第173回 山梨県ご当地グルメ(その2) 赤飯が甘くてなぜ悪い

特別編集委員 野瀬泰申


 海なし県でありながら、マグロと貝類を偏愛する県民性が明らかになった山梨県。今回は、ワインや信玄餅など、全国的に「山梨県の特産品」として知られる食べ物が続々登場し、山梨県の食文化が徐々に明らかになっていきます。
 今週のおかわりは、今週末からゴールデンウイークにかけて見ごろを迎える、北東北の桜の名所とご当地グルメをご紹介します
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高見沢さん、還暦おめでとう
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高見沢さん、還暦おめでとう

 前回はよんどころない事情で予告もなく休載した。お許しを。

 ところで私は4月からときどきゲーノージンをやっている。お知らせした通り、BSジャパンの番組「あの年この歌」(毎週火曜午後10:54〜)に出演しているのである。

 先週の収録ではTHE ALFEEの高見沢俊彦さんと一緒だった。すぐそばで見ても、還暦を迎えたとは思えない美貌である。手も指先までしっとり潤んでいるようで、我と我が身が恥ずかしいばかりであった。

山梨は花盛り
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山梨は花盛り

 衣装はおなじみのパンタロンにロングジャケット(って言うの?)。どうみても特注の高級品である。本物のミュージシャンはオーラを放っている。

 収録後、高見沢さんの還暦を祝う乾杯があり、番組からバースデーケーキが贈られた。そのケーキがこれ。

 すごいでしょ。ちょっと羨ましかった。

 楽屋話はこれまでにして、山梨県編の続き。

5000円超…贈答用ですね
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5000円超…贈答用ですね

MNo.9

 初めて電車で甲府に行ったときのことです。甲府駅前のデパート「岡島」へ。食料品売場をうろうろしていると、贈答用に包まれた煮貝(にがい)が。ここでは贈り物にするのね、とびっくりしたのでした。
 その日は甲府大好きまつりも開催されている日で、とりもつ隊さんは初めてのイベント参加だったということを、後から知ることになるのでした。
 味? いやそのときは、用事の前にお腹を満たすわけにはいかなかったので、思い切り前を素通りしました(千葉県出身ななさん)

山梨県笛吹市は桃源郷
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山梨県笛吹市は桃源郷

 「糸魚川−静岡構造線を行く」の取材で甲府を訪れた折、私も岡島のデパ地下で各種煮貝を眺めている。この場合の貝はアワビである。贈答用は10000円以上するものもある。

 ただ、アワビはアルゼンチン産のもので、国産だったら倍はするであろう。

煮貝(いけずな京女さん提供)
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煮貝(いけずな京女さん提供)

MNo.10

 山梨には、サントリーの白州蒸溜所がありますね。昨年、初めて見学に行って楽しかったです。
 そのとき「せっかく山梨に来たんやし」と買いましたのが「煮貝」です。アワビを殻ごと丸のまま、醤油ベースの煮浸しにした甲斐国の名産品。昔むかし旅館で食べて、すごく美味しかったのでずっと憧れてたんです。
 通販ですとギフト用のめっちゃ高級品しかなくて手が出せへんのですが、地元ですと家庭用の小さいのがやはりありました。
 江戸時代、今のような冷凍冷蔵流通手段のない中で、海のない甲斐国に魚介類は塩漬けや醤油漬け、干物の姿で他国から持ち込まれていました。
 あるとき、アワビを醤油漬けにして馬で運んだところ、馬の体温と振動でアワビがほどよく仕上がっており、甲斐国の人々はたいそう喜んだとか。そこから「煮貝」が郷土食になったって、ホンマかいなそうかいな。
 そんな「煮貝」はふっくらやわらかく、噛み締めるほどに美味しいおつゆが口の中に広がります。お味は、アワビの旨みが凝縮して詰まってます。まあ贅沢。
 そやけどこれって、よう考えたら信玄公は食べたことないんですよねえ。なんとなく申し訳なくて、ニガ(イ)笑いしたのでありました(いけずな京女さん)

