第212回 大阪府ご当地グルメ(その1) 復活してくれ! スナックパーク

特別編集委員 野瀬泰申


大阪府

 食べBも残すところあと7都府県。いよいよ東京都、神奈川県に次ぐ日本第3の自治体、大阪府が登場します。
 かつて「天下の台所」を擁した地域だけに、伝統の郷土食からオフィス街のランチまで、様々なご当地グルメが登場しそうです。
 今週のおかわりは、東京・有楽町で大阪府の食べ物を一堂に集めたショップ「大阪百貨店」を紹介します
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(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい記事の県別一覧はこちら

ちょぼ焼、ソース&マヨ(ちりとてちんさん提供)
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ちょぼ焼、ソース&マヨ(ちりとてちんさん提供)

 今回から大阪府編である。大阪には都合7年半勤務した。最初の住まいは枚方市、次が西宮市、最後が大阪市の中心部、天神橋筋であった。

 阪神大震災のときは大阪社会部から福岡の西部支社に転じたばかりだった。もしずっと大阪社会部にいたなら、生きていたかどうかわからない。

 というのも当時の住まいは西宮市でも被害が大きかった夙川沿いにあって、震災後に住んでいたマンションを見に行ったら、周囲の木造住宅は灰燼に帰し、マンションも外観をわずかにとどめるだけだったから、無事でいるのは難しかったろう。

大阪名物が消えた…(ちりとてちんさん提供)
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大阪名物が消えた…(ちりとてちんさん提供)

 大阪では楽しいことも、そうでないこともあった。しかしながら久留米周辺と東京の一部しか知らなかった私にとって、大阪勤務時代は学ぶことが極めて多かった時代でもある。

 なにしろ「ソースで天ぷら」の光景を目の当たりにしたことが「食べ物 新日本奇行」から「食べB」に続く起点になったからである。

 大阪は私の人生を変えた。忘れがたい第二のふるさとでもある。

 皆さんとともに、そんな大阪の食を探るわけだが、前回の福岡県編に関して、読んでいただきたいメールが届いているので紹介する。

チロリアン
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チロリアン

MNo.0

 福岡ご当地グルメ最終回、楽しく読ませていただきました。
 さて、文中にチロリアンがなぜ生まれたのか分からない由を発見しましたので、小生の狭い知識の中から、伝え聞いたことをお知らせしたいと思います。
 千鳥屋本店のご亭主の奥様が、チロル地方に関連のある方で、日本に嫁いで今もご存命であるそうです。実際見た人の言によればべっぴんさんだそうです。
 千鳥屋は元は佐賀に店があったのを当時勢いがあった飯塚に移しています。これには長崎街道が少なからず影響しています。この街道を通じて西洋東洋の珍しいものが運ばれたわけで、その中には砂糖も含まれます。
 このように新しい文化にオープンな気質が昔からあったわけで、それが高じてチロルやドイツにまで自分から出かけてしまう。
 そうしているうちに女性と知り合いになって好意を抱く、そして結婚したいと思う。これ自体自然な流れなのですが、ご亭主の周囲から見ればとても破天荒な話です。その高いハードルを愛の力で乗り越えられたことはとても素晴らしく、筑豊に住むものとして誇らしいことです(林田さん)

「あそこ」のうどん
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「あそこ」のうどん

 現在放送中のNHKの朝ドラと似た物語があったということか。同社のHPには登場しない話であるけれど、あるいはそんなストーリーが隠されているのかも。

デスク 千鳥屋本店に電話してうかがったところ、奥様由来の「チロル地方の」という意味と同時に、千鳥を博多弁で発音すると「ちろり」で、それに餡子の「あん」を合わせてチロリアンなのだそうです。

 では大阪府である。大阪でよく食べたのがうどん。というか、そばはほとんど食べなかった。

松葉屋のおじやうどん
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松葉屋のおじやうどん

MNo.1

 大阪といえばうどんなのですが、意外と形態は様々。やわ腰、淡口が基本とはいえ、細いのから太いのまで多種多様です。
松葉屋(現うさみ亭マツバヤ):けつねうどんの元祖の店ですが、「おじやうどん」という変種があります。うどんの下におじやが眠る炭水化物攻めの一品。
あそこ:日本橋黒門市場のうどん屋。ここは太め。
二葉:日本橋黒門市場の製麺所兼うどん屋ですがここは細麺。プリプリしています。
桂ちゃん:長原のうどん屋ですが、ここも細麺。
千とせ:吉本の近所のうどん屋で「にくすい」の方が有名か? ここは太め。肉汁が染みて美味い(大阪の原さん)

