第47回 兵庫ご当地グルメ(その4) 佃煮への認識をアラ!ためたい

特別編集委員 野瀬泰申  このエントリーをはてなブックマークに追加


 先週はイカナゴやかつめしなどの話題が登場しましたが、イカナゴもかつめしもまだまだ尽きません。境界線も見えてきたような……(兵庫県その1はこちらその2はこちらその3はこちらからご覧下さい)。今週のリポートは静岡県のVOTE結果です。
(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

 

イカナゴ
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イカナゴ

 今週の月曜と火曜日の2日間、延期していた静岡実食編の取材に行ってきた。そこここで桜が咲き乱れる春爛漫(らんまん)の駿河路を、遠州路を巡りながら、読者の皆さんから寄せられたメールを頼りに、様々な食の文化に触れることができた。

 やはり現場である。現場で本物の食べ物を口にして、初めてその土地の息づかいを知ることができる。

 それにしても同じ静岡県でも、町が違うとこんなに食文化が異なるものかと改めて思う。

 今回の実食編にはひとひねりを加えてみた。リポートは連休明けになりそうだが、どうぞ笑っていただきたい。私の力ではなく、地元の方の才能を借りて笑っていただける内容を用意している。


 では本編。

 前回紹介した「イカナゴの釘煮」フィーバーの起源と境界線について。


イカナゴの釘煮
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イカナゴの釘煮

MNo.26

 今年のイカナゴ漁は3月25日で終了し、最後は2キロで300円まで値が下がったようです。
 漁も終わると話題の中心は、自宅の冷蔵庫にどれくらいイカナゴ(釘煮)が入っているかになるようです。オレの家は1キロ!とか、ウチは2キロ!とか、冷凍庫に1年分!とか……。またショウガ派かサンショウ派か、というのもお決まりの話題だそうですよ。
 それから、先週の記事をSNSで紹介したら、知り合いからこんなコメントがありましたのでご紹介します。
 「我が豊中のコープ、スーパーでも毎年イカナゴグッズ、調味料は大陳列です。海沿いでもないのになあ? このシーズンはコープのおにぎりのラインナップにイカナゴくぎ煮が加わるんですよね。おいしいですよ」
 「昔は買ったものを食べていた気がします。こんなに広がったのは震災後、援助のお礼に手作りの釘煮を配ったのがきっかけですね。そしてスーパーにコーナーができ、数年前からうちの親も作りはじめました」(nozakiさん)


 後段部分に「ほほー」と唸った。そういうことがあるのか。

 元々然るべき地では盛んにイカナゴの釘煮がつくられていたことであろう。それが阪神大震災を機に「支援のお礼」として全国に送られるようになり、今日の盛り上がりと広がりを生んだ。覚えておきたい事象である。


赤穂市の大石神社に行くと、うどん屋さんに「イカナゴの釘煮」のポスター発見。この辺りまでは少なくとも釘煮ゾーンです(大阪の原さん提供)
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赤穂市の大石神社に行くと、うどん屋さんに「イカナゴの釘煮」のポスター発見。この辺りまでは少なくとも釘煮ゾーンです(大阪の原さん提供)

MNo.27

 私の知る限り、岡山県東部から岡山市南部の沿岸地域のスーパーには3月前半からイカナゴが並びます。
 仕事先の奥さんからいただいたものがとても美味しく、レシピをもらいウチでも煮るようになりました(クルミ入りで美味しいよ)。そして毎年ウチから東京や九州へ旅立っていきます。
 神戸や明石ほどのフィーバー状態ではないように思いますが、しっかり季節の味として存在していますよ。
 その奥さんがおっしゃるには、昔から岡山市の南部では釘煮を作っていたそうです。スーパーへの入荷は不定期で、鮮度が大事なイカナゴは、その日の午前中にならないと入荷するかどうか分からず、ウチでは電話で問い合わせをしたり、スーパーを回ったり、情報収集には余念がありません(福岡出身 岡山生活15年 ぽんすけさん)


