第127回 鹿児島県ご当地グルメ(その4) かねがね、がねを食べたいと…

特別編集委員 野瀬泰申


 流しそうめん・葬式そうめんで驚いていたら、かた焼きそばに三杯酢をかけて食べるという鹿児島県。まだまだ新たな発見が続いています。最終回となる今回も、知られざる鹿児島の味が登場するのでしょうか? お楽しみに。
 今週のおかわりは、鹿児島県奄美地方で局地的に飲まれているというご当地発酵飲料「ミキ」についてデスクがリポートします
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本場の焼酎も楽しみ
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本場の焼酎も楽しみ

 気がつけば最終回である。

 私が洋式(水洗)トイレと初めて出合った鹿児島県が、このような深ーい食文化を持っていることを改めて実感した。

 回るそうめん流しとか葬式そうめんとか、1度聞いたら忘れようとして思い出せない物件もある。

 実食編は桜が終わったころになろうが、温泉は季節を問わない。ではなくて、いまから楽しみである。

鹿児島の漬物盛り合わせ
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鹿児島の漬物盛り合わせ

MNo.25

 遥か昔の昭和56年4月、それまで関東は川越に暮らしていた18歳の男が、いきなり大学生になって長崎に住むことになりました。
 クラスには同じ関東出身者も少なくはありませんでしたが、とにかく九州出身者が多く、その中で鹿児島市内出身の男と友人になりました。最初のうちは、ことあるごとに関東に帰っていましたが、そのうちあまり帰らなくなり、その友人が「ならば鹿児島に行ってみては」と、帰省のたびに誘ってくれました。
 その中で驚いたのは、親父さんの力が強く、親父さんが箸をつけるまで家族は待っているという習慣や、醤油が長崎よりも甘くて、刺身醤油はもっと甘いということ、地鶏の刺身の初体験などなど、行くたびに驚くことがいっぱいでした。

お茶請けに漬物
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お茶請けに漬物

 その中の習慣で、特に驚いたのは、当時(30〜40年ぐらい前)は、どこに行ってもお茶が出ると同時に漬物が少し醤油皿の上にのっかって楊枝を添えて出されたことでした。ラーメン屋とかでは今でもあるようですが、当時は役所から始まって自動車整備工場の事務所まで、どこでもお茶には必ず漬物が添えられて出されていました。
 後年、友人になったかるかん屋の若旦那にこのことを話すと、今では少なくなったけれど、昔は銀行の融資の打ち合わせでも普通に出て、しかもお茶の入れ替えをすると漬物も自動的に追加されていたということでした。
 彼に誘われて何回も往復するまでは、鹿児島がこれほどの漬物の天国だとは思っていませんでした。そういえば、友人宅の卓袱台の上には、いつも必ず漬物の入った密閉容器と、箸と醤油皿と楊枝がのっていました。今では懐かしい思い出です。
 とうことで、ラーメン屋の漬物は、お茶のあてから始まったものではないでしょうか(あかさくらさん)

