第45回 兵庫ご当地グルメ(その2) そばめしのめしぬきめしあがれ

高砂にくてんが結ぶ人の縁(一芸)


高砂にくてん
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高砂にくてん

 兵庫県の瀬戸内海沿い、姫路市と加古川市の間にある高砂市。結婚式で歌われる「高砂や この浦舟に 帆を上げて」という謡曲が登場する能の舞台として知られています。

 ここでB級ご当地グルメによるまちおこしを進めているのが「高砂にくてん喰わん会」です。皆様からのメールにもあるように「にくてん」とは兵庫県内のいくつかの地域で昔から食べられている、スジ肉などが入ったお好み焼きの一種。薄くのばした小麦粉の生地の上に具材をのせていく「重ね焼き」タイプで、高砂ではジャガイモが入るのが特徴です。

◇      ◇

高砂にくてん喰わん会の北野弘司さん
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高砂にくてん喰わん会の北野弘司さん

 にくてん喰わん会の立役者、北野弘司氏さんは95年ごろからにくてんを地域の名物にできないか、と考えていたそうです。高砂はあなご焼きが有名ですが、主に持ち帰り用に売られているため、あなごを食べに高砂へどうぞとは呼びかけにくい。その点、にくてんなら市内の多くの店で食べられるから地域の活性化につながるはず、と考えたのでした。

 長年温めてきたアイデアが具体化したのは2003年。商店街活性化の起爆剤はないかという議論の中で、それならにくてんでどうだ、と話が決まります。しかし2004年になり、活動費として当てにしていた自治体からの補助金が得られないことが判明しました。

 いきなり逆境に立たされた北野さん。高砂市内にある兵庫県立松陽高校の教員に相談を持ちかけました。商業科の実習として、生徒たちにまちおこしを体験してもらってはどうか――。高校側がこれに応じ、ついに活動が本格的にスタートしたのです。

 若い感性と行動力、そしてITスキルによってにくてんマップやウェブサイトが完成。高校生が中心になってまちおこしを進めている、ということでメディアにも注目されました。その後B級グルメでまちおこし団体連絡協議会(愛Bリーグ)にも加盟。B−1グランプリにも第2回(富士宮市で開催)から連続出展し、次第に知名度を上げてきています。

高砂にくてんの断面にはスジ肉やジャガイモが顔をのぞかせる
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高砂にくてんの断面にはスジ肉やジャガイモが顔をのぞかせる

 他のまちおこし団体を訪問し多くを学んできた北野さんは、愛Bリーグをはじめとした、まちおこし団体同士のヨコ連携にも積極的です。昨年11月に発足した、鳥取・広島・兵庫の牛肉料理によるまちおこし連携プロジェクト「県境なき牛団(うしだん)」にもにくてん喰わん会が名を連ねました。

 ここまでのまちおこし活動の成果を聞くと「うーん、とりあえず『にくてん』と聞いて肉の天ぷらだと思う人は少なくなりましたね」と笑う北野さん。「2003年から数えて8年目ですが、ようやく成果が出始めてきた段階。この世界はそう簡単に花が咲き、実を結ぶものではありません」と気を引き締めますが、県外からもにくてんを求めて観光客が訪れるようになりました。国際線の機内誌に掲載されたにくてんの記事をヨーロッパで読み、懐かしくなって食べに来た、という人もいたそうです。

梅谷陽子さん
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梅谷陽子さん

 喰わん会の趣旨に賛同し、協力する人も増えてきました。高砂にくてんのテーマソング「にくてん た・べ・た〜い」を歌う、梅谷陽子さんもその一人。梅谷さんは主に関西で活動しているシンガーソングライターです。食のイベントを通じて知り合った北野さんから「にくてんの歌を作ってほしい」と依頼されたのは2008年のこと。すぐに快諾しましたが「歌詞はにくてんへの想いがある人が作ったほうがいい」と伝えました。そこで作詞は北野さんが担当することに。



  高砂に おいしいもんを 食べに来て
  アナゴに並んでにくてんや
  こどもも大人も集まって
  コテを片手に フゥー フゥー フゥー

 「にくてんの鉄板を囲む人たちの情景が、聴いた人の目に浮かぶように歌っています。北野さんからは『まだまだやな』って言われるけど(笑)」。この曲を歌うことで、地元の人から「ありがとう」と言われたり、市外の人が「こんど高砂に行ってみようかな」と話しているのを聞くのが嬉しい、と梅谷さんは話します。

 「町の人が『高砂は昔のような勢いがない。子供たちの世代には、この町はどうなってしまうんだろう』と不安を語るのを耳にします。自分は何もできないけれど、でも自分にできることで協力したい。景気が悪くても、人口が減ってしまっても、町の大切なものを守ろうとしている人がいるのは素晴らしいことではないでしょうか」。梅谷さんは昨年11月に新曲「高砂駅」もリリースし、高砂とは一層強いきずなで結ばれています。

 またあるイベントでは、富士宮やきそば学会・渡辺英彦会長のギター、鳥取とうふちくわ総研のイワミノフ・アナミール・アゾースキー氏の「とうふるーと」(ちくわで作ったフルート)と梅谷さんのキーボードで、B級ご当地グルメ関係者3人によるセッションも実現しました。音楽を通じて、まちおこし団体同士の交流にも協力しているのです。

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能「高砂」に登場する尉(じょう)と姥(うば)の石像(JR宝殿駅前)
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能「高砂」に登場する尉(じょう)と姥(うば)の石像(JR宝殿駅前)

 1988年に「ブライダル都市宣言」をした高砂市。市のホームページによれば、結婚だけでなく、広く「愛・長寿・和合・平和」をまちづくりのテーマにする、ということのようです。

 にくてん喰わん会の活動も、高砂に住む人々をはじめ、高校生や教員、アーティストなど、様々な人の協力を得ながら続いてきました。他のまちおこし団体との連携も始まりつつあります。

 地域おこしは多くの人の協働があってこそ成り立つもの。人と人との縁を大切にする高砂が、その先頭に立つ日もそう遠くないかもしれません。



食べB修行記、今週のリポート一覧


■兵庫B級グルメ
・その1 丼たこ焼きにコウベを垂れるSNSで発掘、B-1へ 世界を目指す姫路おでん
・その2 そばめしのめしぬきめしあがれ高砂にくてんが結ぶ人の縁(一芸)
・その3 チワー、宅釘煮便です!佐用、水害からの復興とホルモン焼きうどん(一芸)
・その4 佃煮への認識をアラ!ためたい静岡県VOTE結果
・最終回 神戸ではパンを頻パンに食べる食べBなもの探検隊・姫路タウン編(一芸)


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