第232回 福井県ご当地グルメ(その2) 「油揚げ定食」もあります

特別編集委員 野瀬泰申


福井県

 イグアノドンまで登場した「福丼県」。福井や敦賀は強力なソースカツ丼地帯で、嶺南・若狭はへしこや鯖サンドなど魚介が有名です。
 でも、美味しいのは肉や魚だけではありません。今週は、野菜、そして豊富な甘味も登場してきます。
 今週のおかわりは、8月末に岩手県釜石市で開催されるイベントの情報を、デスクがお伝えします
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デスクが長崎で食べた皿うどん
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デスクが長崎で食べた皿うどん

 この回がアップされるころ、私は長崎市にいる。BSジャパンの特番「食の産業遺産」の第2弾を収録するためのロケである。長崎から北九州市に飛び、そこでもロケ。来週の月曜に戻る予定になっている。

 暑いだろうなあ。連日、猛暑日かなあ。

 汗で髪の毛がへたるのではないか。ハンカチで額の汗を拭ったりしたら、セットが台無しになるのではないか。

 というような心配をするのはタレントや女性アナウンサーであって、私は素人のおじさんだから、別にいいのである。

かけるのは酢でなくソース
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かけるのは酢でなくソース

 こんな話を書いているとデスクが写真に困るので、本題に入ろう。

 前回は敦賀から始まって、当地の「かまぼこ定食」が登場した。

 今回は福井県各地の洋食のことから。

ヨーロッパ軒の「3種盛りスペシャルカツ丼」(大阪の原さん提供)
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ヨーロッパ軒の「3種盛りスペシャルカツ丼」(大阪の原さん提供)

MNo.8

 福井のソースカツ丼。カツの説明で昔は豚を食べなかったから牛なのだと。丼の底の屋号が良い。
 敦賀の町に敦賀ヨーロッパ軒があります。福井県下にあるヨーロッパ軒系列のひとつです。ソースカツ丼が注目される福井洋食界ですが、ここのメニューは独特です
 説明は不要。メニューを見てください。見本を見てください。一体全体こやつ等は何者でしょうか?
 福井の武生で食べたボルガライスの画像が出てきました。武生にきたらボルガライスという謎のポスターもあるヨコガワ分店。おされな洋食屋さんといった感じのお店で、ボルガライスだけ食べるのではもったいない感じ。次に行くときは、何にしようかな?(大阪の原さん)

ヨーロッパ軒総本店(大阪の原さん提供)
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ヨーロッパ軒総本店(大阪の原さん提供)

 福井のソースカツ丼。福井市にあるヨーロッパ軒総本店が源流である。

 ソースカツ丼の元祖は大正10年当時、早稲田高等学院の学生だった中西敬二郎さんという説がある。小菅桂子さんは名著「にっぽん洋食物語大全」の中でこう書いている。

「中西敬二郎さんが生みの親と信じて疑わなかった。だから中西さんに会いにも行き、話も伺った」「ところがこれには異説があった。実は『ソースカツ丼』の考案者は高畠増太郎さんだというのである」

スカロップ(大阪の原さん提供)
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スカロップ(大阪の原さん提供)

 以下は同書やヨーロッパ軒総本店のHPにある「小史」から。

 ドイツでの料理修業を終えて明治末に帰国した高畠氏は大正2(1913)年11月に早稲田鶴巻町で「西洋御料理ヨーロッパ軒」を開く。ドイツ仕込みのソースをつかったソースカツ丼が目玉だった。しかしあまり売れず、軍艦の出入りでにぎわう横須賀に移ったのが同6年のことだった。ところがそこで関東大震災にあったため同12年、郷里の福井市に戻った。翌13年1月、現在の所在地に福井ヨーロッパ軒を開店した。中西説より8年早いソースカツ丼の誕生である。

ボルガライス(大阪の原さん提供)
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ボルガライス(大阪の原さん提供)

