第204回 岩手県ご当地グルメ(その3) アナゴは岩手でハモになる

特別編集委員 野瀬泰申


岩手県

 新春番外編のお雑煮特集も済んで、今週から岩手県編、再開します。
 ジンギスカン、ホルモンと連続して肉料理がタイトルになったことからも、岩手の「畜産県」ぶりを改めて認識することができました。もちろん、磯ラーメンをはじめとして海産物系のご当地グルメも充実。豆腐を好んで食べることも分かりました。
 今週もさらなる「岩手県ならではの味」が登場してきます。
 今週のおかわりは、先週、横浜・八景島でPRイベントを開催した秋田県の最新情報です
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(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい記事の県別一覧はこちら

入場制限中 大変な人出
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入場制限中 大変な人出

 遅ればせながら、明けましておめでとうござる。

 皆さんは、どんな新年を迎えられたことであろう。我が家は、それぞれ独立している3人の子どもが戻って来て、にぎやかな元旦になった。子どもたちも大人になり、各自人生の諸問題に立ち向かっている。

 3日は息子の友人らが集合し「人狼」というカードゲームというか、心理ゲームというか、難しいゲームをやった。私はこの種のゲームが大変苦手なので、ある時期から一切参加せず、もっぱら茶菓の接待役に徹している。

 初詣は元旦の混雑を避けて2日に行ったのだが、とんでもない人出で、警備員が参拝客の入場制限をしていた。見ているとお参りするまで30分ほどかかるようなので、諦めて遠くから2礼2拍手1礼。結局、近所の八幡様にお参りして済ませた。

今年のB−1グランプリは青森県十和田市で開催
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今年のB−1グランプリは青森県十和田市で開催

 初風呂はというと、最寄り駅にあるスーパー銭湯が交通の便の良さと安さから近年、恐るべき人気となり、いつ行っても湘南海岸並になってきたため、これを避けて電車を乗り継ぎ乗り継ぎして、某駅前温泉に行った。安くはないが、東京黒湯といわれる天然温泉であり、しかもお子様お断りのため、すいている上に大変静か。浴後、付帯の飲食施設で揚げ立ての天ぷらを肴に独酌の喜びに浸ったのだった。

 今年、私は64歳になる予定である。記者生活42年目。よくやってこられたものである。そして食べBも5年目を迎えた。残る都府県は8。もう少しだ。頑張るぞ。

 前回はお雑煮特集だった。こうやって並べて見ると、日本の食の文化は誠に深く広いことに改めて気づく。雑煮の角餅、丸餅の境界線は金沢から琵琶湖東岸を経て伊勢に続く線とされるが、三重県からのメールと写真は見事にその見解を裏付けていて面白かった。

 では本編に入ろう。まずは岩手の雑煮から。

凍み豆腐(ござ引きさん提供)
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凍み豆腐(ござ引きさん提供)

MNo.15

 先日のお雑煮特集、興味深く見ておりました。そこで目についたのが、津軽から福島まで、具に凍み豆腐(しみとうふ、すみとうふ)が入ること。津軽は地吹雪きという印象ですが、あと、奥羽山脈の東側は乾いた寒風が吹くので、凍み豆腐の産地があるのかと。
 岩手でも凍み豆腐をつくっていて、流通しているのは一関萩荘でつくられているものです。今や、1軒のみでつくっているだけとか。
 豆腐も自家製で、それを凍み豆腐に仕上げる。母の実家辺りでも、昔は各戸でつくっていて、豆腐はつくるのが大変だという人は豆腐屋さんから買ってきたりもしたらしいです。
 大まかな作り方は、まず豆腐を適当な大きさに切る。それを一晩水にさらす。さらした豆腐を藁(わら)でまとめる。夜、外に出して数日寒風で凍らせる。
 産直市で、凍み大根を売っていました。汁が染みて煮崩れしない。1度ゆでた大根を使います。

凍み大根(ござ引きさん提供)
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凍み大根(ござ引きさん提供)

