第130回 徳島県編(その2) 鳴門のうどんは「鳴ちゅるうどん」

特別編集委員 野瀬泰申


栃木県といえば東武電車
<写真を拡大>

栃木県といえば東武電車

 栃木実食編のスケジュールを詰めているところである。東京から近いので楽な日程になるだろうと高をくくっていたら、とんでもなかった。

 確かに浅草とか北千住とか東京東部からのアクセスはいい。デスクは楽ちん。しかし私が住む東京西郊からだと朝のラッシュの時間帯の満員電車を何度も乗り継がないと行けないのである。還暦過ぎの体力、気力で果たして耐えられるであろうか。どこかに前泊することになるのかなあ。

 デスク、私は仕事はほどほどにするから、後は頼むよ。

 ということで徳島県編の2回目である。ちょっとメールが少ない。

 まずは前回に引き続き徳島ラーメンの話から。特徴は前回明らかになった。ではなぜそうなったかの考察を。

日本ハムが徳島ラーメンのルーツ?
<写真を拡大>

日本ハムが徳島ラーメンのルーツ?

MNo.7

 徳島ラーメンは20世紀最後のご当地ラーメンとして、登場しました。
 とんこつ醤油味のスープに、細麺、豚バラ肉をすき焼き風に炒め煮したものと、生卵がトッピングされているのが特徴です。
 この徳島ラーメンに限らず、徳島県はラーメン激戦区で赤系、白系、黒系、トッピングの形も様々なお店が存在します。昔からの老舗も多いんですが、それは日本ハムの前身である徳島ハムの存在が大きいと思います。ハム加工する際にでるハンパなクズ肉がラーメンにつかわれたんだと思います。
 今や、日本ハムと言えば北海道ですが、生まれは実は徳島だったんですね(アルバトロスさん)

鳥取の牛骨ラーメン
<写真を拡大>

鳥取の牛骨ラーメン

 ハム会社があればとんこつが出る。捨てるのはもったいない。くず肉が出る。ほおっておくのはもったいない。

 こうして、とんこつ醤油味が生まれ、チャーシューの代わりに豚の薄切り肉を甘辛く煮たものを用いるようになった。

 そう考えるのが合理的であろう。

 鳥取県中部の牛骨ラーメンが誕生した裏に「終戦直後、牛骨はタダだった」という事情が潜んでいたことは鳥取県編で明らかになった。

 庶民の味誕生のきっかけになるのは、案外に「タダ」とか「捨てるくらいなら」というものである。

富士宮やきそばの具・肉かす
<写真を拡大>

富士宮やきそばの具・肉かす

 富士宮やきそば学会の渡辺会長は「富士宮やきそばは肉かす、だし粉、青ノリといったもともと捨てられていたものでできています」と言う。駄菓子屋のメニューだからうんと安くしないと子どもが食べてくれない。原価率をぎりぎりまで下げようとすればこうなるのであろう。しかしそんな努力の結果生まれた食べ物は妙に美味い。

 栃木で食べることになる「ポテト入り焼きそば」も「大根そば」もキーワードは「増量」である。原価率を下げつつお腹を膨らますための工夫。これがご当地グルメの神髄であろう。

 ところで徳島ラーメンの赤系、白系、黒系ってどんなもの? どなたかメールを。

MNo.8

「鳴(なる)ちゅるうどん」というのがあります。素朴な味わいです。
 さぬきうどんと鳴ちゅるうどんが同じうどんという名前でいいのかと思うくらい、別の食べ物のようです。これはこれでありかと……(たんぽぽさん)

「鳴ちゅるうどん」とは何か。

「アルバトロス」さんが説明してくださる。

鳴ちゅるうどん(メタボでダイエットが必要な狸さん提供)
<写真を拡大>

鳴ちゅるうどん(メタボでダイエットが必要な狸さん提供)

 鳴門に今は「鳴ちゅるうどん」と呼ばれるうどんがありますが、昔から食べられているうどんです。
 特徴は麺に腰が全くなくて、長さも太さもまちまちなことです。讃岐うどんの腰の強さに比べると、対極にある腰抜けうどんです。
 腰がないからマズイ訳でなく、優しい味で、風邪をひいたりして食欲のないときや、お酒を飲んだ後に食べたくなります。
 なぜこんなうどんができたか。ある説によれば、塩田で働く人々が炎天下の過酷な労働の後に、食欲がなくなっても食べられるものとして昔から食べられてきたといいます。この説、有力ではないでしょうか。

徳島そごうの地下「船本うどん」の鳴門うどん(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

徳島そごうの地下「船本うどん」の鳴門うどん(カラスダニ@松山さん提供)

 四国で腰抜けうどんに出合えてうれしい。

「メタボでダイエットが必要な狸」さんによると、鳴門市内に10数軒あるうどん屋さんで食べられるという。

 徳島ラーメンも「メンデーレ」、すなわち麺が柔らかい。鳴ちゅるうどんも柔らかい。久留米人なら「このうどんは煮えとらん」と言うに違いない強腰のさぬきうどん県に隣接しながら、対極的な柔らかさはなぜであろうか。

