第75回 山口県ご当地グルメ(その3) 牛骨ラーメン、ウッシッシ

特別編集委員 野瀬泰申


 日本酒にまみれた新潟県実食編が終わり、山口県編の再開です。

 地元発祥の食べ物が多いにも限らず、意外と知られていないという指摘を受け、今週はさらに山口県ならではのご当地グルメを深く掘り下げて行きます。先週紹介した「ちしゃなます」の正体も明らかになります。

 番外編ではB−1グランプリin姫路で7位入賞を果たした勝浦タンタンメン船団の地元イベントの模様を、勝浦タンタンメンの食べ歩きとともにデスクが紹介します。合わせてご覧ください。

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(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

イカとサバが美味しいのがいけなかった
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イカとサバが美味しいのがいけなかった

 前回の新潟実食編で、新潟市内の「お座敷食堂」で隣りあわせた「新潟人」さんからメールが届いた。私はてっきり寿司屋に連れていってもらえると思っていたのに普通の居酒屋に入り、そこで地酒の試飲大会が始まったと書いたのだが、あれは「合意の上ではなかったのかい」という内容であった。

 そうじゃったかのお。

デスク そうだったかなぁ。たくさん飲んだこととたくさんしゃべったこと以外は覚えていません。

天領盃350円がもっといけなかった
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天領盃350円がもっといけなかった

 佐渡の地酒「天領盃」の生酒を盛大にぐびーのぷはーしていたため、その辺のことがどうも曖昧で、私の中では「これから寿司屋に行って、ちょこっとつまむのだ」ということになっていたのだが、さらに飲み続けるという「合意」に達していたのかもしれない。

 が、あのときはもう玄界灘というか限界であった。さらに飲むと気が大きくなって「割り勘なんてけちくさいこと言うな。私がおごるぞ」などと言い出しかねない危険な状態であった。

 またお目にかかることがあったら、今度こそ寿司屋方面で合意してもらえたらと思う。おごるかも。

 本編は山口県の3回目。まずはこのメールから。

バリそば(蔵本さん提供)
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バリそば(蔵本さん提供)

MNo.16

 山口のB級フードといったら「バリそば」がベストです。皿うどんでもなく、かた焼きそばとも違います(蔵本さん)

 山口市内を中心に食べられているバリそば。ばりそばとも書く。

揚げた中華麺(ばりそば本舗提供)
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揚げた中華麺(ばりそば本舗提供)

 山口市観光キャラバン隊通信「SLOW TRIP やまぐち」によると「揚げた中華麺の上に、キャベツ、平天、かまぼこ、キクラゲなどが入った鶏がらベースのさらっとしたあんがかかっています。パリパリとした麺は食べ進めるうちにやわらかくなり、酢醤油をかければ味の変化も楽しめます」とある。

 肉類や魚介類が基本的に入らないところが皿うどん、かた焼きそばと違う。最大の違いは「あん」のとろみが緩く、スープに近いところではないであろうか。蔵本さんから送っていただいた写真にスプーンが写っていることに留意したい。

 私はこの手の食べ物が好きである。実食編で挑戦してみたい。

 麺類でもうひとつ。

瓦そば(中林20系さん提供)
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瓦そば(中林20系さん提供)

