第229回 宮崎県ご当地グルメ(その3) かにまき汁にごんぐり煮

特別編集委員 野瀬泰申


宮崎県

 1週間のお休みをいただいて、宮崎県編再開です。
 前回、宮崎では酒といえば芋焼酎が一般的との情報が寄せられましたが、実はその飲み方にも「宮崎県ならでは」があるようです。その飲み方とはいったい…。
 今週のおかわりは、7月19日(日)に宮城県石巻市で開催される、JR仙石線全線復旧、仙石東北ライン運行開始を記念したイベントの情報です
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ボランティアの皆さんが「ボンジュール!」
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ボランティアの皆さんが「ボンジュール!」

 7月11日、愛Bリーグの全国フォーラムのため、青森県十和田市に行った。10月3、4日に第10回「ご当地グルメでまちおこしの祭典! B−1グランプリinTOWADA」が開かれる。

 町のいたるところにのぼりがたなびき、ポスターが貼られていて、B−1ムードがあふれている。私たちが行ったとき、ボランティアの皆さんが交差点に立って「ボンジュール」の看板で歓迎してくれた。

 昼はバラ焼き定食、翌朝もバラ焼き定食。ほかに食べるものがたくさんあるのに、ついついバラ焼き定食になったのだった。

和菓子でつくったバラの花で「B−1」
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和菓子でつくったバラの花で「B−1」

 フォーラムの後の懇親会では八戸や十和田の山海の幸が並んだ。ホヤの塩蒸しといった珍味もあって、全国の愛Bリーガーが持参した各地の銘酒を楽しんだのだった。

 その夜は特別に1500円のチケットで市内3軒の飲食店を回ることができるラリーが催され、夜の十和田は店によっては100デシベルを超えるにぎわいになった。私は早々にホテルに戻ったが、2時、3時まで頑張った愛Bリーガーもいたらしい。

 さて今週は宮崎県編の3回目。日南市からのメールを紹介しよう。

ごんぐり煮(霧島酒造提供)
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ごんぐり煮(霧島酒造提供)

MNo.14

「ごんぐり煮」は、マグロの胃袋を甘辛く煮込んだ家庭料理です。生や一度冷凍されて解凍された「ごんぐり」をよく洗い、下ゆでしてやわらかくします。そして、適当な大きさに切り、醤油、酒、砂糖などの調味料を使った煮汁で煮込んでいきます。醤油はもちろん、日南ならではの甘め。
「かつおめし」は新鮮なカツオを切り身にして、醤油ベースのタレに漬けます。ほどよく味が染み込んだ切り身をアツアツのごはんの上にのせ、熱い出し汁をかけてお茶漬け風に。元々は、地元の漁師たちが船の上で食べていた料理なので、調理法はシンプル。毎年3月には、地元で水揚げされた初カツオを使った「かつおめしフェア」も開催されています。5店舗ほどが参加し、お値段は1コイン(500円)!(飫肥杉仮面さん)

かつおめし(霧島酒造提供)
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かつおめし(霧島酒造提供)

 説明は不要であろう。「ごんぐり」はマグロの胃袋なので、1匹から1個しか取れない。結構、貴重かも。

 「かつおめし」はカツオのづけの出し茶漬け。美味いに決まっている。

 日南市観光協会の後藤さんからいただいたメールに「かにまき汁」という聞き慣れない食べ物が登場する。どんなものかと調べてみたら、霧島酒造のHP詳しい作り方が出てくる。

かにまき汁(霧島酒造提供)
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かにまき汁(霧島酒造提供)

『かにまき汁』は宮崎県南部の北郷町(きたごうちょう)に伝わる郷土料理。北郷町を流れる酒谷川(さかたにがわ)や広渡川で秋から冬にかけて獲れる『山太郎ガニ』(北郷町での呼称で正式名はモクズガニ。上海ガニの仲間)を使った料理だ。『山太郎ガニ』は海で生まれ、川を上って成長した後、海で産卵するために川を下る。それを狙って、漁を行うのだ。
 生きた『山太郎ガニ』をよく洗った後、甲羅を外し、臼と杵、あるいはミキサーにかけて、細かく砕きつぶす。そこに、水と味噌を加えてさらに混ぜ、ザルで、きれいに濾して鍋に入れる。弱火でゆっくり熱を加えていくと、カニに含まれるタンパク質や味噌の成分などが反応し、おぼろ豆腐のように固まっていく。それを器に入れ、おろしショウガやネギを加えてできあがり。澄んだ味噌仕立ての汁に浮かぶ、ふわふわとした食感のなかに、カニの旨味が凝縮されている。ゆでて食べてもおいしいカニを、少しも無駄にせず丸ごとすりつぶすことで、濃厚な旨味が生まれるというわけだ。
 味噌がカニの旨味を包み込むこと、巻くことから、その名前がついたとも言われる『かにまき汁』。その独特の味わいは、この地域の方々が秋になると待ちわびているものだ。