 意地を張って柔らかいのではあるまい。

 私は日本各地で麺類を食べながら「さぬきうどんこそ、その腰の強さにおいて少数派ではないか」と思う。さぬきうどんに対抗できるのは、芯を残してゆでる名古屋の味噌煮込みうどんくらいではないか。

名古屋のきしめん
<写真を拡大>

名古屋のきしめん

 きしめんなんか、べろべろだもんね。

 ところで「鳴ちゅるうどん」は徳島の写真家、中野晃治さんの命名。鳴門のうどんを取材して書いた本のタイトルが「鳴ちゅる」であった。

「鳴門のちゅるちゅる食べるうどん」の意である。本の出版が2006年なので名前としてはまだ7年の歴史しかないが、うどんそのものは数100年前からある。

 徳島実食編では観光初心者のように鳴門の観潮船に乗る。そして、このうどんを食べる。デスク、覚えておいてくれ。

すだち練とうがらし(Poco@焼きまんじゅうさん提供)
<写真を拡大>

すだち練とうがらし(Poco@焼きまんじゅうさん提供)

MNo.9

 ドンピシャのタイミングで先週、カミさんが職場旅行で徳島を訪れました。2泊でうどん5杯と徳島ラーメンと……もちろん宿飯とは別で。
で、お土産一式のうち徳島関連の写真をお送りします。
1)すだち練とうがらし
 味はずばり徳島版のゆずこしょう。すだちのためか香り爽やか! 同じく土産の酒盗と同割で混ぜたら酒が止まらん。
2)鳴門金時キャラメル
 金時味で美味しかったらしいです。「なんかキャメルというより芋を食べてる感じ」(子どもたちの感想のみ)
3)かっぱえびせん、中国・四国限定の柑橘ミックス
 すだちを含む柑橘の香り爽やかな味のえびせんでした。
4)本場鳴門、糸わかめ
 これぞドンピシャ!と思いきや、製造元は兵庫県南あわじ市。鳴門は徳島だけのものではないようで……(Poco@焼きまんじゅうさん)

鳴門金時キャラメル(Poco@焼きまんじゅうさん提供)
<写真を拡大>

鳴門金時キャラメル(Poco@焼きまんじゅうさん提供)

 すだち練とうがらしは「とうがらし」という名前が付いているのでパス。

 糸わかめは昔から鳴門の名産である。

 徳島県のどこかに行ったとき、お土産に「灰干しわかめ」をもらった。わかめに灰をまぶして干したもので、水を張った器で戻すとまたたくまに水が真っ黒くなった。水を何度か取り換えるうちにやがて透明になる。するとわかめがいま取れたような瑞々しさでよみがえった。現在は灰ではなく炭を使うらしい。

読めない…(カラスダニ@松山さん)
<写真を拡大>

読めない…(カラスダニ@松山さん)

MNo.10

 徳島は同じ四国の県ですけど、我がみかん県からはエライ遠いです。ということで行く機会が意外に少ないです。その分、行けば新鮮な出合いがあって楽しいです。スダチ、ラーメンなどは皆さん書かれると思うのでお菓子ネタで。
 「小男鹿」と看板のお店でのこと。これが私は読めず、相棒に「さおしか」と教えられました。お菓子自体は非常に上品でふんわりした食感。おいしゅうございました(カラスダニ@松山さん)

小鹿男(カラスダニ@松山さん提供)
<写真を拡大>

小鹿男(カラスダニ@松山さん提供)

 ラーメンの取材で徳島に行った折、確かデパートで見た。そして私も最初はどう読んでいいのかわからなかった。店の女性に「さおしか」と教えてもらい「何と優雅な名前」と思ったものであった。

 そのとき見た値段から「これは贈答用かな」という印象を持ったのであった。

 ともかくも徳島市の老舗の味である。

 和菓子が続く。

亥の子菓子(いけずな京女さん)
<写真を拡大>

亥の子菓子(いけずな京女さん)