 前のメールで北は大阪府豊中市まで広がっていることが明らかになったが、西は岡山市の線が浮かんだ。

 目の前の海で獲れるのであるから、考えてみれば不思議はない。

 ところで大阪在勤時代、居酒屋で「カマスゴ」という魚を釜ゆでにしたものが「旬のもの」として出ていた。長い間「カマスの幼魚」だとばかり思っていたが、これが実はイカナゴの成魚らしいのである。

 稚魚は釘煮にし、成魚は釜ゆで。関西人はこの魚に随分お世話になっている。


MNo.28

 イカナゴの釘煮は瀬戸内だけとちがいますよー! 泉佐野漁港でもイカナゴは獲れます。隣の泉南郡田尻漁港でも。
 今年、私は3人の友人から釘煮をいただきました。その内の1人は田尻漁港で釘煮講習会に参加して作ったとか。
 泉州でも春は釘煮の香りを連れてやってきます(泉州住まい30ねんさん)


 ほい。南は泉州のラインがくっきりと見えた。瀬戸内海、大阪湾沿岸に共通する春の知らせ。春はいいなあ。


しいアラ!(ミルフォードさん提供)
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しいアラ!(ミルフォードさん提供)

MNo.29

 少し前のテレビで魚肉ソーセージではない、畜肉を使ったポールウインナーは関西以外ではあまり売られていないと言っているのを見たんですが、この手のウインナーで一番好きだったのはクワムラハムのチキンウインナーです。鶏肉の淡泊な味わいと適度な歯ごたえがおやつにぴったりでした。
 ブンセンの海苔の佃煮「アラ!」も昔から食卓には欠かせないものでした。以前はその名前に違和感は全くなかったんですが、今更ながら変な名前だなと思います。
 スーパーで売っている他の銘柄のものと比べて少し甘いのが特徴で、椎茸の入った「しいアラ!」は特に甘さが際だっていたように思います。横浜に住んでいたとき、関東方面の少し辛い海苔の佃煮に悲しくなっていたとき、台湾南部の町、恒春のお土産にもらった海苔の佃煮がこの「しいアラ!」の味と似ていてなんか嬉しくなったこともあります(中井さん)


ミゾさんに送っていただいたポールウインナー(写真は「食べ物 新日本奇行」から)
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ミゾさんに送っていただいたポールウインナー(写真は「食べ物 新日本奇行」から)

 ポールウインナーは本連載の前身企画「食べ物 新日本奇行」の「ソーセージ」の回でにぎやかな話題を提供してくれた物件。

 兵庫県西宮市に本社を置く伊藤ハムのロングセラー商品で、発売は1934年というから80年近い歴史がある。

 しかしながら販売地域は関西中心なので、東京で入手するのは難しく、関東在住者でその存在を知らない人は多い。


 クワムラハムの正式社名は「クワムラ食品」。西脇市の北の多可町にある。

 だが、残念なことに私はそのチキンウインナーを知らない。ごめん。


 「アラ!」を製造しているブンセンは兵庫県たつの市の会社。大阪時代の私は結構お世話になったのだが、当時は「アラ!」は全国で売っているものと思っていた。というか、そんなことに興味がなかった。

 いまここに認識をアラ!ためたい。


「川政」のえびかつめし・うどん定食(上)、「エデン」のかつめし(大阪の原さん提供)
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「川政」のえびかつめし・うどん定食(上)、「エデン」のかつめし(大阪の原さん提供)

MNo.30

 先日話題になった、ブンセンの味「アラ!」。「でんでんむしむしカタツムリ」の節で「アラアラ、アラアラ、アラアララ〜」と連呼するCM。画面は「アラ!」と大きく書かれただけで全く動かず。放送事故のような画面にアラの連呼が鳴り響く……関西人にとってはパルナスよりも地味ですが魂に深く突き刺さった思い出です。30年ほど前まではU局で流れておりました。美味いんだ。これが。
 将棋の久保王将がキャラクター「かっつん」(女の子はデミーちゃん)と共に熱心に宣伝している「加古川のかつめし」。
 写真は加古川駅前の「エデン」です。味噌汁つきです。デミグラスソースでも和食ということです。もう1枚はひめじ別所駅近くの「川政」の、えびかつめし・うどん定食です。ついでに加古川駅前の兵庫大学「かつめしラボ」を。主に木金土に活動している様子でした(大阪の原さん)


