第81回 熊本県ご当地グルメ(その1) ちくわサラダだ、皿出せよ。

特別編集委員 野瀬泰申


 いよいよ熊本県編のスタートです。熊本県は、加藤清正が築城した熊本城を受け継いだ細川藩を中心に南部の人吉藩、天領・天草とともに栄えてきました。国の出先機関が多く設置され、戦前は九州の中心地として、戦後も南九州3県(熊本、宮崎、鹿児島)の中心都市として政治的、経済的に発展しました。

 今年4月には県庁所在地の熊本市が政令指定都市になるなどますます発展が見込まれる熊本県。その食文化をみなさんとともに明らかにしていきます。

 番外編ではデスクが、熊本県の在京アンテナショップ「銀座熊本館」を取材してきました。あわせてご覧ください。

 食べBのFacebookページ(http://www.facebook.com/tabebforum)もご好評をいただいています。実食編地図など、オリジナルコンテンツも掲載していますのでぜひご利用ください

(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

石巻が千葉にやってきた(本文とは関係ありません)
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石巻が千葉にやってきた(本文とは関係ありません)

 実は正月のうちにケガをしていた。右足の小指で金属製のスツールの脚を蹴っ飛ばし「あたた」となったのだが翌朝、青黒く腫れ上がり靴が履けなくなった。数日ほったらかしにしていたら、どんどん痛くなる。

 そこで会社の診療所でレントゲンを撮ったところ「折れています」。しかしながら「フレッシュな骨折ではない」とのことであった。「フレッシュな骨折」というフレーズには感心したが、ともかくいつか知らないけれど気づかないうちに骨折し、自然に治っていたらしいところを正月の「ガツン」で傷めたようなのであった。

マグカップもやってきた(本文とは関係ありません)
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マグカップもやってきた(本文とは関係ありません)

 そして仙台に行った折、ホテルのベッドで目が覚めてみると、その右足の土踏まずのところが妙に痛い。思い当たるフシはない。夜中に壁を蹴っ飛ばすにもベッドの両脇に壁はなく、蹴っ飛ばし不可能。

 どうしたんだろう。

 そんなこんなで、ゆったり履けるスニーカーとかウオーキングシューズで過ごしてきた。

 ところが本日はフォーマルな用事があって、寝間着みたいな格好で行くわけにはいかず、スーツにネクタイという、まるで勤め人のような姿で家を出ることになった。

 こうなると靴は黒いビジネスシューズしかない。先が細い。きっと痛いだろうと思って履いてみたら、そうでもなかった。

クッキーもやってきた(本文とは関係ありません)
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クッキーもやってきた(本文とは関係ありません)

 わーい、治ったんだ。来月から出かける東北の旅では、これで足の心配をしなくてよさそうである。

 皆さんに情報提供をお願いしていたところ、貴重な手掛かりをたくさんいただいた。後はデスクと十分に日程と行程を考えて出発するのみである。

 熊本県編に入る前に「中野区方南から引っ越した加藤」さんのメールを紹介する。秩父市に10年ほど前まであった「石橋なんとか」という街のパン屋さんの話である。

デスクが食べたメロンパン
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デスクが食べたメロンパン

 決して品数は多くないのですが、他の店にはない、この店にしかないというような特徴のあるパンがいくつかあったのが印象的でした。そのなかのひとつが「メキシカン」。よくある<<鴻塔pンのクッキー生地様のものが、パン生地の上にかけられて焼かれているスタイルは同じ。
 店主夫婦が高齢になってもがんばって続けてくれていたのですが、後継者がいなかったのかどうかは不明ながら惜しまれつつ閉店してしまいました。
 今や「メキシカン」の来歴を知る人もいないのではないでしょうか。あるいはこのような「メキシカン」が存在する地域はあるのでしょうか?

