第170回 石川県ご当地グルメ(その4) ノドグロ知らなきゃ赤っ恥

特別編集委員 野瀬泰申


あれも食べました(デスク)
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あれも食べました(デスク)

 先週の金曜から日曜まで広島県実食の旅に出かけた。

 広い県なので私が備後を、デスクが安芸を担当した。2日目に広島市で合流したデスクに聞いた。

「どこで何を食べたの?」

「えーっと、あそこで〇〇でしょ、でもって〇〇に移動して××を食べて、それから電車に乗って〇〇で▽▽。それから戻って◎◎、時間があったので……」

「だーかーらー、食べBは食べ歩きじゃないんだから、そんなに食べても仕方ないでしょう。もう少し旅の情緒とか……」

これも食べました(デスク)
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これも食べました(デスク)

 この点に関しては、決して交わることがない双曲線である。

 もっとも私が食べさなすぎかもしれないが。

 でも今回はちょっと自慢。極めてレアな物件をゲットした。それも1つではない。詳しくは後日。

 さて石川県編も最終回を迎えた。私の思い出の地の食。なのに知らないことがいっぱいだ。

温泉たまごソフトクリーム(お風呂大好きジジイさん提供)
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温泉たまごソフトクリーム(お風呂大好きジジイさん提供)

MNo.24

 石川県実食でぜひとも食べていただきたい加賀山代温泉の甘味を2点紹介します。
(1)温泉たまごソフトクリーム
 山代温泉の源泉掛流しの中で一夜つけて作った、白身は柔らかく黄身はほどよく堅い温泉たまごを1個そのままソフトクリームにのせて、地産醤油が少々かかっているソフトクリームです。
 いわゆる半熟たまごをのせたソフトクリームですので、最初はそんなの気持ち悪くて食えるかと思ったのですが、食べてみると風味ある温泉たまごとソフトクリームの冷たさとが醸し出すハーモニーは、全く異質なものが出合った時の驚きで「りくつなー(地元方言?)」。濃厚な味わいを感じさせてくれます。
 バニラ抹茶の2種類がありますが、私は抹茶を好んで食べています。

六方焼(お風呂大好きジジイさん提供)
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六方焼(お風呂大好きジジイさん提供)

(2)六方焼
 山代温泉で文政年間に創業した初代「惣八」から六代続く老舗菓子店「藤澤菓子店」の六方焼は、地場産のたまごを使い、餡は自家製。生地には水、添加物、着色料を使わず、生地作りから包餡、焼き上げまで全て手作りです。
 穏やかで優しい甘さで癖になる美味しさですが、時間帯によっては店の横で焼いていますので、焼き立てをもらうこともできます。
 私は3通りの楽しみ方をしています。焼き立てのときと、冷たくなってから、そして少し日が経って硬くなったら焼いて食べます。しかし少し多めに買ってきても硬くなるまで待てず食べてしまい、2通りの楽しみで終わることが多いですが(お風呂大好きジジイさん)

温泉たまご赤・白(お風呂大好きジジイさん提供)
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温泉たまご赤・白(お風呂大好きジジイさん提供)

 温泉たまごソフトクリームは、文面からすると奇をてらったものではなさそうである。あるいは奇をてらったが、出来たら意表を突く美味しいものになったのか。

 どちらにしろありそでうっふん、なさそでうっふんな物件である。

 六方焼は直方体の6面全部を焼くところからついた名前。そのまんまである。3通りの食べ方のうち、最後の食べ方に至る前に胃袋に入ってしまうところはかわいい。ジジイにかわいいと言って申し訳ないが、言っている方も相当のジジイなので許してね。

老舗の和菓子(お風呂大好きジジイさん提供)
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老舗の和菓子(お風呂大好きジジイさん提供)

 HNの「お風呂」はひょっとして山中温泉のお風呂? ならば羨ましい限り。金沢在勤時代の私はまだ20代で、温泉に興味がなかった。いまから考えると、あんなに温泉がたくさんある土地に住んでいたのにもったいないことをした。

 方言の「りくつなー」は「よくできている」みたいな意味でほめ言葉。

 以前、ドジョウの蒲焼きの話が出たが……。

ドジョウの蒲焼(ミルフォードさん提供)
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ドジョウの蒲焼(ミルフォードさん提供)

