第235回 和歌山県ご当地グルメ(その1) 「じゃばら」は自腹で買いましょう

特別編集委員 野瀬泰申


和歌山県

 食べBもいいよいよ最終盤。46道府県目となる和歌山県編のスタートです。
 海あり、山あり、川あり…。自然に恵まれた上に、商都・大阪に隣接するなど、豊かな食文化が容易に想像できます。有名な梅やみかんはもちろんのこと、多種多様な食べ物が登場しそうです。
 今週のおかわりは、恒例の在京アンテナショップ紹介。デスクが、有楽町にある「わかやま紀州館」に行ってきました
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主役は圧倒的に重機
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主役は圧倒的に重機

 弊社の隣に立つ某ビルが改築のために取り壊し中である。私がいるフロアからはその全貌が丸見えなもんだから、折に触れて興味津々で見下ろしている。

 巨大なクレーンが2基あって、重機を屋上につり上げた。10台ほどの重機がコンクリートの壁や天井を壊し、残骸を鉄の容器に入れる。その容器をクレーンが地上につり下ろす。

 ホコリが立たないようにホースで水をまいたり、重機で壊せない鋼材をバーナーで切断したりするのは人間の仕事だが、主役は圧倒的に重機である。

誰がどうやって下ろすの?
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誰がどうやって下ろすの?

 どんどん作業がはかどっていく。どんどんビルが低くなっていく。

 このビルの場合は取り壊しのため、クレーンが建物の外に設置されているが、建設するときクレーンはビルの最上階に置かれ、階が増すごとにクレーン自体が上に行く。そして私の疑問は「完成したらクレーンは誰がどうやって下ろすのであろうか」というものである。

 大方の想像はつくし、説明されたこともある。しかし不思議だ。考えついた人は偉い。

和歌山県編スタート(ちりとてちんさん提供)
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和歌山県編スタート(ちりとてちんさん提供)

 そんなことを書いているバヤイではない。今週から和歌山県編である。

 大阪在勤時代、和歌山市には何度か行った。みなべ町に梅を見に出かけたこともある。しかし山間部や太平洋側については不案内なのである。現在の和歌山県がこんなことになっていることも全く知らなかった。

「ドーシェル」の天然酵母パン(海南海草地方広域観光協議会提供)
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「ドーシェル」の天然酵母パン(海南海草地方広域観光協議会提供)

MNo.1

 和歌山県北部の紀美野町にはこだわりパン職人が集まっていて、週末には京阪神から多くの方がパンを求めて朝早くから行列を作っています。中には、車での対向が怖いくらいの道をひたすら走ってやっと出合えるパンもあります。それでも、県外の方がたくさん来られて、お昼過ぎには売り切れてしまうお店もあります。
「ドーシェル」では、旬の果物を使った天然酵母パンが本当に美味しい。独特の風味はクセになります。
「岳人(がくじん)」のクリームパンは、高級カスタードプリンのような感じ。どっしりとしています。午後には売り切れていることも。自分で作った石窯で焼いているそうです。
森のパン屋さん」も県外から移住された方で、自分で建てたログハウスで自家栽培した小麦を使った天然酵母パンを焼いています(おすぎちゃん)

「岳人」のクリームパン(海南海草地方広域観光協議会提供)
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「岳人」のクリームパン(海南海草地方広域観光協議会提供)

 紀美野町ってどこ? 地図を広げると和歌山市の東南10キロほどに位置する。南海和歌山市駅からバスで1時間10分というから、決して便利な場所ではない。にもかかわらず県外からの移住者も含めて個性的なベーカリーが集まっているというのは、すばらしいことである。

 パンにうるさい京阪神の人々が週末に長駆、パンを求めてやって来るのであるから、よほど美味いパンをこしらえているのであろう。パン好きの私は思わず身を乗り出してしまった。

「キミノーカ」のジェラート(海南海草地方広域観光協議会提供)
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「キミノーカ」のジェラート(海南海草地方広域観光協議会提供)

