第239回 和歌山県ご当地グルメ(その4) なれ鮨vs湯浅の醤油

特別編集委員 野瀬泰申


和歌山県

 いよいよ和歌山県編も最終回です。
 海から山まで、実に多くの話題で盛り上がった和歌山県の食ですが、最後は海を越え、話題は海外にまで至ります。和歌山県とあの国との関係とは?
 今週のおかわりは、10月3−4日に開催されたB−1グランプリin十和田の模様をデスクがお伝えします
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ゴミはありませんか?
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ゴミはありませんか?

 10月3、4日、青森県十和田市で第10回B−1グランプリが開かれた。詳しくはデスクが「おかわり」で紹介するが、町中の至る所でボランティアが活躍し、市民あげて大会を成功に導いてくれた。

 中でも小学生と中学生が会場案内やゴミの回収を担ったほか、郊外の駐車場など縁の下でも支えた。

 歩道に並ぶ小学生の3人組に声をかけると、用意した大きな紙に書いた絵や文字を使って十和田の魅力を紹介してくれる。後ろでそれを見守る母親は、本当にうれしそうな笑顔を浮かべていた。

記念写真、撮りませんか?
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記念写真、撮りませんか?

 人口6万人の町なのにボランティア総数5500人。実に10人に1人の割合であった。感動した。

 では本編。前回予告した和歌山とトルコの関係について紹介しよう。

かげろう(ちりとてちんさん提供)
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かげろう(ちりとてちんさん提供)

MNo.25

 阪急梅田駅の改札内に期間限定ショップとして、こんなのが。そこで、「かげろう」というお菓子を買いました。口に入れると、ふわ〜、とろ〜と溶けるはかなくて上品なお菓子です。
 この日は、生クリームを挟んだ「生かげろう」が売られていましたが、消費期限が短かったため、購入を断念しました。
 それから、食べ物ではありませんが、トルコの軍艦エルトゥールル号が串本沖で難破した時の救助活動を忘れず、100年近く経った1985年のイラン・イラク戦争でトルコ航空の飛行機2機が、テヘラン空港にいた日本人全員を救出して下さいました。
 命を掛けての「恩返し」。私たちは、できるでしょうか?
 串本沖では、今も遺品発掘調査は続けられているそうです。
 桂春蝶さんが、この実話を落語に仕立て高座に掛けられています。涙腺が崩壊します(ちりとてちんさん)

はかなくて上品なお菓子(ちりとてちんさん提供)
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はかなくて上品なお菓子(ちりとてちんさん提供)

 この話を地元の方に教わろう。

エルトゥールル号殉難将士慰霊碑(和ちゃん提供)
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エルトゥールル号殉難将士慰霊碑(和ちゃん提供)

MNo.26

 日本とトルコの友好の歴史の原点は和歌山県串本町にあります。
 1890年、トルコ軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県串本町大島沖で遭難、当時の樫野村(現串本町)の村人が献身的に救助したことが始まりなのです。以来、両国の交流が125年間続いているのです。
 トルコでは教科書にエ号の遭難事件の話が掲載されるなどずっと語り継がれているので、親日家の方も多いといいます。
 イラン・イラク戦争でもテヘラン空港に足止めされた日本人を救出してくれたのはトルコ航空機でした!
 串本町でもトルコとの友好の絆は語り継がれています。遭難現場近くの樫野の丘に建てられた「エルトゥールル号殉難将士慰霊碑」は今も串本町立大島小学校の児童により美しく保たれています。小学校では、追悼歌を50年以上前から代々受け継いでいて、式典などで歌われています。

「トルコ記念館から見た樫野の海(和ちゃん提供)
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「トルコ記念館から見た樫野の海(和ちゃん提供)

 また、友好の証として慰霊碑の近くには「トルコ記念館」が建設されています。館内にはエ号の模型や遺品、写真などを展示。今年6月、日本とトルコ友好125周年を記念してリニューアルオープンされました。他にも125周年の友好記念事業として、エ号が座礁した樫野崎へ続く約500mの県道が「エルトゥールル通り」と命名されるなど、串本町民もトルコを身近に感じています。
 12月5日はこの両国の友好の絆を描いた映画「海難1890」が公開されますが、2月に行われた串本ロケでは約190人の住民がエキストラで出演、撮影現場では地元有志による炊き出しも行われました。
 エ号遭難の際に結ばれた両国の絆は、現代に到まで受け継がれています(和ちゃん)

串本町のトルコアイス(おすぎちゃん提供)
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串本町のトルコアイス(おすぎちゃん提供)

 落語になり、映画になる。

 いろいろ政治的背景もあった遭難事件だが、1890(明治23年)の串本の漁師たちは偉かった。語り継がれてしかるべき出来事である。

 当時はトルコではなくオスマン帝国。

 そんでもって「おすぎちゃん」から「本州最南端の串本町にある小さい島、大島でトルコアイスが食べられるのをご存じですか? 陽気なトルコ人のご主人が作っていて、ビョーンと伸びる楽しいアイスです」というメールをいただいている。日本とトルコの友好のあかしみたいなアイスである。

