第16回 鳥取県実食編 スタートは山陰チャンポン

一芸クンの食べB修行記・カレー奮闘編

 「今回はVOTEの1位から4位まで全部食べる」。出張前の会議でそう決まったとき、思わず野瀬特編に「5位のカレーは?」と質問しました。するとアミー隊員が「分かってないわね」と言わんばかりに大きなため息。そうです、私が食べるのです。サラリーマンたるもの、以心伝心で理解すべきなのです。もとより自分は幼少のみぎり、進んでキレンジャー役を買ってでていたほどのカレー好き。嫌がる理由などありません。

◇   ◇

鳥取カレー倶楽部会長の筒井洋平さん
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鳥取カレー倶楽部会長の筒井洋平さん

 出張初日の夕方、鳥取市内で「鳥取カレー倶楽部」の会長である筒井洋平さんにお会いしました。カレー倶楽部は、鳥取県東部地区を中心にカレーによるまちおこしを展開しています。

 なぜ鳥取でカレーなのか。それは平成16年(2004年)度の総務省家計調査で、全国の県庁所在地におけるカレールウの消費量、購入金額を調べたところ鳥取市が1位だったというエピソードにちなんでいます。これを受け「全国1位をキープしよう」とカレー倶楽部が翌年立ち上がりました。

 では、どういう経緯でカレーが多く消費されるようになったのでしょう。女性の就業率が高く、夫婦共働きの家庭が多いことから手軽に作れるカレーの人気がある、という説もあるようですが、筒井さんは「本当のところはよく分からない」と話します。カレー倶楽部の研究でもさまざまなルーツが論じられているそうです。因幡の国(現在の鳥取県東部)の戦国武将で、鹿野藩の初代藩主である亀井茲矩(これのり)が東南アジアやインドに興味を持っており、領内でインディカ米に似た品種の米を作らせていたことが関係しているのでは、という説もあるのだとか。歴史のロマンを感じます。

 翌日は鳥取市を離れ、西部の米子市へ足を伸ばしましたが、3日目の朝、自分は野瀬特編と別れ、特急「スーパーまつかぜ」で鳥取に戻りました。夕方までの時間、市内のカレー店をいくつか訪れてみようという計画です。

 しかしここでアクシデント。夕方、都内で別の仕事が入り、午後の早い便で戻ることになったのです。限られた時間でどれだけのカレーと出合えるか。青森のバラ焼き・せんべい汁ハシゴ食に続き、険しい食べB修行の道が始まりました。

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ベニ屋のチキンカツカレー
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ベニ屋のチキンカツカレー

 まず訪れたのが、鳥取駅からほど近い商店街にある、老舗の「喫茶ベニ屋」。ここは午前8時から営業しており、朝からカレーを楽しめるのです。

 人気はチキンカツカレー。カツにはカレーをかけない「後のせ」方式のため、チキンカツの存在感が際立っています。デミグラスソースのような赤褐色のルウは、食べてみるとハヤシライスのような甘さがありますが、その奥にピリッとした辛さが潜んでいます。朝からカツカレー、何というぜいたくな話でしょう。満足感と満腹感が広がります。

 しかし満腹になってはいけないのでした。食べ終えてすぐ、市民ホールと複数の商店から成る「まちの交流広場 パレットとっとり」にある「Cafe 木の香り」に向かいます。ここも朝9時30分からの営業です。

Cafe 木の香りのカレーパフェとカレーコーヒー
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Cafe 木の香りのカレーパフェとカレーコーヒー

 こちらで頼んだのは、カレーのスイーツ「カレーパフェ」。たっぷりのカレーアイスに、カレーシフォンケーキやシャーベット状の果物を載せたボリューム満点の一品です。サクランボと思わせて、実は赤く色をつけたらっきょうがアクセントを添えています。

 カレーのスイーツ、と聞くとやや抵抗がありますが、食べてみると「スパイスの効いたスイーツ」なのです。ちょっと変わった味のする、おいしいデザートでした。カレーアイスは、もし海外旅行先で食べたとしたら「ふーん、この土地ではアイスにこういう風味を付けるのだな」と納得することでしょう。食後に「カレーコーヒー」をいただきます。これも、スパイスを用いたフレーバーコーヒーといった味わいでした。

 デザートを食べたとはいえ、まだ時間は午前11時。この時間になると、カレーを出す多くの店が営業を始めます。次に訪れたのはパレットとっとりのすぐ近くにある、しゃれた内装の「dish cafe Upot」。この店の名物「カレーコンド」は、鳥取県・食のみやこ推進課発行のガイドブック「鳥取食力」で「進化系鳥取カレー」と紹介されています。

dish cafe Upotのチキンカレーコンド。上に乗る野菜は季節によって変わる
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dish cafe Upotのチキンカレーコンド。上に乗る野菜は季節によって変わる

 コンドとは、卵とチーズ、そしてライスをオムレツ状に焼いた創作料理で、そこにカレーを包みこんだのがカレーコンド。いただいたのはチキンカレーコンドで、コンドの上に鶏肉と、季節の野菜がふんだんに盛りつけられています。「カレーライス」のイメージとは距離がありますが、ふんわりとしたコンドはおやつ感覚で食べられる楽しい一品。女性にも人気というのがうなずけます。

