第180回 香川県ご当地グルメ(その4) どじょう汁をどうじょう。

特別編集委員 野瀬泰申


 香川県編もいよいよ最終回を迎えました。うどん以外の香川ならではの食を探し続けながらも、やはり最後までうどんから離れられないうどん県。今週もうどんの話題も交えつつ、ご当地お菓子などを紹介していきましょう。
 今週のおかわりは、香川県を「うどん県」として全国的に知らしめた「うどん県。それだけじゃない香川県プロジェクト」の最新情報をお届けします
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2014年版のうどん県PR映像が発表された
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2014年版のうどん県PR映像が発表された

 東京も梅雨に入り、先週末はずっと雨だった。中でも関東北部は場所によって平年の6月の雨量を1日で記録するような大雨になった。

 そんな雨の中ではウオーキングもできず、かといって終日家にこもる気にもならず、小やみなったのを見計らって近所のスーパーに買い物に行ったりしたものの、やはりほとんど家で過ごした。

 たまたまいまはほぼ独り暮らし状態のため、掃除に洗濯と独居老人の練習で過ごした。料理をするのも面倒で、買ってきた総菜でちびちびやっていたのである。

悪いことばかりじゃないかも…
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悪いことばかりじゃないかも…

 趣味がある人がつくづく羨ましくなった。若いころ少し碁をかじったが、才能がないのでやめた。競馬などのギャンブルとも無縁。銭湯通いは趣味というより生活の一部。

 70代半ばの2人の先輩がいる。現役時代は社内の句会を引っ張り、リタイア後に2人で日本初の俳句振興を目的としたNPOを立ち上げた。

 1人は正岡子規以前の空白の俳句史を解明した本を出し、もう1人はNPOのHPで長大な俳論を書き続けている。

 ご興味がある方は「双牛舎」で検索を。

圧倒的な存在感
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圧倒的な存在感

 私の俳句の最高傑作は次の句である。

「五月雨が 頭皮に沁みる 四十路かな」

 情けねえ。

 さて香川県編も最終回である。メールがピンチと書いてから考えた。なぜであろうかと。やはり「うどん」の存在感が圧倒的で、ほかの食べ物がかすんでいるせいではないか。一つの食べ物の存在が際立ってほかのものが見えなくなるなどという現象が起きる県は香川だけかもしれない。

 実食の旅は重い課題を背負ったものになるであろう。テーマは「うどん以外のものを探せ」である。

 とはいえ、今回もうどんメールから。

池上製麺所の釜たまうどん(たべびと・たにわきちはるさん提供)
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池上製麺所の釜たまうどん(たべびと・たにわきちはるさん提供)

MNo.25

 もう10年以上前になるでしょうか。10人ほどで「さぬきうどんツアー」と称して、香川県に出かけたことがありました。
 屋島でたらいに入ったうどんをワイワイしゃべりながら食べたのが、面白い思い出として心に残っています。
 そして観光タクシー(ジャンボタクシー)で運転手さんが考えて下さったツアーでは、まずオーソドックスなうどん屋さん。次にガイドブックにも載っている有名なうどん屋さん。3軒目に案内して下さったのが、あの「池上製麺所」でした。
 倉庫? 納屋? とも見紛うばかりの小屋の中に、満面の笑みの「るみ子おばあちゃん」。
 うどんを打っていたのは、お弟子さんのようでしたが、ここでいただいたうどんのコシの強さに思わず腰を抜かしそうになりました。
 ゆで上った麺を丼に入れてもらって、自分で醤油をかけたり、卵を割入れたり。お勘定は、箱の中にお金を入れ、おつりも箱から自分で取るというスタイルでした。
 うどんにかけるお醤油が、ポンプボトル(シャンプーなどが入っているようなあのボトルですね)に入っていたのには、目が点になりました。
 ツアーで回ったうどん屋さんの中で、一番美味しかったと記憶しています。
「今もお元気なのかな〜?」とふと気になり、ネットで検索したらホームページができていて、大きくキレイなお店の写真や、注文から食べ終わった後までの「お作法」も書かれていました
 うちの近所のスーパーでは、池上製麺所の袋入りうどんが売られています。袋には、るみ子おばあちゃんの笑顔が印刷されています。
 地元では、池上製麺所に初めて食べに行くことを「るみ子デビュー」と言われているそうですが、ホンマですか?(ちりとてちんさん)

