第93回 山形県ご当地グルメ(その3) じんだん? 仁丹とちゃうの?

特別編集委員 野瀬泰申


西伊豆しおかつお(富士宮で)
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西伊豆しおかつお(富士宮で)

 先週、6月1日に行われた富士宮市の市制施行70周年式典に行ったと書いたが、そのとき宮サンと会った。私は2日に始まった食のイベント会場で愛Bリーグ東海支部の仲間や浪江焼麺太国(やきそばたいこく)、石巻茶色い焼きそばアカデミーの皆さんと言葉を交わしただけで愛知県豊川市に向かった。本日、宮サンからイベント会場で撮った写真が届いた。

 場所は第2回B−1グランプリが開かれた富士山本宮浅間大社前の広場。あのときは身動きできないほどの混雑に驚いたものだった。しかしその日は「適正規模」の人出で、ゆったりと食べることができたという。

食のイベントでにぎわった浅間大社前の広場
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食のイベントでにぎわった浅間大社前の広場

 先週末の私はというと、日中は家で仕事をしていたが夕方になると手持ち無沙汰。借りてきたDVDでも見ようと思っていたら、娘2人が珍しく家にいて「晩ご飯は私たちがつくる」と言う。椿事である。

 娘たちの献立はメキシカン。フラワートルティーアとかトルティーアチップとか粉末パプリカとか、色々なものを頼まれた私は、あっちこっちの店を訪ねて買いそろえたのであった。

 娘たちがつくった晩ご飯を食べるというのは父親にとって特別なことで、美味いも不味いもない。何を食べてもこの上なく美味なのである。

鳥取のみなさん、こんにちくわー!
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鳥取のみなさん、こんにちくわー!

 不味くても美味。何だかわからなくても美味。「娘がつくった」というだけで美味なのであった。

 嫁に行くまであと何年であろうか。それまで何回、娘の手料理を食べる機会があるのだろうか。

 そんなことを考えていたら料理の写真撮るの忘れたー。

 折から鳥取市で「2012近畿・中国・四国B−1グランプリ」が開かれ、初日の雨にもかかわらず2日間で11万7000人の来場者があったそうである。

 県人口の実に5分の1。鳥取の商店街では「昭和30年代のにぎわい」が再現されたという。めでたいことである。

B−1一色の商店街
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B−1一色の商店街

 その模様は番外編でデスクがリポートする

 さて山形県編も3回目を迎えた。地元の皆さんからは早々と実食編のアイデアが寄せられている。そのときはきっとお世話になることであろう。こんな顔でよかったらお目にもかかりましょう。

 中でも某県某市某ホテルにおける「メロンパンとバナナと缶コーヒーの朝ご飯前日渡し」のことを書いたせいか「山形のこのホテルは間違いなし」との宿泊情報もいただいている。

 大いに参考にしようと思っている。

 では本編スタート。

デスクが大阪で食べた塩鯨の入ったはりはり鍋
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デスクが大阪で食べた塩鯨の入ったはりはり鍋

MNo.14

イルカ汁(発音はエレカ汁)
 黒い皮のついた塩鯨の脂身を初夏に新ジャガや新タマネギなどを入れた味噌汁で、田植えなど重労働時期の栄養食。秋田の仙北地方の「本物のイルカ」の煮付けとは異なります。山形では「本物のイルカ」は食べないと思います。
 宮城県の石巻などで作られますが宮城県ではほとんど食べないらしい。これも新潟や会津と共通食(いわき市の水族館のレストランでは代表メニューになっている)
カラガエ(干したエイ)と棒鱈の煮物
「ハレ」の日の食べ物、棒鱈は京都のような真鱈ではなく「スケソウダラ」の乾物。
鯖のなまり節
 頭と内臓を落とした鯖を蒸して(と思う)軽くスモークしパラフイン紙(油紙)に包まれている。そのままショウガ醤油をかけて食べる。鯖缶と比べると香ばしくてより美味しい。また車麩と新タマネギなどの野菜のあんかけの煮浸しにします。乾麺のつけ汁のダシにしても美味しい。もちろん身も一緒に食べます。「イルカ」同様に生産地の宮城県ではほとんど食べないらしい
アケビの肉詰め
 山形ではアケビの甘い実は食べずに皮を食べます。実を捨て中に肉とキノコを詰め弱火でゆっくり蒸し炒めます。ほろ苦さがなんともいえず美味しいのです(山形中央部住人のカラハシさん)