 関西在住の方にとっては「アラ!」のCMは随分と懐かしいものらしい。別の方からも同じような話を聞いた。

 「アラ!」の発売は昭和30年ということらしいので、ほとんど私の人生と重なっている。それだけでいいヤツに思えてくる。

 さて加古川の「かつめし」である。


加古川パラーディオ「いろは食堂の牛かつめし」(ひろーきさん提供)
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加古川パラーディオ「いろは食堂の牛かつめし」(ひろーきさん提供)

MNo.31

 かつめしは「いろは食堂」が発祥と言われています。今は「パラーディオ」という名前になり、レンガ造りのめっちゃおしゃれなレストランとなっています。
 カツは「牛」が正統です。つけあわせには「ゆでキャベツ」が定番です。千切りキャベツは邪道です。「ゆで」が正解です。
 甘めのデミグラスソースが、さっくりと揚げたカツとご飯にしみこみ「かつ丼」とは全く違った「洋食メニュー」となります。
 これをお持ち帰りにしてもらうと、あつあつのご飯の上に置かれたカツとデミグラスが蓋でぎゅーっと押されて「押しずし」ならぬ「押しメシ」状態に。ごはんにカツとソースが沈み、おいしさが倍増します。実はこの「冷めたかつめし」のほうが好きなの、私。
 それぞれのお店によってデミグラスが微妙に違いますので、ぜひみなさんどうぞと言いたいところですが、かつめしはB級グルメというにはけっこういいお値段です。牛がメインのためのためと思われます。なので、ついつい「豚で……」と頼んでしまう小市民です(にゃお平さん)


 「かつめし」は牛肉で付け合わせはゆでキャベツ。覚えておこう。そして個人的事情によっては「豚」に変更ができるらしい。すると東京の「カツライス」に変身する。

 「押しメシ」状態のかつめしは異常に食欲をそそる。私が弁当好きなせいであろうか。今日のお昼もすき焼き弁当だったもんね。


 これまで話題になった中に「なぜ洋菓子屋さんでピロシキが?」問題があった。その解答になりそうなメール。


神戸元町にあるレンセイ製菓のお菓子。「昭和の空気が残っています」(大阪の原さん提供)
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神戸元町にあるレンセイ製菓のお菓子。「昭和の空気が残っています」(大阪の原さん提供)

MNo.32

 洋菓子屋さんでピロシキ、を読んで思い出したのですが、東京の近江屋洋菓子店というところでは、ケーキ屋さんなのにボルシチの食べ放題をやっています。
 そこでふと考えたのは、日本の洋菓子店のルーツのひとつに、亡命してきた白系ロシア人が関与しているという事実です。
 神戸拠点のモロゾフ、ゴンチャロフ、ユーハイムなどがその代表ですが、東京にもクッキーを「ロシアケーキ」と名づけて売っているような個人経営の洋菓子店がたまに見られます。新宿中村屋、亀屋万年堂、京都の村上開新堂など老舗の菓子店にもロシアケーキが存在します。
 確たる証拠があるわけではないので、もしよければいつか調査していただけると嬉しいです(山口さん)


姫路市内の物産店で見かけた白菜に顔!
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姫路市内の物産店で見かけた白菜に顔!

 近江屋洋菓子店の神田店は淡路町交差点近くにある。私がよく行く銭湯のそばなので前を通ることがあるが、昼時はバイキングの客、総菜パンを買う客で混み合っている。

 私も1度だけピロシキを買ったことがあるが、それはそれは懐かしい味であった。

 新宿中村屋の場合は、明治時代にロシア皇帝のお抱え製菓技師に教わったものということがHPに書いてあるので淵源は明らかだが、老舗の洋菓子店に広くピロシキが浸透している背景には、山口さんが推測されているような事情があるのではないか。