 手軽さとおいしさでついつい完食してしまいましたが、チキンカツカレー、カレーパフェ(+カレーコーヒー)、カレーコンドが収まった胃袋はすでに飽和状態です。しかしこの時点で午前11時30分。一般的にはこれからお昼ごはんという時刻です。ここまで食べたのは朝食とおやつ、と割り切って、昼食のカレーを食べるために次の店に移動します。

 パレットとっとり前から駅に向かって数分歩き、若桜(わかさ)街道の交差点を右に曲がったところにある「たくみ割烹」へ。その名のとおり、ここは老舗の割烹料理店なのですが、ランチタイムにはリーズナブルな定食やハヤシライス、そして「鳥取牛みそ煮込みカレー」を出しています。県産の牛肉、みそ煮込み……何ともそそられるメニューではないですか。胃袋の反対を押し切って店に入ります。

「たくみ割烹」の鳥取牛みそ煮込みカレー
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「たくみ割烹」の鳥取牛みそ煮込みカレー

 サラダと吸い物がついた「鳥取牛みそ煮込みカレー」。やわらかく煮込まれた肉と、味噌の仕事でしょうか、深いコクのあるカレーはまさしく日本料理としてのカレーです。民芸調のなつかしい雰囲気がただよう店内で和風カレーを味わっていると、ここだけ時間の流れが止まっているような錯覚に陥ります。

 でも、時間は止まっていませんでした。フライトが迫っています。幸い鳥取空港は市街地から比較的近い距離。体内に充満するカレーとともに、タクシーに飛び乗って空港へ向かいます。

 道すがら、運転手さんに鳥取のカレーはいいですね、などと話していると「空港のそばに、うまいステーキカレーを出す店がありますよ」という言葉が。天使の声か、悪魔のささやきか。しかしせっかくの情報を無駄にはできません。ましてやステーキ。空港入り口の交差点で車を降り、「レストラン仏区里屋(ぶくりや)」へ。瀟洒(しょうしゃ)な一軒家の、いかにも本格的なレストランというたたずまいで緊張しましたが、明るい店内には日曜のお昼時とあって家族連れも多く、とても居心地のよい空間です。

「レストラン仏区里屋」のステーキカレー
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「レストラン仏区里屋」のステーキカレー

 鳥取県産牛サーロイン120グラムを使用したというステーキは、何もカレーにしなくても、というほど立派なステーキ。肉のうまみが口の中いっぱいに広がります。そこにかけられたカレールウにはフルーティーな甘みがあり、これがまた肉の柔らかさとうまみを増幅させるのです。ステーキの引き立て役を買って出るカレー。カレーという料理の懐の深さを垣間見た思いです。

 ステーキカレーを食べ終え、空港まで5分ほど歩き(本当は走りたかったのですが、無理)、何とか保安検査場通過の締切時刻にぎりぎり間に合いました。前々日、羽田空港で「社会人なんですから搭乗口には余裕を持って到着してください」と野瀬特編にえらそうに説教していた自分でしたが――。

◇   ◇

 たまたまかもしれませんが、今回いただいたカレーはみなどちらかといえば甘口の、まろやかな味わいでした。それは家庭で作るカレーの味に近いと言えるかもしれません。もともとカレー倶楽部誕生のきっかけとなったデータは、家庭におけるカレー消費に関するものでした。鳥取カレーの原点は、家庭にあるのです。そういえば、どの店でも、どこか家庭の温かみ、優しさが感じられました。カレーパフェをいただいた「Cafe 木の香り」の店主・升本泰子さんは、「カレーで鳥取の人を元気にしたい」と話します。身近な人に元気を与えるのが鳥取カレーなのです。

「鳥取カレーの素」はカレーライスのほかにうどんや鍋にも
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「鳥取カレーの素」はカレーライスのほかにうどんや鍋にも

 筒井さんはカレー倶楽部について「長期的には経済効果につなげていきたいが、もともとはカレー好きの集まり。自分たちが楽しいからやっている」と話します。活動内容を聞くと「基本は、カレーを食べること」と気負いがありません。

 しかしカレー倶楽部はすでに設立から5年が経過。息の長い取り組みになっています。2006年から始まった、カレー自慢の家庭がその味を競う「うち家のカレーコンテスト」は、2009年に「全国カレーグランプリ in 鳥取砂丘」として全国大会に発展。カレー倶楽部が母体となって設立した鳥取カレー研究所がオリジナルカレールウ「鳥取カレーの素」を発売するなど、活動の幅も広がってきました。

 鳥取県の人は、控えめで人に優しいが、物事には粘り強く取り組む、とも評されます。甘口ではあるが、その奥に一本芯の通ったうまさを感じる鳥取カレー。自然体ながら着々と実績を挙げているカレー倶楽部。いずれも鳥取県人の「人柄」が隠し味になっているのでしょう。

◇   ◇

 翌日、野瀬特編にこのことを報告すると「あれ?君にカレー食べろなんて言ったっけ」と涼しい顔。食べB担当としても、サラリーマンとしても、まだまだ修行が必要のようです。


■鳥取県編
準備体操編 まずは、あのパンについて語ろう
その1 白バラ牛乳とサンライズ
その2 「牛骨ラーメン」参上!
その3 祝発足! ホルソバCC
最終回 中部の「コロッケ」の正体は?
実食編 スタートは山陰チャンポン一芸クンの食べB修行記動画で見る実食

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