やはりデスクが食べた鯨の刺身
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やはりデスクが食べた鯨の刺身

 今回もカラハシさん登場。

 海から遠い「中央部」の魚事情がくっきりと浮かぶ。要するにすべて塩干物か加工品である。

 しかも「イルカ」といいながら正体は鯨というところが面白い。もっともイルカは小型の鯨だから、それでいいのか。

 広島県の山間部にある「ワニ」料理がサメであることを思い出した。

 なまり節だと普通はカツオだが、ここでは鯖。

 最後に登場したアケビの肉詰めは山形市内の「養老乃瀧」で食べた。別に注文したわけではなく、カウンターで飲んでいたら店主が「食べてみる?」と言って出してくれた。

 まさに皮を食べるもので、驚きつつも実に美味かった。

「ずんだん」も
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「ずんだん」も

MNo.15

 突然ですが一般的に知られた呼び名に異論を唱えてみます。
 我が郷土・置賜では「ずんだ」なんて呼びません。やっぱり「じんだん」。こっちの方がより美味しそうに聞こえるのは気のせいかしら。
 山形には宮城に対抗心を持った人が多いのでそんなことを思う人は多いはず。
 それと米沢の麺文化です。
 冷やし中華はそばつゆ系にマヨネーズ。今回も議題にあがっている、そば屋で中華そばの名残りなんでしょうか。
 それなりに知られた米沢ラーメン、今ではラーメン屋に行列しますが、昔は出前で食べるのが普通でした。お客さんに振る舞うこともたびたびでした。
 こうやって考えると、山形は根強い麺食い文化なんだなって思います(お名前ありません)

 コメントする前にこのメール。

じんだん饅頭(いけずな京女さん提供)
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じんだん饅頭(いけずな京女さん提供)

MNo.16

  東北地方で、枝豆やそら豆をすり潰したものを「ずんだ」「ぬた」などと呼んでいるのはもう有名ですね。
 山形の一部ではこれを「じんだん」と呼びます。
 山形県内でも「じんだん」が通じるところ通じないところ、「ぬた」と呼ぶ食べ物がまったく違う…などあり、カルチャーショックだったと知人の山形県人が言ってました。
 私などは「じんだん」ということばを初めて聞いたときに「えっ、じんだんて、黒い粒のお薬?」「それは仁丹やろ〜!」
 と一人ボケツッコミをやってしまい、山形県人をマイナス30℃で凍らせてしまいました。
 以来、東北の人にはオヤジギャグは通用しない、と肝に銘じています(いけずな京女さん)

「じんだん」は山形でも置賜地方の呼び方。関西人の耳には「仁丹」と聞こえても仕方がないであろう。

じんだん饅頭の断面(いけずな京女さん提供)
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じんだん饅頭の断面(いけずな京女さん提供)

 もっとも西日本の人間にすれば「じんだん」でも「ぬた」でも「ずんだ」でも普段は縁のない食べ物であることに違いはない。

 私が子どものころ餅につけて食べていたのはずんだではなく、砂糖を加えたきな粉であり、おやつは大麦の粉をいった「はったい粉」であった。関東では麦こがし。

 枝豆類は登場せず。

 それより「置賜」は「おきたま」であろうか「おいたま」であろうか。現地を旅すると両方の読みが併存している。

 どっちやねん!

 それと米沢の冷やし中華にはマヨが寄り添う。覚えておこう。

米沢ラーメン
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米沢ラーメン

MNo.17

 米沢のB級グルメは何と言っても米沢ラーメンです。
 昭和38年ごろは50円で学生中華(肉なし)を食べていました。40年以上行きつけの店は喜養栄食堂。一番のおすすめはパイタン麺。
 米沢ラーメンのおすすめは、米沢市の「ひらま」と高畠町糠野目の「わたべ」。
 米沢ラーメンは細麺の腰のある縮れ麺でB級グルメとしては最高!(米沢の安部さん)

鳥取の素ラーメンは和風のうどん出し
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鳥取の素ラーメンは和風のうどん出し