サントリー白州蒸留所
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サントリー白州蒸留所

 メールにあるように高級アワビの煮貝はもっぱら贈答用であって、市民が普段口にするのはバイ貝とかアサリを煮たものである。

 以前、甲府市民から「私たちはアサリが大好きです」と聞いていたので、今回改めて総務省家計調査(2011〜2013年の平均)を見て納得した。

 甲府市の世帯当たりアサリの購入金額は1536円(全国平均1022円)。購入数量は1617グラム(同1070グラム)でともに全国1位である。

蒸留所内で熟成されるウイスキー
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蒸留所内で熟成されるウイスキー

 海がないゆえにマグロを食べまくり、寿司を食べまくり、そしてアサリを食べまくっているのである。

 ここに甲府に代表される山梨県の食の一大特徴が浮かび上がってきた。めでたい。

 「つぼがい」に関するメールもほしいな。

 さらにもうひとつの特徴がある。次のメールの末尾に注目。

信玄餅ソフトクリームもあります
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信玄餅ソフトクリームもあります

MNo.11

 山梨のスイーツを何点かご紹介します。
▽信玄アイス
 信玄餅は有名ですよね? その信玄餅に見立ててバニラアイスに黄粉と黒蜜をかけたデザートです。なぜか甲府市内のあちこちの居酒屋に広まっており、大体のお店で食べられます。焼肉屋でも出ます。
▽ピーターパイ
 南アルプス市荊沢224-3にある「ピーターパン」というお店の商品で、パイ生地の上に生クリームとカスタード、フルーツなどがのったスイーツです。ホールサイズで1000円前後という格安な値段なのに、注文を受けてから作っています。

イタリアンロール(清月提供)
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イタリアンロール(清月提供)

▽イタリアンロール
 県内に何店舗かある「清月」というお店の看板商品です。シュークリーム生地でロールケーキを巻いてある感じのお菓子で、生クリーム、チョコ、マロンなど何種類か味のバリエーションがあります。なぜイタリアンなのかは不明です。
▽ミレーロール
 甲府市内にある「平和堂」というお店の商品です。見た目はほとんどイタリアンロールと違いがありません。山梨県立美術館にミレーの作品があることから、名づけられたのだと思います。イタリアンロールとミレーロールの違いはよく分からないですが、僕はイタリアンロール派です。
▽焼きプリンタルト

焼きプリンタルト(日東ベスト提供)
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焼きプリンタルト(日東ベスト提供)

 もしかしたら全国区かもしれません。僕が小学生時代、学校の給食で出され、その美味しさから瞬く間に当時の人気一番商品に成りあがったスイーツです。当時から誰もどこで売っているのかも知らない謎の商品です。しかし、焼きプリンタルトが出る日のテンションの高さは忘れられません。
▽甘いお赤飯
 お店で売っているというよりも、県内の家庭で作られることが多いです。通常お赤飯の小豆は甘くないらしいですね。しかし、県内で作るお赤飯に使われる豆は甘納豆だったりします(とりもつ隊の鷹野さん)

ピーターパンの「ピーターパイ」(山梨県提供)

ピーターパンの「ピーターパイ」(山梨県提供)

 鷹野さんは甘党ですか? それとも。どっちもいける派?

 ともかく個店の商品ではなく、居酒屋や焼き肉店でも出る「信玄アイス」は甲府の大人向けご当地スイーツと言えるであろう。こんなのがあったんだ。

 そして文末の「甘い赤飯」、しかも甘納豆入りのもある。北海道だけかと思っていたら、甲府にも存在した。

 実はとりもつ隊の土橋さんから話は聞いてはいたが、このように文章になるとまた違った迫力がある。

 ではなぜ甲府で(甘納豆入り)甘い赤飯が生まれたのか。そこのところのヒントがあればうれしい。

甘納豆入りのお赤飯!?
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甘納豆入りのお赤飯!?

 と思っていたところ、甲府の甘い赤飯を詳しく解説したメールが届いた。次回の目玉メールとしてとっておく。

 山梨県で「カツ丼」を注文するとき、注意を要するというのは有名な話。以下のメールを参照のこと。

山梨のカツ丼
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山梨のカツ丼

MNo.12

 山梨でカツ丼を取材したそうですね。私はもう30年も前になりますが、山梨のカツ丼事情を知らずに甲府駅に着いて「カツ丼!」と注文して、ドンブリのフタを開けたときの衝撃が忘れられません。
 その後も数回、仕事で疲れて入った食堂で思わず「カツ丼!」と注文し、ドンブリのフタを開け、ご飯にのせたキャベツの上にソースをかけたトンカツを見たときの「またかぁ」という敗北感。学習能力の低さに涙し食べた苦い思い出が追い討ちをかけます。
 「煮カツ丼」って自慢げに言う甲州人を30年たった今でも理解できない。したくない。今でも「煮カツ丼」なんて注文しません。「キャベツがのってないカツ丼!」(クマクマークさん)