MNo.17

 宣伝下手と言われた山口ですが、水産関係ではとりあえず知られてるだろうと思ってたふくや鯨だけでなく、鮟鱇(あんこう)の水揚げも実は日本一だったりするんですよね。
 そんな山口県の西端・下関の名物ご当地料理に「瓦そば」なるものがあります。熱した瓦の上で焼かれた麺とトッピングの具(牛肉や錦糸玉子など)を、温かいつけヅユで食べる料理です。
 麺は中華麺じゃなくて和の、それも茶そばなんですよ。しかも薬味は刻みネギに刻み海苔にレモンスライスに紅葉おろし。
 焼きそばとざるそばを足しっぱなしにして2で割ってない上にさらに加算したような…何でこんな料理が生まれたかというと…?
 かつて西南の役で熊本城を囲んだ薩軍の兵士が、熱した瓦の上でいろいろ焼いて食べてたとの話を古老から聞いた『たかせ』の創業者が、その話からこの“元祖瓦そば”を創り出したんだそうです。
 ある意味、陶板焼きみたいなもんですね。ちょっとカリカリな感じに焼き付けられた茶そばの食感が楽しいんですよ。
 川棚温泉にある『たかせ』がその元祖ですが、市内中心部の他店でも食べられますし、関門海峡を挟んで対岸の門司港レトロにも『たかせ』の支店があるので、ここが意外と便利だったりします。ただ、人気店だけに休日お昼などは待ちが入りますが。
 で、スーパーでも普通に瓦そばセットみたいなモノとか、瓦そばにどうぞ的に茶そばのゆで麺を売ってます。
 ある意味、下関市民や出身者にとってのソウルフードかも。私もたまに東京の自宅で茶そばを買ってきて作ってます。酒にも合うんですよ(中林20系さん)

日田のやきそばと同じ原理?
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日田のやきそばと同じ原理?

 元々は川棚温泉の1店舗の創作メニューであったが、いまでは家庭にも浸透して、立派なご当地グルメになった。

 最初は普通の茶そばみたいだが、下の方は焼けて硬くなっている。これをつゆに浸すと柔らかくなる。

 だが、初めて食べる人は麺食らう。

開眼した?
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開眼した?

MNo.18

 山口と言えば、元上司。山口県の出身で、お客さんに会津の人がいましたが「仕事はできるけど、人として気に入らん!」と、常に言っているような人でした。やっぱり、今の時代となっても、そんな感情が残っているんですねえ。
 奥様も山口県出身で、15年ほど前、一度忘年会で手料理をごちそうになったことがあります。そのときの料理は忘れてしまいましたが、〆に出てきたのが、青ネギ(ニラだったかな)が入った日本そばベースの焼きそば。上にレモンがたくさんのってます?
 なんか変な物が出てきたとはさすがに言えませんでしたが、普通のそばのようにつけだれが出てきました。
「上にのっているレモンと一緒に食べると美味しい」と教えていただき、食べてみると…いけるじゃありませんか。これが、僕と瓦そばとの出合いです。
 そばが、ちょっとお焦げができてぱりっとした食感がし、ちょっと大きめに切ったねぎに炒めたときに吸った油を感じますが、それを汁につけたとき、レモンの酸味で中和された感じ。それまで食べたことがなかった味でした。
 そのころまではどちらかというと、酢だこ以外はすっぱ味系は苦手だったのですが、酸味に開眼し、今では夏にはソーメンのたれにもレモン汁を入れて食べるのが標準のようになっています(名古屋のす〜さん)

日本そばにラー油は驚く?
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日本そばにラー油は驚く?

 このときは茶そばではなく普通のそばであったようだが、日本そばをフライパンで炒める光景を目にしたら驚いて当たり前。食べてみて美味さに驚いて当たり前。

 私も初めて食べたときは「何じゃこれは」と思ったものである。

 長門市の居酒屋メニューにあった「ちしゃなます」。あの正体について。

ちしゃなます
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ちしゃなます

MNo.19

 過日取り上げられていた「ちしゃなます」ですが、山口にいたころサニーレタスのことを「ちしゃ」「ちしゃっぱ」と呼んでいました。
「ちしゃ」ことサニーレタスに酢味噌をかけてよく食べていましたので「ちしゃなます」とはサニーレタス(+α?)を酢味噌であえた食べ物ではないでしょうか。
 ところで山口の銘菓ですが、山口市に本店を置く山陰堂の「舌鼓」もとてもおいしいです。白あんを求肥で包んだ小さな和菓子ですが、白あんと求肥の一体感が素晴らしく、特に作りたてのものはぷよぷよ、ふわふわでおいしいです。
 外郎はお土産用には日持ちがする真空パックが一般的ですが、山口にお越しの際は、ぜひ真空パックになっていない生外郎をご賞味下さい。真空パックのものよりいっそう柔らかくワラビ粉のぷるぷるぷるぷる感がたまりません(ちしゃ好き山口県人さん)