 このように米沢の皆さんはラーメン好き。ラーメン自慢。

 ここに出てくる50円の「学生中華」が高校時代に久留米で食べていた「素ラーメン」と同じ位置付けである。

 米沢のラーメンというと醤油系のスープにちぢれ麺。あとは何が特徴であったろうか。何軒か入ったがよくわからなかった。ただ店はやたら多い。

「米沢らーめん」は地元組合の地域団体商標なので要注意。

 ラーメンの続き。

デスクが谷地で食べた「冷たいラーメン」
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デスクが谷地で食べた「冷たいラーメン」

MNo.18

 私は熊本出身ですが、家内が山形県河北町谷地出身のため、家内の実家に里帰りするたびに山形の食文化には驚かされてきました。
 今回、山形を「うどん県」として取り上げられています。確かに私も「引っ張りうどん」の手軽さ・美味しさには大変お世話になっていますが。
 その一方で山形の「ラーメン県」としての位置づけは、あまり軽く扱わないほうが良いと思います。ある調査によると山形県の1人当たりのラーメン消費量は日本一ということだそうです。
 どちらかというと醤油ベースの中華そば、ある意味であまり特徴のないラーメンが主流の山形県がなぜ大消費地になっているのかというのは不思議なところですが、秘密の鍵は本文にもとりあげられたおもてなしのための「出前文化」ではないかと考えています。
 私も結婚する前に家内の実家を訪れたときに、必ずといっていいほどおもてなしにラーメンの出前をとっていました。家内に言わせると昼間の客にはラーメン、夜は寿司の出前を取るのがあたりまえと言っていました(東京在住のコヤサコさん)

このくらい多い?(デスク)
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このくらい多い?(デスク)

 山形ラーメンの取材に行ったとき、その量の多さに驚き店の人に尋ねたことがある。

 店の人は「うちのラーメンは田んぼに出前することが多いので、量が少ないと叱られますから」と言った。

 田んぼで仕事をしながらお昼に出前で取ったラーメンをあぜ道で食べるのだそうである。まことにラーメン出前文化の地域である。

 続いて豆。

だだちゃ豆(いけずな京女さん提供)
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だだちゃ豆(いけずな京女さん提供)

MNo.19

 山形は隣県ですが、親戚絡みや仕事絡みで庄内地方とはいささか縁があり、しばしば訪問いたしておりました。
 その中で今回取り上げられている枝豆(だだちゃ豆)に対し、鶴岡では意外なこだわりがあることを知らされました。
 それは莢(さや)に入っている豆の数が2個に限るというこだわりです。京女さんの写真でもきれいに2個のものがそろって写っていました。
 新潟では多く入っているものほど喜ばれる傾向があり、普通で3個、中には4個5個というものもあります(ヤチさん)

全部2個入り(いけずな京女さん提供)
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全部2個入り(いけずな京女さん提供)

 そう言われて前回紹介した京女さんの「だだちゃ豆」の写真を改めて見詰めると、ほんとだー、全部2個入り。3個じゃだめなのか。

 でもこのことを知っていると、飲み屋のおしゃべりのネタが増えること間違いなし。

からからせんべい(松山の坂本さん提供)
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からからせんべい(松山の坂本さん提供)

MNo.20

 姉の旦那さんが山形出身なので、お土産に「からからせんべい」をもらいました。中にはかわいい民芸玩具が。
 山形の人って、もんのすごく甘いものが好き!! というのは恐らく間違いないと思います。ケーキ屋さんが日本一多いかなんかだったはずです。
 先日、姉とお義兄さんにお土産持参で遊びに行きました。
「おみやげは醤油もちかしぐれ2キロでいいよ」と言われていたので、坊ちゃん団子やしぐれ、醤油もちに「りんまん」を買って行きました。
 なんとお義兄さんはこれだけのおやつを一晩でぺろっと食べてしまったのです。しぐれなんて手づかみでかぶりつきでした!!!