山川漬け
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山川漬け

 鹿児島と漬物。どうも結びつかない。いや鹿児島県民が漬物好きであることを否定しているのではなく、関東以北の発酵食品としての漬物と南国鹿児島が結びつかないのである。

 山菜やキノコまで漬物する東北のイメージと、私が九州で食べていた漬物はだいぶ様子が違っている。

 例えば山川漬け、つぼ漬け、桜島大根を用いたさつま漬け。鹿児島ラーメンに必須の大根の浅漬け。全部大根である。山菜、キノコはない。青いものだと高菜ぐらいであろうか。

さつま漬け
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さつま漬け

 そして昔は知らないが大根系の漬物は大方、つけ汁で味つけされている。この辺りに発酵感の薄さを感じるのである。そしてどれも塩辛くない。少し甘い。

 雪国と違って九州では冬場でも野菜に困らないから、野菜の保存方法としての漬物は発達しなかった。その代わりお茶請け方向に進化したのではないかという気がする。

「がね」が売り
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「がね」が売り

MNo.26

「がね」と聞いて浮かれないなんて、鉄分不足ですね!
 九州駅弁ランキング2年連続1位(いつ、どこで集計されたのかは知らない)の、「百年の旅物語かれい川」の売りが黄金に輝く「がね」だというのに!
 明治36年営業開始当時の駅舎も含め、1日100個限定とか予約は観光列車「隼人」の乗客50個までとか、そのレア感がたまりません。
 私も食べたいなあと思いつつ、鹿児島でどっか行くときはおばあちゃんのおにぎり(ごましおたっぷり)と卵焼き(超巨大・当然甘い)があるから、駅弁買おうって話にならないんですよね。
 実食編、ついて行きたいなあ(松山の坂本さん)

がね
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がね

 嘉例川(かれいがわ)駅は霧島市にある肥薩線の無人駅。駅舎は九州では現存最古といわれている。

「百年の旅物語かれい川」が上位を飾った九州駅弁ランキングは、たしかJR九州の主催だったと思う。その駅弁の目玉が刻んだサツマイモの天ぷら「がね」である。

 私は「いも息子」として育ったので、サツマイモを使った食べ物は得意である。甘いものを口にしないのに、高知の「いもけんぴ」は食べる。

「がね」もウスターソースをかけてぺろりと平らげるであろう。

 坂本さん、マジで実食編、一緒に行きますか?

端午の節句のお供え物にあくまき(松山の坂本さん提供)
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端午の節句のお供え物にあくまき(松山の坂本さん提供)

MNo.27

 鹿児島出身ではなく、それまで縁もなかった鹿児島に移って6年になりますが、食に関して驚くことが多々あります。
「あくまき」が話題になりましたが、私は「ちまき」といって食べさせられ、何これ?と思ったのが最初の出合いでした。そのときは灰汁で調理するなど思ってもいなかったので、抵抗なくきなこでいただきましたが、後で調理法を知って驚きました。
 甘い醤油や甘い料理についてはいまだに慣れません。全国チェーンのスーパーなどで普通の醤油を買って常備しています。
 甘い料理については、奄美出身の知人からこんな話を聞きました。
 薩摩藩が奄美から砂糖をすべて接収するため、奄美の料理には砂糖を使ったものがない。その半面、砂糖が豊富な本土の薩摩藩では砂糖をふんだんに使った料理が多いと。

鹿児島のラーメン、ダイコン付き
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鹿児島のラーメン、ダイコン付き

 ちなみにその知人、40代後半ですが、高校生のころのお弁当などの卵焼きには砂糖は使われず、大学で進学して本土で甘い卵焼きを食べて驚いたそうです。
 ところで鹿児島ではラーメン単価が高くて困ります。以前福岡にも住んだことがあるのですが、こんなに違うものかと。
 500円以下で食べられるお店はほとんどありません。500円以下の場合は飲んだ後にちょっと食べる「小」というサイズがほとんどです。
「のぼる屋」という老舗ラーメン屋が1000円というラーメンを出しているので、その影響だという話も聞きますが、1杯の量は非常に多いと感じます。ほとんど食事として完結してしまいます。10代、20代ならともかく、50を前にするとラーメンライスという選択肢はなくなります(kagさん)

久留米・沖食堂のラーメン
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久留米・沖食堂のラーメン

 砂糖は長い間、宝石のような価値があった。薩摩藩の財政を支えたことであろう。

 このため砂糖がごっそり持って行かれるので奄美では甘みが欠乏した、というのは悲しいけれど、そうかもしれないと思わせる話である。

 鹿児島のラーメンの値段は東京並みである。久留米の沖食堂のラーメンは確か360円。それに比べると鹿児島は確かに高いが、私はとやかく言う立場にない。

 奄美が続く。

タンカン(後左)、デコポン(後右)、キンカン
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タンカン(後左)、デコポン(後右)、キンカン

