第116回 三重県ご当地グルメ(その3) 志摩じゃアワビを丸かじり

特別編集委員 野瀬泰申


 先週登場した三重県民のソールフード「オランダ(焼き)」。「オランダ」と名の付くお菓子は全国にあるが、三重のそれはどこがどう違うのか…。今週いよいよその謎が解かれます。ぜひお楽しみに。

 今週のおかわりは、一芸クンによる干し芋研究リポートですそれと福島県浪江町の復興を後押しするイベントのリポートをいただきました。ぜひご覧ください。
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兵庫実食編で食べた豚まん
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兵庫実食編で食べた豚まん

 土日とも家族はそれぞれ用事があって不在。私は黙々と原稿を書いて留守番をした。

 気分は独居老人で、いつ何を食べようが、何をどう飲もうが勝手次第である。晩ご飯を1人分作るのが面倒だったので、総菜屋さんの世話になった。暗くなるのを待って自由飲酒党員となり、締めは豚まんである。

 大阪勤務時代に神戸の豚まんのとりこになり、それから豚まんで締めることもたびたびとなった。

 豚まんは神戸の中華街で中華まんが日本的に変化したもので、神戸が発祥の地という。美味いはずだわ。

デスクが週末に食べた三崎マグロの兜のベルサイユの薔華ったれ焼き
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デスクが週末に食べた三崎マグロの兜のベルサイユの薔華ったれ焼き

 デスク、元町の中華の店で食べた豚まん、覚えてる?

デスク はい、もちろん覚えてますよ。たいへん美味しゅうございました。あの後、あまりの暑さに熱中症になったことも良く覚えています。

 さて三重県編は大変な盛りあがりを見せ、私の手元には長短様々なメールが届いている。紹介する前に、私の勘違いから。

 伊勢志摩地方の「お茶漬けあられ」。私はご飯の上にあられをかけてお茶を注いで食べるものとばかり思っていた。ところがそうではなく、ご飯は入らないのだそうである。

1週目にデスクが食べたのに…
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1週目にデスクが食べたのに…

 つまり主食はあられ。原料がもち米なので問題ないといえば問題ないが、あられだけを食べるというのにはいささか驚いた。

 確かに前回、写真をのせたカップ入りのあられは、カップ麺と同じ形状である。昆布茶を入れお茶を注げば、そのまま食べられる仕掛けなのであった。

 そんな訳で、本編突入。予告通り「オランダ」を。

根室の「オランダせんべい」
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根室の「オランダせんべい」

MNo.17

 北海道東端の根室市の銘菓にも「オランダせんべい」というのがあり、市内のスーパー等で販売されています。外見はワッフルを直径15cmに平べったくして焼いたイメージ。食感は「染みせん」のような柔らかいおせんべいを食べた感じでしょうか。ほのぼのとした味わいと食感で、根室市街を通ったときには必ず買っています(さっくんさん)

 このオランダせんべいは「食べ物 新日本奇行」以来、おなじみのものである。おなじみのものを紹介したのは、以降のメールと関係するからである。

オランダと平治のワッフル(津ぅのうなぎプロジェクト 謎のオランダ研究所提供)
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オランダと平治のワッフル(津ぅのうなぎプロジェクト 謎のオランダ研究所提供)

MNo.18

「オランダ」という謎のお菓子があります。以前、NHKさんがこの謎を解くべく企画にのりかかってくれたんですが、いわゆるジャパニーズワッフルなんでボツになりました。が、津では、なぜかその名前で各店で売られているのに、各店主らが由来を知らないのです(津市<高茶屋>生まれ津市育ちの須川<39歳>さん)

平治のワッフル(須川さん提供)
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平治のワッフル(須川さん提供)

 ネット上に「津ぅのうなぎプロジェクト 謎のオランダ研究所」というのがある。須川主任研究員は長崎県の長崎市と平戸市、富山県射水市、岐阜県・八百津町、北海道・美幌町、旭川市の「オランダ焼(き)」を調べ、根室や山形県酒田市の「オランダせんべい」を踏まえた上で、次のような推論を述べている。

(1)江戸・明治初期に長崎県平戸にオランダから丸いワッフルが伝来。現地でアレンジされ「オランダせんべい」が誕生する。

(2)明治時代に海路運ばれた平戸のオランダせんべいが富山、函館、根室に伝わる。このうち長い航海を経てふやけた状態で伝わった根室では、最初から柔らかい「オランダせんべい」を製造するようになる。

平治煎餅本店(須川さん提供)
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平治煎餅本店(須川さん提供)

(3)米津風月堂の米津松造の次男、恒次郎が英国からウエハースの機械を導入。しかし軽くて薄いウエハースは受け入れられず、カステラのような生地にあんこをはさんで「ワッフル」の名で販売(1896年)

