第22回 福島県(準備体操編) ベッド5台を独り占めした夜

馬肉は食べたか?
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馬肉は食べたか?

 学生時代に会津若松で数日を過ごした。大学の友人の家に遊びに行ったのである。(福島の食についてのメール投稿先はこちら)

 「息子の友だちが東京から来てくれた」というので、家族、中でもお母さんの歓待ぶりはいまでも忘れられないほどだった。

 お邪魔している間、考えてみると考えられないほどの酒を飲んだ。「会津の地酒を楽しんでほしい」という親心だったのだろう。真新しい一升瓶が何本も用意されていた。

 さて、その折には何を食べたのだろうか。40年近くがたったいま、残念ながら何も覚えていない。ひょっとしたら馬肉が出たかもしれない。いや出たのではないか。

 覚えているのは大きな皿を覆う大量のギョウザである。お母さんの手づくりであった。

 いまなら少しはしみじみとその味を楽しむことができそうだが、当時は飲むこと食べることしゃべることに全力を傾けていたから、親の愛情に包まれていることを感じながら食卓につくといった余裕はなかった。そのことが悔やまれる。

 友人とは事情があって音信が途絶えたままになっている。お母さんはお元気なのであろうか。


会津若松でソース味の卵とじカツ丼
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会津若松でソース味の卵とじカツ丼

 再び会津に向かったのは2003年11月のことだった。

 当時の写真を見ると、新潟市と長岡市で「イタリアン」を食べ、醤油だれカツ丼を食べ、どういうルートでか忘れたが会津に入ってソースカツ丼の暴れ食いをしている。喜多方でラーメンも食べている。馬肉を食べた記憶もある。

 そうだ、あれは『全日本「食の方言」地図』を書くための取材であった。

 途中、郡山に寄ったらしい。駅のレストランの食品サンプルに並ぶ卵とじカツ丼とソースカツ丼の写真を撮っている。ただし当時のカメラに手ぶれ防止機能がついていなかったせいで、完全にピンぼけである。

郡山ではカツ丼が両論併記
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郡山ではカツ丼が両論併記

 そのときは会津若松に泊まる予定ではなかったのに、なぜか泊まることになり、案内所でホテルを紹介してもらった。

 行ってみるとなかなか風格のあるホテルではないか。だが、通された部屋のドアを開けると応接セットがどーんとあり、驚きつつ次のドアを押して入るとベッドが5つも並んでいた。急な予約だったので、唯一空いていたファミリータイプの部屋に通されたらしい。

 1人でベッド5台を独り占め……って、全然嬉しくないのであった。どこに寝たらいいのであろうか。こんな場合、壁側で寝るべきか。それとも窓側に寝るべきか。どこでもいいが、夜中に目が覚めたら知らないおじさんが隣に寝ていたらどうしよう。

 4台のベッドは不要なのだが、片付けるわけにもいかない。片付けられない。

 「不気味だよう」「怖いよう」と心の中で叫んでいるうちに朝になったので、何事もなく爆睡したようである。

会津で馬刺し(ピンボケ御免)
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会津で馬刺し(ピンボケ御免)

 記憶の糸は鮮明につながっているわけではないけれど、ある文学作品の取材で栃木県の那須塩原に行って、なぜかそのまま県境を越え会津鉄道と野岩鉄道に乗った。何という駅であったか、駅員さんはおらず、列車が来る時間になると近所の女性たちが駅に現れて改札業務に当たっていた。業務委託というやつであろう。

 雪の季節であった。ガタンガタンと山間の鉄路を懸命に走る電車あるいは気動車の車窓の外を、雪にまだらに覆われた山々が手の届きそうな近さで通り過ぎていく。それは美しいと言うしかない景色であった。


 福島市にも行った。トランジットで泊まったと言うべきかもしれない。

 その夜は雨の中で1軒の食堂に遭遇した。福島市には浜松と同じく、フライパンで焼く円盤形ギョウザがあるのでギョウザを注文したが、円盤形ではなかった。

喜多方で食べたラーメン
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喜多方で食べたラーメン

 しかし新たな発見もあった。焼き鳥メニューに「ダルム」があったのである。久留米と全く同じく豚の腸であるという。聞いてみると「福島の医大生がドイツ語でそう呼んだから」というのが理由であった。久留米と寸分変わらない。