 凍み餅もあります。私は凍み餅の豆餅版が好きです。というか、豆餅が好きなんです。これを火であぶって食べると、サクサクとしてうまい。
 そして驚愕の言葉が、母から。「確か、タイマグラの方では、ジャガイモを凍みらかして、凍み大根みたいにして、夏までの保存食にするって聞いた」。これは、私も初めて聞きました(ござ引きさん)

絵画のような美しさ(ござ引きさん提供)
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絵画のような美しさ(ござ引きさん提供)

 高野豆腐は高野山の冬の寒さを利用した保存食品。同様に寒風が吹く東北の太平洋側でも凍結乾燥食品が発達している。雑煮に凍み豆腐が入ることが、その点を裏付けている。と書いたが、実は私は気がつかなかった。ありがたいご指摘であった。

 送っていただいた雪中に干された大根たち。絵画のような美しさである。

 被災地の旅のとき、凍み大根を見た。あれは仙台ではなかったか。

 ところでタイマグラってどこ?

岩泉炭鉱ホルモン(岩泉町経済観光交流課提供)
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岩泉炭鉱ホルモン(岩泉町経済観光交流課提供)

 前回登場した南部藩ホルモン街道。そのうちの一つ「岩泉炭鉱ホルモン」について岩手町の府金さんが町役場から資料を取り寄せてくださった。

 要約すると、岩泉町小川(こがわ)地区、つまり旧小川村には江戸時代から炭鉱があり、そこで産出した石炭がたたら製鉄に利用された。

 昭和8(1933)年から本格的に石炭の採掘が始まり、最盛期の同15年ごろには1000人を超す人々が働いていた。その後、採掘の対象は石炭から硬質粘土に変わったが、採掘そのものは平成8(1996)年まで続いた。

玉山支所前食堂も豆腐たっぷり
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玉山支所前食堂も豆腐たっぷり

 昭和40年ごろから炭鉱で働いていた朝鮮半島出身者が「あずまや」という食堂に頼んでホルモン鍋をメニューにしてもらった。

 このホルモン鍋には新鮮なホルモンとともに、地元産の大豆でつくった豆腐が入っていた。その味の良さが評判になり、遠来の客もあったという。しかし「あずまや」は平成の初めごろ、後継者がなく閉店した。

 ところが地元の人々は、あのホルモン鍋の味が忘れられず、それまでメニューにしていなかった店がそれぞれの味でホルモン鍋を復活させた。現在、地区内4店で食べられるそうである。

玉山支所前食堂
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玉山支所前食堂

 ただ岩泉町は三陸鉄道北リアス線小本駅から小本川を西に遡った山間地にある。東京からは簡単に行けない。遠いなあ。

デスク 八戸忘年会の帰り道、府金さんに「玉山支所前食堂」に連れて行っていただきました。岩手町から盛岡市に入ってすぐのところ、山の中にぽつんとある食堂でした。詳しくは実食編のときに。

うずまきかりんとう(太ったオオカミさん提供)
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うずまきかりんとう(太ったオオカミさん提供)

MNo.16

 今年の6月、北鉄ではなく三陸鉄道北リアス線を旅してきました。その中で気になったものの一つに「うずまきかりんとう」があります。
 首都圏でかりんとうといえば、筒状のものに蜜を絡めたものですが、久慈と宮古で見たうずまきかりんとうは全く異なるものでした。見た目も食感も、かりんとうというよりクッキーという感じです。
 岩手県は今年初めて訪問したばかりですから、これが三陸だけのものなのか、岩手県全体、場合によっては全国に飛び地のあるものか、分かりません。同人の皆様の報告を伺いたいと思います(太ったオオカミさん)

 写真には既視感がある。昔菓子の中にこんなのがなかったか。

ねじり、きりたん(いけずな京女さん提供)
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ねじり、きりたん(いけずな京女さん提供)