 昭和14(1939)年に敦賀ヨーロッパ軒をのれん分け1号店として、現在は福井市内に11店、敦賀市内5店など計19店でグループを構成している。

 敦賀ヨーロッパ軒の「パリ丼」はミンチカツをのせたもの。スカロップはトンカツにドミグラスソースを絡めたものである。ジクセリはよくわからない。

 武生(現越前市)のボルガライスはオムライスの上にトンカツ、ソースの組み合わせ。ご当地グルメである。

 トンカツでおなかがいっぱいになったらデザートをどうぞ。

和菓子屋の店頭にて(中林20系さん提供)
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和菓子屋の店頭にて(中林20系さん提供)

MNo.9

 福井県の食文化で真っ先に思い出すのは「冬の水ようかん」です。いや、普通は海産物やソースカツ丼かもしれませんが、これはインパクトが大きすぎたんですよ。
 年末の福井市街。街中の和菓子店にはこのようなポスターが貼られていました。で、コンビニでも保冷器で冷されているものや常温ものなど、帰省してくる皆さんによる大量消費が絡んでるいのか、山積み状態でした。
 激しく疑問に思ったわたしが取材(?)した地元の方は富山出身でしたが、福井で働き始めたころに「なぜ皆んな冬に水ようかんを食べるのか」という疑問が湧き、かといって地元出身の同僚に聞いても「えっ? 何がおかしいの?」と一様に怪訝な目を…と。
 そりゃそうですよね、地元の人にとっては昔っから当たり前の習慣だったのですから。最近では、実は他地域はそうではないらしいと報道されるようになり、地元の皆さんも「これはここだけのものらしい」と気づき始めたようですね。
 これには冷蔵庫普及前の歴史的なバックボーンがあるようで、そもそも水ようかんは冬のものだったらしいのですが、福井ではそれが今にいたるまで現役のようです(中林20系さん)

こたつで水ようかん(中林20系さん提供)
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こたつで水ようかん(中林20系さん提供)

 福井の水ようかんは有名である。栃木県編で日光にも冬の水ようかんがあることを知った。

 水ようかんは寒天を使う。寒天は日持ちがしない。風味も抜けやすい。そこでかつては冬に作って雪や寒気で保存した。もともと冬のものだったのである。それが冷蔵・冷凍技術の発達によって全国的には夏のものになった。

 冬の水ようかんは、昔の姿を伝える貴重な存在である。

 福井の水ようかんの勢力範囲はどこまで?

冬=水ようかん
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冬=水ようかん

MNo.10

 冬季の楽しみ、越前水ようかん。最近は某コンビニにも個食用が売られています。そのコンビニ、越境し石川県加賀市でも販売されているのを確認しました。
 金沢市の系列店にはなかったです。間の小松は未確認。では反対側はどうなのだろう。
 確認はしていませんが、福井県全域とはいかず、案外と敦賀あたりで途絶えるのでは、と予想。嶺南は関西向け商品に切り替わるからと聞いたことがあるからです。そして若狭には「丁稚ようかん」というものがあり、やはり水ようかんで冬季に食べる。越前と違って黒砂糖風味ではない(YKヒルビリーさん)

 実食の旅のときに確認してみよう。

 次のメールは参考になる。

小浜でも名物に
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小浜でも名物に

MNo.11

 小浜名物の水ようかん。水ようかんといえば夏のイメージですが、冬に食べるのが小浜の常識(小浜の秋道さん)

 ということで小浜でも「名物」になっている。

伊勢屋のくずまんじゅうにかき氷をかけて
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伊勢屋のくずまんじゅうにかき氷をかけて

MNo.12

 小浜の夏といえば伊勢屋さんの「くずまんじゅう」。くずまんじゅうにかき氷をかけたものが美味です(高島さん)

東京・神田にもある「秋吉」
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東京・神田にもある「秋吉」

 小浜の皆さんはつるっとして冷たいものがお好きですね。

 高島さんのメールの末尾に「福井市は焼き鳥消費量全国1位(2013)、カツレツ消費量全国1位(2013)、油揚げ消費量全国1位。これには三世代同居率全国1位、共働き率全国1位が影響していると言われています。総菜としての利用も多いようです」とある。

「福井県は焼き鳥消費日本一。その代表格が、東京・神田、渋谷などにも支店を構える焼き鳥の秋吉。福井で焼き鳥といえば秋吉。居酒屋としての業態のほか、スーパーの外に屋台やキッチンカーとしての出店も多い。総菜としての需要も独り占め。県内のイベントにも多く出店。以前、トレーラー型の焼き鳥カーも見た記憶があります」という文章が添えられている。

