第223回 京都府ご当地グルメ(その2) 京都人は濃厚民族である

特別編集委員 野瀬泰申


京都府

 生八ツ橋は食べないし、「おばんざい」とは呼ばないなど、外から見えるイメージとはちょっと違っていそうな京都の食。京都・洛中ほど「実際の食生活と、外から思う食生活が乖離(かいり)している土地はない」との指摘もありました。
 今週も出てきます。「意外な京都の味」。そして、野瀬が事前にターゲットに据えた丹後の食もいよいよ登場してきます。どんな味が出てくるのか、お楽しみに。
 今週のおかわりは、神奈川県などで始まったアンテナショップの大幅割引セールについて、デスクがご紹介します
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東京・八重洲の京都館も祇園祭ムード
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東京・八重洲の京都館も祇園祭ムード

 2回目の大阪勤務時代、まだ小学校に行く前の長男を連れて京の祇園祭を見物したことがある。山車は豪華絢爛(けんらん)。お囃子は優雅。

 しかし真夏の日盛りの京都は、アスファルトの道路から陽炎(かげろう)が立ち上り、体感温度は40度近かった。そんな暑熱の中、長男は歩道に座って湯気が上がる熱々のたこ焼きを食べた。その映像だけが鮮明に脳裏に残っている。

 あれから20ウン年。時の流れの速さに、改めて驚く。

 京都府編2回目の今週は、京丹後地方に関するメールをたくさんいただいた。なかなか行く機会がないので貴重な情報ばかりである。

MNo.7

ばらずし(ヴィオニエさん提供)
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ばらずし(ヴィオニエさん提供)

 丹後から2つご紹介します。
 まずは「ばらずし」。いわゆる五目ずしのことで、日本各地にあるものですが、ここ丹後のばらずしの特徴はサバのおぼろが入っていることです。
 酢飯とサバのおぼろが交互に重ねられた上に錦糸卵や椎茸の炊いたんやかまぼこが彩りよく盛りつけられています。
「ばらずしで丹後をつなぐ会」のページを読むと、ご家庭ではサバ缶を使って作るようで、大きいサイズのサバ缶があるのはこの地域だけなんだとか。
 もうひとつは「いわしずし」。
 これは地方の料理というより同一経営の2店舗が出しているだけなのですが、実は天橋立の隠れた名物なんです。本店と思われる「すし小銭」は幹線道路沿いに、テイクアウト専門店のような風情で立っています。

いわしずし(ヴィオニエさん提供)
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いわしずし(ヴィオニエさん提供)

 姉妹店は近隣のショッピングセンターの中に「四季」という名前で出ていて、写真はそこでイートインした時に撮ったものです。
 いわゆる締めたいわしのにぎりずし。でも上に薄くスライスしたガリとおネギをのっけているのが特徴で、このネギも白ネギ部分と青ネギ部分がバランスよく配合されています。
 なんてことない工夫かもしれませんが、いわしの風味と生姜とネギの軽快さがなんともくせになるお味で、一度食べたら忘れられません。
 思えば天橋立のお土産としてオイルサーディンも有名だったなあ、と調べてみたら、この辺りは美味しいいわしがとれるのだそうです。
 なお、どちらもビールが写りこんでいるのはご愛嬌とお許し下さいませ(ヴィオニエさん)

 「食べ物 新日本奇行」でも一度話題になった丹後のばらずし。実に特徴的で美味しそうなすしである。

MNo.8

沖キス(京都府海洋センター出典)
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沖キス(京都府海洋センター出典)

 私の母は、丹後・峰山(和久傳も本拠は峰山)の出身でして少なからずご縁があります。
 そんな我が家では「丹後ずし」といって、サバのそぼろをふんだんに使った郷土食が伝えられています。
 今ではこれを売りにしているお店も多く「とり松」さんなどは京都市内にも出していらっしゃるようです。山口の岩国の「押し寿司」に似たような味わいで、私も慣れ親しんだ味です。
 我が家では「サバのそぼろ」がメイン。椎茸の炊いた物、刻みかんぴょうやタケノコの煮物を刻んだ物を散らし、錦糸卵で仕上げて、木の芽を散らして完成です。元々は、各家庭で作っていたご馳走ですね。
 あと私の好物で「沖キス」というのもありますが、秋の味覚ですねぇ…世間では「ニギス」という種類です。9月からの底引き網で上がる魚です。足が速い(傷みが早い)ので地元ならではの味でしょうか(oizumi824さん)