 私も確証があって書いているわけではない。しかし非常に合理的な推測であると思う。

 ええっと、顔白菜(上の写真)はとても良い。


 これまでの兵庫県編で玉子(明石)焼きにソースといった具合に、ソースがとても活躍している様子がわかっているが、このような活躍の仕方もある。


数年前に姫路おでんの取材で行った「たいこ弁当」。おでんの具を巻いた太巻きを食べました(アミー隊員)
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数年前に姫路おでんの取材で行った「たいこ弁当」。おでんの具を巻いた太巻きを食べました(アミー隊員)

MNo.33

 ソースの話ですが、我が家(姫路市飾磨区)の方ではご飯にウスターソースをかけて食べていましたよ。結構コクがあって美味しいですよ。まちがってもトンカツソースはダメですよ。ソースは名城。醤油はヒガシマル。
 ヒガシマルのうどんスープとちょっとぞうすいの素はオールマイティーの調味料でしたね。学生時代はごはんによくかけて食べたものです。
 そう言えば秘かな楽しみがありました。おでんの生姜醤油と出し汁のまざったスープをご飯にかけて食べると最高です。
 といってもたいこ弁当ではみんなやってましたけど(たいこ弁当愛好会@愛知さん)


前回登場した丸萬のワンタン(nozakiさん提供)
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前回登場した丸萬のワンタン(nozakiさん提供)

 注釈が必要であろう。「たいこ弁当」というのは兵庫県内で展開している総菜・弁当チェーンの名前。イートインもある。

 元に戻って、ご飯にウスターソースをかけて食べるのは関西では長い歴史がある。有名なのは昭和恐慌のころの梅田阪急百貨店大食堂の「ソーライス」。メニューにはなかったがライスだけ注文して卓上のウスターソースをかけて食べる客が多かったという。

 確かにたまには食べてみていいような気がする。

 ヒガシマルのうどんスープは我が家でも常備しており、関西系の味付けにしたいときに重宝してはいるが、あの粉末をご飯にかけてみようかと思ったことは絶対ない。

 姫路おでんの生姜味噌が溶けた出し汁をご飯にかける? 「たいこ弁当」のイートインコーナーではみんなやっていた? 兵庫の人は汁かけご飯が好きですか?


MNo.34

 食べB読者の一部の皆さんとお会いする機会がありました。そこで出たお話。
 夏は朝ご飯に冷たい麦茶をかけて食べるというもの。親御さんの片方は神戸の出身だという方からの申告に、とある名古屋出身の方は共感し、我々は混乱したのでありました(千葉県出身ななさん)


神戸たこやき(ミルフォードさん提供)
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神戸たこやき(ミルフォードさん提供)

 この食べ方も戦国時代以来の伝統があるにはあるけれど、神戸の皆さん、名古屋の皆さん、ご飯に麦茶が好きですか? 「食べ物 新日本奇行」の「汁かけご飯」の回でも話題になった。

 手元にたくさんのメールが残っている。予想した通り4回では終了できない。異例のことながら1回延長する。

 従って次回は兵庫県編その5(最終回)、連休明けに静岡実食編。その後から群馬県編を始めよう。

 すでに群馬に関するメールをいただいているが、それを読む限り面白い展開になりそうである。群馬県関係者はぼちぼちとご準備を。

 ではまた来週。

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>> ★今週のリポート「静岡県のVOTE結果」はこちらからどうぞご覧下さい。


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2011年4月15日


■兵庫B級グルメ
・その1 丼たこ焼きにコウベを垂れるSNSで発掘、B-1へ 世界を目指す姫路おでん
・その2 そばめしのめしぬきめしあがれ高砂にくてんが結ぶ人の縁(一芸)
・その3 チワー、宅釘煮便です!佐用、水害からの復興とホルモン焼きうどん(一芸)
・その4 佃煮への認識をアラ!ためたい静岡県VOTE結果
・最終回 神戸ではパンを頻パンに食べる食べBなもの探検隊・姫路タウン編(一芸)


■実食編:<映像リポート>はこちら
食べB修行記、今週のリポート一覧
料理・素材名から探す(インデックス)ページはこちら
県別に見る(インデックス)ページはこちら
■入門編:「食べBって何?」という方はこちらからご覧下さい

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