第138回 鹿児島県実食編(前編) 元祖白熊、埋蔵金

特別編集委員 野瀬泰申


 今回の実食編は、九州の最南端・鹿児島県です。野瀬が鹿児島市内から山間部にかけて、一方デスクが海沿いをと、二手に分かれて県内をめぐってきました。

 新しい発見はあったのか?  本編で話題になったあの食べ物にめぐり合えたのか? 
 今回は話題満載で長くなりました。前後編、2回に分けてお届けします。どうぞお楽しみに。

 今週のおかわりは、デスク版の実食編です
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「焼酎の国」にやってきた
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「焼酎の国」にやってきた

 2013年6月8日(土)の朝、鹿児島市に着いた。本編で書いたように中学校の修学旅行で来た街である。

 10年ほど前にも訪れたが、ラーメンの取材だったので、それ以外の店には行かなかった。その数年後、再訪したものの社業があったため町中を歩くこともなくとんぼ返りしている。天文館辺りを少しうろついた程度だった。

 今回やっと鹿児島をちゃんと取材できる機会を得た。といっても2泊3日では限界はあるが「食べ物」という軸があるので、それなりにはかどりそうである。

鹿児島中央駅そばの朝市
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鹿児島中央駅そばの朝市

 デスクは別行動で私の知らないところをほっつき歩いている。あちらは水俣の三牧さんが運転する車がある。松山の坂本さんも一緒のはずである。

 私は1人だし、車ではない。徒歩である。

 だが鹿児島は市電の街である上に、バス路線も発達している。タクシーを使わず、かなりの所に行ける。

 まず鹿児島中央駅から、荷物を預けるためにホテルに向かう。途中に「朝市」があった。果物や鮮魚、野菜、お菓子、総菜などを商う店が並んでいる。

朝市で売っていた豚みそ
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朝市で売っていた豚みそ

 東京感覚でいうととてつもなく安い。地元産のマンゴー、メロンなども格安である。

 大きなテントの中に弁当と総菜を売っている店があった。本編で登場した「豚みそ」が置いてある。壜詰めではないから手づくりなのであろう。店のおじさんに聞いた。

「写真撮っていいですか」

「わざわざ写真に撮るようなものじゃないよ。でもこれがあるとご飯が2倍食べられるよ」

 という趣旨のことをご当地の言葉で言った。

奄美の「かしゃ餅」
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奄美の「かしゃ餅」

 近くの店では還暦経験者らしい女性が伝統菓子を売っている。その中で気になったのが奄美の「かしゃ餅」であった。

「かしゃというのは?」
「葉っぱのことね」
「何の葉っぱですか?」
「三沢あけみ、田端義男のね…」
「?」
「その2人が歌った歌に出てくるサネンバナのことね」

西郷隆盛、従道兄弟生誕の地
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西郷隆盛、従道兄弟生誕の地

 つまり戦後大ヒットした「島育ち」という歌謡曲に登場するサネンバナの葉で巻いた餅なのである。サネンバナは月桃のこと。

 この後登場するが鹿児島には殺菌効果がある植物の葉で包んだ餅菓子や団子が多い。腐敗を避ける南国の知恵である。

「かしゃ餅」を買って鹿児島中央駅に戻り、市電の線路に沿って歩き始める。目指すは加治屋町。西郷隆盛、大久保利通ら維新の群像の生家があった所である。

大久保利通像
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大久保利通像

 司馬遼太郎の「翔ぶが如く」を2回読み、NHKの同名の大河ドラマのVTRも見ている。文字と言葉を現場で確認するのである。

 行ってみると甲突(こうつき)川のほとりの狭い地域に彼らの生地は集まっていた。鹿児島は空襲で市街地のほとんどが燃えてしまったので、当時を偲ぶよすがはない。あちこちに石碑や銅像、標識のようなものがあるだけである。

 こんなことを書いても仕方がないか。

 でも私にとって維新の面影に触れることが今回の旅の目的のひとつである。食べ物はそのついで。

 というのは嘘で、食べ物の取材だからといってスケジュール通りに食べ続けるのはもはやつらい年齢になったから、ゆっくりと「食べ物も探る旅」にしようという魂胆である。従って私は何の予定も立てずに東京を出てきた。

天文館のアーケード街を歩くと…
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天文館のアーケード街を歩くと…

 歴史の歩き旅をしていたら11時になった。朝食をしっかりとったのでお腹は空かない。何となく天文館のアーケード街を歩くうちに思いついた。

「白熊を食べるか」

 相手は氷である。とけて水になればコップ1杯くらいのものであろう。

 その元祖、「むじゃき」はアーケードが尽きる辺りにあった。飲食ビルになっていて1階の中華食堂で白熊を食べられる。のぞくとほぼ満員だが入れないこともない。

天文館「むじゃき」の白熊のはく製
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天文館「むじゃき」の白熊のはく製

 おお、店の前に白熊のはく製がある。ここまでやる?

