第108回 宮城県ご当地グルメ(その2) 夏が来ーれば思い出ずんだ

特別編集委員 野瀬泰申


 岡山県編で話題になった、法事で仏前に供える「法事パン」。宮城県編ではパンではなく和菓子を供えることが判明しました。改めて日本の広さを実感。2回目となる今回は、仙台や石巻の食をご紹介します。
 今週のおかわりは、先週末、千葉県勝浦市で開催された「食で街を盛り上げろ!ご当地グルメ開国宣言in勝浦」をデスクがリポートします。あわせてご覧ください。
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先週の土日、勝浦ではイベントが開かれた
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先週の土日、勝浦ではイベントが開かれた

 先週の土日は京都だった。愛Bリーグの会議に出てきたのだが、台風17号が接近中で思い出したように雨が降る。行きたい所はあったものの、今回は断念した。とてもだんねんだった。

 東京から会場のホテルに直行、翌日も台風から逃げるように東京へ直帰。半径1キロ以内の移動で終わってしまった。

 今週は宮城県編の2回目。前回、予告したように、この方のメールから仙台の行事食をたどってみる。「法事のときは和菓子」に続いて、お盆の食事。

おくずかけ、作ってみました(デスク)
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おくずかけ、作ってみました(デスク)

MNo.10

 お盆の行事は8月に行い「おくずかけ」と「ずんだもち」を食べました。
「おくずかけ」はナスや里芋などの夏野菜や干し椎茸、豆麸、油揚が入った汁物で、塩を中心に味付けし、わずかに醤油を加えて色味をつけた後で片栗粉にてとろみをつけます。最後にゆでた白石温麺(うーめん)を加えていました。
 時間が経つにつれ、温麺や豆麸に出しが染みてグズグズになるのがまた美味で、作った翌日くらいのものが好きでした。
「ずんだもち」は、いまや全国区になりつつあるので説明不要という気がしますが、少しだけ涙の追憶を。
 私の実家は大家族だったので、使う枝豆の量も半端ではなく「ずんだ」を作るにあたっては、子どもの両手で抱えるほど大きな擂鉢の半分以上が緑色に染まりました。

ずんだもち
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ずんだもち

 フードプロセッサーが普及する前の昭和後半、柔らかめにゆでた枝豆をむいて擂鉢の中に入れ、擂り粉木で潰す作業は子どもの役割でした。
 これがなかなか大変で、ひと粒ずつ丹念に豆を潰さないと、きめ細かく舌触りの良い「ずんだ」ができないのです。
 また、豆を潰すと薄皮が大量に浮きあがるのですが、これが残っていると食感が悪くなるため、できるだけ取り除かねばなりません。
 折しも夏休みの昼下がり、丹念に枝豆を潰しては箸で皮を取り除き…をひたすら繰り返す作業は、遊びたい盛りの子どもにとってかなりキビシイ仕事でした。
 その上、苦労して作ったにも関わらず、食べるときには決まって「目が粗い。潰し方が足りない。薄皮が残っている」と父に文句を言われる上、半日近くかけて作ったのに、食べるのは10分、というお約束の展開とくれば、幼心に無常を感じたのは言うまでもありません(団塊ジュニアさん)

「ずんだもち涙の追憶」はある意味で羨ましい。

枝豆をすり潰す
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枝豆をすり潰す

 郷土の、季節の、家族のための食べ物をつくった体験を持っておられることが羨ましいのである。いつまでも消えることがない思い出。その中にはきょうだいや両親の表情、声までもが、つい昨日のことのようによみがえるのであろう。

 実際、この文章を読んでいるとセミの声や、すり鉢をする音まで聞こえてくる。

 枝豆文化圏ではない所で生まれ育った私にとっては、メールの最初から最後まで、ほほ笑ましい驚きに満ちている。

 同じく郷土料理から。ちょっと豪華に。

はらこ飯(katka(かてぃか)さん提供)
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はらこ飯(katka(かてぃか)さん提供)

