番外編 地域越え連携確認・全国ご当地ちゃんぽんサミット(一芸)


会議終了後「ちゃんぽんサミット宣言」を唱和する各地域の代表者たち
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会議終了後「ちゃんぽんサミット宣言」を唱和する各地域の代表者たち

 【小浜温泉31日=食べB】ご当地ちゃんぽんを旗印にまちおこしを進める地域の代表が一堂に会し、共通の課題や将来のビジョンを話し合う「全国ご当地ちゃんぽんサミット」が3月31日、長崎県雲仙市の小浜温泉で開催された。

 趣旨に賛同したのは地元・小浜のほか、天草(熊本)、水俣(熊本)、平戸(長崎)、日田(大分)、武雄(佐賀)、久留米(福岡)、戸畑(福岡)、八幡浜(愛媛)、網走(北海道)の10地域。この日は日田、天草の代表が欠席したが、8地域の関係者に加え全国のちゃんぽん愛好家、報道関係者らが集まった。

サミットなのに会場は公民館 エコロジー時代のサミットだ
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サミットなのに会場は公民館 エコロジー時代のサミットだ

 本会議では、各地から地元のちゃんぽんの特長(麺の太さ、出しの取り方など)、普及の歴史的背景、まちおこし活動の現状などが報告された。その後「全国ご当地ちゃんぽん連絡協議会」の発足を決め、今後も継続的に連携して活動していくことを確認した。

 サミットの発起人となったのは小浜出身でちゃんぽんをこよなく愛することから「ちゃんぽん番長」の異名を取る雲仙市の職員・林田真明氏。林田氏はこれまでも他の地域と共同でイベントを開催したり、ちゃんぽん空白地への「ちゃんぽん伝来」を後押ししてきた。その集大成がこのサミットといえる。

 各地からの報告は下記の通り。

網走ちゃんぽん

のぼりにも「ご両地グルメ」の文字が躍る
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のぼりにも「ご両地グルメ」の文字が躍る

 ちゃんぽん番長の連携活動が結んだ成果といえるのがこの「網走ちゃんぽん」。ちゃんぽんは西日本を中心に普及しており、網走は完全にちゃんぽん地図の「飛び地」だ。

 網走と雲仙市は、かまぼこやちくわの生産がさかんという共通点があった。2009年6月に網走のイベントで全長7.56メートルのちくわを完成させたところ、11月に雲仙で11.15メートルのちくわを作り、記録更新。翌年、網走が11.95メートルで王座を奪還した。

 この「ちくわ対決」を通じ両市の交流が深まり、ちくわ以外にも活動を広げようとかまぼこの地産地消にもつながるご当地ちゃんぽんの開発に至った。スープは雲仙のものをベースにしており、網走のかまぼこや豊富な海産物をトッピングしている。このことから2つの地域の架け橋となる「ご両地グルメ」と位置付けられている。

八幡浜ちゃんぽん

愛媛実食編に登場した八幡浜ちゃんぽん
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愛媛実食編に登場した八幡浜ちゃんぽん

 愛媛県南西部に位置し、九州と四国を結ぶフェリーの拠点港となっている八幡浜市では、鳥ガラやイリコで出しを取ったあっさりスープが特徴のちゃんぽんが古くから親しまれてきた。これでまちおこしをしようという活動が始まったのが2005年。八幡浜商工会議所青年部が中心となり、市や県とも連携しながら進めてきた。

 ちゃんぽんマップではなく書籍を出版するなど、独自の試みにも着手。ブログを立ち上げ、SEO(検索エンジン最適化)に配慮するなどネットでの情報発信に力を注いだ結果、次第にメディアでの露出も増えてきた。「たかがちゃんぽんごときで」と懐疑的だった人々も、今では次の世代のために八幡浜を盛り上げようと共通認識を持つようになったという。2010年には市役所に「ちゃんぽん係長」が誕生、盛り上げに一役買った。

 商工会議所青年部の伊藤篤司氏は「ちゃんぽんはうどんやラーメンに比べればマイナーな存在かもしれない。しかし、二等星、三等星もつながれば星座となってみんなに認識してもらえる。私たちの連携を通じ、ちゃんぽんで日本を席巻しようではないか」と檄を飛ばした。

戸畑ちゃんぽん

蒸し麺が特徴の戸畑ちゃんぽん
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蒸し麺が特徴の戸畑ちゃんぽん

 八幡製鉄所で知られる北九州市戸畑区のちゃんぽんは蒸し麺が特徴。茹で上がりが早いため、忙しい製鉄マンに愛されてきた。それが「戸畑ちゃんぽん」というご当地グルメとして認識されるようになったのは、1994年に区役所職員有志が「戸畑ちゃんぽんマップ」を作成したころからという。