MNo.25

 金沢出身の父。他界直前の去るお盆のころ、最期の食の要求は「あ〜。蒲焼食べたい!」でした。
 もう口から何も摂取できない状態のため、願いを叶えてあげられませんでしたが、親戚に(もちろんドジョウの)蒲焼を金沢から持参してもらい、柩には一緒に入れてあげられました。
 お盆といえばこの季節、祖母がよく作っていたのは「コズクラの煮付け」です。コズクラは体長20cmほどのブリの幼魚で、全く脂がのっていないので、あっさり薄味加減で煮付けた品です。蒸し暑い時期にもスルッとのど越しよく食べられます。
 金沢では7月の新盆が一大墓参りイベントで、大木がうっそうと茂る丘全体が墓地の野田山墓地では、周辺が大渋滞になるほどの賑わい。
 各自が持参したキリコが墓石横に大量に吊り下がり、墓地なのにとても風情があります。このキリコ、なぜか八百屋でも売られています。お供え用の果物と同じカテゴリーだからでしょうか?(石川金沢系神奈川人さん)

八百屋でキリコ(石川金沢系神奈川県人さん提供)
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八百屋でキリコ(石川金沢系神奈川県人さん提供)

 蒲焼きといえば金沢ではドジョウの蒲焼きを指すのか。そういえばウナギの蒲焼きはあまり盛大に食べられていなかったような気もする。

 それにしても最後の晩餐がドジョウの蒲焼き。何だか人柄が偲ばれる。

「コズクラ」という文字を見て、頭の中で豆電球が灯った。確かにあったあった。食べた食べた。

 大阪では「ヨコワ」と呼ぶマグロの幼魚を食べるが、金沢ではブリの幼魚。土地柄の違いである。

 次のメールでも豆電球が灯る。

高齢者は知らない?(大阪の原さん提供)
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高齢者は知らない?(大阪の原さん提供)

MNo.26

 加賀地方は白山麓などを除くとうどんが優位に立っています。出しの色は関西風ながら、やや甘め。うどんには腰があまりありません。
 冬場には鍋焼きや卵とじうどんが好まれる傾向があるように思います。卵とじうどんには赤いのの字のカマボコが入っていることが多いです。
 とりわけ加賀地方の高齢者は加賀(金沢)カレーなど知らない人がほとんど。高齢者の外食・店屋物の定番は鍋焼きやうどん屋のラーメンという印象があります。有名店としては小松市の「中佐」があります。
 余談ですが、8番らーめんは石川県・富山県土着民以外には不評であることが多く、地元民でも頼りない味と思っている人も多いですが、ベースには加賀地方のうどんの味があるのではないかと思っています。
 高齢者で思い出しました。加賀市特有の慣習として預金講というのがあり、老若男女問わず参加していることが多く、かつてはその講仲間で葬祭まで取り仕切るのが普通でしたが、ここ20年ほどはそこまでの力はなくなっており、単なる定例仲良しグループ飲食会という性格になっているらしいです。
 しかし加賀市に飲食店が比較的多いのは温泉場があるからというよりは預金講需要があるからだという印象があります(YKヒルビリーさん)

土着民以外の評判は?(ぎずもさん提供)
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土着民以外の評判は?(ぎずもさん提供)

 前回書いたことをなぞると、私は大阪から金沢に転勤したので、うどんの出しが関西風であったり腰がなかったりということに違和感はなかった。うどん文化圏であることにも疑問を持たなかった。しかし、醤油が甘いせいで、全体にゆるーい印象を持ったことは事実である。

 8番らーめんが域外では不評かも、という意見も確かに聞いたことがある。野菜から出る甘みと甘い醤油のせいで、ゆるーい印象を与えるからではないか。

 スガキヤのラーメンと仲良くできそうな気がする。

仲良し?
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仲良し?