東京のカツ丼
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東京のカツ丼

 本邦におけるカツ丼についておさらいしょう。

 全国標準は卵でとじたものである。しかし信州から北関東、南東北にかけてソースカツ丼が頑張っている。福井もそうである。

 新潟にはカツを醤油系のたれにくぐらせた「たれカツ丼」が存在し、洋風カツ丼というものもある。

 それ以外にもカレー風味のカツ丼や、溶き卵をかけたようなものも局地的に一家をはっている。

新潟のたれカツ丼
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新潟のたれカツ丼

 そして山梨のカツ丼は、もともとご飯に刻みキャベツを敷き、カツをのせただけのものである。ソースか醤油か好きな方をかけてくださいというスタイルの店も多い

 私が甲府で食べたカツ丼はキャベツのほかにレタスとポテサラまでのっていた。要するにカツ定食のカツを付け合わせごと丼に平行移動させたのである。

 これと区別するため、卵とじカツ丼を「煮カツ丼」または「上カツ丼」と呼ぶ。

駒ヶ根ソースカツ丼
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駒ヶ根ソースカツ丼

 卵とじカツ丼こそカツ丼であるという文化の中で育った人々には理解しにくいであろう。その意味ではクマクマークさんの気持ちはよくわかる。

 そんなわけで、山梨県内でカツ丼を食べるときは、どのようなものか確認して注文したいものである。

 これから話を進めるにあたり知っておくべきことがある。山梨県といっても文化は一色ではない。

てりってりの甲府鳥もつ煮は鍋でワインを
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てりってりの甲府鳥もつ煮は鍋でワインを

MNo.13

 房総の実家にポポの木があります、じろまるです。近所の家にもあったので調べてみたら、庭に植える植物として一時かなり流行ったらしいですね。
 昔はもっとあちこちの家に植わっていたとも。衰退した理由は以前の食べBで仰ってたとおりだと思います。
 さて山梨県。現地で杜氏をしている方にインタビューしてきました。まず他の多くの県同様「国中(甲府盆地を中心とした地域)」と「郡内(県東部の山間部)」にざっくり二分されるとのこと。それらは言葉や風習、もちろん食べ物も違うようです。
 鳥もつ煮も国中が主であるため、なかなか郡内まで浸透せず、またローカル調味料メーカーであり、甲府鳥もつ煮のタレを生産しているテンヨも、国中のものというイメージだそう。
 年越しに食べるものも国中は年越しそば、一方郡内は年越しうどんが主流なんだそうです。
 他の県と比べて顕著なのが「晩酌にワイン」という風習。山梨編の1回目にもありましたが、一升瓶ドーン! 湯のみでぐびぐび、というのは珍しくもないと。全国には200ほどワイナリーがあるそうですが、そのうち半分は山梨。ワイン派の人が多いというのもうなずけます(じろまるいずみさん)

飲みたくなった…
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飲みたくなった…

 国中と郡内。

 一方が年越しそば、もう一方が年越しうどん。それだけで、どれくらい文化が違うかがわかるというものである。

 甲府鳥もつ煮も国中のもの。八戸せんべい汁が南部のもので、長く津軽の人々に知られていなかったことに通じる。

 文末のワインのところを読みながら、茶わんでワインを飲みたくなった。

 甲府で同人会もいいかもね。

 ワインからバルサミコ酢へ。

瓶を購入して樽から量り売り(MAYさん提供)
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瓶を購入して樽から量り売り(MAYさん提供)

MNo.14

 山梨は言わずと知れたワイン王国。山梨大学にはワインの醸造を学ぶコースもあると聞いています。
 そこを卒業した「ウスケボーイズ」をご存知でしょうか? 日本のワイン醸造に大きく寄与した麻井宇介氏に師事した醸造家たち。そのうちの一人が山梨に「Beau Paysage」というワイナリーを開いています。
 なかなか手に入れることはできませんが、一度は味わってみたいワインです。
 また勝沼あたりには大小多くのワイナリーが点在します。
 そしてワインに合うツマミとして甲府とりもつ煮をお勧めします。
 呑兵衛としては、白州を置いて山梨を語ることはできないでしょう。南アルプスの清浄な空気と水から醸されるウイスキーは、日本を代表するブランドのひとつです。
 蔵の見学コースでは、樽の芳香とふわりと漂うウイスキーのアルコールに思わず酔ってしまいそうになります。

