第101回 岡山県ご当地グルメ(その2) デミカツ食べて「デミ活」だ

特別編集委員 野瀬泰申


 日生(ひなせ)のカキオコ、笠岡のラーメンが登場し、早々に盛り上がりを見せている岡山県編。2回目となる今回も、皆さんからたくさんの情報が寄せられました。いよいよ県庁所在地・岡山からも全国的に有名になっているあのB級ご当地グルメが登場します。そしてさらに、話題は県北の津山へと広がっていきます。乞うご期待。
 今週のおかわりは、デスクが10月に開催されるB−1グランプリin北九州の最新情報をリポートします。あわせてご覧ください。
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京の夏の味、ハモの冷しゃぶ
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京の夏の味、ハモの冷しゃぶ

 先週末は京都だった。紙の新聞の取材である。その夜、お茶屋さんに上がって芸妓(げいこ)さんと舞子さんを呼び、季節の料理に舌鼓を打ったのだった。

 いやそうしたかったのだった。いやいや、できるわけがないのだった。

 でもちょっとおしゃれな店で夕食をいただいた。

 この時期の京である。ハモは外せない。というので出てきたのがハモの冷しゃぶ。手が込んでいるのだが、申し訳ない。ハモは苦手。ほぼ「見るだけ」に終始した。

 てなことを書いていても仕方がない。毎回デスクが、書き出しのところに合う写真を探して右往左往するので、前置きは短い方がいいだろう。早速本題に入る。

 前回、情報提供を呼びかけた「法事パン」について。

法事の後は拷問?
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法事の後は拷問?

MNo.9

 妻の実家は県中北部の美作市です。法事のあんパンは必須のようです。
 うちでも法事の後は拷問のように毎日あんパンを食べ続けます。妻に聞いても「これがあたりまえ、嫌いでも食べろ!」と言われるだけです。
 法事パンについては、ちょっとお年寄りに取材をしてみようと思います。
 私(福岡出身)は法事のお菓子と言えば「マルボウロ」が大好きでした(ぽんすけさん)

津山で見た法事パンのPOP
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津山で見た法事パンのPOP

 「法事パン」といっても何のことかわからない方が多かろう。中国地方の山間部から日本海側にかけて広がる文化で、私は岡山県津山市に行ったとき商店街のパン屋さんの貼り紙で存在を知った。

 その後、調べてみると島根や鳥取にも共通のものがあることがわかった。

 要するに法事に来てくれた人に持ち帰ってもらうのが「まんじゅう」ではなく「パン」なのである。それもあんパンやクリームパンが定番らしい。昭和30〜40年代に定着したものと見られるが、詳しいことはまだこれからである。

境港にも法事パン(nozakiさん提供)
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境港にも法事パン(nozakiさん提供)

MNo.10

 境港のスーパーの中にあったパン屋のPOPです。これから定番はあんぱんとクリームパンで、もらって嬉しいのが食パンということが伺い知れます(nozakiさん)

 島根県に接する鳥取県境港市でも同じ傾向である。

ももタンク(ぽんすけさん提供)
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ももタンク(ぽんすけさん提供)

 ぽんすけさんのメールには「法事のお菓子といえばマルボウロ」とある。ということは福岡にも法事パンならぬ法事菓子の文化があるということか。

 能登半島の先端にある石川県珠洲市の葬儀に出たとき、祭壇のまわりにお菓子や果物の缶詰が入った籠がずらりと並んでいた。私はもらわなかったが、数からいって参列者に配るのであろう。

 法事と食べ物。地方によって実にさまざまである。

 ぽんすけさんのメールには前段があった。

白桃(ぽんすけさん提供)
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白桃(ぽんすけさん提供)

 岡山県桃の里赤磐市に住んでおります。今まさに、白桃の出荷最盛期です。立派な物は庶民の口に入りません。ほぼ贈答用です。うちでも友だちのご実家がやっている果樹園から、大切な方にだけ送っております。
 ですが、規格外品は直売所に行けば安く買えますし、ご近所さんにおすそ分けをいただくことも多々あります。
 この香り・このとろける甘さ、一口目には必ず歓喜の声が出てしまいます。春には桃の花で山一面がピンク色に染まり、それは見事なものです。
 桃はお盆すぎまでの短い季節しかありませんが、そのあとはピオーネ、マスカット、新種の桃太郎ぶどうが待っています。