とある。

これも食べた(デスク)
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これも食べた(デスク)

「食べ物 新日本奇行」の「メロンパンとサンライズ」の項を参照していただきたい。そこに米国からのメールが何通か紹介されているが、いずれも「日本のメロンパンはメキシコのコンチャスとそっくり」というものであった。

 コンチャスは「貝」という意味らしい。そして見た目も味もメロンパンと激似であるという。

 現物を見ていないので断定はできないが、名前からすると「石橋なんとか」パン屋のご主人は、メキシコのこのパンに関する知識があったのではないであろうか。

 でなければ「メキシカン」というネーミングは浮かんでこないような気がするのである。

 では本編。

タイピーエン
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タイピーエン

MNo.1

 熊本で生まれ育ち、18歳まで過ごしました。両親が鹿児島県出身のためどの程度家庭で熊本ならではの料理が出ていたのかわかりませんので、小・中学校の学校給食を思い出してみました。
 給食は米飯とパンの混合でした。米飯の時は納豆がよく出ました。地元のマルキン納豆です。納豆にたれ以外にからしをかける人がいると知ったのは大人になってからです。母が選ぶ納豆がたまたまそうなのか、給食の納豆にもからしはついていませんでした。
 関西では納豆が苦手な方が多いと聞きますが、記憶にある限りでは同級生で納豆が苦手という人はあまりいなかった気がします。教育委員会とマルキン納豆の長年の啓蒙のせいでしょうか?
 高校卒業後はずっと海外在住で、ときどき帰国すると、昔はただの3時のおやつだったいきなり団子と「香蘭亭」で食べていたタイピーエンがかなり立派に市民権を得たようで驚きます。
 ちなみに給食にちゃんぽんが出ていました。とんこつ味の太麺でおいしかったなー(うまかつさん)

熊本は九州における納豆の飛び地
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熊本は九州における納豆の飛び地

 熊本は九州における納豆の飛び地として有名である。

 西日本で納豆がそれほど浸透していないのは、周辺の海で1年を通じて魚が獲れ、動物性たんぱく質を大豆に頼らなくてよかったからと言われている。

 気温が高く湿度も高い西日本では、大豆が発酵する前に腐敗するからとも言われている。

 その中で熊本が江戸時代から納豆地帯であったことについて、いくつかの説があるが判然としない。私は加藤清正が持ち込んだという説を考察したけれど、清正は尾張の生まれで西国を転々としている。納豆との接点があったかどうか疑問。というわけでよくわからん。

マルキン納豆「あまかたれ付」
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マルキン納豆「あまかたれ付」

 ともかく温度管理された工場ができたせいか、学校給食のせいかは別にして、九州全域で納豆は珍しいものではなくなった。

 久留米のスーパーにも地場メーカーの納豆が何種類も並んでいる。

 ただし、ついている「たれ」は甘い。砂糖をがばがば入れる北東北ほどではないけれど、確かに甘い。

ひともじぐるぐるとからし蓮根(apple-aさん提供)
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ひともじぐるぐるとからし蓮根(apple-aさん提供)

MNo.2

 よもや熊本に飛んでくるとは想定外でした、焦る焦る!
 今月は通常業務以外の業務が目白押しなのに、これは試練というべきか、はたまた誕生月プレゼントと考えるべきか。
 ここはポジティブに後者と受け止めまして、新たな取材結果を写真とともに理路整然と論文形式で投稿したいと思うのですが、取り急ぎ第一報として「ご汁は熊本にもあります!」と申しあげておきます。
 それがどんなものか知らなかった私は「ご汁の素」の袋に書いてある通り味噌汁に加えましたが、おなかが膨れるだけではなく通常業務に支障があったため、そのゴ、調理は控えております。
 写真も取り急ぎ「ひともじぐるぐる」、旬のもの、もう少しで旬のもの、を(apple-aさん)

 ご汁、すなわち呉汁。大豆をすりつぶしたもの。または粉末で使用することもある。

apple-aさんがいるから大丈夫
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apple-aさんがいるから大丈夫

 ただしときにお腹にくる。食べた後の、そのゴが問題なのである。

「ひともじのぐるぐる」。「ひともじ」はいにしえに「き」と一文字で言ったネギのこと。これをゆでてぐるぐる巻きにして酢味噌で。

 デスクが「熊本はapple-aさんがいるから大丈夫」などと言っていた。

デスク 大船に乗った気持ちです。

 これってプレッシャーかけてる?