ツガニ汁
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ツガニ汁

 この文章を読んで、以前、佐賀県の唐津で食べた「ツガニ汁」を思い出した。ツガニは山太郎ガニと同じく、モクズガニの地方名。作り方が同じかどうかわからないが、あれも途方もなく美味であった。北郷町の「かにまき汁」を食べたい。歯がなくても食べられそう。

 その霧島酒造の製品に関して、次のメールが興味深い。

クロキリのハーフロック
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クロキリのハーフロック

MNo.15

 同じブランドの芋焼酎でも鹿児島では25度、でも宮崎だと20度。
 たとえば、今や全国で飲める「霧島」(通称「クロキリ」)は25度。宮崎県内で流通している「霧島」(通称「シロキリ」)は20度。当たり前のように思ってましたけど、なぜなんでしょう?
 食べ物ではありませんが「酒の方言」とでも言いますか。
 今日の晩酌は、黒霧島25度のハーフロックです(福岡発鹿児島経由東京経由大阪着40代後半男性さん)

「クロキリ」と「シロキリ」
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「クロキリ」と「シロキリ」

 黒霧島にも白霧島にも20度と25度の商品がある。にもかかわらず、宮崎では25度ではなく、20度のものが好まれるということであろう。確かに「食の方言」と言える。ではなぜそうなったのか。

 前回の「あまロス」さんからのメールを思い出してみよう。宮崎の焼酎の飲み方は「初めから大盛り」であった。度数の低い焼酎をたくさん飲む。

 個人的な印象だと、鹿児島では度数の高い焼酎をやや少なめに飲む。やっぱりたくさん飲むのかもしれないが。

関西の缶チューハイは12%!?
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関西の缶チューハイは12%!?

 ともかく度数の高い、低いに地域的な嗜好があるということであろう。

 個人のレベルでも言えることで、5%のビールをがぶ飲みする人もいれば、私のように14度の日本酒をちびちび飲む者もいる。

 次のメールに描かれた光景からも、宮崎における焼酎の飲み方がうかがえる。

B−1グランプリ食堂の鏡割りは日本酒
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B−1グランプリ食堂の鏡割りは日本酒

MNo.16

 宮崎の焼酎王国ぶりを友人の結婚式で体験しました。
 泡が飲めず醸造酒が好みの私は、乾杯のシャンパンをなめ、泡のないビールをグラスに満たし、ステージ前に置かれたこも樽を見据えて、鏡割りを今か今かと待っていました。
 待望のセレモニーが終わり、新郎新婦手ずからお振る舞い。
「お酒ご希望の方、前に集まってください」の声に、いの一番で樽の前へ駆けつけました。
 ようやく日本酒が飲める!
 柄杓からたっぷりのお酒をもらい、満面の笑みで席に戻り、ゴクンと飲んだそのときです。
 痛っ!
 アルコール度数の高い焼酎をあおった状態になってしまったのです。
 そう、宮崎では「お酒」=「焼酎」だと気づかされた瞬間でした。その後こっそりお水をもらって割って呑みましたが、最初の一撃にやられてしばし料理の味もわからなくなりました。
 二次会でそのことを新郎新婦に話したところ「酒飲みのMAYちゃんが知らなかったとはねぇ」と大笑いされてしまいました。そういえば前夜、大好きなカツオを堪能しているときもいちいち「日本酒」って言わないとでてこなかったような……(MAYさん)

20度です
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20度です

 このように、ストレートで焼酎を飲むのならば、度数が低くないと派手に酔っ払うことになる。宮崎=20度好きの背景には「飲み方」があるのかもね。

 さきほどから2回も出て来たカツオ。その他の魚に関するメールも届いている。

道の駅目井津のカツオ(nozakiさん提供)
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道の駅目井津のカツオ(nozakiさん提供)