 岡山の桃は高級品。もっぱら贈答用である。

 岐阜県編に登場した柿の位置付けを思い出す。

デスクが渋谷で食べたえびめし
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デスクが渋谷で食べたえびめし

MNo.11

 岡山の「えびめし」を取り上げてください。近ごろ岡山に出張でよく行きますが「えびめし」が“名物”らしいことに最近ようやく気がつきました。
 とはいうものの、いつも岡山駅前のキープ焼酎の安い店で足が止まってしまい“名物”にたどり着けません。ぜひ「えびめし」レポートをお願いします(福岡発鹿児島経由東京着40代中盤男性さん)

スパイシー
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スパイシー

 「えびめし」は昭和30年、渋谷に開店したカレー店「いんでいら」で誕生したというのが定説。そこで修行した人が岡山で広め、いまでは岡山名物になっている。

 ルーツはどうかというより、岡山での定着ぶりを見れば、いまや立派な岡山の食である。

 黒くてスパイシーなエビ入りピラフという洋食のようでありながら、錦糸卵をトッピングするところはどこか和風。

 私はかつての「いんでいら」赤坂店で食べたが、うっすらと汗をかくほどスパイスが効いていた。

 福岡発鹿児島経由東京着40代中盤男性さん、今度岡山に行ったら先にえびめしを食べて、それからキープ焼酎の安い店に入ることをお薦めします。悪酔い防止にもなるかも。

 えびめしと双璧をなす、岡山のライス物。

えびめしVSデミカツ(松山の坂本さん提供)
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えびめしVSデミカツ(松山の坂本さん提供)

MNo.12

 えびめし初体験はホテルの朝食バイキングでした。ソースが濃い目で、スクランブルエッグをのせて食べると大変美味しかったです。
 錦糸卵をのせるのがスタンダードらしいけど、スクランブルエッグの方が上品で美味しいと思う。
 2011年9月、岡山出張の帰り、いかにも最近出来たとおぼしき駅弁を購入しました。
 「えびめしVSデミカツ 岡山2大名物 夢の競演」
 2大名物 !そうだったのか!
 私のなかでは「カキオコ」と「ひるぜん焼きそば」だったぞ!
 デミカツの下の薄い卵焼きシートをはがすと、えびめしが現れた。
 これは「デミカツvsえびめし」というより「デミカツonえびめし」ですね。
 特に可もなく不可もなく。やっぱり駅弁って色々入ってないと途中で飽きますね。幕の内が廃れないはずだ(松山の坂本さん)

デミカツonえびめし(松山の坂本さん提供)
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デミカツonえびめし(松山の坂本さん提供)

 「デミカツ」はドミグラスソースがかかったカツ丼。岡山市内で特異的に食べられている。

 「デミカツ丼」「ドミカツ丼」、単に「カツ丼」とも呼ばれる。

 昭和6年創業の「味司 野村」が発祥の店として知られている。

 「総合食品事典」によると「フランス語の<ドミ(demi)>は半分、<グラス(glace)>はごく濃い肉汁が煮つまった光沢のあるにこごりの状態をさし、<ドミグラス>とはグラスより薄く軟らかであるという意味」。

 ただしこれはフランス料理のソースのことであって、岡山のカツ丼に使うドミグラスソースは別の製法。でないととんでもない値段になるし。ご飯にも合わないであろう。

デミカツ丼(たんぽぽさん提供)
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デミカツ丼(たんぽぽさん提供)

MNo.13

 岡山のカツ丼と言えば「デミカツ」です。ご飯にトンカツをのせ上からデミグラスソースをかけるタイプの他に、カツをソースにくぐらせるものもあります。
 千切りキャベツを敷いたり、生卵やグリンピースをトッピングしたりとお店によってけっこうバリエーションがあります。
 実は私、日生カキお好み焼き研究会のメンバーであるとともに、デミカツ丼で地域を活性化する「おかやまデミカツ丼応援隊」の個人サポーターでもあります。
 毎月23日は「デミカツ丼の日」(「2」のフランス語は「デュ」、「3」の日本語は「ミ」だから)で、応援隊のメンバーはデミカツ丼を食べて「デミ活」しています。
 デミカツ丼もいいけどあれもこれも食べたいという人には、県庁通りの「やまと」がおすすめ。私はいつもデミカツ(小)と中華そば(小)を組み合わせて注文します。
 程よいバランスです(たんぽぽさん)