 さて、和歌山ラーメンはすでに有名だが、御坊市も激戦区だという。

「らぁめん たんぼ」の醤油ラーメン(ゆきさん提供)
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「らぁめん たんぼ」の醤油ラーメン(ゆきさん提供)

MNo.27

 和歌山県内ではひそかに、御坊市が「ラーメン激戦区」といわれています。
 私が一番好きなのは、「らぁめん たんぼ」さん。名物の醤油ラーメンは、あっさりとしながらもコクのあるスープ。生醤油を使用した濃い色です。
 その他のメニューも、どれもすばらしく、辛いもの好きな私は2種類ある担々麺もオススメします。黒ごまを使用した「黒担々」と、通常の「赤担々」。どちらもスープを飲み干したくなります。
 その他にも、濃厚なラーメンで行列のできる「BIRD MAN」さん。
 とんこつラーメンで有名な「ラーメン家族ありがとう」さん。
 横浜家系ラーメンの絶品は「斎家」さん。
 地元では古株で、行列の絶えない「幕末」さんなどなど。
 ラーメン好きの方は、ぜひ食べ歩きに来てみてください(ゆきさん)

「ラーメン家族ありがとう」のとんこつラーメン(ゆきさん提供)
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「ラーメン家族ありがとう」のとんこつラーメン(ゆきさん提供)

 メールを読む限り、和歌山ラーメンのような統一性はないようであるが、和歌山県民は相当なラーメン好きであることがよくわかる。

 とんこつラーメンにちょっと興味あるな。

 次のメールを読むと、和歌山と抹茶の関係は意外に古いことがわかる。

グリーンソフト(ねこもふりさん提供)
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グリーンソフト(ねこもふりさん提供)

MNo.28

 世界初の抹茶ソフトクリーム!?「グリーンソフト」。
 和歌山市内で営む安政元年創業のお茶屋さんが作る抹茶ソフトクリームです。
 売上が落ちる夏場に、何かいい商品がないかと発明好きの先代社長が昭和33年に開発。
 当時は抹茶入りの食品はなかったので世界初の抹茶ソフトだとか。
 このソフトクリーム、抹茶の香りと味だけではありません。普通のソフトクリームより“硬い”んです。硬いことによって、舌の上に留まりスーッと溶けるので、サッパリ、それでいて抹茶の風味がしっかり味わえます。
 和歌山県内ではスーパーやコンビニで販売しているところもあるので、ぜひ一度食べてみてください(ねこもふりさん)

有楽町にあったりして…(デスク)
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有楽町にあったりして…(デスク)

 この種のソフトは好きである。元祖抹茶ソフトであるなら、なおのこと食べてみたい。隠れた和歌山名物に違いない。

 デスク、和歌山に行ったらスーパーで探そうね。

 連載を伝統食で締めくくりたい。

 まずは600年以上、正月に餅を食べなかった里の話。

ぼうり(田辺市大塔観光協会提供)
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ぼうり(田辺市大塔観光協会提供)

MNo.29

 田辺市の旧大塔村内にある小川(おがわ)という地区は「餅つかぬ里」と呼ばれていて、600年間お正月にお餅を食べなかったという歴史があります。お餅の代わりに食べたのが、サトイモの親芋を皮ごと甘辛く煮付けた料理、「ぼうり」。
 時は鎌倉時代、後醍醐天皇の王子・大塔宮護良親王が鎌倉幕府の執権北条氏を討伐するため立ち上がったが、結局北条方に追われる身となり、この地に山伏姿で逃れてきます。空腹に耐えかねた親王が村人に食べ物を求めたとき、北条方の「山伏姿の落ち人には食事を与えてはならぬ」という厳しい沙汰により、祭りの準備で粟餅を作っていた村人は一切分けてあげませんでした。
 親王が亡くなった後に、そのときの山伏一行が親王であったことを知った村人は、そのことを悔やみ恥じて、今後餅をつかないと決めたそうです。
 600年後の昭和10年夏、京都の大覚寺で大塔宮600年祭が行われた際に、大塔村の村人は粟餅600個をお供えして先祖の不敬を詫び、謹慎を解いたそうです。それでも実際にお餅を食べるようになったのは戦後なのだとか。
 「ぼうり」はお餅の代わりということで、ちゃんとお雑煮のお椀によそうのだそうです。かわいらしい姿にほれぼれ。
 見た目はインパクトあります。デカいです。食べてみるとしっかり煮込んだ芋のやわらかさが口当たり良く、お雑煮にはない甘辛い味が今では知る人ぞ知る、といった存在になっておりますが、こういう郷土料理は語り継いでいきたいものですね(金ちゃん)

B−1グランプリで提供された大曲納豆汁
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B−1グランプリで提供された大曲納豆汁