 それと最後の「預金講」、つまり「頼母子講」と飲食店の関係は、またしても民族学の視点であって、優れた指摘である。なるほどと思う。

 仏教の行事と和菓子の関係に続いて、地元の方ならではの内容であった。

 地元以外の方からのメール。

京都のにしんそば
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京都のにしんそば

MNo.27

 私が赴任した当時、富山の拠点は出張所でした。そのため会議や学習会でときどき金沢に行くことがありました。会議の後、懇親会があることも多く、そんなときは北陸本線で往復したものです。
 懇親会も終わり、富山に向かう列車時刻にはちょっと間があるというので駅の立ち食いそばに入ったときです。「にしんそば」の品書きが目に入ったので、注文しました。
 出て来たものの見かけはほぼ予測通りでしたが、味はそれまで関東風のそばしか知らなかった私には想像外でした。大雑把な言い方をすれば、関西風でした。
 その後、福井県でいただいたそばなどはそれに比べると関東に近いように感じました。ひょっとすると、北陸の中でも金沢だけが関西風味の飛び地なのでしょうか?(太ったオオカミさん)

加賀友禅の小物入れ
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加賀友禅の小物入れ

 加賀友禅のように、金沢と京、上方の関係は深い。

 にしんそば自体、鮮魚が手に入らなかった京で好まれたものであって、それがうどん文化圏で、なおかつ鮮魚豊富な金沢にあることもまた、京との距離感の近さを裏付けるものであろう。

 昔は北国街道、いまは高速道路と北陸本線で京とつながっている。途中の福井でどうなのかは福井県編のときに考えよう。

ハントン風ライス(ぎずもさん提供)
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ハントン風ライス(ぎずもさん提供)

MNo.28

 金沢の3大B級ご当地グルメは、ハントンライス、第7ギョーザ、8番らーめんでしょうか。もっとも近年は、8番らーめんにかわり、金沢カレーを入れる説も多いようです。
 ハントンライスはケチャップライスに薄焼き玉子で基本的にはオムライスですが、エビフライとマグロフライをのせタルタルソースをかけるのが特長です。
 老舗グリルオーツカの「ハントン風ライス」はフライが転げ落ちないよう、卵が生焼けのうちにフライをのせて決着してありました。
 8番らーめんは、のの字かまぼこならぬ「8」番なるとがのってるのがオシャレ?でした(ぎずもさん)

デスクが食べたタンバルライス
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デスクが食べたタンバルライス

 デスクはハントンライスに興味津々ではないだろうか。実食編のとき、カレーと一緒に本場モンを食べさせるけん、待っとってね。

デスク すでに「タンバルライス」まで食べてるんですけど、あの有名店で…。

 最後はこれ。

のどぐろLOVE(大阪の原さん提供)
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のどぐろLOVE(大阪の原さん提供)

MNo.29

 ともかく「のどぐろ」「のどぐろ」「のどぐろ」。茶漬けに「のどぐろ」。のりの佃煮にも「のどぐろ」。一夜干し、にぎり寿司も「のどぐろ」。
 のどぐろ含有率が世界一の地帯です。この「のどぐろLOVE」の文化的背景はいかに?(大阪の原さん)

黒いのか赤いのか?(大阪の原さん提供)
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黒いのか赤いのか?(大阪の原さん提供)

 ノドグロの標準和名は「アカムツ」。黒いのか赤いのか、どっちかにしてくれ。

「食材図典 地産地消篇」は「どのようにして食べてもおいしい」と珍しく主観が入った書き方をしている。ともかく美味しいからLOVEなのであろう。

 石川県編はこれまで。

 次回はデスクによると休載だそうである。

いまや山梨県の顔?
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いまや山梨県の顔?

デスク 来週の金曜日、21日が春分の日のため食べBはお休みです。僕と野瀬は「2014関西・中国・四国B−1グランプリin府中」のため、広島県へ逆戻りです。そして3月最終週は、冒頭で話題に上った広島県実食編です。

 その次から山梨県編に突入する。東京の隣の県である。甲府には取材その他で何度も行っているが、周辺は私にとっても未知の土地。果たしてどんなものが食べられているのか。

 皆さんからのメールを待つ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「関西・中国・四国B-1グランプリin府中、開催へ」です。ぜひお読みください。

石川県編(その1)  「金沢カレー」でホームラン

石川県編(その2) 金沢おでんでバイ貝しだ!

石川県編(その3) スギヨのカニカマ、大好ぎよ

石川県実食編 山代の総湯でヒマこく独り旅


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2014年3月14日

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