デスクが訪れた山中のうどん屋
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デスクが訪れた山中のうどん屋

 このように、他地域に住む者のさぬきうどん体験は、強烈な印象を残す。

 10年前というと「恐るべきさぬきうどん」がブームになり始めたころであろうか。このブームは製麺所やうどんの店が辺ぴな場所にあることを逆手にとって、初めからツアーを呼び込んだところが画期的であった。「JR〇〇駅から徒歩5時間」とかいうあれである。

「看板もなく探すのが大変」というのもキーワードであったし「畑からネギを引っこ抜いてきて自分で切る」「つゆを自分で注ぐ」というのも、読者の心をわしづかみにした。

 現にちりとてちんさんのグループもタクシーを雇ってツアーを組んでいる。しかも最低3杯ずつ食べている。

 こんな楽しい旅はなかなかない。しかも「うどん」という、どこまでも庶民的な食べ物をテーマにしているからわかりやすい。

富士吉田のうどんは馬肉入り
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富士吉田のうどんは馬肉入り

MNo.26

 さぬきうどん店が全国展開し、香川の「うどん県」と言う呼び名もかなり浸透しているように思います。けれど、実際に香川へ行ってみるとうどん屋さんが郊外に点在していて、車がないと巡るのに大変苦労します。私の住む名古屋なんて、テレビ塔の周囲2キロメートル四方にうどん屋さんが約60軒もあるというのに…。
 そこで、本当に香川にうどん屋さんが多いのか、「食べログ」で「地域名+うどん」で検索して確かめてみました。「食べログ」は全ての飲食店が掲載されているとは限りませんし、専門店だけではないようですが、傾向を知るには十分と思います。

埼玉のうどんはつけ汁の「かてうどん」
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埼玉のうどんはつけ汁の「かてうどん」

全国 :30,429件
東京都: 4,345件
埼玉県: 2,352件
大阪府: 2,304件
愛知県: 1,860件
神奈川: 1,607件
福岡県: 1,267件
千葉県: 1,249件
兵庫県: 1,139件
群馬県: 1,034件
香川県: 872件
名古屋市: 803件
富士吉田市: 104件

武蔵野うどんは黒っぽい麺が特徴
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武蔵野うどんは黒っぽい麺が特徴

 やはり、絶対数だと香川はそんなにうどん屋さんが多いとは言えませんでした。
 人も飲食店も集まる首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)、うどん・麺どころの大阪、愛知、福岡、群馬は、香川よりも多い結果でした。
 そこで、数字を見せるための手法が必要となります。人口が少なく、面積が狭いことを逆手にとって、1人当たりや面積当たりの店舗数にすれば確かに日本一になるようです。また、「地域に根付いたうどん文化」という点で、香川には素晴らしいところがあると思います。
「うどん県」の特集にかこつけて、香川以外にも「うどんどころ」「うどん好きの土地」があることを知ってほしくて投稿しました(zunoさん)

香川県の最大の観光資源はうどん
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香川県の最大の観光資源はうどん

 香川県の最大の観光資源は、やはり「うどん」であろう。

 私はさぬきうどん取材を通じてある程度知っているので、実食の旅ではうどん実体験とヘビー級の「かしわバター」をデスクに任せ、小豆島辺りをうろうろしたいと思っている。瀬戸内海が大好きなのである。

らりるれレタス
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らりるれレタス

MNo.27

 後期高齢者の母親に聞いたところ「ちしゃもみ」という料理を、昔はちしゃで作っていたけれど、最近はちしゃが少なくなったからレタスを使っているとのことでした。
 香川県はレタス生産量全国上位にいるのも関係あるのかもしれません。ちなみに香川県のレタスのキャッチコピーは「らりるれレタス」です。私は結構このコピー気に入っています。
 切干大根は普通ですが、せんつき大根という料理があります。切干は干した大根を使いますが、せんつきは生の大根をせんつき器(?)なるものを用いて、千切りっぽくした大根を油揚げと一緒に炊く料理です。お砂糖もちろん入れます!
 子どものころは全く美味しいと思わなかったのですが、年を取ってくるとかなり美味しいと感じるようになりました。
 最近、関東から引っ越してきた上司、関西から引っ越してきた同僚曰く「高松のスーパーの鶏肉売場が広い」とのことでした。鳥豚牛肉売場、そんなに大差ないと思っていたのですが。
 そう言えば、骨付鳥の足は子どものころからスーパーで売っていた記憶があるなぁ(いしまるさん)

デスク自作のちしゃなます
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デスク自作のちしゃなます

「ちしゃもみ」別名「ちしゃなます」は、食べBでは再登場である。初出は愛媛県? 広島県? 山口県?

