「アジアの未来」
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アジアの未来
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ベトナムはドイモイし、発展し、国際経済に意欲的に加わり、アジアの未来に積極的に貢献する
ファン・バン・カイ ベトナム首相
 まず初めに、日本経済新聞社に、知名度の高い「アジアの未来」セミナーへの参加、発表の機会をくださいましたことをお礼申し上げます。東京で第7回目の開催となるこのセミナーは、アジアそして世界の政治・経済・文化の大センターです。この場を借りて、ベトナム政府と国民を代表し、日本政府と国民の皆様に友好のご挨拶と、ご多幸とご健勝のご祈念を申し上げます。

 このセミナーは、新世紀のアジアの発展について我々が意見交換をするにふさわしい場です。

 20世紀末の数年間、経済危機がアジア経済に甚大な被害を与え、経済構造に内在する欠陥をさらけ出しました。今日、アジアの多くの国々は最も過酷な段階を乗り越え、経済の立て直しを進めていますが、堅実な発展のためには、さらなる経済構造改革を続ける必要があります。また、いくつかの国においては政治・社会の不安定な状況を乗り越えねばなりません。これらの事業は、世界の大国の経済が停滞あるいは不況という状態に陥りグローバルな経済成長に影響を与えている時、ますます難しくなります。

 当面アジアは多くの困難や試練と対峙しなければなりませんが、しかし我々には未来を楽観視しうる基礎があります。この数十年で形成された経済基盤は、多岐に渡る豊かなポテンシャル 特に、優れた東洋文化の伝統を持つ人材を有し、迅速かつ堅実な発展のための基礎を作りだす内在要因です。アジアの普遍性を持った独自性は、これまで活発な発展に貢献してきていますし、知識経済の時代になったときには、さらに強く発揮されるでしょう。

 アジア諸国の経済が立ち直り、発展するために不可欠な要素のひとつは、我々アジアの相互協力関係と、我々とアジア以外のパートナーとの協力関係です。我々は力を合わせ、アジアに多層、広範囲にわたる協力体制を作ってきました。たとえば、今やすべての10カ国が加盟した東南アジア諸国連合(ASEAN)、メコン川流域を含むインドシナ地域の各協力体制、ASEANと日本・中国・韓国の3カ国の10+3体制、ASEANとパートナー10カ国の対話体制、アジア太平洋経済協力閣僚会議(APEC)、アジア欧州首脳会議(ASEM)などです。いま肝心なことは、これらの体制をいかにして効果的に働かせ、参加当事者に至当な利益をもたらすかです。

 アジア諸国相互の協力を重視しながらも、我々は孤立することなく、客観的な動向について、グローバリゼーションのチャンスとチャレンジについて深く認識し、全地球的な体制に積極的に参加しています。世界貿易機構(WTO)を含むこれらの体制は、あらゆる国家 大きい国も小さい国も、富める国も貧しい国も の参加を得られるときだけ、そしてお互いの独立と主権、平等と共益を尊重し、工業先進国と発展途上国間の隔絶の縮小に貢献するという原則にしたがって活動するときだけ生命力を持つと我々は考えます。

 アジアの未来はまた、発展のための最も重要な条件に依存しています。それは平和と安定です。過去、アジアは多くの戦争や衝突の戦場となりました。20世紀最後の数十年になって、やや平穏な空気がアジアを包みました。いまだ不安定を引き起こす可能性のある要因は少なからず伏在していますが、しかし、新しい時代には、民族間、国家間で需要と利益が同じであることや、連帯関係が日々強まっていることが、紛争を和らげ、解決し、平和で安定した環境とアジアの協力関係を維持、改善するであろうことを我々は確信しています。

 そのような状況の中、アジアは自らの豊かなポテンシャルを生かし、広くは世界全体において、狭くは世界経済において、日一日と重要な地位を占めることでしょう。日本・中国・インドのような大きな経済基盤が日ごとその占有率を上げ、他の経済基盤も活発に発展するのです。多くのアジアの国が刻一刻と、世界の知識経済を形成し文化を発展させる先陣の列に加わるでしょう。

 ドイモイ政策を開始した当初からベトナムは、国際共同体の国々の友人でありたいと、平和・独立・発展のために闘いたいという希望を明らかにしてきました。そのことがベトナムの国際関係において現実になったことを実感し、嬉しく思います。全ての国々・地域・国際的機関・アジアの機関とともに、ベトナムは多面的・二国間・多国間的に関係を拡大し続けます。その中でベトナムは国家と地域の独立・主権・領土を尊重し、お互いの内部事情には干渉せず、武器は行使せず、武器行使の威嚇をせず、平等と共益、平和的交渉により摩擦と紛争を解決し、あらゆる陰謀・圧力や強制的な行動を許さないという原則に従います。アジア共同体の一員として、ベトナムはアジアの平和と安定を維持し改善すること、共同体の協力関係をとどまることなく拡大し、その効果を向上させることに積極的に貢献します。共同体および各国家の利益に見合った協力関係は、各国間に足並みの揃った発展を促します。このことはおのおのの民族に繁栄をもたらし、我々のアジアの活発で堅実な発展を保証する重要な要素のひとつです。

