第57回 愛媛ご当地グルメ(その1) 「天ぷら中華そば」現る!

特別編集委員 野瀬泰申


 予鈴が鳴り終わって、いよいよ愛媛県本編の始まりです。いきなりエース級のじゃこ天が大活躍、ダークホースの松山あげも登場し、大汗をかきながら真夏の鍋焼きうどんも奮闘しました。今週はどんな愛媛県グルメが登場するのでしょうか…。
 番外編として、デスクが東京にある愛媛県のアンテナショップ「せとうち旬彩館」を取材してきました。合わせてご覧ください。

 食べBのFacebookページを開設しました(http://www.facebook.com/tabebforum)。実食編地図など、オリジナルコンテンツも掲載していますのでぜひご利用ください

(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

デスクが週末に大量発汗しつつ、むせつつ食べた「5分間でできる味仙元祖台湾ラーメン」
<写真を拡大>

デスクが週末に大量発汗しつつ、むせつつ食べた「5分間でできる味仙元祖台湾ラーメン」

 節電でエアコンを入れない土日の我が家は暑いというか熱い。当たり前に熱い。窓全開、扇風機全力、シャワー頻繁。

 東京電力の「でんき予報」の数字をネットで確認しながら、ときどきエアコンのスイッチを入れるが、何となく申し訳ないような気がしてまた扇風機に切り替える。

 最近、半地下のクローゼットを書庫に改造したので、本の整理を始めた。窓を開けていると意外に涼しい風が入って作業がはかどる。

 整理の最後に古い手紙などが入った紙袋に取りかかった。そこで私の手がぴたりと止まった。完全に忘れていたのだが、その袋には中学と高校の卒業アルバムが入っていたのである。

僕にだって高校時代はあった(デスク)
<写真を拡大>

僕にだって高校時代はあった(デスク)

 アルバムを開くと後輩の歓送の言葉を綴じたものとか、写真とかが挟まっている。床に腰掛けて見入ってしまった。

 鉛筆書きの文章を綴じたものをぱらぱらとめくる。7、8人が書いてくれているのだが、これが全員女子なのである。はしなくも往時の私を偲ばせる一事ではある。

 中学の卒業アルバムは前編モノクロ。写真の粒子も粗い。そしてその中の私は幼い。

 高校のはカラーであったが、やはり粒子が粗い。その中の私は髪の毛がいっぱいであった。

 あれから幾星霜。とうとう定年まで3カ月余りとなった。思えばはるばるきたもんだ。

同い年
<写真を拡大>

同い年

 涼みがてら出かけた近所のスーパーで「バヤリースオレンジ」を安く売っていたので買った。子どものころ、こいつは滅多に口に入らない憧れの飲み物、いやジュースだった。果汁20%の表示があるが、当時はバヤリースより濃厚なジュースを飲んだことがなかった。

 ふと成分表示の横に書かれた文章を読んで驚いた。このヒトが日本に登場したのは1951年、つまり私が生まれた年である。ということは同い年ではないか。

 バヤリースオレンジもはるばるきたもんだわ。

はるみ100%の贅沢なジュース(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

はるみ100%の贅沢なジュース(カラスダニ@松山さん提供)

MNo.7

 中学校の時の先生が、愛媛はミカン、イワシ、イモが取れるからそれを食べてたら病気にならないみたいなことを言ってたなぁ。まぁ、ミカン県として有名なんですが温州みかんの生産量日本一の座は既に他県へ。キウイが日本一だったと思います。
 ミカンについて現在は新型の晩柑類を大量に投入して高付加価値型?の農業を目指しているみたいです。例えば「紅(べに)まどんな」は収穫時期が限られますが、お菓子がそのまんま果物になっちゃったという品種。ほかにも続々登場中です。
 愛媛県の施設として「みかん研究所」もありますからこれも楽しみです。それと、ミカンを使った食品もドンドン出てます。この前、及川光博さんのコンサートで松山でミカン寿司を食べた経験を話されてました。ミカンジュースをご飯を炊くときに使います。それ以外もお菓子などにも活用されています(カラスダニ@松山さん)

