第172回 山梨県ご当地グルメ(その1) 「ぶうちゅう」で乾杯!

特別編集委員 野瀬泰申


 お待たせしました。いよいよ山梨県編のスタートです。
 東京都のとなりに位置しながら、県土の78%が森林と、豊かな自然に恵まれています。海こそないものの、山の恵みにあふれ、また海なし県ならではの海産物の食文化もあります。はたしてどんなご当地グルメが登場するのか。ご期待ください。
 今週のおかわりは、在京アンテナショップのご紹介です
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我が家の近所にも春がきた
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我が家の近所にも春がきた

 先週土曜の初夏を思わせる陽気のせいで、東京の桜は一気に満開になった。我が家の近所の川べりでは菜の花と桜が同時に咲き誇り春一色である。

 その陽気に誘われたのか、都心のデパートや電器店、ファッションビルなどはB−1グランプリの会場を思わせるような混雑ぶりだった。

 でもよく考えると、この混雑は消費税引き上げを目前にして駆け込みの買い物客が押し寄せたためらしく、春のうきうき気分のせいではなかった。

今年のB−1グランプリは郡山
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今年のB−1グランプリは郡山

 桜前線はこれから被災地方面へと北上していく。この秋には「福島・東北応援特別大会」と銘打ったB−1グランプリの本大会が郡山市で開かれる。被災地に復興の日が少しでも早く訪れるよう願っている。

 今回から山梨県編。山梨県も甚大な被害を受けたばかり。

「甲州牛&梨北米」のカレーライス(いけずな京女さん提供)
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「甲州牛&梨北米」のカレーライス(いけずな京女さん提供)

MNo.1

 まずは、このたびの記録的大雪により被災されました山梨県(をはじめ長野県、埼玉県、神奈川県、群馬県)の皆様に心からお見舞い申し上げます。

 何よりも農業被害が深刻で、山梨県のぶどう農園は、いまだ正確な被害状況も把握できないとのこと。1日も早く復興方針が定まり、私たちが何らかの形でボランティアや支援ができるようになりますことを願っております。
 こんなときに食べBで山梨県ってどうなの、と一瞬は思ったのですが、いやいやこんなときやからこそ、山梨県の食文化について皆で語り合い、現地の食を味わおう! 訪問して食べて応援しよう! となったらいいですよね。
 そんなわけで先日、代々木公園で開催されました「ふるさとの食・にっぽんの食」イベントでは、真っ先に山梨県のブースを訪ねました。

鮎の塩焼き(いけずな京女さん提供)
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鮎の塩焼き(いけずな京女さん提供)

「甲州牛&梨北米」のカレーライス。
 「甲州牛」は山梨の銘柄牛、つまり高級牛肉。肉質は松阪牛などにけっしてひけをとらないのに知名度はまだまだ低いので、この機会にお見知りおきを。
 一方、「梨北米」は山梨県の北西部、北杜市、韮崎市を中心とする県内屈指の水田地帯で栽培されているお米です。こちらも日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」で最高ランクの特A評価を取っている美 味しいお米なのだそうです。
「鮎の塩焼き」「鮎の甘露煮」は、山梨の郷土料理。会場ではたーいへん立派な鮎の塩焼きをいただきました、川魚のくさみもなくうま味が濃くて美味しかったですよ(いけずな京女さん)

ちょっと出かけてみようじゃないの
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ちょっと出かけてみようじゃないの

 はい、その通りである。山梨県をテーマに選んだ理由のひとつは雪害を受けた農家の皆さんへの応援の気持ちがあったから。この際、山梨の食文化を考えて、東京から近いことでもあるし、ちょっと出かけてみようじゃないの。

 メールに登場する甲州牛は確かに知名度が低い。東京のスーパーで目にしたことはない。どこに行けば安く食べられるのか、地元の皆さん、教えてください。

 山梨県というと「ほうとう」を思い出す。

 ほうとうはただ小麦粉を練ったもの。塩を加えないところがとうどんと異なる。

ほうとう(大阪の原さん提供)
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ほうとう(大阪の原さん提供)

 塩を加えないからグルテンが少なく、煮るとデンプンが汁にしみだし、保温効果が高まるという。

 親戚に岩手県の「ひっつみ」、山形県の「はっと」、栃木県の「法度汁」、群馬県の「きりこみ」、大分県の「包丁(汁)」がある。以上は「たべもの起源事典」から。

 そのほうとうを冷たくして食べるのがこれ。

おざら(とりもつ隊の知見さん提供)
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おざら(とりもつ隊の知見さん提供)