 小浜市には日本で唯一の食文化館がある。その職員OBからのメール。

福井のトマトとトマトのゼリー
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福井のトマトとトマトのゼリー

MNo.13

 私が小学生のころ、夏になると毎日、近くの海に泳ぎに行き、夕暮れまで遊んでいました。家に帰ると、金タライに日向湯が張ってあって、それで行水。夕食までには少し時間がかかるのですが、遊び過ぎてお腹はペコペコです。
 そんな時、祖母が用意してくれていたのが、井戸水(当時は、家の中にガッチャンポンプがありました)で冷やした地のトマト。その熟したトマトに、白砂糖をかけて、ガブリとかぶりつく。トマトの酸味と白砂糖の甘さが、夏の思い出となっています。
 他にも、まくわうりや、大玉スイカが井戸水で冷やされていました。
 トマトに砂糖は、妻と娘には不評で、野菜に砂糖なんてと言われますが、私にとってはトマトもイチゴも同系、果物と一緒の感覚ですから!!
 お雑煮に黒砂糖といい、昔の人は、甘いものに飢えていたのでしょうか。祖母は麦茶に砂糖を入れていましたが、当時は結構飲んでいましたし、おいしかった記憶があります(食文化館のOBさん)

井戸水や氷水で冷やすと美味しい
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井戸水や氷水で冷やすと美味しい

 亡くなった私の父は夏ミカンに重曹、スイカに塩をつけて食べていたが、トマトに砂糖はかけなかった。

 最近のトマトの糖度はへたな果物より高いものがある。八百屋から果物屋に引っ越すかも。

「お雑煮に黒砂糖」というのは小浜市の一部で昔から行われているもの。小浜のお雑煮は餅と汁だけで具が入らない。その餅に黒砂糖をかければあん餅みたいになる。

 食べ物ではないが、福井にはこんな名物もある。

南青山にて(ちりとてちんさん提供)
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南青山にて(ちりとてちんさん提供)

MNo.14

 南青山の福井県アンテナショップの玄関先には、こんな方がベンチに座ってはりました。福井のモンって、なにがあるかなぁと家の中を見れば若狭塗箸、お数珠もありました。
 そういや、会社行事で夏場に「日本海へ泳ぎに行く」といえば、福井県でしたし、冬場に「カニを食べに行く」というのも福井県でした。今では「経費削減」のため、そういう行事はなくなりました(ちりとてちんさん)

高級なチタン製のフレームです
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高級なチタン製のフレームです

 ベンチに座っているのは恐竜である。それもメガネをかけている。恐竜の化石が出土する勝山市には「かつやま恐竜の森」がある。メガネフレームは鯖江。私のメガネも鯖江の職人さんの手になるものである。

 勝山市の南にあるのが大野市。山間の町である。

上庄さといも
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上庄さといも

MNo.15

 福井県の中でも大野市は九頭竜川の最上流に位置し、豊かな自然と清らかな水に恵まれたまちです。まちの至る所で地下水が湧き出ており、その一つ御清水は、環境庁の全国名水百選に選定されています。
 この清らかな水と、盆地特有の昼夜の寒暖差が大きい気候が、とてもおいしい農産物を育ててくれます。米、そば、サトイモ、ナス、ネギ、穴馬スイートコーン、穴馬かぶら、マイタケ…。
 中でも里芋は全国屈指のブランド品で「上庄さといも」に関しては日本一高い里芋として人気です。身が締まっていて煮崩れしないのが特徴で、煮っ転がしにして食べるのが大野の主流です。

大野名物 半夏生さば
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大野名物 半夏生さば

 米どころの福井県においても最大の種子籾の産地となっていて、また良質な酒米も生産されており、市内4つの酒蔵で生産される地酒も格別です。
 おろしそばが有名な福井県の中でも、大野市在来のそばは味がよく、県産そばの種子のほとんどは大野産を使っています。
 豊かな地下水のおかげで酒だけではなく醸造文化が受け継がれており、醤油や味噌、酢などのほか、山ブドウのワイナリーもあります。豆腐屋さんも多いです。
 和菓子屋も多く、冬のスイーツ「でっちようかん」をはじめ、大野の和菓子は県内でたいへん喜ばれています。
 変わりどころでは「とんちゃん」と「醤油カツ丼」があります。