 こうした伝統はその後も継続しており、2008年にも女性たちの地域活動団体「あやめとあんこう会」が「とばた いってみよ〜よまっぷ 戸畑チャンポン編」というマップを作成している。

 北九州市では小倉北区の焼きうどんなど各区でご当地グルメによるまちおこしが進んでおり、その連携も始まっている。しかし戸畑ちゃんぽんについては活動の推進母体がないため、まだその動きに参加できていない。北九州市では今年10月に「第7回 B級ご当地グルメの祭典! B−1グランプリin北九州」が開催されることもあり、機運が盛り上がっている。その流れに乗ってまちおこしを活性化していきたいと目論んでいる。

武雄ちゃんぽん

武雄のネット番組「ちゃんぽんTV」
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武雄のネット番組「ちゃんぽんTV」

 佐賀県武雄市の旧北方町地区を中心に広がる武雄のちゃんぽんは、盛りの良さで知られている。「ちゃんぽんを完食できたら大人」とまで言われるほどだ。炭鉱の町として栄え、たくさん食べる労働者が多かったこと、野菜が豊富に採れることなどがその背景にある。

 武雄市は市のウェブサイトをフェイスブックに移行させるなど、ITの積極的な導入で話題となった。ちゃんぽんについても、フェイスブックページ「ちゃんぽんBook」の開設や、ユーチューブで「ちゃんぽんTV」と題したネット番組を配信するなど、ITを駆使した活動が目立つ。 

 武雄市つながる部企画課の前田耕作氏は「きょうここに集まった人たちとも、ぜひフェイスブックで『友達』になりつながっていきたい」とアピールした。

平戸ちゃんぽん

平戸はアゴ出しちゃんぽんをデビューさせた
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平戸はアゴ出しちゃんぽんをデビューさせた

 平戸でもちゃんぽんが古くから親しまれており、地元の人たちは帰省したらまずちゃんぽん、戻る前にまたちゃんぽん、というほど。地元の野菜を大量に使うほか、すまきにしたエソのかまぼこを入れるのが特長だ。

 十数年前から飲食店組合によるブランド化の動きがあり、「平戸ちゃんぽん」ののぼり制作、新メニューの開発などが進んできた。オランダとの交流をモチーフとし、乳製品などを用いた「オランダちゃんぽん」をはじめユニークなちゃんぽんも登場している。

 しかしまちおこしとしての活動はまさにこれから。

 この日演壇に立った平戸観光協会の里村亮氏によれば、まちおこしの起爆剤になるものがないか思案しながら昼食を取っているとき、地元の人が「とりあえずちゃんぽん」と注文しているのを聞き、これだと思ったという。そこにちゃんぽん番長から声がかかり、今回のサミット参加となった。翌日の「全国ご当地ちゃんぽんフェスティバル」では、新開発のアゴ出しちゃんぽんをデビューさせた。

天草ちゃんぽん

各地域からの報告に真剣な表情で耳を傾ける参加者
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各地域からの報告に真剣な表情で耳を傾ける参加者

 担当者が急な人事異動で欠席となったが、代理でちゃんぽん番長が天草の事例を紹介した。

 天草ちゃんぽんは長崎、小浜と並んで3大ちゃんぽんと言われることもあるが「実はこれは自分が言い出したこと」と番長が告白。しかし天草には創業100年以上の店も含め多くのちゃんぽん提供店があるという。

 店舗を「札所」とし、八十八箇所めぐりをイメージしたスタンプラリーなど、活発にまちおこしイベントも企画。小浜と共同で、県をまたいだスタンプラリーも実施した。合計44店を回らなくてはいけないというハードルの高いものだったが、クリアする猛者が続々と現れたという。

水俣ちゃんぽん

水俣の魅力について熱弁をふるう三牧賢治氏
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水俣の魅力について熱弁をふるう三牧賢治氏

 水俣でもちゃんぽんはふるさとの味、ソウルフードだ。帰省した人は「ちゃんぽんを食べなきゃ帰ってきた気がしない」と話す。このちゃんぽんで、水俣のイメージを変えていこうと奮闘している。

 市内で食堂を営む三牧賢治氏は「水俣は風光明媚ないいまちだ。しかし、全国の小学生が水俣という地名を『水俣病』で最初に覚える。そのイメージがある限り、多くの人に来てもらうことは難しい」と訴える。「水俣」の地名の後に続く言葉が「病」ではなく、「ちゃんぽん」になる日まで努力を続けると強い決意を語った。