ばらずし(海の京都観光推進協議会提供)
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ばらずし(海の京都観光推進協議会提供)

 京丹後市観光協会のHPでは「サバのおぼろを使うのが特徴的な郷土料理。お祭りや祝い事など、人をもてなすハレの日にはかかせない家庭の味。長方形の木で作った『まつぶた』に甘辛く炒ったおぼろと寿司めしを重ね、錦糸卵、しいたけ、かまぼこ、紅しょうがで彩りをそえます」と説明されている。

 ところで「サバのそぼろ」をどうやって作るのか。焼いたサバの身をほぐし、甘辛く味付けして炒るのだろうか。しかしヴィオニエさんのメールには「ご家庭ではサバ缶を使って作るよう」とある。

サバのそぼろが特徴(海の京都観光推進協議会提供)
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サバのそぼろが特徴(海の京都観光推進協議会提供)

 するってえと、サバのフレーク缶をフライパンで炒るのかもしれない。

「ばらずしで丹後をつなぐ会」のHPを見たら「戦前焼きサバを用いて作られ、保存食の役割も担っていた丹後ばらずしは、戦後まもなくサバの缶詰が使われるようになります。あまりにも多くのサバ缶を使うからか?大きいサイズのサバ缶が売られているのは丹後地方だけ。つまり、丹後ばらずしはこの地方だけの独特の味なのです」と書いてあった。

 では「大きいサイズのサバ缶」はどのくらい大きいのであろうか。と思って調べてみたら「京丹後市観光協会丹後町支部」のHPに「どうやら丹後で販売されているサバ缶は、全国的な標準サイズより大きいらしい!」とあった。あったがサイズとか重量は書いていない。その代わりにサバ缶の写真があって、缶には「さば味付」と印刷されている。

サバ水煮缶
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サバ水煮缶

 ちょっと待てよ。東京のスーパーでサバ缶というと味噌煮か水煮。味付ってあったっけ? それに、京丹後市観光協会丹後町支部が掲載しているサバ缶には「特選」の文字が。これが京丹後のばらずし仕様の缶詰ではないのか? このように疑問がわいたときはメーカーに確認すべきであろうが、あえてしない。あえてしないで、現地で現物を手に取ってみたいと思う。

 デスク、実食の旅のときは私が電車で京丹後に行く。デスクは京都市内とか南部を頼む。

MNo.9

ヒラヤミルク(平林乳業提供)
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ヒラヤミルク(平林乳業提供)

ヒラヤミルク
 牛乳です。京都府北部で牛乳と言えば、このヒラヤミルクです。
 給食でも自宅でも飲食店でもこれで、東京に来てこれより美味しい牛乳をスーパーで探そうとしてもなかなか見つけられておりません。私の友達はわざわざ通販したとのことです。
リヨンパティスリー洋菓子店の「チロル」
 「パティスリー」とありますが、昔ながらの洋菓子店と言う方がしっくりきます。都会のパティスリーのような華やかでもオシャレでもない、いたって普通のお店なのですが、どれもとてもやさしく懐かしい味がします。
 誕生日やお祝いごと、お土産はほとんどこちらにお世話になっていました(森さん)

濃厚な蒜山高原のジャージー牛乳
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濃厚な蒜山高原のジャージー牛乳

 牛乳好きの私にとって、大変ありがたい情報である。各地に取材で行くと、地元のスーパーで地元の牛乳を探して飲む。同じ牛乳なのに微妙に味わいが違う。岡山の蒜山(ひるぜん)高原で飲んだジャージー牛乳は瓶の口を固まった脂肪が塞ぐほど濃厚だった。