サニーレタス(ちしゃ)
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サニーレタス(ちしゃ)

MNo.20

 都立病院の勤務医で山口市出身です。「ちしゃなます」は実家の食卓によく登場していました。「ちしゃ」は今ではサニーレタスと呼ばれている葉野菜です。レタス全般の和名がちしゃです。
 MNo.8の「自然(じねん)焼き」(西田さん提供)に写っている野菜がまさに「ちしゃ」です。これを酢味噌和えにしたものが「ちしゃなます」と呼ばれています。家庭によってはちりめんじゃこをそのまま、またはすり鉢で摺ったものを加えたり、魚の酢漬けを加えたりするようです。
 ちなみに「けんちょう」もよく食べたものです。作ってくれた母は昨年他界しましたが、私には忘れ得ぬ食卓の一風景です(中山さん)

 おわかりであろう。サニーレタスの酢味噌和えが「ちしゃなます」。家庭でもよく食べ、居酒屋メニューでもある山口のローカルフード。誰でも思いつきそうで思いつかない食べ方である。

 今晩あたり、試してみる?

 亡き母の味。忘れられるものではない。

レッツトライ!
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レッツトライ!

MNo.21

「ちしゃなます」大好きです。こちらで再現するなら、グリーンリーフレタスをちぎってしらすと酢味噌で和えれば似たようなものができあがります。
「久し振りにちしゃもみ食べぬ母上の作り賜いし夕餉偲ばる」―祖父の歌集より(しゃこタンさん)

右が真空パック、中央が生外郎
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右が真空パック、中央が生外郎

「ちしゃもみ」とも呼ぶらしいことがわかる。

 おじいさまの母上がちしゃもみをつくっていたということは、その歴史はどこまで遡るのか。

 ともかくいい歌である。

 しゃこタンさんのメールの前半。

アユのせごし
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アユのせごし

「金太郎は子どものころよく食べていました。フランス料理に使われる魚の近縁種とは初めて知りました。実家では舌平目も『れんちょう』と呼んで、丸ごと唐揚げにしてよく食べているようです。車海老を養殖しているところが近くにあり、海の砂浜に撒いてつかみ取り大会を催しているそうです。
 たこ壺漁をしているところが近くにあります。個人にも売ってくれるそうです。しゃこはスーパーで紙袋に何10匹も入れられて売っています。塩ゆでして食べます。アユはせごしといって刺身で食べます。あとは飴煮。
 よく潮干狩りに行ってマテガイを捕りました。ひゅっと砂に引っ込むのをつかむのが面白かった。バター焼きで食べるそうです。
 実家の人たちは普段から新鮮な高級食材を食べているので、都会で高い料理をごちそうしても、今ひとつという顔をされてしまいます。築地場内のお寿司もそれほど感動していませんでした。
 思い出しながら書いていて、こちら(東京)での食生活の貧しさに悲しくなってきました」

 クルマエビを砂浜に撒いてつかみ取り。一度やってみたいものである。

 ここまでで、山口県の豊かさと多様さが存分に伝わってくる。知られていないだけである。

 ついでにこれも知っておこう。

東京の牛骨ラーメン
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東京の牛骨ラーメン

MNo.22

 山口県下松(くだまつ)市は、「牛骨ラーメン」地帯です。50年以上の歴史があり、30軒近い店のメニューとして定着しているとか。その特長は「牛骨醤油」。
 1952年創業の「紅蘭」という店が元祖だそうで、牛骨からとった清湯、甘めであっさりとした醤油味、ストレートの中太麺が特長。
 山口県と同じ中国地方には、こちらも歴史のある鳥取の牛骨ラーメンもあります。奇しくも中国揃い踏み。不思議ですね。
 山口県は萩や柳井、周南など何度か旅しているのですが、デジカメを持っていないころだったので写真が1枚もありません(ミルフォードさん)

 やっと登場、下松の牛骨ラーメン。

鳥取の牛骨ラーメン(鳥取情報文化研究所提供)
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鳥取の牛骨ラーメン(鳥取情報文化研究所提供)

 鳥取県中西部の牛骨ラーメンは鳥取県編その2に登場するが、誕生は「終戦後間もなく」であった。下松のそれが1952年に生まれたのであれば、鳥取の方がやや早かったことになる。

 といっても鳥取から下松に伝わったのではなく、独自に発展を遂げている。ラーメンファンの間では「下松ラーメン」という名前で呼ばれることがある。

 私は10年ほど前にその存在を知ったが、残念ながらまだ食べる機会を得ていない。

 デスク、実食編で食べる?