 水俣ちゃんぽんは比較的あっさりしたスープが特徴。だから「4杯、5杯と食べられる(三牧氏)」とのこと。

久留米ちゃんぽん

久留米の老舗・光華楼のちゃんぽん
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久留米の老舗・光華楼のちゃんぽん

 久留米はやきとりやラーメン、ぎょうざ、ちゃんぽんなど多くのB級グルメを複合的にアピールし「B級グルメの聖地」というキャッチフレーズの浸透を図っている。その旗振り役となっている、久留米市観光コンベンション協会の豆津橋渡氏は、このサミットの議題として「ちゃんぽんの学術的研究」をしてはどうか、と提案した。

「ちゃんぽんの語源は中国・福建省のあいさつだという説や、沖縄の『チャンプルー』が関係しているとする説など、複数の考え方があり確定していない。また、今回各地の少しずつ異なるちゃんぽんが集まったが、もっと大きく違うちゃんぽんも存在する。それらの情報を集めてちゃんぽんが伝播していったルートを探り当て、それを『ちゃんぽん街道』と名づけてはどうだろう」とのアイデアも披露した。

小浜ちゃんぽん

長崎実食編に登場した小浜ちゃんぽん
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長崎実食編に登場した小浜ちゃんぽん

 最後に、小浜ちゃんぽん愛好会の佐藤忠大会長が報告を行った。2007年に数名の有志でちゃんぽんマップづくりを開始したが、すでにマップは第8弾まで制作されている。いまやイベントで小浜ちゃんぽんを出せば長い行列ができるほどの人気ぶりだ。

 しかしご当地グルメを地域活性化につなげていくためには、ブームを追うのではなく、できること、小さなことを積み上げていくことが肝心、と強調する。

 小浜では郷土の食文化を伝えるため、学校の授業でちゃんぽんづくりを実践している。震災後は被災地の小学生を招待し、地元の小学生とともに体験してもらった。昨年夏には東北で炊き出しを行いちゃんぽんを提供。「ちゃんぽん」を知らない人にも楽しんでもらえたという。

◇     ◇

全国ご当地ちゃんぽん連絡協議会の首班指名を受け、施政方針を語るちゃんぽん番長
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全国ご当地ちゃんぽん連絡協議会の首班指名を受け、施政方針を語るちゃんぽん番長

 各地からの報告では、熱の入った発言者が規定の時間を3倍以上もオーバーして話し続けるハプニングもあった。しかしサミットの運営側は、どんなことも広い心で受け入れるのがちゃんぽんの精神、とばかりに泰然自若と構えていた。

 連絡協議会の代表者選出では「ここはちゃんぽん番長だろう」「番長しかいない」「番長で異議なし!」との声が次々と上がり、満場一致で林田氏が代表に就任した。

 最後に参加者全員で「ちゃんぽんサミット宣言」を唱和し、結束を固めあった。


〜ちゃんぽんサミット宣言〜


一、わがまち自慢のちゃんぽんを、とことん愛します。

二、大好きなちゃんぽんを、ちゅるちゅるっと、楽しく食べ歩きます。

三、各地域のちゃんぽんの多様性を認め、お互いの魅力を高めあいます。

四、各地域のちゃんぽんのルーツや歴史、食材について楽しく研究します。

五、よそのまちのご当地ちゃんぽんともつながって、その魅力を全世界に発信します。

     2012年3月31日 第1回全国ご当地ちゃんぽんサミット in 小浜 参加者一同

小浜温泉の美しい夕日は、2000年に九州・沖縄サミットが開催された部瀬名岬を思い出させた
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小浜温泉の美しい夕日は、2000年に九州・沖縄サミットが開催された部瀬名岬を思い出させた

 この後記念撮影となったが、ここでちゃんぽん番長が「ひとつ提案がある」と声をかけた。まるでスティーブ・ジョブズ氏が講演の最後に「One more thing,」と口にした瞬間のようだった。

 「写真撮影時のポーズを考えたんだ」。この発言に会場はどっと沸いた。「左手はどんぶりを持つ手つき。エアどんぶりです。そして右手で箸を表現。『ちゃん!』と発声して麺をつかみ、元気よく『ぽーん!』とこの右手を高々と掲げるのです」。

 説明を聞くうち、参加者の顔にとまどいの表情も浮かんできたが、網走の北野貴丸氏が音頭を取ると1回で全員のポーズがぴたりと決まった。

 それは、ちゃんぽんが地元の人や観光客の心を「つかみ」、やがて世界へ「飛び出して」いく未来を象徴しているかのようにも見えた。

 

ちゃんぽんポーズの動画はこちら



番外編 全国ご当地ちゃんぽん乱れ食い(デスク)


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2012年4月6日

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