MNo.11

 宮城は仙台を中心に「県北」を「仙北」、「県南」を「仙南」といいますが、仙南の季節の味といえば「はらこ飯」。
 普通のいくら丼はプレーンなご飯に味つけしたイクラ(はらこ)をのせますが、はらこ飯は秋鮭を炊いたおつゆでご飯を炊いた「炊き込みご飯」に、薄味のイクラをのせた物です。
 ちょっと野暮ったいけど食べると美味しく懐かしいふるさとの味でもあります。写真は母が作ったはらこ飯です。
 他には家庭でよく食べられるものに白石温麺(うーめん)があります。変わったところでは、ウナギ蒲焼きのタレを天丼の丼汁に使うお店もあります(katka(かてぃか)さん)

 この春に被災地を巡ったとき、仙台の南、亘理(わたり)駅で「はらこ飯」の看板を見た。「うちこそ本場」みたいな自信にあふれたものであった。

亘理駅で見た「はらこ飯」の看板
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亘理駅で見た「はらこ飯」の看板

 実は私は現地で「はらこ飯」を食べたことがない。そいう名前のものを東京で食べたのだが「秋鮭を炊いたおつゆでご飯を炊いた炊き込みご飯に、薄味のイクラをのせた物です」という文章を読んで、即座にあれがニセモノあるいは手抜き商品であったことを知ったのだった。ぐやじー。

 本物はそういうものだったのか。東京のヤツは白いご飯にほぐした鮭を混ぜ、その上から醤油漬けのいくらをまぶしたものであった。

 一手間か二手間抜けているではないか。

 今度、宮城に行ったら本物を食べる。絶対食べる。

 宮城出身で熊本在住のこの方から、郷愁漂うメールが届いた。

風月堂の仰天アイス(apple-aさん提供)
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風月堂の仰天アイス(apple-aさん提供)

MNo.12

 熊本も朝晩ようやく涼しくなり、さんまは当然のこと、はらこ飯が食べたいなぁ、川原で芋煮がしたいなぁ、と落ち着かない今日このごろです。
 先日、急きょ仙台で浸水地域のとある調査に加わって参りまして、思った以上に地元のみなさんが元気であったことにホッとしたところです。元気にして見せてくれているだけ、ではないことを祈りつつ。
 そこでふと思い出したのが、気仙沼のこと。
 2009年夏に仕事で仙台へ行った際、仕事の合間を縫って同僚とレンタカーを借り「リアスアーク美術館」を見に行き、某有名店の寿司を堪能してきたのでした。

ゲンジボタルアイス(apple-aさん提供)
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ゲンジボタルアイス(apple-aさん提供)

 その道すがら発見したのが、風月堂の仰天アイスの数々! ササニシキやずんだは当然のこと、タコ、真珠、ゴボウ…。われわれ3人は手分けして味見をすることに。
 私はゲンジボタルアイス。もし虫が入ってたらどうしよう…と恐る恐るふたを開けてみると…黒ゴマアイスの上にチョコレートで虫ちゃんらしき絵と金箔が。脱力。
 同僚1はうにアイス。意外とふつうにイケる! バニラにうにの濃厚さがマッチ!
 同僚2は牛タンアイス。絶句。食感が合わない…「もう牛タンはいいかな、って感じ」。茶色い焼きそばアイスもあったんですが、たった3人では調査もここまでが限界でした。
 ほやアイスやさんまアイスは避けたいところですが、いつかほかの種類も食べてみたいと思っています。

しそ巻(apple-aさん提供)
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しそ巻(apple-aさん提供)

 先日の仙台シュッチョー時は、仕事の関係でなかなか調査ができず残念でしたが、今回初めて気づいた疑問がひとつだけ。
 揚げかす(玉?)をトッピングしたそばを「花そば」と呼ぶのは、全国的な常識ですか? それとも局所的な現象ですか?
 ほかの写真は私の愛するずんだ・くるみ餅と、実家の冷蔵庫に筋子とともに常備されている「しそ巻」です。あー食べたい!!(apple-aさん)