豆腐の味噌漬け(いけずな京女さん提供)
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豆腐の味噌漬け(いけずな京女さん提供)

MNo.3

 熊本に初めて旅行して一目惚れ、いや一口惚れしたのが辛子蓮根と「豆腐の味噌漬け」です。
 五木地方に伝わる「豆腐の味噌漬け」(写真はもろみ味噌漬け)は、平家の落ち武者の保存食であったと伝わる由緒ある伝統食。
 この地域では「かずら豆腐」「樫の木豆腐」と呼ばれる堅い豆腐〜縄で縛って持ち運べるくらい〜が作られており、それを味噌やもろみに漬け込んだものです。
 これがまあ、なんとも言えない高貴な風味と食感で、発酵食品大好き人間にはたまりません。
 和製チーズなどと呼ばれたりもしますが、チーズよりずっと上品で味わい深いと思います!(いけずな京女さん)

 これを初めて食べたのは熊本市内の旅館であった。中国の腐乳とも沖縄の豆腐ようとも違って、もっちりしていた。酒に合う。ウーロンハイにも合う。ご飯にもいける。

デスクが食べたのはコレ
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デスクが食べたのはコレ

 山間部では保存期間を長くするために豆腐を硬く絞るところが多い。冬場ならしみ豆腐にするのであろうが、温かい季節でも水分が少なければ、それだけもつ。

 北陸の白山麓にも「縄で縛れる」というのがキャッチフレーズの「硬豆腐(かたどうふ)」がある。

 それを味噌漬けにしたら保存期間はもっと延びる。

 ああ、ちょっとだけ食べたくなった。

 デスク、アンテナショップに走ってくれ。

デスク もう食べちゃった

くまモンバッジ(ちりとてちんさん提供)
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くまモンバッジ(ちりとてちんさん提供)

MNo.4

 熊本県は……高校の修学旅行で行っただけです(何年前ぢゃ?)。行動範囲の狭いOLなので、身近なところで熊本ネタを拾い集めてみました。
 まずいただき物のラーメンと「くまモン」のバッジ。
 通勤途中のコンビニで捕獲した野菜ジュース。くまモンが入っているわけではありません。
 何かのイベントでもらったシール。
 帰宅途中、デパ地下の野菜売り場で捕獲したトマト。これ、めっちゃデカイです。
 初めて「くまモン」を見たときは「目ぇが、怖いなぁ」とビビリましたが、最近は見慣れたのか、カワイイなぁと思うようになりました(ちりとてちんさん)

(左から)ジュース、シール、トマト(ちりとてちんさん提供)
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(左から)ジュース、シール、トマト(ちりとてちんさん提供)

 NHK朝ドラ「カーネーション」の舞台からのメール。

 何年前ぢゃか知らないけれど、あの辺の高校って九州に修学旅行に行ったんだ。

「くまモン」はファンレターの宛先が熊本県庁くまモン係になっているが、県のキャラクター? 

 それにしてもくまモン体操はあるわ、グッズもたくさん出ているわで、大変な人気らしい。東京や大阪にも出没している。私が知らなかっただけか。

ちくわサラダ(ミルフォードさん提供)
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ちくわサラダ(ミルフォードさん提供)

MNo.5

 熊本市内をクルマで走ると、何度も看板を見かける「おべんとうのヒライ」。こちらの名物が「ちくわサラダ」です。熊本の「心の味」。
 ちくわの穴にポテトサラダを思いっきり詰めて、揚げたもの。この思いっきり加減が、大好き。買い食いしてください!
 同じく買い食いできそうなのが熊本に店舗展開する岡田珈琲店の季節の風物詩「利平栗のマロンパイ」。
 そして目抜き通りにある「蜂楽饅頭」もぜひ。昭和28年に熊本県水俣市において創業。当時、養蜂業を営んでいた先々代社長が、蜂蜜を使った商品を考えるべく作りだしたものです。はちみつ入り特製練乳シロップのかき氷、「コバルトアイス」も有名(だそうですが、食べてないんですよねえ)。

利平栗のマロンパイ(ミルフォードさん提供)
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利平栗のマロンパイ(ミルフォードさん提供)