これぜんぶ食べた?(松山の坂本さん提供)
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これぜんぶ食べた?(松山の坂本さん提供)

 私は驚き慄き「しぐれ2キロは本気だったんだ!!」ということを知ったのです。翌日お会いした一芸さんからいただいた茨城銘菓の「まゆ玉」一箱も、瞬く間に食べられていました。
 絶対に糖尿病の人が多いと思います!!白状してください!!(松山の坂本さん)

からからせんべいの民芸玩具(松山の坂本さん提供)
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からからせんべいの民芸玩具(松山の坂本さん提供)

 からからせんべいは写真のように三角形にたたんだせんべいのなかに小さな玩具などが入った鶴岡の郷土菓子。

「食べ物  新日本奇行」で登場し、本物をゲットした記憶がある。グリコのおまけのご先祖様みたいな楽しいお菓子である。

 メールに出てくる「しぐれ」は愛媛県大洲市の伝統餅菓子。これを1番で2キロというのは、どこかの相撲部屋の話か?

 甘い物。前回の「トマトに砂糖」について。

山形県産のトマト
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山形県産のトマト

MNo.21

 トマトの砂糖がけですが、生まれも育ちも北海道の明治40年生まれの今は亡き祖母が、夏になると作っていました。
 トマトを櫛形に6つか8つに切って、丼に入れて白砂糖をこんもりとかけて冷蔵庫に入れておく。それだけです。
 半日もすると、トマトから水気が出て砂糖と混じり合い、甘〜いトマトのでき上がりです。
 北海道は国内でもトマトの栽培の始まったのが早かった地域だと思うのですが、昔のトマトは青臭いばかりで甘味が乏しかったので、こんな食べ方ができたのだろう、と思います(家は元和菓子屋でしたし)。
 内地(津軽海峡以南)に来てからトマトやキュウリ、ナスに味があることを知りました。北海道の日照量だと、夏野菜のトマトやキュウリ、ナスの味を引き出すまでにいたらなかったようです(多田伊織さん)

 多田さん、お元気でしたか?

スイカには塩
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スイカには塩

 トマトに砂糖は前回も書いたように糖度不足を補う手段であったろう。多田さんのメールからもそれがうかがえる。

 スイカに塩は甘さを引き立たせる工夫。

 亡くなった父は酸っぱいものが大の苦手であった。その父が酸っぱい夏ミカンを食べるとき、重曹を塗って食べていた。アルカリで酸を中和させていたのである。そこまでして食べなければいけなかったのであろうか。

 最後はこれ。

イナゴ(左)と蜂の子
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イナゴ(左)と蜂の子

MNo.22

 私は現在山形県山形市に住んでいます。もとは宮城県の出身です。山形に来て驚いたのは、「イナゴのつくだ煮」をスーパーで売っていること。イナゴってバッタですよ。
 地元宮城でも食べる地域はありますが、商品化していることに驚きました。山形出身の方はみんな一度は食べたことがあるそう。
 私は山形に来て、初めて口にしました。食感はエビのようでとても美味しいのですが、足が口の中に刺さりどうしても気になってしまいます。
 味は悪くないので、虫に抵抗のない方はぜひ山形に来たらスーパーに立ち寄って買ってみてください。どこのスーパーでも売ってますよ(黄海さん)

虫さん好きですか?地図

虫さん好きですか?地図

「食べ物 新日本地図」の2009年の項に「虫さん好きですか?」が載っている。

 それによれば山形県人の虫さん好きは東北でも群を抜いている。

 新宿でやっていた山形物産展でイナゴの佃煮を売っていたので「イナゴは信州だとばかり思っていました」と言ったら「イナゴの本場は山形だ」と一蹴された。

 今週もまた紹介できないメールが残ってしまった。

次の実食編は熊本
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次の実食編は熊本

 しかしこうして見ると、山形に限らず日本各地に本当に豊かで多彩な食の文化が息づいている。

 現在、私は多忙を極めているが、実食編のスケジュールもこなさなければならない。お邪魔する土地の皆さんとお目にかかるのが一番うれしい。

 デスク、次は熊本だっけ?

デスク そう。その次が岐阜で、岐阜の後に山形。あっ、その前に次のお題は何県?

 滋賀県

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★番外編はありがとうふちくわ、鳥取〜近畿・中国・四国B−1グランプリ(デスク)です。ぜひお読みください。

実食編(上) 「すだまり氷」に青くなる

実食編(下) 何はなくとも皿にはサラミ

山形県編(その1) 「冷やし中華」「冷たい中華」の違いを述べよ

山形県編(その2) 麦茶に砂糖、トマトに砂糖

山形県編(その4) 酒田のワンタンに「くりびってんぎょう」


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年6月15日

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