デスク 食べる食べる。もちろん食べる。必要とあれば、食べ歩く。

アラは「おつい」になる
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アラは「おつい」になる

MNo.23

 素っ気ないメールでおなじみのエミーです。読んでいると山口って本当に地味ですね。自分では全国区だと思っていたものが実は地元でしか食べられていないと知り、地元再発見中です。「ちしゃなます」って郷土料理だったのか……。
 子どものころから、母がつくってくれる「鯛のおつい」が好きです。これって郷土料理なんでしょうか? 鯛のアラを煮て、薄味に仕立てたお吸い物です。潮汁だと思うのですが、いかがでしょうか。
 自然薯はこのくらいの季節によく食べていました。父親と祖父がどんなに苦労して採ったかを自慢していたのを思い出します。自然薯の吸い物は1杯のむと1年寿命が延びると言われておりました。
 父から「帰ってきたときに自然薯ご馳走する予定。山につるを見つけておいた。年末に掘りに行くつもり」というメールが届きました。こういう気の長いことをして掘り出しているようです。
 クリ、タケノコ、自然薯はイノシシとの戦いです。ちょうど美味しくなってきたころにイノシシが食べてしまうためです(エミー隊員)

岩国寿司は派手な色合い、地味じゃない(豆津橋渡さん提供)
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岩国寿司は派手な色合い、地味じゃない(豆津橋渡さん提供)

 美祢市は山に囲まれている。いい自然薯が採れることであろうが、イノシシと喧嘩すると危ないので気をつけていただきたいものである。シシ奮迅の活躍を。

 それとJR美祢線が廃線の危機を免れたそうである。よかったよかった。

 紹介できなかったメールは次回に。

 ジミだとか、何もないとか言われていた山口県。こうしてみると面白いものがたくさんある。

桐箱入り
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桐箱入り

MNo.24

 山口県その2の冒頭に登場する組み木の日本地図パズルですが、これも山口県阿武町産のパズルだと思うのですが?
 91歳、たしか今は92歳のおじいちゃん、木村菊人さんこと通称菊爺の作品ではないでしょうか(阿武町役場の藤村さん)

埼玉県のマスコット「コバトン」
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埼玉県のマスコット「コバトン」

 その通りですよ。一芸君が役場に電話して入手方法を確認したのですが、一芸君によると「多分、藤村さんの隣の人に教えてもらったと思います」と根拠のない説明をしておりました。

 山口県編は次回で終わるが、山口の後は埼玉県をテーマにする。東京隣接の上、「埼玉都民」も多いため見えにくい部分もあるが、埼玉にも独自の食文化が根付いている。そこのところを掘り下げたい。

 それから皆さんにお願い。今度の正月に食べた「お雑煮」の写真をすみやかに送っていただきたいのである。具、味付け、餅の形、焼くか煮るかなどの情報も合わせてお寄せいただきたい。ちょっとしたお雑煮地図ができるとうれしい。

 ではまた来週。次回は山口県編に関して書き残しのないようにどしどしメールを送っていただきたい。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週の番外編は勝浦タンタンメン食べ歩き(デスク)です。お時間あれば、こちらもどうぞ。



実食編(前編) 徳山の屋台で飲んで日が暮れて

実食編(後編) ばりそばは「ばり」「ずる」「つる」の三重奏

山口県編(その1) サラリーマンじゃない「金太郎」

山口県編(その2) 県庁食堂に「けんちょう」はあるか?

山口県編(その4) 俺んち゛のミカンは鍋になる


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2011年12月9日

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