 店に入ると2人用のテーブルに案内され、卓上のメニューを見た。

「ラッキー。6月は復刻版の白熊が食べられる月だったんだ」

 知らなかったが、そうなんだって。

「復刻版をください」

 64年前にかき氷にちょこちょことトッピングしたら白熊の顔に見えたというのが「氷白熊」の由来。それから様々な進化と発展を遂げて今日に至る。

復刻版の白熊
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復刻版の白熊

 てなことを書いたものを読んでいる私の前で音がした。目を上げると白い塊があった。

「でか」

 思わず声が出た。隣のテーブルいたジモティーらしい夫婦が「ふ〜ふ」と笑う。

 器は小丼サイズである。そこから真っ白い塊がそびえ立っている。量が多いとは聞いていたが、覚悟する前に現物と遭遇した。

氷の中から埋蔵金がザクザク
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氷の中から埋蔵金がザクザク

 上から横からお姿を眺める。なるほど白熊の愛嬌(あいきょう)ある顔に見える。

 スプーンで一口食べてみる。練乳を基本としたシロップが甘い。氷はふわふわ。ざらざら感は全くない。

 トッピングも食べて半分ほど食べ進んだところで、スプーンの先が何かに当たった。掘り下げてみたら、埋蔵金というか埋蔵文化財というか、色とりどりの「具」がざっくざっくと現れたのである。

 全部で15種類。豪華絢爛(けんらん)である。

埋蔵金の内訳
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埋蔵金の内訳

 つまり初期の白熊はこのようにお宝が氷の中に隠れていた。それが外に出て満艦飾のようになっているのが現在の白熊ということになる。

 練乳の甘さでどんどんお腹が膨れてくるのに、財宝を掘り当ててしまったものだからちょっと夢中になっているうちに完食してしまった。

 かき氷を食べたのは何年ぶりであろうか。でもなんだかうれしくなった。

 店を出て電車通りを歩く。スーパーがあったので入ってみた。鮮魚売り場で探していた「首折れ鯖」を売っていた。売り場の男性に聞く。

首折れ鯖
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首折れ鯖

「どうして首を折るんですか?」

「首を折って神経を殺すんです。そうすることによって鮮度が保たれます」

 詳しい理屈はわからなかったが、経験的にそうなのであろう。

 地元百貨店「山形屋」に行く。「やまかたや」と濁らずに読む。屋上には昔懐かしい遊園地がある。土曜日ということもあるのだろうが店内は混んでいて活気がある。こんなに元気な地場の百貨店は珍しい。