 熊本には「朝鮮」と名のつく食べ物が目につきました。加藤清正の影響なのでしょう。朝鮮飴は、餅米と水飴と砂糖を独自の製法でこね合わせ、片栗粉をまぶした求肥飴の一種。
 当初は「長生飴」と呼ばれていましたが、文禄・慶長の役での出兵の際、当時の城主加藤清正が兵糧として役立てたため、朝鮮飴と呼ぶようになったとか。
 元祖は天正時代に開店したという園田屋さん。朝鮮飴は、飴というより餅のような食感です。これは滋養に良さそうだ。
 もう一つの名物「柿求肥」も試食。肥後名産の小春柿を使って、明治時代に創作された銘菓で、上品で繊細な味です。
 熊本の柿、美味しいですよね。売り出し中だという品種「太秋」。リンゴのような食感が特徴で、横ジワがたくさん入っているのがおいしい証だそうです(ミルフォードさん)

 熊本情報、てんこ盛り。


蜂楽饅頭(ミルフォードさん提供)
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蜂楽饅頭(ミルフォードさん提供)


朝鮮飴(ミルフォードさん提供)
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朝鮮飴(ミルフォードさん提供)



「ちくわサラダ」と「コバルトアイス」に目が行った。ちくわサラダは揚げ物。ありそうでなかなかない。

 神田のある居酒屋が、ポテサラを春巻きの皮で包んで揚げたものを出す。春巻きなら醤油。ポテサラならソース。どちらにしようか迷った末に醤油にした。美味かった。


園田屋(ミルフォードさん提供)
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園田屋(ミルフォードさん提供)


園田屋の店内(ミルフォードさん提供)
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園田屋の店内(ミルフォードさん提供)



 ちくわサラダはソースかな。

 朝鮮飴は歯にくっつく。今回は挑戦しない。


柿求肥(ミルフォードさん提供)
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柿求肥(ミルフォードさん提供)


太秋(ミルフォードさん提供)
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太秋(ミルフォードさん提供)



 熊本といえばラーメンであろう。

久留米の濃厚とんこつラーメン
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久留米の濃厚とんこつラーメン

MNo.6

 熊本市九品寺のラーメン店「呑龍」の味は20年以上たった今でも忘れていません。初めて熊本に着いた日に食べたチェーン店の味にがっかりしていましたが、しばらくして教えてもらった呑龍の味には衝撃を受けました。
 なんだこれは! 凄い! どぎついかなり濃厚な豚骨スーフ゜で匂いも凄い。どうだ!これが熊本ラーメンだ。参ったか! と ぶちのめされました。
 完全にはまって4四年半の間によく通いました。カウンター席だけの10人くらいで満席、メニューはラーメンとワンタンメンだけの店でしたがいつも待っている人がいました。
 スープをズボンにこぼしたときの帰りの車の中が臭くて大変なのが唯一の欠点でしたが。いまでもやっているのかなあ(煮豆ライスさん)

香り
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香り

 スープをズボンにこぼすと車の中が臭い? 臭くないでしょ? いい匂いでしょ?

 とんこつの匂いが嫌いな人は「トイレのドアが開いているんじゃないか」などと言うが、九州人はトイレの匂いを上回るくらいのとんこつの匂いを「香り」と受け止めるのである。参ったか。参んない?

桂花ラーメン
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桂花ラーメン

MNo.7

 熊本は10数年以上前のデジカメ以前の時代にしか行っていないのでデジタル映像がありません。残念。
 当時、ラーメンフリークだった私は熊本ラーメン巡りをしておりました。こむらさき、桂花、黒亭……。
 でも意外とはまったのは太平燕。あれは濃いとんこつの後に食べるとホッとすると言うか、胃に優しいと言いますか、ヘルシーと言いますか、良かったです。
 ラーメンよりもマイナーですが最近は結構有名になっちゃったのかなあ?(大阪の原さん)

デスクが東京で食べた太平燕
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デスクが東京で食べた太平燕

 最初のメールから何気なく登場している太平燕(タイピーエン)。チャンポンと材料こそ違うものの調理法が同じで、どちらも福建料理にルーツを持つ。

 この辺りはさらなるメールで深掘りしていこう。

 熊本南部や山間部、阿蘇地方などの情報がほしい。天草もあるぞ。ご関係の方のご協力を願う。

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)

 

★今週の番外編は銀座熊本館に行ってきました(デスク)です。お時間あれば、こちらもどうぞ。



実食編 おでんの「くんせい」を食べてきた

熊本県編(その2) 豚まん+酢醤油=九州人

熊本県編(その3) コバルトを知らんと困ると

熊本県編(その4) カジキマグロください。はいお!


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年2月17日

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