MNo.2

 紀美野町の「キミノーカ」は農業を営むオーナーが、自分の作る果物や野菜のおいしさを知ってもらおうと開いたジェラートのお店です。収穫した果物や野菜で作るため、季節ごとに様々な味が楽しめます。個人的には「トウモロコシのジェラート」がお薦めです(きみちょん2号さん)

「わかやま紀州館」の梅干し売場
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「わかやま紀州館」の梅干し売場

 パンだけではなくジェラートも。紀美野町は美味しそう。

 次に登場する「じゃばら」。梅干しとミカンが売り場の大半を占めるアンテナショップ「わかやま紀州館」で売り上げナンバーワンを誇る人気者である。

じゃばら飴(ちりとてちんさん提供)
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じゃばら飴(ちりとてちんさん提供)

MNo.3

「近畿のチベット」なんて言われる和歌山ですが、世界遺産の熊野三山と高野山を擁し、海の幸・山の幸が豊富な県ですね。
 また先日、大往生された「たま駅長」、双子パンダのアドベンチャーワールドには、多くの人々が訪れています。
「紀州備長炭使用」てな札がぶら下がってる焼き鳥屋さんは、美味しそうに感じますね。
 夏に欠かせない「蚊取り線香」の生産量は、日本一だそうです。
 世界初の全身麻酔で乳がん手術を成功させた華岡青洲先生のご出身地でもあります。
 もう20年以上になるでしょうか。南北朝時代に楠木正成がいまの千早赤坂村に籠城の折、中辺路町の土豪が一晩走り続けて兵糧を送り届けたという史実をもとに、姉妹都市提携が結ばれました。その記念行事に参加し、千早赤阪村から中辺路町へ歩いて行きました。
 全行程食事付きで、その時に初めて「めはりずし」をいただきました。なんとも言えない素朴さに心打たれました。 
 歩きながら、歴史的な説明もしていただいたとは思うのですが、記憶に残っているのは、平安衣裳を身にまとい、熊野古道ではしゃいでいたアホな自分の姿だけでした。
 花粉症に効くといわれる「じゃばら」が自生している北山村は、知名度がアップしています。じゃばらの果皮は、フラボノイド(植物に含まれている色素、苦み、辛味成分。抗酸化作用を持っている)成分のナリルチン(抗アレルギー作用、抗炎症作用)が豊富に含まれているそうですが、強い苦みを持っているため、その苦みを取り除き、ナリルチンを残して美味しく食べやすくされたドライフルーツが「ナルリッチ」です。国立和歌山高等専門学校と共同技術で出来た商品だそうです。じゃばら飴もあります(ちりとてちんさん)

 北山村のHPにはこう書いてある。

じゃばら(和歌山県提供)
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じゃばら(和歌山県提供)

 村一番の特産品。ユズやダイダイ、カボスの仲間となる柑橘系果実。とはいっても「じゃばら」って初めて聞く名前だなんて人も多いかもしれません。
 それもそのはず。この果実、そもそも日本で自生していたのがわが北山村だけ。一本の原木からスタートしたじゃばら栽培は、今や村の産業を支える特産品にして、救世主。
「花粉症に効くので愛用している」という方が急増し、多くのマスコミに露出したことでブームとなった今、9haのじゃばら農園を約15人の農家で管理する一大産業にまで発展したのです。日本でここだけの「幻」の果実が、村の財政を救う「奇跡」の立役者に。

ドライフルーツも(ちりとてちんさん提供)
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ドライフルーツも(ちりとてちんさん提供)

 原木が1本だけあって、それを1軒の農家が守ってきた。調べてみると、日本で唯一の品種とわかる。農家の熱意と科学的根拠が結びついて、じゃばらの栽培が始まった。いまでは村一番の特産品に。ストーリーを知れば、1度は口にしたくなる果物である。

 花粉症の人には見逃せないものであろう。

 特産品はまだある。

ホロホロ鳥(いけずな京女さん提供)
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ホロホロ鳥(いけずな京女さん提供)