山形屋の屋上遊園地
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山形屋の屋上遊園地

 デパ地下に伝統菓子を売るテナントが入っていた。

「かから(ん)団子」の「かから(ん)」はサルトリイバラの葉。

「けせん」は肉桂の葉。こちらは香りが移って美味いとのこと。両方買った。

 7階のファミリーレストランをのぞかねばなるまい。本編で豆津橋さんが実食した名物の「三杯酢で食べる焼きそば」にお目にかかるのである。

 ところがお昼時とあって広い食堂は家族連れで満席。行列までできている。百貨店食堂自体が絶滅危惧種なのに、山形屋に限ってはそんな心配はいらないようである。

フェリーで桜島に向かう
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フェリーで桜島に向かう

 諦めて外に出た。

「そうだ。桜島に行こう」

 予報では夕方から天気が崩れるそうである。その前に桜島。

 フェリー埠頭まで歩く。フェリーは15分毎に出ており、所用時間も15分。意外に近く、料金も150円という安さである。生活航路でもあるので24時間運航している。

 フェリーの上甲板に立つと風が肌寒いが、慣れると気持ちがいい。錦江湾は内海のせいで波は静かである。

この溶岩に見覚えが
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この溶岩に見覚えが

 あっという間に桜島に着いた。降りた途端、懐かしい思いにとらわれた。中学の修学旅行で桜島に来た。そのときの情景が浮かんだのである。

 道路や建物は新しくなり風景はすっかり変わっている。しかし真っ黒な溶岩の不気味な重量感は昔のままであった。

 あちこち歩いて写真を撮った。展望台に足湯があったので手を入れてみると熱かった

 国民宿舎が日帰り温泉を併設し、人の出入りが絶えない。足が向きかけたが、今夜のホテルには天然掛け流しの温泉があるので、そっちに入ることにした。

天ぷらそばを食べました
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天ぷらそばを食べました

 帰りのフェリーに乗ると客室の中に立ち食いうどんの店がある。こういうのをみたらつい体が動く。時計は午後3時を指そうとしている。白熊君の練乳も消化したようで、空腹を覚えた。

「天ぷらそばください」

 鹿児島に来てそばもないだろうが、立ち食いの基本は天ぷらそばである。このような物件が出てきた。

 鹿児島港に着くと空模様が怪しい。デスク一行もこちらに向かっているころである。ホテルにチェックインし、温泉に浸かって待っているとデスクから電話。

首折れ鯖の刺し身
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首折れ鯖の刺し身

 熊本の水俣が本店という「蜂楽饅頭」は鹿児島でも人気で、そこを待ち合わせ場所にした。

 三牧さん、坂本さん、デスクと合流し、予約していた店へ。そこで首折れ鯖の刺し身、豚足地鶏の刺し身盛り合わせ裏メニューのひょうたんの味噌炒めなどを食べた。私はウーロンハイの後は日本酒と決めているのだが、焼酎王国鹿児島であるから日本酒メニューが寂しい。あるだけラッキーという位置付けである。

 私はちょこちょこ箸を付けながら、選択の余地がない銘柄の日本酒を飲んだ。みんな疲れているのでデスクの絶叫ガハハ笑いも出ないまま終了。

年季が入った赤いのれん
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年季が入った赤いのれん

「ラーメン食べたいね」

 ということになって店を出たら坂本さんが発見した。

「あそこにラーメンの店が」

 出たばかりの店の斜め前に赤いのれんを提げた年季が入った店がある。小雨も降り出したので全員で直行した。

 この店のラーメンはいわゆる白濁とんこつではなく、鶏ガラなのかとんこつを白濁させていないのか不明ながら、透明なスープである。

透明なスープにしろっぽい麺
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透明なスープにしろっぽい麺

 しかし鹿児島ラーメンの「しろっぽい麺」という特徴は備えている。

 三牧さんが言った。

「水俣ちゃんぽんの麺も白いです」

 熊本南部から鹿児島にかけては、かんすいを抑えた白い中華麺が主流なのであろうか。

 驚いたのはラーメン300円、ラーメン大350円という値段である。本編では鹿児島のラーメンは値段が高いというメールをいただき、私も異論はなかったのであるが、当店は例外的な低価格である。

深夜料金に
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深夜料金に

 ところが時計の針が午後8時を指すと同時に壁の値段表が裏返された。するとそれぞれ100円高になったのであった。つまり深夜料金に突入した。私たちはぎりぎりのところで深夜料金を免れたのである。ラッキー。

 そんなことがあってその日は解散。天文館でそれぞれの方向に別れたのだった。

 ところでデスクたちは今日、どこで何をしていたのであろうか。

デスク 僕らは、鹿児島県の西の海岸線を熊本県境から海沿いに下りて行きました。詳しくはデスク版実食編でご報告いたします。ということで、今回はここまで。ちょっと長くなっちゃったので、この続きは来週。お楽しみに。
 そうそう、鹿児島県実食編のあとは北海道です。皆さんからのメールをお待ちしております。

(特別編集委員 野瀬泰申)

*映像はflashビデオです。一部機種では再生できないことがあります。ご容赦ください。

★今週のおかわりは「黒豚より魚でダイエット?(デスク版鹿児島県実食編)」です。ぜひお読みください。

鹿児島県編(その1) 後ろのそうめん、回−われ!

鹿児島県編(その2) 醤油が甘い。しょういうこと。

鹿児島県編(その3) 小さな「じゃんぼ」は二本差し

鹿児島県編(その4) かねがね、がねを食べたいと…

鹿児島県実食編(後編) 焼きそば食べなきゃ帰れない


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年6月14日

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