 いずれにしろ瀬戸内地方に広がる共通の食べ物である。

 メールにあるように、かつては「かきちしゃ」でつくっていたが、最近は手に入らないのでサニーレタスや普通のレタスで代用することが多いそうである。

 ただしこれも古い家庭料理で、絶滅が危惧されているとの声も聞く。

 デスク。検索できたら初出を探しておいて。

せんつき大根(JA香川県提供)
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せんつき大根(JA香川県提供)

デスク 山口県編の3回目ですね。

 せんつき大根は千突き大根のことか。専用の「突き器」で大根を突く。すると千切り大根のサイズの生の大根が出来上がる。それを油で炒めて厚揚げや豚肉を入れて煮る。香川の定番おかずだそうである。

 次のメールは、あのお菓子に関して。

香川県のカタパン(A-changさん提供)
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香川県のカタパン(A-changさん提供)

MNo.28

(その2)で「かたぱん」が紹介されていましたよね。実は「カタパン」というものは西日本広域に点在しているのですが、そのほとんどが四角い形をしています。しかし、なぜか香川県のものは丸い形で、砂糖がまぶされショウガが効いているんです。そして他県のものと比べると、それほど硬くはありません。
 あるお店のご主人の話によると、かつて県内には多くの「カタパン」屋さんがあったそうですが、現在残るのは3軒のみとのこと。善通寺市の熊岡菓子店・三豊市の菓子工房ナリキ・丸亀市の大正堂だけです。
 元祖とされる熊岡菓子店では他のお店と違って5種類もの「カタパン」が並んでいますが、(その2)に載っていた「石パン」だけはかなりの硬さがあるのでご注意ください。間違っても前歯でかんではいけません。

どじょう汁(A-changさん提供)
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どじょう汁(A-changさん提供)

 香川県の郷土料理に「どじょう汁」というものがあります。汁といっても味噌仕立ての鍋料理で、中にはうどんが入っています。打ち込み用(煮込み用)のうどんを使うのですが、一般的にいうさぬきうどんとは異なり、コシというよりも硬さを感じます。吉田のうどんや武蔵野うどんに近いかもしれません。
 昔、田植えの時期に各家庭で作られていたものだそうで、残念ながらメニューにのせるお店はあまりありません(A-changさん)

西日本のカタパン(A-changさん提供)
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西日本のカタパン(A-changさん提供)

「石パン」と鳥栖の「八起」のキャンデーには注意したいものである。特に前歯は厳禁。

 カタパンはもともと兵隊さん用の糧秣であったとか。

 熊岡菓子店ののれんは「カタパン」、看板は「かたパン」。どっちでもいいのか?

「どじょ輪ピックinさぬき」のどじょう汁(Nさん提供)
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「どじょ輪ピックinさぬき」のどじょう汁(Nさん提供)

MNo.29

「どじょう汁」をご紹介します。白味噌でどじょう、里芋、油揚、ゴボウなどを煮込んだ打ち込みうどんです。「うどんやないか」というつっこみは聞こえなかったことに…。
 通常のさぬきうどんとは異なり、塩をごく少量または全く使わない「打ち込みうどん」ですので、食感も異なります。香川県内でも食べられる店は限られますし、注文してから出てくるまでに時間もかかりますが是非実食を。
 どじょうが丸ごと入っていますが、柔らかく煮込まれているので野瀬さんの歯でも大丈夫だと思います。見た目で敬遠する人もいますが、目刺しやイリコを頭から食べるのと一緒です。たい焼きだって頭から食べるし。
 写真は去年さぬき市で行われた「どじょ輪ピックinさぬき」で撮影したものです。毎年11月の第3日曜日に開催され、去年で20回を迎えました。近隣の地区や大分から、12団体が参加し見た目や味を競います。一般の来場者から審査委員を募集していたので、つい応募してみたら当選してしまい会場の写真はあまり撮れませんでした。
 大きなイベントではありませんが、地元に密着したほっこりするイベントでしたので今年も行く予定です(Nさん)