ご飯にミカンを炊き込んだ静岡・三ケ日ご飯
<写真を拡大>

ご飯にミカンを炊き込んだ静岡・三ケ日ご飯

 愛媛県のミカンジュース炊き込みご飯は「食べ物 新日本奇行」にも登場した。そのとき山口県の萩で食べた夏ミカンをつかった寿司に関してコメントした記憶がある

 松山のアーケード商店街の中に果物屋さん経営のカフェがある。何度かそこに入ったが、行く度に見慣れない柑橘類が並んでいた。

 酸っぱいのはだめだが、柑橘類のまーるい形と鮮やかな黄色は大好きである。



アルマイトの鍋に入った松山の鍋焼きうどん
<写真を拡大>

アルマイトの鍋に入った松山の鍋焼きうどん

MNo.8

1)程野の「松山あげ」。日持ちがよいので、帰国のたびに何袋も持ち帰っております。イギリスでも大活躍。味噌汁に。五目飯に。ひじきの煮物に。子どものころからお世話になっている故郷の味です。使い切ると、本当にさみしく、空袋に向かって「ありがとう」とお礼を言ってから、ゴミ箱に入れます。
2)多数の松山人からあがって来ると思いますが「ことり」のうどん。アルマイトの鍋に入った甘口の汁がなんとも……うまい。この甘口は「松山あげ」に通じるところがあります。松山人は、甘党なのか?
3)横河原(東温市)の通称「角店」の甘酒(あ……失礼。また甘口)アイス。店先でおばちゃんが作っているかちんこちんの棒付きアイス(イギリス・桃さん)

 今朝、我が家の食卓に松山あげの煮物が出た。昨日、涼みがてらに出かけたスーパーで買ったものである。日持ちがするだけではなく、とても軽い。値段も手ごろ。外国に持って帰るには最適であろう。

「甘いぞなもし」
<写真を拡大>

「甘いぞなもし」

 外国の税関で「これは何だ」と聞かれても「スポンジ」と答えれば通してくれる(かな)。

 鍋焼きうどんの「ことり」は「アサヒ」と並ぶ有名店。しかもすぐそばにあるので食べ比べができる。

 前回も書いたが、私はさぬきうどんより、九州のそれに近い松山のゆるーいうどんが好ましい。鍋焼きうどんは「卵入り」にいなりを添えて食べるのが断然よい。

 うどんの出しは甘めで、いなりははっきりと甘い。それでよい。

MNo.9

瓢太の中華そば(松山の坂本さん提供)
<写真を拡大>

瓢太の中華そば(松山の坂本さん提供)

 ラーメンの「瓢太」。私は正直好きではないです……でもファンは多いし「これが松山の味なんじゃあ」と言う人は多いです。
 甘いです。いけずな京女さんの「うすら甘い」という表現に星三つです。
 ラーメンも甘いです。鍋焼きうどんも甘いです。
 松山寿司などは甘い寿司を目指して開発されたのではないかと思うくらい甘いです。1升の米に220gの砂糖を入れるんですよ。
 ちなみに江戸前のすし飯だと米1升に砂糖は40〜50gくらいでしょうか。京都と埼玉で修業した兄は「関東の寿司飯と比べたら松山の寿司飯は2000倍甘い」と表現していました(松山の坂本さん)

 松山に行った折、地元の人が連れて行ってくれたラーメン「瓢太」。確かに甘かったが、地元の人々も「うちらのラーメンは甘い」と自覚しているところが潔くてよいと思った。

松山市内にある「瓢太」(クロイトリ@松山さん提供)
<写真を拡大>

松山市内にある「瓢太」(クロイトリ@松山さん提供)

 金沢のラーメンも甘い部類に入るだろう。

 醤油が甘い地域の醤油系ラーメンが甘いのは道理にかなっているのである。

 それにしても松山寿司の砂糖投入量は凄くないですか? 松山市駅のデパートで松山寿司を売っていたので買って食べたが、そんなに甘い印象はなかった。

 というのも私の好物は助六であり、家族からは「よくそんなに甘いものが食べられるね」と言われるので、私は甘いラーメンとか寿司に抵抗がないのかもしれない。

 長崎の「砂糖屋の近かか」的甘さと、松山の「寿司飯の甘さ東京の2000倍」とどちらがつおいのであろうか。

 坂本さんのメールの続き。

大豆出しうどん(松山の坂本さん提供)
<写真を拡大>

大豆出しうどん(松山の坂本さん提供)