MNo.11

 鳴門の渦潮を見るのが好きで、学生のころ(まだ橋などできてないころ)はちょくちょくフェリーに乗って見に行ってました。なんか大自然の神秘みたいなもんを感じて、気持ちがリセットされるんですよね。
 そんな渦潮に似てないこともない、阿波の郷土菓子。「亥の子菓子」も大好きです。
 「亥の子」とは旧暦10月の「亥」の日に豊作を願う行事で、かつては西日本の農山村ではどこでも行われていました。
 亥の子とは猪の子、すなわち多産の猪にあやかって豊作と子孫繁栄を祈るということで、亥の子をイメージした「亥の子餅」なる餅菓子を食べるのが習わしです。
 いまでも和菓子屋さんの中には、旧暦10月になると「亥の子餅」を売り出すところがありますね。
 しかし「亥の子菓子」は餅菓子ではなく焼菓子で、徳島県北西部の旧井川町(現三好市)の「亥の子」で振る舞われていたお菓子。
 小麦粉に水飴を加えた白い生地と、黒砂糖を加えた黒い生地を重ね、細く伸ばして輪っかにしたものを焼きます。
 赤と緑のポイントメイクが可愛いのと、素朴で柔らかい甘味が魅力的な“和風クッキー”です。
 焼き菓子として完成度が高く、行事食にとどめておくのはもったいないと思われたのでしょうか。いまではお土産屋さんや道の駅などで通年販売されております。由緒と歴史のある郷土菓子が受け継がれていくのは、嬉しいですね。
 ただ、徳島県の西部でだけ、「亥の子」の振る舞いがなんでこの形でこういうお菓子になったのか? 私にはわかりませんので、ご当地の方に解説いただければ幸いなるかな(いけずな京女さん)

ほほー(いけずな京女さん)
<写真を拡大>

ほほー(いけずな京女さん)

 亥の子餅の歴史は古そうである。宮中行事と関係があったのではなかったか。でも私はよく知らない。

 「亥の子菓子」についても知らないので「ほほー」という感じでこのメールを読んだのであった。

 甘い物が続く。

「あたりや」の大判焼き
<写真を拡大>

「あたりや」の大判焼き

MNo.12

 私のおすすめ。
1「あたりや」の大判焼き(徳島そごう1階)
 ちょっと皮が薄めで、あんこがたっぷり入った大判焼きです。私は徳島駅前に行ったら、ほぼ必ず並んで買っていました。
 あのあんこの多さと美味しさ1個60円は超お買い得です。ぜひお試しください。あ、大判焼きを焼いている年季の入った機械も必見です。ガラス越しに眺めていると並んでいることを忘れてしまいます。
2「川田光栄堂」(美馬市脇町)の麦だんご。
 私の実家近くの和菓子屋さんです。素朴な味わいのお団子で、サンキライの葉っぱで包んでいます。あんこ入りとあんなしがありますが、どちらも甘さ控えめで美味しいですよ(お名前ありません)

「川田光栄堂」の麦だんご

「川田光栄堂」の麦だんご

 うーん、徳島実食編はデスクより一芸クン向きかな。どっちも行く?

 と言いつつ、三重実食編では蜂蜜まんを3個も食べた私である。何とかなるか。

 蜂蜜まんも機械が文句も言わずに焼いていた。あの手の機械は仕組みが丸見えなのに、見ていて飽きない。好きである。

 文中の「サンキライ」は漢字だと、山帰来。サルトリイバラのことである。

 甘いものを食べた後は。

阿波ブレンド(花咲ききゃべつさん提供)
<写真を拡大>

阿波ブレンド(花咲ききゃべつさん提供)

MNo.13

 「そういえば」と気付いたのが、徳島は意外と自家焙煎コーヒーのカフェや喫茶店があることです。
 複数の店舗を構える「やまなみ珈琲」や「TOKUSHIMA COFFEE WORKS」のようなある程度の規模のあるお店のほか、それほど大きくない街角の喫茶店のようなお店でもコーヒー豆を自家焙煎していたりします(花咲ききゃべつさん)

地元の喫茶店でコーヒーを飲む
<写真を拡大>

地元の喫茶店でコーヒーを飲む

 いいねえ、いいねえ。自家焙煎のコーヒー店。

 私は実食の旅に出ると、できるだけ地元の喫茶店でコーヒーを飲むようにしている。コーヒーが美味しい店、そうでもない店と様々ながら、旅先の喫茶店はいいものである。

 行くぞ、徳島の喫茶店。

 さて、今週はこれまで。というか、もう紹介するメールが残っていない。このままメールが途絶えたらピンチである。

 ご関係の皆さまのお力添えをお願いする次第である。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「鳴ちゅるうどん食べてみました」です。ぜひお読みください。

徳島県編(その1) 再びの「メンデーレアマボヤーン」

徳島県編(その3) 花嫁は 来ても行っても 菓子配る

徳島県編(その4) 絞れ! 柑橘王国!!


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年4月5日

【PR】

【PR】

【PR】

大人のレストランガイド

大人のレストランガイド

NIKKEI×ぐるなびが提供する、大人のためのグルメガイド。接待や会食、ビジネスシーンなどにおすすめのお店情報をご紹介。

ぐるなびWoman

ぐるなびWOMAN

女性のための女子会・デートのグルメ情報サイト。おすすめのレストランや居酒屋をこだわりやシーンに合わせて検索できます。

ぐるなびWedding

貸切パーティコレクション

企業向け貸切、OB会etc… 少人数〜大人数でも貸切OKのレストラン

結納・顔合わせ

特別な日を過ごすための完全個室のお店情報や、マナー・段取りまで

このサイトについて

日本経済新聞社について