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NIKKEI NET インターネットアワード2000

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受賞作
審査委員長講評
記念シンポジウム

「インターネットで変わる経済、社会、地域」

公文俊平 国際大学グローコム所長
基調講演する公文俊平・国際大学グローコム所長
 市民が連携、既存組織と対決

 いま欧米では、情報化社会の未来に対し、強気と弱気が交錯している。国家間、都市間、世代間での情報格差の広がりや、情報システムによる省力化で人減らしへの不安が高まり、また新しい開発主義をアジアに持ち込むという指摘も出てきている。

 こうしたマイナス部分に意識が向き始めた背景には、米国の情報、通信関連産業が目指してきた大衆向けビジネスがある意味で行き詰まっていることがある。

 相次いで登場した「ドットコム企業」と呼ばれる個人向け電子商取引業者は、ネットバブルのあと株価は暴落、破産に追いやられたものも少なくない。

 米国企業の行き詰まりは前提とする2つの条件が成り立たなくなったことが原因だ。1つは広帯域ネットワーク。しかしその整備に時間がかかり、まだ十分に実用的になっていない。ケーブルテレビ会社を買収したAT&Tが、ケーブル網の開放を競合他社に求められ、戦略の見直しを迫られるなど一筋縄ではいかない。

 もう1つは企業が作った情報を消費する「受け身」の消費者を想定していたことだ。現実の消費者は、自分で情報を生み出し、それを他者と共有したいという欲求を持っている。例えば「ナップスター」はだれもが音楽家として、レコード会社に頼らず音楽を流通させることを可能にした。

 今我々が直面しているのは、18世紀後半に起きた第1次産業革命、百数十年前に起きた重化学工業革命に次ぐ第3の産業革命だ。情報を扱う力が飛躍的に増すことによって起こるもので、第1次情報革命と呼んでもいい。

 実際、個人のネットを通じた連携が消費者運動や市民運動として、企業や政府など既存の組織と対決する状況が生まれている。例えば、米国などでは企業の活動をネット上で告発する動きも多いし、昨秋シアトルではネットで連絡を取り合った人たちが世界貿易機関(WTO)会議に猛烈な反対運動を起こした。

 非営利組織(NPO)、非政府組織(NGO)などの組織は、ネットを通じて自分たちが力を持っていることを自覚し、自分たちの目標を実現するために政治的に行動し始めている。反体制活動家は暗号技術を使うことで検閲を受けずに情報を交換できる。ネチズン(ネット上の市民)による権力の奪取が起こらないとも限らない。

 企業や政府など既存の組織と、NGOやNPOといった新しい勢力が相互不信、対立し戦う関係となるか、それとも理解し信頼し合い、補完の関係に進むか。我々は今その岐路に立っている。

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