 ご列席の皆様

 15年間のドイモイと発展を経て、ベトナムは多くの成果を得ましたが、しかし経済は低開発のレベルにあり、移行過渡期にあって後れた点が多々あります。社会状況は厳しい問題を多くはらんでいます。国内の状況を、国際的な背景や時代の動向の分析と組み合わせて評価したうえで、私たちは、急ぎ国家の工業化・近代化を強く推し進め、深く広くドイモイを続け、国際経済に意欲的に加わらなくてはならないことを認識しました。ベトナムの2001年から2010年までの経済社会発展戦略は、「国土を低開発の状態から脱却させ、国民の物質・文化・精神生活を顕著に引き上げ、2020年までに近代的な工業国になるための基盤を作り出す」という目標を定めています。この目標を達成するためには堅実な経済成長を促進することが求められます。私たちはこのセミナーのテーマのひとつになっている「安定した社会のための成長の戦略」という観点を十二分に分かち合っています。

 ベトナムの実践と国際的な経験 特に先の恐慌の教訓 から、ベトナムの新世紀初頭の10年の経済社会発展戦略は、以下のように安定とドイモイと発展をしっかりと組み合わせた色彩が濃くあらわれています。

 その1、社会の公平と進歩の実現、環境保護と並行した迅速かつ堅実な経済の発展。

 ベトナムの経済発展戦略は、強味のある製品・分野・領域に向かい、国内需要に対応し、輸出を促進し、常に国内外の市場で競争力を向上し、都市部と農村部における経済構造と労働力構造の移行を促進します。

 経済成長、社会の公平と進歩の実現、環境保護を協調的に組み合わせるという観点は、すでに多くの形態や方策で生活に浸透しています。国家と国民と国際的援助の努力を結合させる国家目標プログラムもそれに含まれます。2001年から2005年の期間のプログラムは、雇用の解決と貧困の撲滅、教育訓練、文化の発展、農村部の上水供給と環境衛生、人口と家族計画、社会病や危険な病気およびエイズの予防と対策です。ベトナムの最初の成功は、2000以上の最貧の村で力を結集してこれらのプログラムを総合し、実現したことでした(全国の村総数の4分の1近くを占めます)。これにより、1人当たりGDPはまだ低いものの、貧困世帯の割合を速やかに減らすことができ、政治・社会の安定に重要な貢献をしました。最近、国際金融機関がベトナムにおける経済成長と貧困撲滅の中期プログラムに8億ドル以上の援助を決めました。これは資金源を補充しただけではなく、ドイモイと発展の進捗に対して前向きな評価を表したものであり、ベトナムにおける投資経営環境についてのプラスのイメージをもたらしました。

 その2、引き続き経済・社会・国家機構を、深く広く、足並みをそろえドイモイします。ポイントは社会主義の方向性を持った市場経済体制を建設し完成することです。全民族が物質・知性・精神の力を発揮することをねらいとし、経営者および全人民が自分と国家を豊かにするために力を出すことを督励します。

 国営企業の編成・ドイモイ・効果の向上についての方策をさらに強く推し進め、国家が把握する必要のない企業に対しては、適切な所有形態へ移行します。

 健全で明白な競争、独占経営の制限と取り締まりのなかで、市場が活発に、効果的に、秩序立って活動するよう、市場ファクターの形成と各ファクターの均一な発展を法的枠組の策定と並行して進めます。

 マクロ経済の安定を重視し、健全な金融システムを開発し、インフレを取り締まります。金利・為替レートに対する市場原理の適用、貿易と投資の自由化、証券市場の拡大発展等は、マクロ経済の不安定を引き起こす不利な変動を避けるため、実際の条件に合わせて進められます。

 その3、工業化と近代化のニーズに応える教育訓練の質の向上と並行して、科学技術に関する内在能力を早急に向上し、規模を拡大します。要となる分野・領域において速やかに近代的テクノロジーに参入すると同時に、適切な、汚染を起こさない、労働力の利点を生かせるテクノロジーを選択します。教育訓練を基本的・全面的に変革し、教育・学習のプログラム、内容、方法論をドイモイし、教育訓練システムの学習レベル構造・職業分野構造・地域構造を合理的に調整します。

 その4、貿易・サービス・投資関係における多国間・二国間の協定実現のスケジュールに遅れないよう、国際経済に意欲的に加わり、経済発展と競争力の向上のためにあらゆるチャンスを生かします。現在のところ必要な貿易保護策を適用しなければなりませんが、しかしこれらの措置は暫定的であり、適用するときも厳選し、限度をもうけ、長期におよばないとはっきりと定められています。