焼うにアイス(apple-aさん提供)
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焼うにアイス(apple-aさん提供)

 やはり、はらこ飯とずんだは宮城県人の魂を揺さぶる食べ物らしい。熊本住まいが長ければ、なおさら懐かしいであろう。

 私も本物のとんこつラーメンが懐かしい。麺をすすった後の少ないスープにご飯を少量ぶちこんで食べたい。

 ところで風月堂の仰天アイスの数々には恐れ入った。

 こういうアイスをつくる必要があったのかどうかは別にして、よくもまあ色々と考えたものである。

花そば(apple-aさん提供)
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花そば(apple-aさん提供)

 私にとって長い間、仰天アイスのチャンピオンは「焼きナスアイス」であったが、ここで「牛タンアイス」を新たにチャンピオンの座へ迎えたい。そして敬して遠ざけたい。

「花そば」は初見。東海道を歩いたときに四日市で「花かけうどん」を見たが、それは花カツオをのせたうどんであった。

 恐らく東京風に「たぬき」と言うにはやや具が多いので「花そば」としゃれたのではないか。個店のメニューの可能性もある。 どなたかご存じ?

MNo.13

 宮城県出身です。ホヤは西日本でも在日韓国人の方がおられる地域は流通しているのではないでしょうか。私は大阪勤務時代に鶴橋のコリアンタウンでホヤ(モンゲと呼ばれていました)を見つけ喜んで買って帰り食べた記憶があります(今は山形で地産地消さん)

韓国人もホヤを食べる
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韓国人もホヤを食べる

 このメールに導かれて「モンゲ」で検索したら「モンゲピビンパップ」に行き着いた。韓国料理の中の「ホヤの混ぜご飯」である。海に近い町では盛んに食べられているようである。海域が近いのでホヤがとれ、独自の食べ方が定着した。

 韓国人もホヤを食べるということを覚えておこう。

 ただ、西日本のコリアン社会ではどうだろうか。鶴橋で売っていたということではあるが、東北産の生のホヤかな。あるいは本国からの輸入品かな。

 石巻から。

石巻特産のカキ
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石巻特産のカキ

MNo.14

えび餅 沼えびを丸ごと炒り、酒、塩で味を調えてから餅に入れたものです。宮城の北部と岩手の南部の地域で食べる餅のようで、その地域の道の駅でも置いているところが多かったです。
あざら 春先の白菜漬けとメヌケと呼ばれる魚のアラを入れた粕汁です。
カキ 実は養殖の発祥の地は石巻で、料理研究家の岸朝子さんのお父さんが石巻で養殖法を広めたことはあまり知られていません。なので、国産カキの稚貝は宮城県から各産地に運ばれることが多く、岡山・日生のカキオコのカキも稚貝は宮城県からのものを使っていたそうな…震災前までは(石巻の加納さん)

滋賀のテナガエビ(いけずな京女さん提供)
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滋賀のテナガエビ(いけずな京女さん提供)

 えび餅に用いる「沼えび」というのは、淡水に生息する、いわゆる川えび。ただテナガエビかスジエビのどちらであるかはわからない。

 えびのカリカリ感と餅のもっちり感とのハーモニーは素晴らしい……ような気がする。食べたことがないので。

 滋賀県編で登場した「えび豆」のえびと同じものだが、西日本では釣りの餌にもなる。

「あざら」に用いられる「メヌケ」という魚はフカカサゴ科メバル属。釣り上げられると水圧の急激な変化で目玉が飛び出すので「目抜け」。

気仙沼のソウルフード
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気仙沼のソウルフード

 近い親戚に「キチジ」(キンキ、キンキン)がいる。どちらも東北ではめでたい魚である。

 八戸で「キンキン入りのせんべい汁」を食べたが、高級料理であった。そうとは知らずに残してしまった。ごめんなさい。

 宮城のカキ。気仙沼のカキ養殖場で「フランスにはここの種ガキが行ってるんだ」という話を聞いたことを思い出す。いまはどこまで復興しているのだろうか。

白石城(石巻の大野さん提供)
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白石城(石巻の大野さん提供)