とんちゃん(とんちゃんを愛でる会提供)
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とんちゃん(とんちゃんを愛でる会提供)

 それぞれに有志が集まって作った「とんちゃんを愛(め)でる会」「世界醤油カツ丼機構(WSKO)」という団体が存在し、市外、県外、全世界(笑)にむけて情報発信しています。
 焼肉屋さんも多いですね。
 他にも半夏生サバ、厚揚げ、すこ、けんけら…まだまだあげられそうです(荒矢さん)

醤油カツ丼(大野市役所提供)
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醤油カツ丼(大野市役所提供)

 ほー、いろいろありますねえ。

「とんちゃん」はホルモンのこと。焼き肉店が多いことと関係している。

「醤油カツ丼」は創作料理。醤油だれにカツをくぐらせる。新潟のたれカツ丼とどう違うのかな? 岐阜県中津川市でも醤油だれを使ったカツ丼を創作している。実食の旅で存在を知ったが、食べなかったなあ。真夏で暑かったから、食欲ゼロでした。

小浜の油揚げ(名古屋のす〜さん提供)
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小浜の油揚げ(名古屋のす〜さん提供)

MNo.16

 大野市は、大きな油揚げが有名で、それが唯一のおかずという定食もあり、ぜひ一度食べたいものだと思ってまいしたが、小浜にも卸されていたので小浜で食べてます!
 新潟の栃尾揚げより少し柔らかな感じかな? 美味いです。和風に焼いただけでなく、ピザ風なんてのも食べていますね。デスク覚えてる?(名古屋のす〜さん)

油揚げは銀座アンテナショップでも人気商品
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油揚げは銀座アンテナショップでも人気商品

 さすが、油揚げ消費量日本一の福井県。油揚げ定食が登場した。かまぼこ定食とどっちがつおいのであろうか。

 最後はこのメール。

小鯛の笹漬け(いけずな京女さん提供)
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小鯛の笹漬け(いけずな京女さん提供)

MNo.17

 あ、忘れてた!!小鯛の笹漬け。
 母の好物でしたので、生前は小浜に行くたんびにお土産に買うて帰ったもんです。レンコダイを3枚におろしてひと塩し、米酢(または甘酢)に浸してから杉樽に詰めます。その際、殺菌効果があると言われる笹の葉を挟むことから「笹漬け」。
 わさび醤油でお造り(刺身)としていただくと、お酒がすすむのですよ。酢飯との相性も良いので、ちらし寿司や手まり寿司にも使われます。お茶漬けにしたらぜいたくで絶品でございます。
 若狭小鯛は江戸時代のはじめから名声を博しており、笹漬けは明治30年代に考案されたとのこと。
 こんなに小さな魚を丁寧に加工して見ためも麗しい逸品に加工できるのは、勤勉で粘り強い福井の県民性ゆえ?(いけずな京女さん)

へしこをダイコンでサンドするといい酒の肴に
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へしこをダイコンでサンドするといい酒の肴に

 小鯛の笹漬けを初めて食べたのは、大阪勤務時代ではなかったか。居酒屋のメニューにあった。美味いものだと思った。

 東京のスーパーでもときどき見かけるが、結構な値段がついている。若狭に行ったら小鯛の笹漬けとへしこの茶漬けを食べるのだ。

 次回はお盆のため休載。皆さん、熱中症に気をつけて夏を乗り切ってください。

 私は冒頭に書いたようにロケで九州である。ラーメンとチャンポンとギョウザで乗り切るぞ。

(特別編集委員 野瀬泰申)



★今週のおかわりは「夏休みの思い出に釜石でご当地グルメ」です。ぜひお読みください。

福井県編(その1) 「かまぼこ定食」あります

福井県編(その3) 「山うに」をご飯の上にちょっとのせ

福井県編(その4) 思い出したぞ! きな粉飯

実食編 とりあえず、焼き鳥110本!


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年8月7日

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