二葉のうどん
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二葉のうどん

 松葉屋は奇行時代、オフ会で訪れた店。おじやうどんも食べたし、茶わん蒸しの中身がうどんという「おだまき(蒸し)」もいただいた。懐かしい。

 千とせは吉本興行本社に近い店。文中の「にくすい」は「肉吸い」のことで、肉うどんからうどんを抜いて吸い物にした。

 吉本のタレントが二日酔いでやってきて「今日はうどんはいらんが、出しは吸いたい」と言ったのでできたメニューだとか。これを吸いながら卵かけご飯を食べた。

桂ちゃんのうどん
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桂ちゃんのうどん

 何度も書いていることだが、大阪に初めてやってきてうどん屋に入ったときのこと。天かすを散らしたうどんが食べたくて「たぬきうどんを下さい」と言ったら「そばですね」と言われた。

「いや、うどんです」
「たぬきやったらそばやないの?」
「いや天かす入りのうどんです」
「なんや、素うどんかいな」

 このやり取りの意味はおわかりですね。

千とせのうどん
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千とせのうどん

 原さんからは膨大な量のメールと写真を送っていただいた。おいおい紹介する。

 大阪時代、社会部の忘年会か何かで食べたのが次に登場するものだった。鍋を覆う青い野菜の名を店の人に聞いたら「ハリハリでんがな」と言われた。水菜のことである。

鯨はりしゃぶ鍋(いけずな京女さん提供)
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鯨はりしゃぶ鍋(いけずな京女さん提供)

MNo.2

 大阪は「鯨喰い」の町でございます。捕鯨が盛んだったころ、鯨肉は安価で美味しい庶民の食材でした。
 そして江戸時代より一大消費地であった大阪は、「天下の台所」。土佐や紀州といった捕鯨地から、大量の鯨肉が供給されてきました。
 今でも黒門市場や天神橋筋商店街などでは、普通に鯨肉を売っています。捕鯨地でなくても鯨料理は、普通に家庭料理だったのです。
 阪急梅田駅前の「HEP FIVE」ビルには、巨大な真っ赤な鯨のオブジェがありますな。米米倶楽部の石井竜也さんのデザインです。
 南海なんば駅のなんばウォークには「くじらパーク」という広場があり、ここにも鯨のオブジェがありますな。大阪の人にとって鯨とはどんな存在であったのかを象徴していると、私は感じました。
 こちらは8年も前になりますが、大阪の重鎮同人様のはからいにより開催されました「鯨オフ会」の写真です。大阪・肥後橋で浪速の味を伝えて半世紀以上の「美肴&美酒 むらさき」にて。
 さまざまな鯨の部位と、名物「鯨はりしゃぶ鍋」をいただきました。美味しかったな〜(いけずな京女さん)

鯨いろいろ(いけずな京女さん提供)
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鯨いろいろ(いけずな京女さん提供)

 そう、私が食べたのは「鯨のハリハリ鍋」であった。そのとき初めて「尾の身」に出合った。子どものころ、久留米で鯨をよく食べていたが、凍った刺し身であったり、ジャガイモと煮たものであったり、高級な部位はまったく登場しなかったから、尾の身の柔らかさに驚いたものである。

 次のメールの場所にも何度か行ったなあ。

ちょぼ焼きのポン酢&マヨ(ちりとてちんさん提供)
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ちょぼ焼きのポン酢&マヨ(ちりとてちんさん提供)