MNo.17

【カツオ】 日南海岸の南、日南市油津、目井津は遠洋のカツオ漁船の基地です。他のカツオの水揚げ港と同じように、刺身、生節、塩辛(酒盗)などが食べられてきました。
 親戚がカツオ船の漁師ということもあり、夏から秋口にかけて夕飯のおかずは大皿いっぱいに盛られた大量のカツオの刺身だけなんてこともありました。脂ののったカツオは赤茶色で、刺身だけでご飯が何杯も食べられるほど美味かったです。
 新鮮なカツオは刺身が一番です。刺身が余ると醤油の漬けにして、翌朝網で焼いたり、ご飯にのせて煎茶でお茶漬けにして食べたりしました。もちろん、弁当のおかずにも。

道の駅目井津のトビウオ(nozakiさん提供)
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道の駅目井津のトビウオ(nozakiさん提供)

【トビウオ】県南ではトビウオも良く獲れます。見たことはありませんが、トビウオ漁は、海の上を飛んでいるトビウオを、竿の長いタモですくうのだそうです。刺身や焼いて食べても良いのですが、このあたりの海ではエソが取れませんのでトビウオは、カマボコや「てんぷら」(後述)の原料にもなります。
 また、トビウオというと五島のアゴを想像する方もいらっしゃると思いますが、焼きアゴやアゴ出しは、私の記憶にありません。出しはもっぱらイリコから取っていました。
【てんぷら】トビウオなどの白身魚のすり身とほぼ同量の豆腐を加え、黒砂糖や醤油で味付けして油で揚げた料理です。さつま揚げに似ていますが、豆腐が入っているので食感はフワッとしています。
 また、黒砂糖の甘みが、お八つにも、焼酎のつまみにも最適で、子どもから大人まで大好きな食べ物です。子どものころは、近所のお惣菜屋さんで芋天などと並んで売っていましたが、単に「てんぷら」と呼んでいました(Nozakiさん)

ニコニコショップのとび天(nozakiさん提供)
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ニコニコショップのとび天(nozakiさん提供)

 家庭でもカツオのづけ茶漬けが食べられていることがわかる。幸せである。

 宮崎県南の天ぷらは豆腐が入る。鳥取のとうふちくわは豆腐7魚3の割合であるが、宮崎では1:1。魚度が高い。

 そして甘いのである。

 本日、我が家の朝ご飯は冷や汁であった。市販の「素」にキュウリ、大葉、ミョウガ、豆腐などを加えてこしらえた。Nozakiさんから本場の作り方を送っていただいた(作り方はここをクリック)ので、挑戦していただきたい。

デスク家でも冷や汁
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デスク家でも冷や汁

 日南市から高鍋市に目を転じると……。

高鍋ロールキャベツ丼(キャベ子さん提供)
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高鍋ロールキャベツ丼(キャベ子さん提供)

MNo.18

 わが町にも、ご当地グルメなるものがございます。
 もちろん、ご当地グルメというからには、町の生産物をふんだんに使用し、見た目にも鮮やかで、なおかつおもてなし料理にぴったり!!
 料理名は「高鍋ロールキャベツ丼」。ロールキャベツだからといって、コトコトと煮るわけではなく、キャベツの歯ごたえと、シャキシャキ感を残すべく、キャベツを蒸して、県or児湯産の牛・豚・鶏をロール状にして巻き、ご飯の上にのっけております。
 また、ご飯の上にはひまわり畑をモチーフ(高鍋はひまわり畑が有名)にした錦糸卵を敷き詰めており、なんともかわいらしい丼となっております(キャベ子さん)

煮込まないで蒸す(キャベ子さん提供)
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煮込まないで蒸す(キャベ子さん提供)

 2012年11月に生まれた創作料理である。煮込まないロールキャベツってどんな味であろうか。

 しかし地元産のキャベツにこだわっているため、出荷しない夏から秋にかけては提供中止らしい。通年で食べられるといいのにね。

 意外なところに意外なものがあった。

大粒で味わい豊か(中林20系さん提供)
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大粒で味わい豊か(中林20系さん提供)