MNo.28

 学生時代の研究室の後輩に奄美大島出身者がいて、彼の実家(農家)で作っているものをおすそ分けで持ってきました。
 タンカンです。ポンカンとオレンジを交配した果物で、非常に美味かったことお覚えています。
 たまたま2年前に知り合いになった名古屋の友人の出身地が奄美大島で、タンカンも知っていました。そして、毎年送ってもらっているとのこと。
 さんざんおねだりして、今年、おすそ分けをいただきました。
 皮は薄くてナイフを入れないとむきにくいですが、甘みと香りが強く美味しかったです。記憶は間違っていなかった(名古屋のす〜さん)

タンカン
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タンカン

 ポンカンとネーブルオレンジが交配してタンカン。

 私がこれを食べたのは沖縄であった。沖縄産のものをスーパーで売っていた。

 亜熱帯性の柑橘類で奄美のほか屋久島、沖縄も産地として知られる。日本には明治時代に台湾から入ってきたと聞いた。

 タンカンはメールにあるように食べにくいが、甘みと香りが飛び抜けている。飲んだ翌朝には最高さ。二日酔いもタンカンに直る。

 奄美が続く。

雀の学校(いけずな京女さん提供)
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雀の学校(いけずな京女さん提供)

MNo.29

 以前、物産展で買うた「雀の学校」という豆菓子の詰め合わせ。鹿児島は九州における落花生や豆の主要産地で、千葉と同様にゆで落花生を常食するそうですね。そんな鹿児島の地で創業60年近くになる大阪屋製菓さんの製品です。
 この中に入っている「雀の卵」という甘い醤油味のピーナツ菓子が、創業の翌年に発売されたロングセラー。鹿児島にとどまらず、昔から西日本ではおなじみの駄菓子ですが、やはり鹿児島の人にとっては特に郷愁をそそるみたいですね。
 私はこれをポリポリつまみながら薩摩焼酎を飲むのが好きです。そうそう、焼酎で思い出しました。ちょっと強引。
 鹿児島県いうても、九州本土とは全く違う奄美群島の食文化。奄美群島でだけ醸造が許されている黒糖焼酎です。文字通り黒糖を原料とした蒸留酒で、奄美の特産品でもあり固有の酒文化でもありますね。

黒糖焼酎(いけずな京女さん提供)
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黒糖焼酎(いけずな京女さん提供)

 もっとも、その歴史は奄美の人々の苦難の歴史でもあります。江戸時代は島津藩に黒糖の生産を強制され、搾取された残りを発酵させて焼酎を作っていたという話。
 戦後は長くアメリカに支配されたがゆえに黒糖焼酎は日本の酒と認められず、高い酒税を課されました。人々の必死の願いにより、米麹を使うことでようやく「特例」として酒税が軽減され、奄美群島だけに黒糖焼酎の製造が認められました。
 そんな「苦い」歴史を乗り越えて造られている黒糖焼酎ですが、お酒は甘く柔らかな香り、飲む人を幸せにしてくれます。奄美の風土と人が育てる黒糖焼酎の個性が、これからも守り続けられますように(いけずな京女さん)

雀の卵(いけずな京女さん提供)
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雀の卵(いけずな京女さん提供)

「雀の卵」は記憶にある。久留米にいたころ食べている。ピーナツ系は好きである。

 黒糖焼酎の歴史に触れた文章を静かに読んだ。酒の歴史を語る際に、外せない物語である。

 でも黒糖焼酎の味はまろやか。次のようなものが肴に登場するとさらに美味くなる?