デミカツとラーメン(たんぽぽさん提供)
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デミカツとラーメン(たんぽぽさん提供)

 「デミ活」。素晴らしい語呂合わせである。

 「飲活」も悪くない。私は「自由飲酒党」という言葉が気に入っている。

 このメールにある通り、デミカツとラーメンの組み合わせが珍しくないところに凄味がある。岡山市内のラーメン店でデミカツを出す店が少なくない。

 東京の「半チャンラーメン」は多分負けている。

アナゴとセイゴの南蛮漬け(たんぽぽさん提供)
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アナゴとセイゴの南蛮漬け(たんぽぽさん提供)

 たんぽぽさんのメールは多岐にわたっているが、その中に「日生の実家では、土用の丑の日にうなぎではなく日生産アナゴを食べます。一緒に写っているのははセイゴの南蛮漬け。セイゴは出世魚で、最終的にはスズキになります。翌日、フレンチでスズキを食べたとき、妙に感動したなぁ〜」とある。

 海に面した日生では、わざわざうなぎを食べなくとも、目の前で捕れるアナゴがある。その蒲焼きで十分なのである。

 さて、岡山とド(デ)ミグラスソースとの深い関係に気づいた人がいる。前出の松山の坂本さんである。いただいたメールの中に次のような文面があった。

流通れすとらんのメンチカツ定食(松山の坂本さん提供)
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流通れすとらんのメンチカツ定食(松山の坂本さん提供)

「岡山の南区にトラックの運転手さん相手の食堂があります。流通センター近くにあるので『流通れすとらん』。そのまんまです。
 ある日の日替わり、メンチカツ定食を頼みました。どかーんと大盛りの御飯に、大きな大きなメンチカツ……に、なんか甘くて濃厚なデミグラスソースがかかっています。
 とんかつ定食を頼んだ後輩のとんかつを問答無用で一切れかっさらうと、同じデミグラスソースがかかっていました。
 以前から思っていましたが、やはり岡山県民はデミグラス好き!
 別の日に岡山県内のとんかつチェーン店にて食べたカツ丼です。ソースカツ丼と書かれてあったので確認すると『デミグラスソースがかかってるんです』とのことで早速注文。やはりデミカツ丼でした。
 加古川のかつめしとはどう違うのでしょうか?」

岡山のソースカツ丼(松山の坂本さん提供)
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岡山のソースカツ丼(松山の坂本さん提供)

 ドミグラスソースの味に慣れ親しんだ岡山県民は、ついソースをいうとドミをかけてしまうようである。岡山でソース系のものを食べる場合は、坂本さんのように確認する必要があるかも。

 岡山のドミカツ丼は豚。対して加古川のかつめしは牛。

 前回、話題の中心になった感がある日生の「カキオコ」。焼き方も一様でなはい。

カキのエキスが生地に…(大阪の原さん提供)
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カキのエキスが生地に…(大阪の原さん提供)

MNo.14

 カキオコは夏場、エビオコになっちゃって残念ですが、旬がある物は仕方ありません。
焼き方も店ごとに流儀が異なり、
(1)鉄板でカキを炒めておいてから生地を被せて封じ込める
(2)生地を焼いてからカキをのせ、そのまま封じ込める
の違いが目に付きました。
 (1)はカキが香ばしく(2)は溢れるエキスは全て生地に取り込まれます。
 好き嫌いは分かれるところですが、私は(1)が良かったなあ。
 ただし写真は(2)の方法です。
 岡山〜倉敷の魚屋では「アナジャコ」なる生き物(小魚のジャコではなく、ザリガニみたいな奴)が売られていて「殻が柔らかいのでそのまま唐揚げにする」と伺いました。触ってみると殻があるくせにプヨプヨ。
 誰かの横っ腹のようにプヨプヨ。甘エビよりも柔らかい感じ。で、結局食べる機会を逸してしまいました。現地の声希望!(大阪の原さん)

B−1で食べられるのも(2)
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B−1で食べられるのも(2)

 私が食べたカキオコは(1)であった。今度は(2)で食べたい。

 アナジャコは有明海で「マジャク」と呼ばれる。文字通り、海の底に穴を掘って潜む。干潮のときにその穴に筆を入れると敵が来たと思ったアナジャコが顔を出す。そこを捕まえる「マジャク釣り」というのがある。