 この偶然に驚くとともに、ひょっとしたら久留米や福島に限らず、医学部がある町にはけっこう「ダルム」という焼き鳥ネタが存在するのかもしれないと思ったのだった。

 前回も触れたが、福島は「冷やし中華にマヨネーズ」地帯であろう。中京地区のそれについては「すがきや」との関連が浮かんでいるが、福島には一体どんな背景があるのか。

 福島県に関してはこの程度の知識しかない。在住の皆さん、非在住の皆さんからのメールを待ちたい。


 では福島からの情報を待つ間、いただいているメールの中からいくつか紹介しよう。まずは高知県編で登場した「卵が入った練り物」関連。


卵といえば福島には温泉卵の「ガンバ卵ショ」があります。福島駅構内に展示されていました(アミー隊員)
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卵といえば福島には温泉卵の「ガンバ卵ショ」があります。福島駅構内に展示されていました(アミー隊員)

MNo.あ

 我が故郷大阪にも、ゆで卵の入った練り物があります。大寅の「玉桜」と「小桜」。大寅さん以外のものもあると思います。
 普通の鶏のゆで卵が入ったものが「玉桜」で、うずらのゆで卵が入ると「小桜」。お節などのお重や、ちょっとしたオードブルに食べます。人によってはお弁当に入れることも。
 見た目が華やかなので、食卓に出てくると嬉しい一品です(大阪出身の埼玉人さん)


 大阪では明治の初めからおなじみの「大寅蒲鉾」。「だいとら」と読む。「おおとら」と読んだら、ただの酔っぱらいのことになるので、十分に注意したいものである。

 「小桜」は関東煮の種として食べたことがある。東京から大阪にやってきて「雲のはんぺん」がないのにびっくりしたが、その代わりに大寅の「梅焼」があった。


会津の「たまごぱん」(同)
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会津の「たまごぱん」(同)

MNo.い

 卵の入った練り物って珍しいモノなんでしょうか? 練馬区北町商店街に2軒あった練り物屋や練馬区上板商店街にあった練り物屋では普通に売っていました。
 呼称は「バクダン」でした。家の近所に軽トラでやってくるおでん屋さんも「バクダン」と称して卵入りの練り物を売っていました。子どもの小遣いには高価な品物だったので、ちくわぶなんか食べながらうらやましく眺めてたモノです。
 これは練馬区ローカルな現象なんてしょうか? 言われてみれば茨城のスーパーではあんまり見かけない気がします(こばりんさん)


 確かに東京のおでんに入っている「バクダン」はゆで卵をすり身で包んで揚げたもの。対して高知の卵系練り物はゆでたものが多い。

 高知では「卵巻き」という寿司を頻繁に見かけた。薄焼き卵で巻いた太巻きである。高知における卵の存在感は意外に大きい。

 福島のギョウザのことを書いたら、こんなメールが。


自動販売機に「浜松餃子」とあるけれど……(浜松のMartinさん提供)
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自動販売機に「浜松餃子」とあるけれど……(浜松のMartinさん提供)

MNo.う

 Martinはこの猛暑、酷暑、炎暑でも、相変わらずエアコンなしで頑張っております。 時々妻がMartinの部屋に来て、様子を伺ってるようです……生きてるかどうか?
 さて、ついに登場しました「浜松餃子自動販売機」が。しかし、どこを見ても飲料だけだら〜。
 浜松餃子って書いてあるじゃん……変な自動販売機(浜松のMartinさん)


生き残っていた船橋のソースラーメン(机さん提供)
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生き残っていた船橋のソースラーメン(机さん提供)

 ギョウザの自動販売機というのは、果たして可能なのであろうか。秋葉原で有名になったラーメン缶も中身はコンニャクである。小麦粉製品は保存が難しいからコンニャクになったのであろう。

 浜松の自動販売機に入っているギョウザは小麦粉製品であろうか。それとも……なに?

 ということではなくて、ギョウザでまちおこしをしている浜松餃子学会が昨年、飲料メーカーの協力で設置した飲料水の自動販売機。浜松餃子と同学会のPRが目的である。

 同学会は今年もB-1グランプリin厚木に出展する。会場配置図を見ると浜松餃子は第2会場の厚木野球場の中に陣取ることになっている。初出展の「備後府中焼きを広める会(府中焼き)」と「石巻黄色い焼きそばアカデミー(石巻焼きそば)」に挟まれている。


食品スーパー店内で暴れ食い?(机さん提供)
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食品スーパー店内で暴れ食い?(机さん提供)