きびなごの丸干し(中林20系さん提供)
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きびなごの丸干し(中林20系さん提供)

MNo.30

 実家に帰省していたある日、地元百貨店で九州フェアをやっていたんです。そこで見つけたのが甑(こしき)島産の「きびなごの丸干し」。
 きびなごといえば刺身が有名ですよね。あの、キラキラ輝く開きをペコッと折り曲げて菊の花のように盛り付けたそれは、まるで食べる芸術品のようです。
 ただ、足の早い魚のようで、遠方への流通はなかなか厳しいものがあるらしいですね。東京でも近所のQイーンズ伊勢Tなどに並ぶことがありますが。
 で、これは丸干しにしたモノです。これがまた美味しいんですよ。焼いて酒の肴になんて、酒が進みすぎて困るくらいです。
 きびなごといえば刺身が有名ですが、それだけじゃなかったんだなぁ…と、改めて食文化の深さを感じた逸品でした(中林20系さん)

黒糖焼酎飲むぞ
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黒糖焼酎飲むぞ

 鹿児島の焼き鳥の店で、きびなごをいかだにして焼いた串にであった。小さな魚体から湯気が上がっていた。塩を少ししただけだったが、実にいいものであった。

 長崎県実食編でも五島でとれたてのきびなごの網焼きを堪能した。

 だが干物は未体験。物産展などをこまめにチェックしよう。もしあったら買って、黒糖焼酎を飲むぞ。

首折れ鯖800円(豆津橋渡さん提供)
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首折れ鯖800円(豆津橋渡さん提供)

MNo.31

 最近は鹿児島=「黒豚」のイメージですが、黒毛和牛やさつま地鶏も有名な畜産王国であり、サツマイモや桜島大根のような農産物もよく知られていますよね。でも、意外に知られていないのが魚の豊富さです
 カツオ、アゴ(トビウオ)、キビナゴはもとより、今の時期ならブリ、アラカブ(カサゴ)、車エビなどが旬。
 特に近年話題になっているのが首折れ鯖。(その2)で中林20系さんの投稿もありましたが、秋の鹿児島の鯖の脂の美味みはなんとも言いがたいものがあります。首折れ鯖というと屋久島が有名ですが、枕崎や坊津でも美味しい鯖が揚がります。他にも、鯛、ウニ、アナゴなど意外と魚が美味いところなのです。

かごっまふるさと屋台村(豆津橋渡さん提供)
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かごっまふるさと屋台村(豆津橋渡さん提供)

 昨年、九州新幹線の終点、鹿児島中央駅の近くに「かごっまふるさと屋台村」がオープン。伝統的な郷土料理から、新しい鹿児島のメニューを揃えた25軒の屋台が連なる横丁です。
 路地を入ると、どこかで見た光景が…。ここは青森県八戸市のみろく横丁を参考に計画されたそうで、オープン当初はすごい混雑だったらしいですが、最近は地元の方も来るようになり、いい感じになっているようです。
 実食編ではぜひ行ってみてください。餌に黒酢を混ぜて養殖した黒酢ブリあらかじめ水で割った芋焼酎を直燗でいただいたら、うまかったなー。そして安かった。
 甘い醤油の苦手な方は、言えば裏からキッ〇ーマンを出してくれます(豆津橋渡さん)

 というわけで鹿児島県編は終了。

泣くかも
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泣くかも

 私は甘い醤油への耐性があるが、デスクや一芸クンにはないはずである。

 鹿児島実食の旅では、彼らに極甘の刺し身醤油を体験してもらおう。泣くかも。

 甘党の一芸クンはうれし泣き?

 次回は特別編。私が東北からリポートする。

 その後に三重県実食の旅リポート。

 徳島県編はその後、29日更新分からのスタートになる。従って23日までに徳島メールをいただけるとありがたい。

 ではまた来週。


(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「奄美の『ミキ』飲んでみました」です。ぜひお読みください。

鹿児島県編(その1) 後ろのそうめん、回−われ!

鹿児島県編(その2) 醤油が甘い。しょういうこと。

鹿児島県編(その3) 小さな「じゃんぼ」は二本差し


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年3月8日

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