「内子から小田にかけて、大豆をお出しにしてうどんを食べる文化があります。厳密に言うと大豆と干し椎茸なのですが、大豆で出し?! という驚きが楽しいですよね。お出しをとったあとの大豆と椎茸が具として食べられるのも嬉しいです。写真は内子の『からり』にて、もち麦うどんです。
 本当は手打ちのたらいうどん(大量)に熱々のつけ汁(大豆入り)をつけながら『はよ食べんと伸びる! ああ、切れる! 伸びてしまう!』とはふはふ言いながら食べるのが一番なんですけどね。大豆出し、まろやかであっさりしてて、本当に美味しいですよ。
 松山人でもこの大豆出しを知らない人も多いのですが『山の方で食べよんよ』と言うと『山の方はそうやって食べよんや〜』と納得します。
 久万(山の方)でもたらいうどんが美味しいです。ほかに山の味覚って何があったかな。早く他の方の山味覚投稿を読みたいなあ……わくわく!」

ほんのり大豆の香り(松山の坂本さん提供)
<写真を拡大>

ほんのり大豆の香り(松山の坂本さん提供)

 大豆出しのうどんは愛媛にしかないとは言い切れないが、愛媛県を彩る食文化であることは間違いない。

 「大豆は出しが出るから」ということで始めたというより、ほんのり大豆の味と香りがしみだした煮汁をだいずに活用しようとした先人の知恵の産物ではなかろうか。

デスク そいつは、いいアイデアですね。

 カラスダニさんから、もう1通のメールが届いていた。

自然薯のトロロご飯(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

自然薯のトロロご飯(カラスダニ@松山さん提供)

MNo.10

「山のご馳走ですか…。広田村(現砥部町)でやっている自然著(じねんじょ)祭り。立派な自然著とそれを使ったお好み焼き、ムカゴご飯など非常にリーズナブルで美味しいです。とろろご飯+山芋の天ぷら、ムカゴご飯、ほとんどが山芋のお好み焼きにトロロのせ!!」

ムカゴご飯(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

ムカゴご飯(カラスダニ@松山さん提供)

 砥部町は松山市のすぐ南。砥部焼の里としても有名である。

 このメールを読んでいて懐かしい記憶がよみがえってきた。

 まだ街中ではなく田舎に住んでいたころだから、小学校の1年生ではなかったろうか。庭で葉っぱの付け根に小さな茶色い球がたくさん生っているのをみつけた。夢中で摘んで台所の母に見せると、母は黙って受けとってさっさと塩ゆでにしてくれた。

お好み焼きに山芋は不可欠(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

お好み焼きに山芋は不可欠(カラスダニ@松山さん提供)

 あまりの美味さに「お母さん、これなんてゆうと?」と聞いたのだが、母は「さあ、なんちゅうとやろかね」と言ったきりまな板に向かった。

 「ムカゴ」というものであることを知ったのは、大人になって居酒屋の突き出しで出たときであった。

 小さいくせに味は立派な自然薯、あるいは山芋である。生意気盛りのかわいい子どものような食べ物である。

 これをご飯に炊き込んだムカゴ飯は未経験。飲んだ後に、小さな茶碗1杯のムカゴ飯はいかにもよさそうである。

 次のメールは視点というか切り口が鮮やか。

カツライス(かまだかいちさん提供)
<写真を拡大>

カツライス(かまだかいちさん提供)

MNo.11

 愛媛県今治市のB級グルメと言えばすでにメジャーになりつつある鉄板焼きの今治焼き鳥に焼豚卵飯ですが、今日はちょっと違うメニューを紹介したいと思います。
 今治の洋食屋や大衆食堂の代名詞とも言えるのが「カツライス」。ご飯の上にトンカツが盛られ、ドミグラスソースというかハヤシライスのルーだけの状態のものがかけられた料理です。
 私が初めて食べたのは「グリルタイガー」という市内の老舗洋食屋(すでに閉店)でしたが、トンカツは一口カツ(他店は通常の切り分けたトンカツが多い)だったように思います。現在でも「ごんべ食堂」「カネト食堂」「ハンター」などで味わえます。
 あと「天ぷら中華そば」も今治、西条市内で見かけることができます。通常のラーメンよりもさらにあっさりした中華だしに、エビの天ぷらがのっている「和中折衷」な感じが郷愁を誘います。
 尾道にも天ぷら中華そばを出しているお店があるそうなのですが、瀬戸内圏域って「天中(天ぷら中華そば)文化圏」なのでしょうか?(かまだかいちさん)

 メールにある今治のカツライスは古い洋食の姿を守っているのではないか。またしても私の子どものころの話で恐縮だが、久留米のデパート食堂や街中の食堂に出ていたのがこのスタイル。

天ぷら中華(かまだかいちさん提供)
<写真を拡大>

天ぷら中華(かまだかいちさん提供)