MNo.2

「おざら」はほうとうのつけ麺バージョンです。冷やしたほうとうの麺を、温かいつゆ(醤油味)につけて食べます。
 1970年ごろに甲府市内のほうとう店が、煮込み料理であるほうとうは真夏には売れ行きが落ちるため、夏の料理としておざらを売り出したとされています。その後、多くのほうとう店で広まりました。
 温かいつゆの中には長ネギやニンジン、シイタケ、シメジ、タケノコ、油揚げなどを入れることが多いです(甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊の知見さん)

僕は食べました(デスク)
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僕は食べました(デスク)

「おざら」の食べ方は、東京の武蔵村山市から埼玉県の狭山丘陵にかけて分布するつけ麺スタイルのうどんに似ている。この地域では冷たいうどんを温かいつけ汁で食べるのである。

 私はまだ「おざら」体験がない。甲府でメニューは確認したものの、そのときは甲州スタイルのカツ丼の取材があったので、食べられなかったのである。

 ところで「おざら」の語源はなんだろう。

 ほうとうは大阪にも進出している。

カボチャは必須?(大阪の原さん提供)
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カボチャは必須?(大阪の原さん提供)

MNo.3

 大阪市の恵美須町近くの甲州麺さんです。ほうとうだけでは伝わらないのでうどんを併記。野菜たっぷり、カボチャが入った具だくさんです。
 山梨で食した際には「カボチャが入らないとほうとうではない」と伺いましたが、由来は何なのか? 保存が利く野菜だからか? それとも?(大阪の原さん)

「ほうとうは麺類ですよ」(大阪の原さん提供)
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「ほうとうは麺類ですよ」(大阪の原さん提供)

 店の看板を見て「なるほど」と思った。大阪で「ほうとう」だけの表示だと、わからない人が多いだろう。そこで「うどん」も一緒に扱っていることを示すと「ほうとうは麺類ですよ」というメッセージになる。

 すでに書いたように、ほうとうの仲間はほぼ山梨以東に分布している。基本的に東日本型の食文化である。「たべもの起源事典」が言う「大分の包丁汁」は西日本のものだが、これは団子(だご)汁のことであろう。だご汁なら私も子どものころから食べている。ただ小麦粉を練ってちぎって味噌汁に入れたもの。要するに「すいとん」である。

 翌朝になると団子が溶けてどろどろになっている。平気で食べていた。

 ほうとうを麺線ではなく、違う形にして煮込む料理もある。

みみ(公益社団法人やまなし観光推進機構提供)
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みみ(公益社団法人やまなし観光推進機構提供)

MNo.4

 富士川町の郷土料理に「みみ」というものがあります。小麦粉を伸ばして箕型にしたみみを地元で採れた野菜と手作り味噌で煮込んで作ります。
 特産品では市川三郷町の大塚にんじん。収穫時には長さ80センチにもなります。
 またこの地域では甘々娘(かんかんむすめ)という甘味の強いとうもろこしも特産です(お名前ありません)

大塚にんじん(JA西八代提供)
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大塚にんじん(JA西八代提供)

「みみ」は耳の形ではなく、穀物などをふるいにかける農具の「箕(み)」を模して四角に作る。ほうとうの一種である。栃木県佐野市の「耳うどん」とは形が違う。

 それから大塚にんじん。長さ80センチなら、子どもの野球でバットになる。でかい。

甘々娘」とはいいネーミングである。戦後すぐ「銀座カンカン娘」という歌がはやったのを知ってますか?

 次のメールは重要な情報。一度どこかで私は書いているのだが、どこで書いたか思い出せない。

せいだのたまじ(中林20系さん提供)
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せいだのたまじ(中林20系さん提供)

MNo.5

 昨年の「信玄公祭り」に伺って、何か面白い地元名物はないものかと屋台を探し回って出合えたのが、上野原市の「せいだのたまじ」でした。小さなジャガイモを皮付きのまま味噌で甘辛く煮詰めた、上野原の郷土料理だそうです。
 この、何だかわらない名前の由来が気になるところですが、まずは「せいだ」から。救荒作物としてのジャガイモ栽培を広めた名代官・中井清太夫の名前にちなんで、ジャガイモのことを「清太夫芋」と感謝を込めて呼んだことに由来するそうです。
 そして「たまじ」とは小粒のジャガイモのことだそうで、合わせて「せいだのたまじ」と。
 美味しいんですよ、これが。おかずとしてだけでなく、つまみとしても酒が進みます。でもって割と簡単に自作も可能です。
 現地で食べられる飲食店は限られてますし、自前の交通手段が必要ですが、せっかくですから実食編で食べてみてください(中林20系さん)

デスクも食べました
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デスクも食べました

 上野原市は東京と隣接する山梨県東端の町。八王子の近くである。

 市役所の若手職員を中心にしたボランティア団体が「せいだのたまじ」を使ってまちおこしをしているらしい。

 東京から近い。行ってみようか。

 次のメールに登場する果実。知っていましたか?