MNo.19

 意外なことに、宮崎で美味しい……を通り越して最上級な美味さの納豆を作っておられるところがあります。
 竹之下フーズという都城の会社ですが、九州産の良い大豆を地元の良き水で、しかも手づくりで製造しているとのこと。
 帰省した際は地元スーパーをのぞいて探してみて楽しんでますが、今のところ東京では出合えていません。
 通販でも手に入りますが、取材帰りにスーパーを探して(=北九州でも売っているので、九州なら各地で出合えるかも)、みやげとして買って帰るなんてのも楽しいかも。納豆好きのかたは九州へ行く機会があれば探してみてください(中林20系さん)

過激にうまい!(中林20系さん提供)
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過激にうまい!(中林20系さん提供)

 必要があって納豆の起源を調べてみたのだが、よくわからないというのが現状のようである。

 ただヒントはある。馬である。かつて馬の飼料はワラと煮た大豆であった……おっと危ない。詳しくは「文学食べ物図鑑」の「納豆」の項で。2回にわたって考察する予定。

 今週最後のメールはこれ。

レタス巻(いけずな京女さん提供)
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レタス巻(いけずな京女さん提供)

MNo.20

 もしかしたら、宮崎県民の皆様は、存在が当たり前過ぎて気づいておられないのかもしれません。しかし、れっきとした宮崎県の郷土料理に認定されていますそれは「レタス巻」。
 レタス巻きは巻き寿司の一種で、中にはレタスと蒸したエビ、またはカニ風味カマボコを入れ、さらにマヨネーズを絞って巻いたものです。それなら似たようなメニューは回転寿司などにもあるのでは?
 ところが宮崎の「レタス巻」は、昭和41年に宮崎市の寿司屋「一平」で独自に考案されたもの。「一平」の初代店主・村岡正二氏と、友人であった作曲家・平尾昌晃氏との会話から偶然に生まれました。
 野菜嫌いであった平尾氏になんとか野菜を食べてもらいたいと、当時の寿司屋では考えられなかったマヨネーズを大胆に取り入れた、と伝わっております。その後、宮崎市内から県内の寿司屋にも広がり、ふるさとの味として育っていきました。
 さらには、アメリカで「カリフォルニア・ロール」のヒントにもなったとか。その「カリフォルニア・ロール」が日本に逆輸入されて、“寿司にマヨネーズ”が定着したわけですから、食文化の伝播は時に面白いものですね(いけずな京女さん)

寿司にマヨネーズ(いけずな京女さん)
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寿司にマヨネーズ(いけずな京女さん)

「一平」のHPにも、上のエピソードが書かれている。

 かつて平尾さんに会ったときこの話をしてみたのだが、平尾さんの反応はあまりビビッドではなかった。忘れたのかな。今度会ったら再度確認したいと思っている。

 でもレタス巻きは好き。飲んだ後が一番美味い。

 山口県長門市の柴田さんから「当地にはおからに酢締めした魚をのせる『きずし』というものがある。おから寿司について調べているので、資料などあれば教えてほしい」とのメールをいただいた。

おからが揚げ物になった行田ゼリーフライ
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おからが揚げ物になった行田ゼリーフライ

「きずし」は「生寿司」、つまりなれ寿司ではない酢を使った早寿司のことを指すのではないかと思う。それは具の状態を指した言葉であって、下部構造のおからについて言っているのではなさそうである。

 おからの寿司の歴史は古く、1802年刊行の「名飯部類(めいはんぶるい)」に登場する。いま手元にある本の中で、おからの寿司について頁を割いているのは岩波新書の日比野光敏著「すしの歴史を訪ねる」ぐらいである。

 ご参考まで。

久留米井筒屋(旧旭屋)は2009年に閉店、11年解体
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久留米井筒屋(旧旭屋)は2009年に閉店、11年解体

 それから「ちりとてちん」さんから、幼かった私が久留米のデパートに着いてからのことを知りたいとのメール。

 それはですねえ、内緒。いつか直接お話しする機会があるかもしれない。

 次回で宮崎県編は最終回。書き残しがないようにじゃんじゃんメールを送っていただきたい。

 宮崎県の次は福井県。ご関係の方は準備体操をどうぞ。

(特別編集委員 野瀬泰申)



★今週のおかわりは「いしのまき出発祭、開催」です。ぜひお読みください。

宮崎県編(その1) 「チキン南蛮」はなぜ「南蛮」?

宮崎県編(その2) ギョ! うどん?

宮崎県編(その4) 白い皮、むいて食べるな日向夏

宮崎県実食編 「かにまき汁」で生き返る


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年7月17日

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