 中にはケチャップだけという店もあったかもしれないが、記憶に残っているのは焦げ茶色の濃厚なソースの色と深い味わい。

 これがトンカツではなく牛カツだと加古川のかつめしになる。

 天ぷら中華に関しては実にいい視点であると思う。私は広島市でたくさんの同物件を確認し、天ぷら中華にはどの程度の広がりがあるのだろうかと考えていた。

 いまここに今治、西条の名が出た。そして広島県尾道市の名も出た。

 ということは環瀬戸内天ぷら中華圏が存在することになる。どうでもいい大発見である。読者の皆さん、県境を越えて「うちの方にも天ぷら中華があるよ」という情報を寄せられたい。その結果、瀬戸内海を挟んだ立派な地図ができあがるかもしれない。もしできればそれは皆さんの共有財産になる。

労研饅頭(いけずな京女さん提供)
<写真を拡大>

労研饅頭(いけずな京女さん提供)

MNo.12

 暑さ厳しい折ですが、松山っ子の懐かしおやつ「労研饅頭(ろうけんまんとう)」<登録商標>について、暑苦しく語らせてください。
 昭和の初めに、広島・倉敷の労働科学研究所で中国の饅頭(まんとう)を日本人向けに改良して作られた蒸しパン状のお菓子。
 小麦粉をこねた生地を酵母で発酵させ、蒸し上げただけの素朴なものですが、日本の労働者の食生活改善を目指した先人たちの志が刻まれた尊い食べ物です。
 貧しい食事で過酷な労働に従事する工員たちのため「一つの優秀なる主食代用品」として開発された労研饅頭は、たちまち全国に広がり、やがて松山にも伝わりました。

あん入り(下)も(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

あん入り(下)も(カラスダニ@松山さん提供)

 松山では「夜学生に学資と働き口を」と、キリスト教系の松山夜学校奨学会が製造販売を開始、たちまち人気商品になったといいます。
 同会が解散後は数学教師だった竹内成一氏が個人的に事業を引き継ぎ、戦時中も空襲から酵母菌を守り抜きました。そして現在は「株式会社 たけうち」さんが“今も昔も変わらぬ松山の味”労研饅頭を造り続けておられます。
 では、一時は全国に37軒もの製造販売所があったというこのお菓子が、松山の味になったのはなぜか?
 その理由を、郷土史家の方は「松山市民に溢れる博愛の精神」だといいます。松山にはキリスト教の教会も多く、夜学生への費用援助という動機は容易に受け入れられました。
 戦後は手を取り合って復興をめざす市民の、安価で手軽なエネルギー源として活躍したと言われています(いけずな京女さん)

アンパンマン列車(ミルフォードさん提供)
<写真を拡大>

アンパンマン列車(ミルフォードさん提供)

 労研饅頭の店は松山のアーケード商店街の交差点角にあったと記憶する。看板がどこか懐かしく写真を撮ったのだが、さてどこに行ったやら。

 愛媛実食編取材がいつになるか現時点では不明ながら、この饅頭は外せないと思っている。

 ところで愛媛実食編のモデルコースについて早々といくつかのご提案をいただいている。ありがたいことであるが、早すぎませんか〜。ええ、早すぎますとも。

デスク アンパンマン電車乗りたいっ!

 では引き続き愛媛メールを待つ。道後よろしく。


(特別編集委員 野瀬泰申)



 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2011年7月8日


番外編 愛媛県のアンテナショップに行ってきました(デスク)
第56回 愛媛県(予鈴) 鍋焼きうどんの器は鍋やき
特別編 石巻・石ノ森萬画館の再開はいつに
■入門編:「食べBって何?」という方はこちらからご覧下さい
■実食編:<映像リポート>はこちら
食べB修行記、今週のリポート一覧
料理・素材名から探す(インデックス)ページはこちら
県別に見る(インデックス)ページはこちら


【PR】

【PR】

【PR】

大人のレストランガイド

大人のレストランガイド

NIKKEI×ぐるなびが提供する、大人のためのグルメガイド。接待や会食、ビジネスシーンなどにおすすめのお店情報をご紹介。

ぐるなびWoman

ぐるなびWOMAN

女性のための女子会・デートのグルメ情報サイト。おすすめのレストランや居酒屋をこだわりやシーンに合わせて検索できます。

ぐるなびWedding

貸切パーティコレクション

企業向け貸切、OB会etc… 少人数〜大人数でも貸切OKのレストラン

結納・顔合わせ

特別な日を過ごすための完全個室のお店情報や、マナー・段取りまで

このサイトについて

日本経済新聞社について