バルサミコ研究所(MAYさん提供)
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バルサミコ研究所(MAYさん提供)

 揺れる琥珀色の向こうには富士山や八ヶ岳。美しい景色もまた、楽しみな場所です。
 最近は国産のバルサミコ酢を山梨で作っているようです。先日、なでしこ農園さんのショップにお邪魔して、バニラアイスにバルサミコ酢という組み合わせを楽しみました。今回は通常のものと、この時期限定のシャルドネを使ったものの2種類を食べ(飲み?)比べ。やはりシャルドネは爽やかな印象でした。
 通常のものも3種類の違う木の樽で熟成中です。瓶を購入して量り売り。
 「国産ブドウを使用する」「キャラメルなどの混ぜ物を使用しない」「樽で熟成させる」という3つの伝統を守っているそうです。これから新しい山梨名産品になりそうですね(MAYさん)

そば店のハウスボトル
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そば店のハウスボトル

 山梨のワインは白が基調である。一升瓶に入った白ワインで甲府鳥もつ煮。

 鳥もつ煮はそば屋で生まれたものなので、ビールか日本酒かと思っていたら、ワインとの組み合わせもグーなのか。いけるかも。

 バルサミコ酢は我が家でも常備。写真を見ると本当にしっかりとした酢がつくられている印象である。新たな特産品に育つことを祈ろう。

 最後はこれ。うどんである。郡内文化であろうか。

吉田のかけうどん
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吉田のかけうどん

MNo.15

 山梨で名物と言えば「ほうとう」ですが「吉田のうどん」は富士吉田周辺を中心に食べられているうどんです。
 特徴はなんといってもコシの強い…というよりかなり固くて太い麺です。知らない人が食べたら「麺が生ゆでじゃないか!」と怒るかもしれません。
 「讃岐うどん」だと喉ごしを楽しんだりしますが「吉田のうどん」は硬派です。喉ごしよりも歯ごたえが楽しめます。
 数年間、山梨にいて今は都内に住む友人も「吉田のうどんだけは、いまだにときどき食いたくなるんだよね」と言っています。一度ハマったら、忘れられないうどんです。
 値段は「かけうどん」で350〜450円と非常に安く、自分はほぼ毎週末、嫁さんと食べに行っています。

吉田のつけうどん
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吉田のつけうどん

 オススメは「美也樹」。麺はモチモチとした食感です。つゆは味噌と醤油のあっさりとした味付けで、後味がよくて麺と合います。また食べたくなる絶品うどんです。
 すり種(特製の辛味のこと。これも店ごとに特徴があります)は吉田のうどんとしてはスタンダードな味ですが、多少辛めでしょうか
 日曜が定休なので、観光客が土曜日に集中してすごい行列になります。日によっては開店から2時間ほどで麺がなくなり、営業が終了してしまうこともありますのでご注意を!(富士河口湖町在住の松本大さん)

吉田の肉うどん
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吉田の肉うどん

 吉田のうどんは、おつゆに味噌が入る極めて特徴的なうどんである。ゆでキャベツも大変珍しい。かつお節や昆布、煮干しなど海のものが手に入りにくかった山間部で、うどんを美味しく食べるために味噌を使ったのであろう。一種のかてうどんと考えればいいのか。

 九州のべろべろうどんに慣れ親しんで育った私なので「歯ごたえのある硬派のうどん」が食べられるか自信がない。

 ただ以前食べた吉田のうどんにのっていた肉は馬肉であったことが忘れようとして思い出せない。

 ということで次回は山梨県の馬肉文化についても語ることになろう。

 引き続き、山梨県メールを待つ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは北東北のお花見とご当地グルメガイドです。ぜひお読みください。

山梨県編(その1) 「ぶうちゅう」で乾杯!

山梨県編(その3) 馬が鳥もつ2つの県

山梨県編(その4) 富士山はジャガとヒジキで山開き

山梨県実食編 この緑、ほぼぶどう


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2014年4月18日

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