 「ぼうり」はいまも食べられているのであろうか。店では出していないだろうから、親戚でもいないと実食は無理か。

 餅つかぬ里の伝承を読んで思った。伝承が本当なら、里人はなんと実直なのであろう。そうでないなら、正月に餅を我慢する理由付けとして大変よくできている。

 そういえば秋田県横手市辺りでは雑煮餅ではなく納豆汁であった。餅はつくけど。

古座川の芋餅(豊下製菓の豊下さん提供)
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古座川の芋餅(豊下製菓の豊下さん提供)

MNo.30

 阪神淡路大震災に遭った年の春からおよそ8年をかけて熊野街道を歩き繋ぎました。
 大阪側の山中渓から「琵琶ケ岸懸(びわがけ)」を抜けると紀ノ国に入ります。
 ここからは同じ和歌山なのに峠ごと、川筋ごとに食べ物を含めた風習が微妙に違ったり、極端に違ったりするのが非常に興味深かったものです。
 基本的に耕地が少なく、海辺や川辺からすぐに山林へと続きます。米は貴重品、傾斜地では果樹栽培、サツマイモやジャガイモは味より収量優先、山の幸や水産資源も有効活用しないと生活のできない厳しい土地柄は共通しているようです。だから湿潤な気候と相まって熟れ鮨が発達したのかもしれません。
 ウツボは手間暇かけて下処理をして干物にします。今はもう絶滅しましたが、田辺には山芋をサワラで包み縄で巻いた「縄巻き寿司」という米を使わない熟れ鮨もありました。
 茶粥や里芋類や山芋も常食し、芋餅をつくったり、産卵後のアユを干物にして雑煮の出しに使ったり、シシや熊なども利用します。だからそんなに広くない地域ごとに、豊かで個性的な食文化が生まれたのではないかと思います(豊下製菓の豊下さん)

練物を貼り付けたきずし(豊下製菓の豊下さん提供)
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練物を貼り付けたきずし(豊下製菓の豊下さん提供)

 熊野古道はまだ歩いていない。しかし東海道を歩いた経験からすると「峠ごと、川筋ごとに」食べ物や習俗が変化するというのはよくわかる。

 このメールは文化を比較する鋭い視点を持っている。

 さあ、連載最後のメールである。と書いて感無量。終わるんだなあ。

弥助寿司のなれ鮨(大阪の原さん提供)
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弥助寿司のなれ鮨(大阪の原さん提供)

MNo.31

 湯浅町は日本の醤油の誕生の地といわれる町。醤油工場の博物館を見学し、2年熟成の濁り醤(ひしお)を入手しました。3年物は夏には売り切れたので、12月に次の3年物が仕上がるまでは品切れとのこと。
 それを手に和歌山市の弥助寿司さんに行きました。これまでに、フランス製ウォッシュチーズ(塩水で洗って熟成。臭い)や「クサヤの干物」「フナ寿司」などを食べてきた経験を持つ私ですが、この匂いは強烈でした。フナ寿司系の香りですが、別の匂いが混じっています。
 実は私は菖蒲湯の匂いが嫌いで端午の節句の時には絶対に入らないのですが、このなれ寿司は菖蒲の葉に似たアセの葉で包まれていて、その匂いが付加されているのです。ハーブの香りで臭みを打ち消すはずの工夫が、私にとってはマイナスに働いたのです。

2年熟成の濁り醤(大阪の原さん提供)
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2年熟成の濁り醤(大阪の原さん提供)

 うえええええ。敵は連合軍で攻めて来ました。こちらの味方は生ショウガのみ。ガリガリと辛い生ショウガは一服の清涼剤ですが、強力な臭みを消すには明らかに力不足です。
 戦いは孤独だ。味方は? 味方は誰かいないのか? よろめく私。そのとき颯爽と現れたのが「湯浅の濁り醤」でした。
 そうです。湯浅で購入したあの2年熟成の濁り醤です。薫り高い心強い奴。
 「第7騎兵隊到着!」。私は濁り醤を数滴たらしました……をを?! 香ばしい香りが臭みに勝つぞ! パクパク。
 かくして私は、なれ寿司との戦いに勝利したのです。しかし、これからも苦しい戦いはきっと続くことでしょう(大阪の原さん)

醤油工場の博物館(大阪の原さん提供)
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醤油工場の博物館(大阪の原さん提供)

 湯浅の醤油と伝統のなれ鮨を登場させ、両者を絡ませながらフィーチャーしたところが良かった。

 「第7騎兵隊」は古い。古いが私にはわかる。

 次回は神奈川県実食編。その後は、宮崎、福井、和歌山各県の実食編を随時掲載し、最後は東京を舞台にした特別編をやろうと思う。

 詳細は改めてお知らせします。

 ではこれにて通常スタイルの連載は終了する。

 幕を下ろす準備をしなくちゃ

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「人が変わればまちも変わる〜B−1グランプリin十和田」です。ぜひお読みください。

和歌山県編(その1) 「じゃばら」は自腹で買いましょう

和歌山県編(その2) 祝! 近大水産研卒業

和歌山県編(その3) 紀州はスシの国ですし

和歌山県実食編 君にこのシラスを知らすたい


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年10月9日

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