺と並ぶ自由貿易港で、ずっと古い名前。戦国時代に黒田官兵衛(如水)が藩主となったとき、自らのルーツである岡山県の福岡の名前をつけた。それが廃藩置県後も福岡県、福岡市に引き継がれた。

 しかし商人が住み暮らすところは依然として博多であって、お城のある福岡と商人の町、博多が共存してきたのである。

 町の名は福岡でもJRの駅、博多にその名残をとどめる。博多市は存在しない。なのにあのラーメン本はなぜ博多市などと書いたのか。だれも間違いに気がつかなかったのか。

たいらぎ貝(ヴィオニエさん提供)
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たいらぎ貝(ヴィオニエさん提供)

MNo.18

 私は生まれも育ちも大阪なのですが、なぜか福岡を偏愛してしまい、仕事の関係もないのに年に何度も通っています。
 その際、いつも伺うお寿司屋さんがありまして、数週間前に予約しておくと、季節折々の博多らしいお料理を用意して下さいます。
 昨年末に訪れたときは有明のたいらぎ貝をさっとあぶったものやごまさば。
 そして初夏に必ず出して下さるのが「あぶってかも」です。
 野瀬さんにはもうご説明する必要はないでしょうが、スズメダイを鱗がついたまま塩漬けにしたもので、鱗がついたままを焼いていただくものです。
 鱗つきだから身に塩が入り過ぎない半面、火が強過ぎては真っ黒焦げに、弱過ぎては水分が抜けてパサパサになってしまうんだとか。
 しかしこちらはプロの技、最適調理で鱗はパリパリ、中はミチミチに膨らんでほんわり柔らか。なんでこんな美味しいものが博多にしかないのか、と思うほどです。
 なのに最近は博多っ子もあまり食べる機会がないらしく、地元のお客さんには供していないようでしたが、歓声を上げる私たちのお皿を覗きこんだ少し年配の常連さんが「あっらぁ〜あぶってかもね、懐かしかぁ〜」と眼を細めて仰っていました。やっぱりソウルフードなんですね(ヴィオニエさん)

あぶってかも(ヴィオニエさん提供)
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あぶってかも(ヴィオニエさん提供)

 ああ懐かしかあ、あぶってかも。

 福岡在勤時代、みんなで通っていた飲み屋にあった。何度も食べたのだが、その店の主人はヴィオニエさん御用達の寿司屋ほどの腕はなかったらしく、たいてい鱗が焦げていた。

 その黒くなった鱗を箸ではがし白身に達するのだが、魚体が小さい割に小骨が多く、相当手を焼いたものだった。

 腕のいい職人が調理したものなら、身離れもよかったことであろう。

久留米のうどんに必要不可欠なもの
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久留米のうどんに必要不可欠なもの

 これもデスクに譲ろうかな。生け簀のある店のイカ料理もデスクに譲るか。このように、美味いものを譲るのであるから、激辛挑戦は禁止。

デスク 久留米荘でうどん食べるからいいもん。

 福岡県を覆うとんこつラーメン文化。他地域の人はこれで覚えることもある。

「うまかっちゃん」
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「うまかっちゃん」

MNo.19

 神奈川という完全な非とんこつ文化圏で育った私も報告いたします。
 とんこつラーメンを初めて知ったのは即席麺で、です。
 それは、私が高校時代の1979年発売開始のハウス食品さんの「うまかっちゃん」であったりとか、大学時代の1983年、日清食品さんから出た「はかたんもんラーメン」の力が大きかったと思います。
 確かその昔、下宿住まいの時代に、近所のスーパーでひときわ安いセール品でよく出ていたのではないかとおぼろに記憶しています。
 また、九州地方の出身者が帰省の折に箱買いしてきて、振る舞ってくれたこともありました。
 今では日清さんは「はかたんもんラーメン」を出してくれていませんが、可能であればもう一度食べてみたいものです(りばーさん)

思考停止
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思考停止

「うまかっちゃん」には私もお世話になった。社会人となり帰省した折、誰に聞いたのか「うまかっちゃんがうまかもんね」という情報を知り、スーパーで何個か買って東京に戻った。

 昼だったか飲んだ後かにつくって食べたら、袋麺とは思えない再現性の高さに驚いた。

 そしてこの間、社員食堂のメニューに「とんこつ高菜ラーメン」があったので、思考停止になって注文したら、再現性の低さに驚いた。なんで麺があんなに黄色いの?