MNo.3

 大阪と言えば、タイガース百貨店のスナックパークが有名ですね。建替工事のため、いか焼きなどの粉モンを残して、営業を終了してしまいました
 スナックパークには、オムライスや駅そば、カレーライス、豆腐茶屋があり、ワンコイン以下で早く・安く・美味いモンが食べられました。
 時間がない時、お金がない時、ちょっと小腹が空いた時、のどが渇いた時、どれほどありがたい存在であったか。
 建て替え後、スナックパークが復活するのかどうかは未定なんだそうですが、スナックパークは、空腹を満たすだけの存在ではなく、私は他府県に自慢出来る「大阪の文化」やと思いますので、ぜひ復活をしていただきたいと願っています。
 おぼろ豆腐丼と駅そばのきつね。注文してから、作ってくれるオムライス。小腹を満たしてくれた「ちょぼ焼き」。のどの渇きを潤してくれたミックスジュース
 タイガース百貨店の地下へ降りて行く階段横の壁には、アンモナイトの化石がいてますねん。これ、建て替えでどないなんねやろ?(ちりとてちんさん)

できたてオムライス(ちりとてちんさん提供)
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できたてオムライス(ちりとてちんさん提供)

 タイガース百貨店というのは阪神百貨店梅田本店のこと。本当にタイガース百貨店があると思う人がいるといけないのであえて書くのである。

 その地下のスナックパークには大阪に赴任早々、社会部の先輩に「行っとけ」と言われて出かけた。百貨店は高級なもので、飲食施設も高級とばかり思っていた私には、いか焼きとか駅そばとかが並ぶ一角はカルチャーショックであった。

 それもまた冒頭に書いた「学ぶことが極めて多かった」うちの一つであった。そんなスナックパークが事実上なくなってしまったとは残念至極。

 次のメールに登場する物件のことを知らなかった。弱点の甘味関係だったからである。

サンミー(電脳文化桃さん提供)
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サンミー(電脳文化桃さん提供)

MNo.4

 大阪で以前に見つけたものをお送りします。大阪にあるけど社名は神戸屋の菓子パン「サンミー」。時期によって、いろんなサンミーがあります。ちなみに4つの味のヨンミーもあります(電脳文化桃さん)

これは一味だ!
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これは一味だ!

 調べてみるとサンミーは古い菓子パンである。チョコ、ビスケット生地、クリームの「三味」のことらしい。だからもうひと味加わるとヨンミーになる。

 さらにひと味加わるとゴミになるので、加えない方がいいと思う。

 大阪在勤中、市内の中華の店を随分回った。九州人が目をむく「チャンポン」を捜索するためであった。

豚天
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豚天

MNo.5

 もうだいぶ前ですが、大阪の街場の中華を研究するため、近鉄や南海の各駅停車に乗って、気の向くまま駅で降りて、街を歩いて、気になった中華料理店を食べ歩いたり、知人に頼んで中華料理店の出前用のメニューを集めたりしたことがあります。
 東京の中華店ではあまり見かけず、大阪では当たり前のようにあったメニューに強く興味を持ちました。今でも覚えているのは「豚天」「豚の天ぷら」。他にも「小えびの天ぷら」など、天ぷらと名の付くメニュー群の存在感。
 そして、もう一つは「芋のあめだき」。大学芋みたいなイメージでしたが、これがどうして中華料理店にあるのか、まったくもってわかりませんでした。
 あと、中華料理店に限らず、街でよく見かけたのが「ポークチャップ」。豚肉はあまり食べないというイメージのあった大阪ですが、豚天や酢豚、ポークチャップなど、結構あるじゃないか、と感じたことを懐かしく思い出します(ミルフォードさん)

551蓬莱の豚まん
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551蓬莱の豚まん

 書かれているように、中華の店では豚肉が活躍している。中国で肉というと豚のことなので、そうなったのであろう。

 豚まんで有名な「551蓬莱」も中華の店であって、店内で提供される料理に豚肉が多用されている。当然か。

 それにしても、確かに大阪では豚肉の天ぷらをよく見かけた。言われてみればサツマイモのあめだき、大学いもが中華メニューになっているのも不思議と言えば不思議である。

 ああ、551の豚まんが食べたくなった。からしはいらない。酢醤油で豚まんが食べたい。

 ポークチャップはポーク+ケチャップではなく、ポークチョップのこと。元は米国のものらしい。

 大阪のお寿司。いまでこそ江戸前の握りが多数がだが、もともとの姿を伝える寿司も残ってはいる。

「たこ竹」の蒸し寿司(松山の坂本@もうすぐ富山さん)
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「たこ竹」の蒸し寿司(松山の坂本@もうすぐ富山さん)