MNo.え

 終わってしまった千葉の話で恐縮です。「かにや」の閉店で絶滅したと思われていた船橋のソースラーメン、生き残っていました。
 船橋市中央図書館の裏にある「中華料理大輦」というお店です。ソースラーメンの元祖といわれている「花蝶」(現在は営業していません)の目と鼻の先にあり、もしかしたら、元祖の味を受け継いでいるのかもしれないと思い、訪ねてみました。
 確かにメニューにはソースラーメンがありました。頼んで待つことしばし。出てきたのが写真のモノです。キャベツに、紅ショウガ、青のりという組み合わせからわかるように、ほぼやきそばに近いものでした。黒石のつゆやきそばよりもやきそばでした。確かに麺を炒めた形跡はありませんが、味自体は間違いなくやきそばでした。
 あの「かにや」の「サッポロソースラーメン」の味は、やはりもう絶滅してしまったようです。
 ちなみに、高知とは何の関係もありませんが、東京・立石にある「倉井スーパー」というお店に行ってきました。総菜屋の店先で、あるいは店の奥の座敷で飲むというのが職人の街・立石のポピュラーなスタイルですが、食品スーパーの店内で飲む、というのはさすがに初めてでした。
 缶ビール、缶チューハイはお店の冷蔵ケースから勝手に持ってきて飲む、というのもイカしています。もちろん、値段も「スーパー」でした(机さん)


 食品スーパーの奥で飲む? 連れて行ってくれ。

 またまたシンガポールから日本酒タダ飲み報告が届いた。


シンガポールで燗酒。ラーメンもいろいろあります(星のあいすさん提供)
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シンガポールで燗酒。ラーメンもいろいろあります(星のあいすさん提供)

MNo.お

 今日も暑いシンガポールです。今年は日本の方が暑いようですが。
 楽しみにしていた山陽山陰フェアが始まりました。鳥取県から中井酒造さん、広島県から盛川酒造さんが参加されています。
 はい。先週末行って来ました。
 中井酒造さんのお酒は燗にも向いているそうで、当地にはめずらしく燗酒の試飲もありました。相方は燗酒は初体験で(そういえば、家で燗つけたことなかったなー)、「燗酒の方が、香りが立つんだね」と言って感動していました。
 中井酒造さんのお兄さんは、前の日にタダで飲んで行った私の顔を憶えていていました。が、相方が一緒だったので、有機米を使った年間1000本限定の酒とか、これまた有機米を使った原酒とか、いろいろ飲ませてくださいました。ありがとうございます。
 そして、またまたたくさんのラーメン! 尾道は知っていましたが、広島はお好み焼きじゃないの? 日本は「ラーメン王国」として有名なんだろうな?。
 「マーベラスクリーム」は、豪華絢爛かつかわいいので女性に大人気のようでした(試食なし)。
 山陽山陰フェアの後は「ジャパニーズフードコレクション」フェアです。白河ラーメンとかきびなごの唐揚げとかがチラシに掲載されていました。酒造会社さんも来るのかな。
 楽しみです(星のあいすさん)


大きくなった東京スカイツリー
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大きくなった東京スカイツリー

 燗酒の良さがわかるとは、相方(外国人)はなかなかいいセンスをお持ちのようである。これからは自宅でもときどき燗酒を飲ませると、いま以上に働いてくれるかもしれないのである。

 広島つけ麺はつけ汁が真っ赤であるので、ヘタに食べると生命にかかわることがある。私は近づかないようにしている。

 それにしても在住日本人が多いとはいいながら、シンガポールの日系スーパーは頑張っているなあ。きめ細かいなあ。

 マーベラスクリームは冷え冷えの大理石の上でアイスをこねて出すスタイル。どこかで見かけて買おうと思ったが、若い女性が行列を作っていたので諦めた。

 福島県からは「写真を撮ってくるからちょっと待て」といった声が聞こえてきている。どんな情報が届くか楽しみである。

 では次回から福島県編本番スタート!


(特別編集委員 野瀬泰申)

★アミー隊員リポート「『こんにゃくあいす』を食べながら思った福島県」はこちらからご覧ください。



 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2010年9月3日


■福島県編
準備体操編 ベッド5台を独り占めした夜「こんにゃくあいす」を食べながら思った福島県(アミー隊員)
その1 ラジウムそばあります行ってきました! B-1グランプリ in ATSUGIの下見(アミー隊員)
その2 天ぷらまんじゅうはおかずであるお茶とビールと「たまごふわふわ」(一芸)
その3 「朝ラー」は実在するのか?海を越えるB級グルメの魅力(一芸)
最終回 嗚呼、憧れの大衆食堂「いかにんじん」「松前漬け」「数の子」の三角関係(一芸)
実食編 なんじゃこりゃラーメンを食べ歩く浜通りにハマる道理(一芸)


■入門編:「食べBって何?」という方はこちらからご覧下さい
■実食編:<映像リポート>はこちら
料理・素材名から探す(インデックス)ページはこちら


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