 博多から少し南下して太宰府へ。

明太子と高菜が食べ放題(ちりとてちんさん提供)
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明太子と高菜が食べ放題(ちりとてちんさん提供)

MNo.20

 福岡県といえば、高校の修学旅行で訪れた太宰府天満宮を思い出します。先生からは「来年受験だから、しっかりお願いしておくように」と言われたにもかかわらず、恋愛成就のお願いだけ一生懸命したので、志望校には振られ、ついでに想い人にも振られ……。
 ま、10代だったので立ち直りましたけど。
 あと、福岡といえば明太子ですかねぇ。「やまや」さんのランチは、明太子と高菜が食べ放題。う〜ん、太っ腹〜。
 がめ煮定食のがめ煮は、洗面器のような大きさの器にどっさり入って出て来ました。ご飯もおかわりできますし、明太子や高菜もおかわり出来るようですが……私には、無理でした(ちりとてちんさん)

梅ケ枝餅
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梅ケ枝餅

 太宰府は梅の季節になると行ったものである。あそこには「梅ケ枝餅」というのがあって、参道沿いの様々な店が実演販売している。

 まだ小学校に入ったばかりのうちの息子は、長いこと「お願い餅」だと思い込んでいた。かわいかったなあ、あのころは。

 私にとって明太と高菜の漬物と海苔は朝の食卓の三種の神器である。しかし明太、高菜は子どもたちがほとんど手をつけなかったので、お父さんだけのおかずになってしまった。熱いご飯に明太や高菜をのせて食べると幸せになれるのになあ。

 太宰府からさらに南下して久留米へ。

骨付きカルビ(豆津橋渡さん提供)
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骨付きカルビ(豆津橋渡さん提供)

MNo.21

 久留米市で、ここ数年急激に増えてきた飲食店メニューがあります。それが「骨付きカルビ」。久留米で骨付きカルビというと豚のあばら肉を甘辛いタレで絡めて炭火で焼くスタイルで「ひがし田」という焼肉屋さんが発祥とされています。
 30年ほど前までは、知る人ぞ知る穴場の店メニューだったのですが、いまでは看板メニューに掲げているお店が市街地だけでも10軒ほどあり、メニューの一部に取り入れているお店となると数えきれないほどになり、久留米では知らぬ人がいないくらいの人気メニューとなっています(豆津橋渡さん)

煙もうもう骨付きカルビ
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煙もうもう骨付きカルビ

 骨付きカルビを食べようと、豆さん、筒井さんの3人で「ひがし田」向かったのはよかったが、満員で入れなかった。あれは何年前? メールを読むと、当時よりはるかに骨付きカルビが増殖しているらしい。

 私も食べたいのは山々ながら、身を骨からはがずときに前歯を使う。現在、前歯が絶不調で要治療状態である。

 安全のためにこれもデスクに任せる。だから激辛挑戦は禁止。

デスク お土産買って帰るからいいもん!

デスクの福岡土産の定番
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デスクの福岡土産の定番

 まだ紹介したいメールはあるのだが、次回のために「とっとっと」。

 福岡県の最終回が視野に入ってきた。次のテーマは大阪府である。

 今週末は鳥取。来週末が長野実食の旅である。

 週末のたびに出張。うれしいような、そうでもないような。

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「門司港レトロ・カレーフェスティバル開催」です。ぜひお読みください。

福岡県編(その1) 鶏の乱舞にトリ乱す

福岡県編(その2) 死ぬまでサバを離さないぞ

福岡県編(その4) ひよ子だチロルだチロリアン

福岡県実食編 ゆで卵1個10円、2個100円


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年2月20日

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