 ヒラヤミルクはどんな味がするのであろうか。京丹後に行くのが楽しみになってきた。

 リヨンパティスリー洋菓子店の「チロル」は焼き菓子のようである。ヒラヤミルクが入ったコップを前にチロルでも食べようか。でもどうしてチロルなのであろうか。

MNo.10

魚のあら
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魚のあら

 丹後地方の庶民的美味といえるのが「あら汁」で、食事処の多くがあら汁定食をメニューにのせています。
 定評のある店のあら汁は、身の付き具合がよく、ぶつ切りの身がまるっと入っていたりもして、カステラの切り落とし販売に似た幸福感も味わえます。日によって入る魚も変わり、味の変化も楽しめますし、あら汁をアテにちょこっとビールを楽しむのも粋です(青木さん)

魅力的な地元味
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魅力的な地元味

 おおおお、また出た魅力的な地元味。あら汁かあ。

 京丹後の寿司屋かなんかで寿司をちょこっとつまみながら地酒をいただいて、締めにあら汁。今からでも行きたくなってきた。

MNo.11

丹波の豆
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丹波の豆

 子どものころ、丹後縮緬が「丹後のちりめんじゃこ」だと思い込んでいました。長じて間人(たいざ)やら天橋立やら、舟屋で有名な伊根を訪れて丹後縮緬が食べ物でないことを知り、食いしん坊の飴屋は愕然としたものです。
 さて、京丹波から丹後にかけては、いわゆる京の食べ物と違った独特の食べ物があります。山間部の京丹波では、丹波大納言に丹波白小豆、そして大豆。これらは京大坂の和菓子文化を支えていました。
 亀岡はもやしもんの土地、酒や味噌が美味しいし、京豆腐とは違う味の濃い田舎豆腐が魅力。茅葺きの里、美山は山菜料理やら雑穀食文化が残る貴重なエリア。古くからの納豆食地帯でもあったはず。そして水系毎に味の違う鮎も捨てがたい。
 戻って海っ縁のエリア。間人ガニは越前や但馬や山陰のカニに負けてはいないし、伊根のサバも良いですよ。
 スルメイカや雑魚類も捨て置けない。貝の焼いたんや湯がいただけの巻き貝類も趣があります。そうそう、オキヒイラギの干物をさっと炙ったのも美味しかったなぁ(豊下製菓の豊下さん)

 ちりめんじゃこが身近な関西人であるが故のエピソード。久留米ではそもそも海が遠いし、一番近い海が特殊な有明海なので、大人になるまでちりめんじゃこの存在を知らなかった。

栃の実集めのボランティア(京都府提供)
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栃の実集めのボランティア(京都府提供)

 しかし、それにしても京都府北部の食は多彩で奥が深い。尋常ではない興味がわいてきた。

「京都府ときお」さんからは「綾部市奥上林地域の超過疎化高齢化集落「古屋(こや)」では、集落の山奥に自生している栃の実をボランティアで拾い集め、地域の人々(といっても、おばあちゃん、おじいちゃんですが)があられ・お餅などに加工しています。これは、ここ数年の新しい取り組みです」というメールをいただいている。

 山間部の限界集落ではあるらしいが、葉っぱビジネスの成功例もある。頑張っていただきたい。

 さて京都府南部に目を向けよう。

MNo.12

辛いの?甘いの?(大阪の原さん提供)
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辛いの?甘いの?(大阪の原さん提供)

 向日市が「街全体を商店街」として「激辛食」を街の至るところで販売しています。年1回開催されるKARA-1グランプリには約6万人が訪れます。人口5万5000人の街ですので、すごいことだと思っています(お名前ありません)

激辛商店街(大阪の原さん提供)
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激辛商店街(大阪の原さん提供)

 KARA-1グランプリは個店が辛さを競うというのであるから、個人的には距離をおきたい。近づくのもいやだ。辛いの絶対反対。

 しかしながら辛い料理を集めたイベントをどこの誰が思いついたのか。勇気がある。来場者も勇気がある。命が惜しくないのか。

 激辛食を至るところで販売している向日市にはデスクを派遣する。

デスク 喜んで!