MNo.15

 白石と言えば「白石城」と「温麺(うーめん)」。片倉小十郎など戦国アニメ人気で歴史女子が増えたのが有名です。
 温麺は10センチ程度に切られた乾麺。、温かい醤油ベースのあんかけ汁でいただきます。古くからある郷土料理です。確か何種類かあったかと思います。
 老舗のお店は平日でも混雑していました。東北本線白石駅から白石城の間周辺にお店がたくさんあります。観光案内で手作りのマップがあり、とてもよく出来ています。
 岩沼市には岩沼とんちゃん(ホルモン)があります。以前、気仙沼ホルモンと対決して勝利したのを覚えています(石巻の大野さん)

温麺は短い(大阪の原さん提供)
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温麺は短い(大阪の原さん提供)

 近所に山形出身の夫婦がやっている総菜の店がある。その店には常時、白石温麺と玉こんにゃくが置いてある。山形なので玉こんにゃくはわかるが温麺はどうして?

 温麺は表面に油を塗らない短い素麺のイメージか。もっとも冷たくして食べるものではなく、文字通り温かいつゆでいただく。

 青森県黒石市と宮城県白石市の市職員が、相互訪問して碁会を開いているという話を聞いたことがある。続いていますか?

気仙沼ホルモン
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気仙沼ホルモン

 岩沼のとんちゃんはジンギスカン鍋で焼くのが特徴で、たれは後づけ。

 対して気仙沼ホルモンは網焼きでホルモンにはもみだれが施されている。添えられた千切りキャベツにウスターソースをかけてつまむ。

 被災地の旅の途中で気仙沼ホルモンを食べた。美味いものであった。ニンニクが利いていた。ウーロンハイが進んだ。

 前回、登場した「凍みっぱなし丼」について地元の方から。

凍みっぱなし丼(玉造商工会さん提供)
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凍みっぱなし丼(玉造商工会さん提供)

MNo.16

 私たち玉造商工会が力を入れておりますのが、岩出山の伝統食材、凍みっぱなし(凍み豆腐を乾燥させる前段階、凍ったままの食材)に衣をつけてカツ丼風に仕上げた「凍みっぱなし丼」による地域興しでございます。
 若干補足してご説明させていただきますと、凍みっぱなし丼は平成22年度に、小規模事業者新事業全国展開支援事業「地域資源∞全国展開プロジェクト」の中で開発された商品で、平成23年10月より大崎市岩出山・鳴子地域の12店舗で提供を開始、平成24年10月1日現在、13店舗で提供されております。
 ミルフォードさんが合わせてご提供されていた、宮城県登米市の「油麩丼」とは別の商品となっております(玉造商工会さん)

 市内13店舗で提供中。末永く定着するといいですね。

呼称問題は深い
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呼称問題は深い

 で、ミルフォードさんが食べたのは凍みっぱなしと油麩と白石温麺という宮城3兄弟が合体したメニュー。それぞれ別物と認識しておりますのでご安心を。

 回転焼き、今川焼きの呼称問題は深いようである。実に千差万別。同じものなのにどうしてこんなに呼び名が違うのか。不思議である。

 これに関するメールを何通かいただいているが、もう少しまとまったら紹介する。

 ではまた来週。


(特別編集委員 野瀬泰申)



宮城県編(準備体操編) 宮城の味を「いただいてください」

宮城県編(準備体操編2) 石巻から東北を元気に

宮城県編(その1) 法事が済んだら、朝からモナカ

宮城県編(その3) 青ばた、青豆、ひたし豆

宮城県編(その4) 「ママも喜ぶ パパ好み」(商品名)

宮城実食編 そぼろがのったメロンパン


★今週のおかわりはご当地グルメで勝浦が盛り上がった!(デスク)です。ぜひお読みください。

 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年10月5日

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