煮込み用のうどん(A-changさん提供)
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煮込み用のうどん(A-changさん提供)

 うどんが入った「どじょう汁」を確か高松で食べたことがある。丸亀の鎌田醤油の中にある「讃岐醤油画資料館」を取材した帰りであった。事前に何も調べていなかったので、どじょう汁の中からうどんが出てくるとは思ってもいなかった。

 醤油画というのは現代アートの作家が醤油で絵を描くという架空のジャンルを創作し、あたかも実際にそのようなジャンルが形成されているかのようにしつらえた空間である。面白かった。

 次は金比羅さんのお菓子。

灸まん、まさにお灸の形
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灸まん、まさにお灸の形

MNo.30

 私が高松に住んでいたころ、よく掲げられていた単語が「わがかがわ」でした。急に思い出しました。
 まだ出ていないと思うのが、金比羅さん関係ですね。金比羅さんは門前町にたくさんのお店がありますが、唯一、門の中で営業ができる人たちがいます。
「五人百姓」という人たちがいて「加美代飴」という名のべっこう飴を売っています。
「かまど」は出ていましたが「灸まん」はまだでていなかったような。金比羅さんのお土産と言えば、今も昔も「灸まん」という感じがあります
「船々せんべい」は各社あります。

瓦せんべいにも希少糖
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瓦せんべいにも希少糖

 地元民の間では、紀伊國屋のが特に有名かなぁ〜。製造直売で、いわゆる「コワレ」も買えるので。
 せんべいといえば、高松に「瓦せんべい」というのがあります。めちゃくちゃ堅いです。近ごろは、高松市長さんの顔入りのができていて、高松に住んでいる友だちにいただいて食べたことがあります。
 また、高松にある「えびせんべい」も有名です。海老のエキスが凝縮されていて、それはそれは美味しいです。
 それから特筆すべきは、善通寺の門前にある熊岡菓子店の「カタパン」です。その名のとおり、とても堅いですし、懐かしい味わいです。
 お店自体もかなり古く、ディスプレーも昭和というか大正というか明治というか……時空を超えた旅をすることができます(たべびと・たにわきちはるさん)

熊岡菓子店(カラスダニ@松山さん提供)
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熊岡菓子店(カラスダニ@松山さん提供)

 前回書いたように私は小学校6年のとき、亡父に連れられて金比羅山に詣でた。それ以来、行っていない。つまり何も知らないに等しい。

 実食編のとき訪れてみたいが、あの階段は上れるのか。途中から籠に頼るかも。

 ところでどうして「灸まん」? 形がお灸に似ているから?

 熊岡菓子店も外せないみたいである。外観と店内の様子が素晴らしい。

 最後は飲み物。

オリーブサイダー(大阪の原さん提供)
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オリーブサイダー(大阪の原さん提供)

MNo.31

 小豆島の固有サイダー、本当は醤油サイダーの写真がほしかったのですがオリーブだけ出てきました。 味は意外とさっぱりで、脂くささはなく、それでいてオリーブの香りがするという品物。
 コンクールで知事賞受賞とのことなので一度お試しあれ(大阪の原さん)

うどん県からおんせん県へ
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うどん県からおんせん県へ

 いま私のデスク回りは暑い。サイダーか。いいなあ。

「最終回がピンチ」と書いたら、皆さん、いろいろ思い出したり古い写真を探したりして助けてくださった。ありがたことである。おかげで香川県編も大団円を迎えることができた。

 次回から大分県編である。ご関係の方はキーボードの前に!

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは恋するうどん県〜今年の香川の夏休みです。ぜひお読みください。

香川県編(その1) 湯船のうどんでお祝いだ

香川県編(その2) いりこをあぶってお酒にポン

香川県編(その3) 煮物の天ぷら、うどんにのせて


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2014年6月13日

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