MNo.4

 和歌山県日高川町の特産品は「ホロホロ鳥」。アフリカ原産のキジ科の鳥で、フランス料理では高級食材とか。
 もともと、和歌山県の養鶏試験場で試験飼育されていたのですが、旧中津村の特産品にすべく1982年から本格的に飼育が始まったそうです。
 もっとも最初から順調にいったわけではなく、さまざまな苦労を乗り越えて、日本随一のホロホロ鳥産地となりました。ホロホロ鳥は神経質なうえに、甲高い鳴き声や羽毛のホコリなどが大変らしい。
 私は「ホロホロ鳥の焼きとり」をいただきまして。鶏肉よりしっかりした歯ごたえと、牛肉かと思えるほどのうま味があるのにびっくりしました。塩だけで、タレやソースなんか全く不要。
 そうそう、日高川町は紀州備長炭の産地でもあるんですよ。美味しい鳥肉を備長炭で焼いたら、最高に美味しいに決まってますよね。フランス料理みたいに詰め物をしたり凝ったソースをかけたりするの、もったいない。
「美味しい薫製や味噌漬けなどの加工品も作っているので、ホロホロ鳥を食べに来てくださーい」と、日高川町の皆さんおっしゃっておりました(いけずな京女さん)

再挑戦したい(いけずな京女さん提供)
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再挑戦したい(いけずな京女さん提供)

 日高川町は御坊市の東隣にある。安珍清姫伝説の舞台、道成寺があることは知っていたが、ホロホロ鳥は初耳である。

 ホロホロ鳥はフランスではポピュラーな食鳥で、生産量も世界一という。東京でも食べさせる店があって、物は試しと食べてみた。私はフランス人ではないので「鶏肉とはだいぶ違うな」とは思ったが、探してまで食べようとは思わなかった。でも日高川町に行けば、いろいろな調理法で食べさせてくれるらしいので、再挑戦したいものである。

 その日高川町からメールが届いた。

ゴンちゃん漬け(日高川町役場提供)
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ゴンちゃん漬け(日高川町役場提供)

MNo.5

 日高川町では「ゴンちゃん漬け」を食べる風習があります。通称「イタドリ」と呼ばれるその辺りに生えている雑草を、漬け物にしたもの。
 町内のあちこちに自生する山菜ですが、栽培している方もいるので、もはや雑草ではないかもしれません。
 地元では、普通に食卓に並ぶ日常食ですし、地域の皆さんで加工したパック詰めの商品も直売所の人気商品です。
 コリコリとした食感と素朴な味つけと香りで、お箸の止まらない美味しさです(移住してきた若者・村越さん)

イタドリ(日高川町役場提供)
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イタドリ(日高川町役場提供)

 イタドリは高知県で食用にすることが知られているが、和歌山県にも昔から食べている地域があった。久留米ではスカンポと呼んだかな。でも食べなかった。漬物にしたらどんな味、食感になるのであろうか。

 田辺・みなべ地域は梅が特産。南高梅は特に名高い。その特産品を使った食べ物が生まれた。

たなべぇサンド(わかやまの和ちゃん提供)
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たなべぇサンド(わかやまの和ちゃん提供)

MNo.6

 和歌山のみなべ・田辺地域は日本一の梅の里で、梅の最高品種「南高梅」は和歌山発祥です。みなべ町の高田梅を母樹として、みなべ町の南部(みなべ)高校の教諭らが調査・開発したことから「南高梅」と名付けらたのです。
 その紀州南高梅の一大産地、田辺市の田辺商工会議所が日本一の梅の里であることを全国に発信しようと「たなべ梅サンド開発委員会」を立ち上げ、開発してきたのが「たなべぇサンド」です。
「たなべぇサンド」に使用されている「うめどり」は梅干しをつくる過程でできる梅酢を飼料に混ぜて育てられた鶏で、鶏肉の臭みがないのが特徴。昔からこの地域では夏に弱った鶏に梅酢を与えると元気になったことがヒントになったとか。
 田辺市では「梅酒で乾杯条例」、みなべ町では「梅干しでおにぎり条例」を制定するなど、地域一体となって梅の産地をPRしています(わかやまの和ちゃん)

南高梅(和歌山県提供)
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南高梅(和歌山県提供)