MNo.6

「たこ竹」の蒸し寿司は、卵がふんわりしっとりして、中から温かいシャリ…きくらげと穴子がたっぷり。これ以上美味しい蒸し寿司が世の中にもしあるのなら、日本中どこへでも飛んでいきます。ああ、また食べたくなってきた(松山の坂本@もうすぐ富山さん)

蒸し寿司と相性がよい
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蒸し寿司と相性がよい

 蒸し寿司は「温(ぬ)く寿司」ともいい、関西以西の冬の味覚。ばら(ちらし)寿司をせいろで蒸した温かい寿司である。茶碗蒸しとの相性がよい。

 大阪の寿司は押し寿司、ばら寿司が主流であったが、戦争中に握り寿司に取って変わられる。はっきりした理由があるのだが、紙の新聞に書く予定があるので、ここでは省略。

 それにしても蒸し寿司を置く店が少なくなった。いまのうちに食べておきたいものである。

 今週の最後を飾るのは季節感あふれる、次のメールである。

若ごぼう(ヴィオニエさん提供)
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若ごぼう(ヴィオニエさん提供)

MNo.7

 春と言えど名ばかり、暖かい日差しを待つ今の時期にぴったりの大阪モノをご紹介します。
 まずはまさしく今が旬の「若ごぼう」。普通ごぼうは根の部分を食べますが、こちらは根っこはほんの少し。どちらかというと青々しい茎が身上です。
 一般的には私が作ったように、根と茎を薄揚げと炊いたり、きんぴらにしたり、炊き込みご飯にしたりしていただきます。
 フキとはちょっとまた違ったシャキシャキ感とやさしいごぼうの風味に、春を感じる食材です。
 この時期、デパートの野菜売り場や地元の市場の八百屋さんでは必ず置いていますが、全国区のスーパーではあまり置いていません。流通経路が違うのかな?
 以前この若ごぼうを東京の料理人さんへのお土産にしようと飛行機に持ち込もうとしたところ、保安検査で「これは何ですか!」と見とがめられ「ごぼうです」と答えたら絶句されたという思い出もあります。ごぼうを機内持ち込みする奴もそないおらんか…。

梅焼(ヴィオニエさん提供)
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梅焼(ヴィオニエさん提供)

 もうひとつ、季節が少しさかのぼりますが、大阪のおでんで欠かせないのが「梅焼」。
 この梅焼、以前「おでん」や「練り物」の特集でも紹介されていた通り、白身魚と卵を合わせた練り物で、ふわふわ、ほんのり甘いのが特徴です。寒い寒い冬、おでん鍋の中にこの梅を咲かせて、やがて来る春を待ちわびる…。
 いやいやどうして、大阪には粋(すい)なところもおまっしゃろ(ヴィオニエさん)

根と茎を薄揚げと炊いたもの(ヴィオニエさん提供)
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根と茎を薄揚げと炊いたもの(ヴィオニエさん提供)

 若ごぼうは別名「葉ごぼう」。八尾市の特産として知られる。大阪勤務時代、バブルのおかげでちょっとした店に入る機会があった。いろいろ出た最後に、青いものが混じったご飯が登場した。

 店の人に「これは何ですか?」と尋ねたら「ごぼうの一種でなんちゃらかんちゃら」という答えだったのだが、そのときはあまり興味がなくて酒の方に走ってしまった。ひょっとしてあれが若ごぼうだったのであろうか。

 ちゃんと味わって食べればよかった。反省。

 ということで、大阪府編の初回を美しい春の味覚で締めくくることができた。

 皆さんの大阪メールを待っている。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「大阪百貨店に行ってきました」です。ぜひお読みください。

大阪府編(その2) 「心の中にはあんた 口の中にはあんこ」(中山菓舗)

大阪府編(その3) イカ焼きそんなにおいしイカ

大阪府編(その4) 大阪の夏、あんペいの夏

大阪・京都府まとめて実食編 「飯炊き仙人」こんにちは


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年3月13日

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