MNo.17

 東北の駄菓子で有名なのは仙台駄菓子ですが、岩手県は盛岡市の「盛岡駄菓子」もどうぞごひいきに。
 そもそもは冬の保存食として作られていたという盛岡駄菓子。地場でとれるお米や穀物、豆、ゴマなどを使い、黒砂糖や蜂蜜でシンプルに味付けした素朴なお菓子の総称です。
 写真は「ねじり」または「きりたん」と呼ばれるお菓子です。きな粉に炒ったもち米と水飴を加えた練り菓子で、練った生地を延ばして細く切ってねじることからこの名前。
 きなこ、青豆きなこ、ゴマ、それぞれの風味が口いっぱいに広がって、美味しいし身体にええし。栄養しっかりつけて、厳しい冬の寒さをのりきる生活の知恵だったのかな、と思いました。
 ほかにもいろんな「盛岡駄菓子」がありますので、できればご当地の方よりご紹介があると、うれしいなり(いけずな京女さん)

 ああ、これもどこか懐かしい。

ビスケットの天ぷら(中林20系さん提供)
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ビスケットの天ぷら(中林20系さん提供)

MNo.18

 一部で有名なのが西和賀町の「ビスケットの天ぷら」です。こういったものは家庭料理だし、よその者はいただく機会もないものと思ってまいしたが、何と盛岡の行きつけの店のメニューにあってビックリしました。
 短縮形の名前にして商標登録されていましたが、味は本物の“ビスケットの天ぷら”だそうです。そもそもその店の母体が、旧沢内村(現・西和賀町)の民謡名を冠した郷土料理の店ですから当然ですよね。
 イケメン店長がニコニコしながら「アリかナシかで言ったらアリな味でしょ」とおっしゃいましたが、確かにこれはアリな味です。でもって意外なことに酒にも合いました…って、これはわたしだけか。機会があれば(自作を含めて)皆さんも是非どうぞ(中林20系さん)

中はほら、ビスケット!
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中はほら、ビスケット!

 ずっと前に、NHKのクイズ番組に出題者兼解説者として出演したことがあるが、そのときの問題の一つが、このビスケットの天ぷらであった。

 正解者があったかどうか覚えていないが、スタジオに現物が持ち込まれ、みんなで食べた。出演者の表情を見る限り、おおむね「アリ」であった。

 中林さんのメールには食べられる店の名前と所在地が添えられていた。実食編で行こう。

 以上、甘い物3題であった。

 これまで2回紹介してきた愛Bリーガーたちのチャット。読み返していたら面白いやり取りがあった。

 テーマは「ハモとアナゴ」。

ハモという名のアナゴ(久慈・柾木さん提供)
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ハモという名のアナゴ(久慈・柾木さん提供)

MNo.19

【久慈・柾木さん】海側ではハモの出しで煮染めを作ります。でも、これって久慈だけじゃないみたいなので。久慈の漁村ではお雑煮にハモの干物を昔から入れていたらしい。小袖の漁師中川さんの話より。
【一関・山本さん】ハモ干したやつってアナゴ干したやつですかね? 関西でいうハモをこちらではアナゴのことを指す場合があるんですよね。
【久慈・太田さん】久慈ではアナゴではなくハモですよ。ハモって教えられたので、ずっとそうだと思っています。もしかしてアナゴ? ずっと親にだまされ続けてきたのかー。 柾木さんの写真にありましたが、年末になるとハモとして干したものが売られています。
【一関・山本さん】太田さんのいうハモはアナゴかもですね。うちの方でもアナゴを釣りに行くのをハモ釣りといいます。
【久慈・太田】ちょいと切なくなりました(笑)。
【北上・岡島さん】柾木さんの写真がハモにも見えるしアナゴにも見えるので、どっちなのかなーって。でもなんか、アナゴのような。鋭い鮭のような歯があればハモですね。
【一関・山本さん】ハモが関西で高級食材って聞いたときは、ん??という違和感がありました。
【久慈・柾木さん】ハモはやっぱりアナゴでした。昔から東北ではアナゴを普通にハモと呼んでいるそうです。by さかな君
【北上・岡島さん】やっぱりそうでしたかー。

今買えば当たるかも!?
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今買えば当たるかも!?