「たなべぇサンド」に使われている「うめどり」は興味深い。鶏も夏場には体力が落ち、食欲もなくなる。そこでクエン酸を含む梅酢を飲ませて元気にする飼育法が生まれた。

 多分、鶏には酸っぱさを感じる味覚がないのであろう。あれば梅酢を嫌うヤツもいたはずである。我が社には辛さに反応する味覚をほぼ欠いた社員がいるなあ。

 ともかく、和歌山は梅である。高知のユズ、徳島のスダチ、大分のカボス。覚えるのが大変。

 海に目を転じよう。

ハモカツ丼(海南市観光協会提供)
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ハモカツ丼(海南市観光協会提供)

MNo.7

 海南市では紀伊水道、延縄漁により漁獲される高級食材「戸坂の鱧(ハモ)」が、昔から京都や大阪の料亭で重宝されてきたという歴史があります。
 この歴史的背景とともに、紀州の鱧を知ってもらいたいという想いから開発されたのが「ハモカツ丼」です。
 鱧を揚げて卵でとじた丼に、梅干しを添えています。あっさりとした鱧の味わいと食感に梅肉がベストマッチです。B級品の鱧を使用することで、手ごろなお値段で「紀州の鱧」を食べることができます。
 市内のレストラン一木などで提供しています(海南市観光協会さん)

鱧
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 海南市は和歌山市の南隣にある。

 海から離れた京都市内でなぜ鱧なのか。大阪湾で鱧はとれるのか。かねて疑問に思っていたが、先日、大分県中津市に行って「ここから京都や大阪に鱧が行っています」という話を裏声で聞いた。そして海南市も昔から鱧の供給地であった。

 体長1メートルの鱧には3500本の骨があるという。ハモカツ丼にするにも骨切りしないと食べられないであろうから、当然その技術が地元に存在するということになる。ということはしかるべき季節に行けば、鱧料理を手軽な値段で口にできるのであろうか。

安く食べられる?
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安く食べられる?

 中津では東京の半分とか3分の1の値段で鱧のコース料理が食べられるが、海南市もそうなら穴場かも。

 和歌山なのにアレが出てこない、と思っておられる方も多いであろうが、大物は次回以降に。それではさらなる和歌山メールを待っている。

 9月5日(土)21:00からBSジャパンで「食の産業遺産」の特番第2弾がOAされる。おヒマな方はご覧ください。


(特別編集委員 野瀬泰申)

神奈川県ご当地グルメみんなで実食編、参加者募集
 

デスク 食べBは、読者の皆さんからいただくメールによる情報をもとに各県のご当地グルメを発掘、それを参考に野瀬が現地に出向いて「実食」するというコーナーです。神奈川県は、首都圏ということもあり、読者の皆さんと一緒に「実食」の旅をすることにしました。

 事前に参加者を募り、読者の皆さんに「神奈川の気になる食」を食べていただき、メールで報告してもらいます。「ご近所グルメ」でも「ちょっと遠出」でも構いません。その情報を持ち寄って、野瀬とともに「神奈川県実食編」にまとめ上げたいと思います。

 野瀬は9月20日(日)に神奈川をウロつきます。一緒にウロつきたい方はどうぞお気軽にお越しください。

 参加ご希望の方はまず、いつものメールアドレス(tabeb@nikkei.co.jp)宛てに、自分で実食してみたいと考えている神奈川県ご当地グルメを明記の上、参加の表明をしてください。神奈川ウロつきツアーなどの詳細については、個別に連絡を差し上げます。

 なお、交通費飲食費などは自己負担になりますので、あらかじめご了承ください。応募締め切りは9月11日です。たくさんのご応募、お待ちしております。

  みんなで実食編は終了しました。




★今週のおかわりは「わかやま紀州館に行ってきました」です。ぜひお読みください。

和歌山県編(その2) 祝! 近大水産研卒業

和歌山県編(その3) 紀州はスシの国ですし

和歌山県編(その4) なれ鮨vs湯浅の醤油

和歌山県実食編 君にこのシラスを知らすたい


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年9月4日

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