「ポポのアイスクリーム」(みなみ@神奈川さん提供)
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「ポポのアイスクリーム」(みなみ@神奈川さん提供)

MNo.6

 先日、地元のイベントで山梨県の早川町の物産を扱う出店がありました。そこを見ていると「ポポのアイスクリーム」なる見慣れないものが。早速に買って食べてみるとバナナのアイスのような、優しくもあり懐かしくもある味で、なかなかに乙なものでした。
 そこでもらったチラシでは、このポポというのは北米原産の"Pawpaw"という果樹で、日本には明治時代に入ってきて試験場で育てたところ、日本の気候風土にも合っていたとのこと。その実の食感はアボガド、味はマンゴーとパパイヤを足したようなものだそうです。
 それを第2次大戦前に早川町出身の植木関係の方が苗を地元に持ち帰り、早川町で広まったそうです。
 ただ、このポポの実は匂いが独特なのと、日持ちしない上に実に占める種の割合が大きくて食べにくく、いつの間にか下火になったそうな。
 そのポポを早川町の新しい特産にしようと商品開発が始まり、クッキー、プリンなどいろいろと試作の結果アイスクリームができたそうです。今後、この「ポポのアイスクリーム」がどう育っていくかが、楽しみです(みなみ@神奈川さん)

「食感はアボガド、味はマンゴーとパパイヤを足したようなもの」というところで目が止まった。実に素晴らしい果実ではないか。

 最近の食品加工技術を使えば、いろいろなものが作れそうである。地域資源としての将来性を感じる。これはお宝かも。

一升瓶ワインとぐい飲み
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一升瓶ワインとぐい飲み

MNo.7

 一升瓶のワインがあり、地元ではワインではなく「ぶどう酒」と呼ぶ。ぶどう酒を焼酎で割った「ぶうちゅう」が農家の寄り合いで飲まれている(さむがりさん)

葡萄(ぶどう)酒
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葡萄(ぶどう)酒

 甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊(以下、とりもつ隊)の皆さんと飲んだとき、ぶどう酒は一升瓶、器はグラスではなくぐい飲みだった。これが甲州流なのである。

 しかも農家ではぶどう酒に焼酎を入れて「ぶうちゅう」にする。なんとまあぜいたくな。 産地でしかできない飲み方である。

 実食編では「ぶうちゅう」飲むぞ。

甲府市内のとある飲み屋にて
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甲府市内のとある飲み屋にて

MNo.8

 総務省の家計調査(2人以上の世帯)による、1世帯あたりのマグロ購入数量は4,056g、購入金額は10,745円で、どちらも全国2位の調査結果となっています(平成22〜24年平均)。
 1位には静岡市がランクインしています。漁港がありますので納得の結果ですが、海のない甲府市が2位になっているのは、海がないからこそ魚に対する情熱、マグロに対するあこがれが根強く残っているからなのでしょうか。
 また、それに伴って人口あたりのお寿司屋さんの多さも全国で1位だとか???
 ちなみに、うちの娘はマグロが好きすぎて、先日、昼寝をしながらマグロの夢を見ていたようで、急に寝ぼけて台所に行って「マグロはどこ??マグロはどこ??」と連呼していました(とりもつ隊の後藤さん)

そば屋でもマグロ
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そば屋でもマグロ

 山梨県は海なし県である。この視点で見ると山梨県の食文化の形が鮮明に見えてくる。

 山梨県民のマグロと貝類への偏愛については「糸魚川−静岡構造線を行く」の中で書いている。

 この場合のマグロは大半がキハダマグロである。脂肪分が少なく腐りにくいので、昔から遠距離輸送に耐えた。居酒屋で「ぶつ」と注文すると、キハダマグロのぶつ切りが出てくる。これは覚えておこう。

 それから、マグロの夢までみる後藤さんの娘さん。

トラックで送りましょうか?
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トラックで送りましょうか?

 そんなにマグロが好きなら築地からトラックで送りましょうか? ウソですが。

 山梨県編はこのように順調に滑り出した。

 引き続き、山梨メールを待つ。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「富士の国やまなし館に行ってきました」です。ぜひお読みください。

山梨県編(その2) 赤飯が甘くてなぜ悪い

山梨県編(その3) 馬が鳥もつ2つの県

山梨県編(その4) 富士山はジャガとヒジキで山開き

山梨県実食編 この緑、ほぼぶどう


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2014年4月4日

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