 ということで東北のハモはハモではなくアナゴ。

 岡山県の山間部や山陰地方でワニというのはフカ、いやサメ。

 柾木さんがまちおこしに取り組んでいる久慈市。9時に久慈でクジを買うと当たる、ような気がすると言われている久慈市である。そして久慈というと。

久慈まめぶ汁(ぎずもさん提供)
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久慈まめぶ汁(ぎずもさん提供)

MNo.20

 B−1グランプリ出展からドラマ「あまちゃん」を経て、全国区の知名度を誇るようになった久慈まめぶ汁。放送終了から1年後の昨年夏も、久慈のまちは“聖地巡礼”のあまちゃんファンがたくさん訪問していました。
 ロケ地・小袖海岸では、バスから降りてきた観光客が真っ先に飛び込むのが、観光協会が準備したまめぶ汁の店。研究者肌の食べB読者としては「本来は山里・山田町の郷土料理で、海女さんはまめぶ汁を食べる習慣はありません」と言いたくなりますが……。
 それよりもお客さんをがっかりさせないようにと鍋を用意して待っている久慈の皆さんのおもてなし精神に、まず敬意を表したいと思います。おおらかにいきましょう、世界地図で見れば小袖海岸も山田町も同じ点だし。

小袖海岸(ぎずもさん提供)
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小袖海岸(ぎずもさん提供)

 ところで久慈まめぶ汁を最初に食べたとき、違和感があったのは「甘いんだか、しょっぱいんだか、ビミョー」な味付けではなく「だんごの中身が黒砂糖だった」でした。なぜあんこではないのだろうか。
 久慈駅の隣・野田村には、三陸鉄道の陸中野田駅が“道の駅”になっている珍しい施設があります。そこの産直施設で買い求めたのが「しだみだんご」。あく抜きしたどんぐりの粉を甘くして、こしあん同様にもちの中につつんだ素朴な和菓子でした。
 久慈付近ではその昔、小豆を食べない、もしくは入手しにくかったからこういうものを作ったのでしょうか。地元の識者の方のご意見を聞いてみたいところです(ぎずもさん)

「あの」灯台(ぎずもさん提供)
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「あの」灯台(ぎずもさん提供)

 まちおこし団体「久慈まめぶ部屋」のまめぶは、旧山形村のものをベースにしている。

 まめぶは平成8年に久慈市の郷土料理に認定された。山田町には黒蜜とくるみを小麦粉で包んだ「ひゅうず」という菓子があって、たいへんよく似ている。

 まめぶの中身はなぜ黒砂糖なのか。あんこにする小豆が手に入らなかったからか。それとも小豆は食べる機会が多く、南国産の黒砂糖を使うとハレの気分がいや増すからか。

中身はくるみと黒砂糖
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中身はくるみと黒砂糖

 一方、「しだみだんご」の中身はドングリの粉。ドングリは縄文時代から列島の住人が食べていたもの。懐かしいというより「古来」という言葉がふさわしい。

 今週はここまで。岩手県の広さは、そのまま食の多様さに結びついている。

 いやー、面白いね。

 その岩手県編は次回が最終回となる。その次から福岡県編に突入する。私が福岡を「食べB」の最終回に持ってくるかも、などという噂もあるらしいが、九州は宮崎と福岡が残っているので福岡を先に取り上げるというだけの話である。

とんこつラーメンの聖地・福岡県
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とんこつラーメンの聖地・福岡県

 そろそろ里帰りもしたいし。

 では引き続き岩手の食の情報を待つ。そして福岡県関係者は準備体操をよろしく。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「横浜で秋田県の魅力PR、来月は「かまくら」」です。ぜひお読みください。

岩手県編(その1) 遠野から久慈へと続くジンギスカン

岩手県編(その2) 発見!! 南部藩ホルモン街道

岩手県編(その4) そばにはゴンベが必需品


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年1月16日

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