(4)風月堂のワッフルを津の菓子店が、当時の市民が西洋をイメージしやすい「オランダ」という名前で販売し、今日に至る。

「オランダ」は三重県の、ではなく津市のソールフード。

 しかも「店によっては、法事での手土産に必ずと言っていいほど『オランダ』とのことです」と書いてある。

 中国地方の法事パン、宮城(仙台)の法事和菓子。そして津の法事オランダである。

平治せんべいを使った平治くんアイス(須川さん提供)
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平治せんべいを使った平治くんアイス(須川さん提供)

 この辺が土地によって様々なところが実に面白い。

 オランダは写真のような形状をしているが、店によって微妙に違うようである。それにしてもこんな形の和菓子ってなかったろうか。

 須川さんのメールの後半部分(全文略)に何気なく登場する「平治煎餅(せんべい)」も津の銘菓である。

 阿漕(あこぎ)の海で暮らす漁師の平治は、母の病を治したい一心で禁漁の「やがら」を取って食べさせる。しかし船に忘れた笠が手掛かりになり、平治は死罪に。そんな親孝行をしのばせる平治煎餅は笠の形をしている。

 前回、jimmyさんが「赤福は大阪名物と思っていた」とのメールをくださったが、それは無理もないことであったらしい。

赤福お茶付き(名古屋のす〜さん提供)
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赤福お茶付き(名古屋のす〜さん提供)

MNo.19

 民間の研究団体「現代風俗研究会」の会員です。現在の風俗(人々の暮らし)を研究しようと1976年に多田道太郎、鶴見俊輔などが発起人となり発足した団体です。
 毎年研究テーマを決めて、風俗の研究に勤しんでおります。1995年度の研究で「私鉄沿線おみやげ調査」を実施しました。その研究報告で赤福について、言及しております。
 食べBの中で「赤福は大阪名物なのだと勘違いしておりました」という記述がありますが、この謎を解きました。
 赤福はもちろん伊勢のお土産なのですが、伊勢参りの門前に置いて販売するというスタンスなのです。そのため、お伊勢参りの入口となりうる駅や空港においているのです大阪難波駅、近鉄上本町駅、鶴橋駅、果ては伊丹空港、関西空港にも置いているということでした。
 赤福を大阪名物と勘違いするのも無理のない話なのです(馬込さん)

 言われてみればその通り。伊勢への入り口は同時に出口でもあるので、お土産を買い忘れた人も赤福を求められるというわけ。

 Jimmyさん、納得?

蜂蜜まん(須川さん提供)
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蜂蜜まん(須川さん提供)

MNo.20

 三重県伊勢情報です。青春のソールフードは「モリスパ」。30代〜50代は誰も文句いえません。鉄板、玉子敷のナポリタンです。
 意外に伊勢は関西文化で、お好み焼き屋も多く、お好み定食OKな土地です。
 さて、決戦の舞台。伊勢の「ぱんじゅう」か津の「蜂蜜まん」か。元祖の「七越ぱんじゅう」は廃業したものの、それを継承する店が頑張っている伊勢の勝ちですかね。
「うどん」は伊勢うどんです。私のころは普通の具ののったうどんは「五目うどん」とよんでました(お名前ありません)

名古屋の鉄板スパ
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名古屋の鉄板スパ

 鉄板皿に敷いた薄焼き卵、その上にまっ赤なナポリタン。具はピーマンかタマネギ。トッピングはたこのウインナ。名古屋の文化である。

 その一方でお好み焼き定食がOKという関西文化。

 そして「ぱんじゅう」である。ぱんじゅうはパンとまんじゅうのハイブリッドで、歴史は古い。古いだけではなく北海道、栃木県の足利、熊本県の山鹿、長野県の松本にもあるという。恐らく一時は全国各地にあったものだろうが、現在の生息地がそういった所。

伊勢神宮のバス乗り場で食べたぱんじゅう(ミルフォードさん提供)
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伊勢神宮のバス乗り場で食べたぱんじゅう(ミルフォードさん提供)

 中でも伊勢の七越ぱんじゅうは元祖格と見られていたが、惜しくも閉店した。

 いずれも釣り鐘型をした今川焼きの風情である。

 たこ焼きにも球形のものと釣り鐘型のものがある。これは焼き器の型の違いで、釣り鐘型のものは「カステラ」などにも転用されている。

 型焼きの文化はまた面白い。

 型焼きというとすでに登場しているカレー焼き。西日本各地にあると書いたが、本当にあちこちに存在する。

小浜のカレー焼き(名古屋のす〜さん提供)
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小浜のカレー焼き(名古屋のす〜さん提供)

MNo.21

 カレー焼きについてのご報告。これは福井県小浜市で食べました。お店の名は「あかお」。
 形は大判焼きが棒状になったもので、カレーが入っていました。
 生地は大判焼きというよりもパンケーキって感じです。焦げ目がなくふわっとした食感でした(名古屋のす〜さん)

MNo.22

 富山にカレー焼きはありました。子どものころ(昭和30年代後半から40年代前半の記憶です)、近所の店の大判焼きは3種類であんこ、クリーム、そしてカレーでした。ただし、カレーは後から出てきて、自分のなかでは一時期あんことクリームを駆逐していました(煮豆ライスさん)