 ベトナム政府は、非関税保護策を徐々に関税策に変える予定をすでに発表し、税率軽減のプロセスはAFTA、APECの加盟協定およびアメリカとの通商協定に従うこと、WTO加盟準備要求に応えることを明確に定めています。

 私たちは、外国投資資本を有する企業を国民経済の構成要素と見なし、各経済セクターとの協力、価格・手数料・税について同じ土俵での平等な競争の環境を一歩ずつ形成しています。まず、通信料金を軽減し、いくつかの価格と手数料を統一し、個人所得税を修正し、土地使用に関する疑問を解決します。同時に、投資経費を軽減して外国投資家が競争力を伸ばし輸出に力を入れられるような便宜を付加するため、法律環境と投資手続を引き続き改善します。対ベトナム外国投資は、一時減少の時期がありましたが、現在立ち直りの兆しを見せ、今後より増大するであろうとの展望があります。私たちも、いくつかの国の政府や国際金融機関からの援助(ODA)を効果的に使うためこの大事な資金の使い道の決定が遅れている問題を克服する努力をしています。それが援助をしてくれた人々の尊い力添えに対し感謝の念を表すにふさわしい方法です。

 その5、国家機構 特に、行政システム の改革を行います。以下のいくつかの大事業に的を絞ります。制度の策定と完成を引き続き行うと同時に施行効力の向上に注力する。民主的で、透明で、国民が国家の業務 まずは国民と企業の生業と生活に直接関わる業務 について知り・話し合い・携わり・調べられるような規定制度を実現する。官僚主義・汚職を抑止し、真に国民の公僕たる公務員のいるクリーンな国家機構を建設する。

 ドイモイと発展政策は進めるほどに以前よりも困難になることを、国際経済へ参加して高いところへ上がれば大きな試練に直面しなければならないことを私たちは理解しています。しかし、正しい路線をもってすれば、原動力 主に全民族の大団結力と国民の能動性・創造性 を発揮することができ、国際的な友人の支持と協力を得られ、ベトナムのドイモイ・発展政策と国際経済への参加は引き続き新しい勝利を収め、アジアの未来に積極的に貢献するであろうと私たちは確信しています。

 ご列席の皆様

 日本はアジアと世界の安定と発展にとってこの上なく重要な役割を果たしています。いま日本経済は多くの困難に直面していますが、しかし世界第二の経済的地位と、国民の豊かなポテンシャル、創造的な知性、勤勉に働く伝統、そして小泉首相をリーダーとする政府の強い改革の決心によって、日本経済は早期に試練を乗り越え、立ち直り、活発に発展し、アジアの協力関係と発展を促進する役割をさらに大きく果たすであろうと私たちは信じています。困難な経済状態にあって、日本は東南アジアの発展途上国に、二国間および多国間協力を通して、貧困撲滅・社会インフラ開発・生産管理能力向上などのプログラムに対する投資・援助プロジェクトで積極的な援助を続けています。これらの協力・援助は多くの国々の発展にとって大きな意義と適切な効果があると同時に、日本経済の復興に前向きに作用しています。

 日越協力関係には長い歴史があります。16世紀末には日本の商船がベトナムに渡って交易をし、両国の経済関係を強く推し進め、ベトナム中部の古い町、ホイアンに日本文化の貴重な遺産を残しました。現在UNESCOに世界文化遺産と公認され、私たちの政府と国民が手厚く保存しています。近年、両国関係に重要な進展がありました。日本は今やベトナムの大きな取引相手、筆頭の投資国、最大の援助国になりました。私たちは、ベトナムで経営活動する日本投資家の積極的な役割を高く評価しています。いくつかの日本企業は外国投資資本を有する企業のなかでも最も成功を収めたランクに位置づけられています。ベトナム政府は、両国の経済・貿易関係を盛り上げ、文化交流を 特に若い世代の交流を より強く進展させたいと願っています。

 ベトナムと日本のお互いの努力によって、より明るいアジアの未来の中で、我々両国の友好・協力・発展・共益の関係が引き続き発展し、花を咲かせ、実を結ぶことを希望します。この場をお借りし、ベトナム政府と国民に代わり、日本政府と国民の皆様に、ベトナムが「豊かな民、強い国家、公平・平等・民主的・文明的な社会」を目標に国家のドイモイと発展をしていくなか、好適で効果的な手助けをしてくれたことに心からの感謝の言葉を申し上げます。

 ご列席の皆様

 平和と発展はいつでも各民族の熱い夢であり、全身全霊をかけた闘いの目標です。アジアの未来はアジアの各民族と国民の手の中にあります。国際共同体の積極的な一員としてベトナムは常に、平和で安定した繁栄したアジアと世界のために闘います。ベトナムはアジアの地域経済と世界経済に意欲的に加わる政策を追い続け、ベトナムに投資し経営活動を行う外国投資家・外国企業にあらゆる面で便宜を図り、ベトナムとの協力関係を増進する国際パートナーを歓迎します。

 セミナーのご成功を祈念いたします。ありがとうございました。

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