 京料理=薄味のイメージ。しかしあの食べ物はそうではない。

MNo.13

第一旭のラーメン
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第一旭のラーメン

 京都といえば、和食は薄味で素材の味を生かした感じですが、ラーメンは違いますね。
 名古屋にもある「ラーメン横綱」は豚骨醤油だし、「天下一品」はどろどろだし。
 第一旭などの有名店もばりばり豚骨。タイプは違いますが濃い味が多いですね。なぜああいう味付けになったんでしょうか。不思議だ!
 そういえば、昔京風ラーメンっていう、醤油味のさっぱり系ラーメンってあったけど、なくなっちゃいましたね。
 かの、京都の方も「あれは京都のラーメンじゃない!!」って言ってたなあ(名古屋のす〜さん)

MNo.14

一乗寺「高安」のラーメン(大阪の原さん提供)
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一乗寺「高安」のラーメン(大阪の原さん提供)

 不思議なもので、京都の料理と言えば薄口・淡口、塩分控えめで澄んだイメージなのですが、ラーメンは正反対。
 「天下一品」「天天有」は白くてドロドロに濃いスープ。食べるのに使った割り箸を煮たら出しが取れると言われるくらいです。写真は一乗寺の「高安」さんですが、結構濃い味です。
 「新福菜館本店」「本家第一旭」は濃い醤油味。チャーハンも濃い味、濃い色。何ででしょうか? 反動でしょうか?
 「京都あかさたな」という薄口の和風ラーメンチェーン店がありますが、これは京都出身ではないという話ですし…不思議だなあ(大阪の原さん)

 お二人とも同意見。同じ疑問。

 ではあの方に解説していただこう。

MNo.15

濃厚(いけずな京女さん提供)
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濃厚(いけずな京女さん提供)

 京都人濃厚民族説。
 何しろ京都盆地は夏はサウナ、冬は業務用冷凍庫。栄養をしっかり摂らんと倒れてしまいます。
「濃厚」ちゅうのは味が濃いというより栄養価が高い、ガッツリ系のメニュー好きと思ってください。
 なので京都人は焼肉大好き、餃子の購入額は実は浜松、宇都宮に次いで第3位をキープしてるし、揚げもんも大好きでコロッケの支出金額は福井に次いで2位なのでした。
 そして、象徴的なのが「京都のラーメン」。ちなみに「京風ラーメン」などというものは存在しません、ご当地グルメでもありません。すべて個人・個店のメニューです。

こってり(いけずな京女さん提供)
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こってり(いけずな京女さん提供)

 それでも共通するのは、あっさり系ではなく濃厚系スープであること。その最たるものがはい、これですね「天下一品」の「こってり(スープ)」。
 どんな激辛メニューも平気な鉄の胃袋を持つデスクでさえ、ここの「こってり」には敵わないそうなんですが。
 京都では私の親類友人知人の多くが「風邪をひいたら天下一品のラーメン食べて治す」て言うてたもんです。
 あっそれで思い出した、京都府向日市には「激辛商店街」がありますさかい。デスクは実食のときに寄って行かはったら?(いけずな京女さん)

京都・新福菜館のラーメン
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京都・新福菜館のラーメン

 ということで、気候がラーメンの濃さの背景にあるらしい。

「ウラはあってもお・も・て・な・し」とともに「京都人濃厚民族説」というフレーズを覚えておこう。日本世間話体系の傑作である。

 ここでも向日市の激辛商店街が登場した。デスク、行くしかないね。

デスク 行ぐ、行ぐ、ゼッタイ行ぐ!

 ということで、今回は京丹後地方の魅力全開であった。

 ではまた来週。

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「ご当地グルメが3割引〜地方創生交付金で、神奈川県など」です。ぜひお読みください。

京都府編(その1) 京都人、生八ツ橋は食べまへん

京都府編(その3) 喫茶店、3度の食事にサンド出す

京都府編(その4) 「てっぱい」をいっぱい食べたい

大阪・京都府まとめて実食編 「飯炊き仙人」こんにちは


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2015年6月5日

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