 小浜のものは三重のカレー焼きと同じもののようだが、富山のものは大判焼き? あの丸くて平べったいなかにカレーなら、逆に珍しい。

 鉄板つながり。

「美福」のたこせん(HAMAN@広島さん提供)
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「美福」のたこせん(HAMAN@広島さん提供)

MNo.23

 宇治山田駅から臨時休業中の「ちとせ」の代わりに向かっていたうどん屋の山田屋へ行く途中に見つけた「美福」という店を見つけました。
 大阪などの屋台でときどき売られている「たこせん」の文字があったので気になって調べると、1975年創業時、先代が考案したもので、この店の物が大阪でまねされたと美福のHPには記載されていました。
 よく「味噌カツ・てんむす・ひつまぶし」なども三重発祥とする説がありますが、このたこせんも三重発祥とする説があるとは驚きです(HAMAN@広島さん)

 たこせんはソースを塗ったたこ焼きの上下をえびせんで挟んだもの。

 この世界はちょっとややこしい。

名古屋の「たません」
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名古屋の「たません」

 名古屋に「たません」の取材に行ったことがある。目玉焼きをつぶしたものにソースを塗って「たこせんべい」で挟んだものである。元は駄菓子屋の鉄板もの。

 その名古屋にも「たこせん」があって、伊勢と同じくたこ焼きを「えびせん」で挟んでいる。

 伊勢の「美福」が元祖がどうかはともかく、似たような発想の食べ物が世間にはあるというお話。

 今週の最後を飾るのは海産物の専門家の方からのメール。俄然、食欲がわく。

志摩のしょっから(たけのうちさん提供)
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志摩のしょっから(たけのうちさん提供)

MNo.24

 志摩のしょっから(塩辛)は魚に強めの塩をまぶし、桶の中で数ヶ月常温で静置した発酵食品で、大量のアミノ酸等深い旨みと香ばしい芳香が特徴です。
 しょっからを食べると、その塩分の強さから強制的にご飯を口に入れることになります。このため、夏ばての防止食品としての位置づけがあります。ご飯と一緒にいただくのが普通で、お茶漬けもポピュラーです。
 意外に美味しい食べ方が、ピザやパスタ類などに「アンチョビ」の代わりとして調理する方法です。(製法はもともとアンチョビと志摩の塩辛は同じですし、何より塩辛に加工される魚の質と優れた発酵技術には自信があります)
 塩辛に加工される魚は一般的にサバ、ウルメイワシ、サンマ、カツオなどで、魚の種類により味わい、香りが異なり、また、作られる業者、家庭により製法も多様なバリエーションがあります。

うるめいわしがしょっからに(たけのうちさん提供)
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うるめいわしがしょっからに(たけのうちさん提供)

 酒盗として知られるカツオなどの内臓を冷蔵庫などで塩蔵し、短期間で仕上げる一般的な塩辛も三重には多種多様あります。
 次に海女の丸かじりアワビとすりおろしアワビを紹介します。アワビは薄く切って食べるより、丸かじりするのが一番美味しいとは、多くの海女が言います。
 歯が弱った海女は、丸のままのアワビをおろし金ですりおろして食べます。高級なアワビをすりおろしてしまうとは何たる暴挙!と思ってはいけません。
 貝類の貯蔵糖類であるグリコーゲンなどアワビの旨みを残らず口内で味わうことのできる優れた料理法なのです。すりおろしアワビには、サイコロ状に切ったアワビの肝を合わせて食べると、肉の旨みと肝の芳香で悶絶します。あ、B級ではないか(三重県水産研究所 たけのうちさん)

アワビの刺身(たけのうちさん提供)
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アワビの刺身(たけのうちさん提供)

 志摩に「しょっから」のような発酵文化が存在することを知らなかった。なるほど、気候からすれば発酵に向いているから、長い歴史があっても不思議ではない。

 しょっからを箸に先でちょっとつまんで、口中に広がるアミノ酸のうまみと塩分を、冷たい酒で洗って…。ああ、たまらん。

 アワビは丸かじりがいいと言うけれど、私には無理。冷やしたアワビの固さは石と同じである。

 アワビのすり下ろしは、韓国・済州島の郷土料理「アワビのおかゆ」で経験済みであり、その美味なることは疑いをいれない。

川と蔵のまち・栃木
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川と蔵のまち・栃木

 志摩の海の幸は限りないが、今日のところはこの2点にとどめる。メールの残りは次回に。

 玉城町役場からもディープな情報が来着。これも次回。

 その次回で三重県編は終了し、その後は栃木県編とする。久々の関東圏である。ご関係の方も多かろう。ゆるゆると準備をよろしく。

 今週末は、岡山実食の旅である。

 デスク、段取りはOK?

 デスク ばっちりおっけー!! 心配は雪だけ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりはこの冬、欲しいものリストに干しいもを(一芸)です。ぜひお読みください。



三重県編(その1) 「味」という名のおにぎり

三重県編(その2) 売るのは牛、食べるのは鶏

三重県編(その4) 桑名でカレーを食わないと


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年12月7日

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