 シャコとは別の生き物というが、確かに食感は違う。

シャコ丸天(いけずな京女さん提供)
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シャコ丸天(いけずな京女さん提供)

MNo.15

 シャコ丸天。お江戸ですと高級寿司ネタ?
 逆に関西ではその存在さえ知られていることが少ない「シャコ」ですが、岡山の瀬戸内海側では普通の食べ物なんですね。
 昔は獲れ過ぎて値がつかず、畑の肥料にされていた時代もあったとか。今でも、写真のように練り製品に貼り付いて1枚140円て、凄くない?(語尾上げ)
 身ぃがプリッとしてて甘みがあって美味しいのですが、練り物とは別々に食べたいと思いました(笑)
 アマテ唐揚げ。モテモテのことを「引く手あまて」とか言いましたっけ、それは「引く手あまた」!
 アマテとはマコガレイのことで、岡山県内で獲れるカレイの代表種。アマテの煮付け、唐揚げは昔から親しまれている家庭料理だそうです(いけずな京女さん)

アマテ唐揚げ(いけずな京女さん提供)
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アマテ唐揚げ(いけずな京女さん提供)

 私はかつてシャコをコッペパンにはさんだ「シャコパン」を求めて、わざわざ明石まで行ったことがある。若かったなあ。

 アマテ。瀬戸内海で最も釣れるカレイでもある。ただ釣りをしていて、ちょっと当たりがあったからといって慌てて釣りざおを上げようとすると、回りから「あっ、待て」と言われる。

デスク(椅子から転げ落ちて)いててっ!

 大分の城下カレイがこのマコガレイ。同種である。

 県央の津山からメールが届いた。

津山ホルモンうどん
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津山ホルモンうどん

MNo.16

 我らが津山ホルモンうどん! この美味しさの秘訣。それは津山のホルモン職人の処理へのこだわり。牛を捌いてから9分以内に仕上げる。これに尽きると思います。世界最高の技術だと思います。
 だから匂いのないプリプリのホルモンを提供できるのです。
 さらに各店が長年の試行錯誤で作り出した味噌だれ。それぞれ違った特徴がありますので食べ比べてください。
 そしてもちろん研究会メンバーの津山愛!
 津山にはその他にもたくさんの自慢の食があります。
 「嫁泣かせ」。牛の大動脈。名前の由来は諸説あります。なんとも言えない歯ごたえです。
 「干し肉」。私の知る限りでは津山以外で見たことがありません。
 「そずり」。骨の周りの肉を削り取ったもの。(削り取る)を意味する方言が名前の由来です。炒めたり鍋に入れたりして食べます(津山ホルモンうどん研究会 上山さん)

牛の大動脈は楽器にもなる
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牛の大動脈は楽器にもなる

 一転して山の文化。それも牛肉文化である。

 ホルモンうどんのホルモンは牛のそれ。

 牛の大動脈「嫁泣かせ」は久留米の「センポコ」と同じ物。津山で食べてみようと思ったが、かんでもかんでも少しも柔らかくならず、ついに飲み込むことができなかった。野瀬泣かせでもあった。

 干し肉は和製ビーフジャーキーで、昔は保存食、いまは土産物にもなっている。なるほどよそでは見かけない。

 そずりは、いわば牛の中落ち。私は汁物でいただいたが、いい味出てたなあ。

味噌だれの香りが…
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味噌だれの香りが…

 いずれにしても岡山の山間部は昔から牛の飼育が盛んなところ。牛肉の煮こごりも食べた記憶がある。

 津山かあ。桜のころに行きたい。お城の桜が見たいものである。

 ということで岡山情報満載になった。

 紹介しきれなかったメールがあるが、それは来週以降に。

デスク っとぉ、来週(17日)はお盆休みのため、このコーナーも休載です。次回は24日にまたお目にかかりましょう。特に津山にお住まいの皆さん、どしどし情報をお寄せください。

 引き続き、岡山メールを待ちよーるけーなー(合ってる?)

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりはおかわり B−1グランプリin北九州、出展団体が決定です。合わせてご覧ください。

実食編 「嫁泣かせ」に泣かされる

岡山県編(その1) カキオコ、33分1本勝負

岡山県編(その3) 餅つき大変、パンにしよっ!

岡山県編(その4) 青い海から青うなぎ


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年8月10日

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